【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ようやく無人島一歩手前の島から脱出できたので、連載再開です。お待たせしました。久しぶりの執筆なので、多少文章スタイルが変化しているかもしれませんが、その辺は生暖かい眼差しで見守ってくれたら嬉しいです。

 ……実は1週間前には既に無人島一歩手前の島から脱出し終えてたんだけど、その後にプレイした『ファイアーエムブレム 封印の剣』にメチャクチャハマってた影響で執筆意欲が全然湧かなかったんですよね、うん。

ふぁもにか「てなわけで、この場で一言言わせてください。……ティト可愛いよティト。なでなでしたいよティト」
アリア「そこはごめんなさいと謝る所でしょう? 何をやってるのですか?(←ガバメントをグリグリと突きつけつつ)」
ふぁもにか「いや、誠意を見せつつ涙目で地に頭をこすりつけて読者の皆さんに全力で謝るのはりこりんに任せようかと思いまして(←ゲス顔)」
理子「ま、またボクが土下座しないといけないの!?(※9話参照)」

 ……閑話休題。

 ところで、今回はサブタイトルが何だかカオスですね。何というか、謎の雰囲気をひしひしと感じる仕様になってますね。自分のやったことなんだけど、なんでこのサブタイトルにしちゃったんだろうか……。



37.熱血キンジと段ボール箱

 

「――ということだ、武藤」

 

 放課後。期間限定で白雪の護衛依頼をこなすこととなり、とりあえず武藤の協力を仰ぐことにしたキンジは、武藤を武偵高の屋上へと呼び出し、先までの話を余すことなく伝えた。

 

 『ダメダメユッキーを愛でる会』という名の白雪ファンクラブの一員たる武藤に白雪を取り巻く現状を伝えれば、その情報は瞬く間に『ダメダメユッキーを愛でる会』の会員に拡散される。そうなれば、確実に『ダメダメユッキーを愛でる会』全員の自主的な協力が約束されることだろう。彼らは忍び寄る魔の手から白雪を守ろうと、様々な方面から全力を尽くしてくれるだろう。

 

 いくら正体不明の誘拐魔:魔剣(デュランダル)といえど、総勢何百人もの熱狂的な白雪信者のぎらついた監視の目をくぐって誘拐対象:白雪を手に入れようとするのは、例え超能力(ステルス)を最大限駆使したとしても至難の業に違いない。そう考えた上でのキンジの作戦である。

 

「……なるほどな。了解。『ダメダメユッキーを愛でる会』の古参メンバーとして、全力を尽くす……」

「そうか。そう言ってくれると心強いよ」

 

 『ダメダメユッキーを愛でる会』の会員ナンバー003の武藤はキンジを見つめて力強くうなずくと、キンジに背を向けて颯爽と去っていく。どうやらキンジの思惑通りに武藤は動いてくれるようだ。「……まずは監視カメラ。どれくらい調達したものか……」などとブツブツ言いながら去っていく武藤に、キンジは「頑張れー」と軽く声を掛けておいた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 今回のユッキー護衛任務にあたって、ユッキーはしばらく俺とアリアの住まう男子寮に滞在することとなった。本当なら護衛される側のユッキーの部屋の方がいいのだろうが、俺もアリアもあまりユッキーの部屋の勝手を知らない上にユッキーの部屋は基本的に色々とモノが散乱している。ゆえに。ユッキーは彼女自身も勝手知ったる俺の部屋で生活することになったのである。

 

「……来ないな」

 

 午後六時。茜色の夕日が辺り一帯をオレンジ一色に照らす中、キンジは男子寮の前で、腕時計を見つつ白雪の到着を待つ。しかし。一向に当の白雪が現れる気配はない。やけに重そうな段ボール箱を両手いっぱいに抱え込み、必死に男子寮へと運んでいる若い宅配業者がキンジの隣を通り過ぎていくのをしり目に、キンジは首を傾げる。

 

 綴先生の個室に集結した俺、アリア、ユッキーの三人の解散の際、夕暮れ頃に男子寮に来るとユッキーは俺たちに言っていた。ユッキーの護衛任務を請け負う身としては、こんな所でユッキーの到着を待っているのではなく、ユッキーと行動を共にして一緒に男子寮まで向かうべきなのだろう。だが。ユッキーには何やらどうしても誰にも知られたくない用事があったらしく、俺やアリアがついてくるのを嫌がっていた。その用事が校内や女子寮内で済むものだというユッキーの主張もあり、俺は彼女の単独行動を容認したのだ。

 

「電池切れてるし……」

 

 一度白雪と連絡を取ろうとして、そこで初めて携帯の充電が切れていることに気づいたキンジは一旦、部屋に戻ることにした。ちゃんと充電しないとなぁと内心で嘆息しつつ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 部屋に戻った時、まず最初にキンジの視界に映ったのは、なぜか異様に存在感のある段ボール箱。そして、その自己主張の激しい段ボール箱をどうしたものかといった目つきで見つめている割烹着&サイドテール姿のアリアだった。その近くに掃除機が置かれている辺り、アリアは白雪が来る前に一度部屋を綺麗にしようと掃除に精を出していたようだ。それにしても、ホームズ家の貴族様にしては、実に割烹着姿が様になってるな。というか、武偵高の防弾制服以上に着こなしてるように見えるんだけど。

 

(――って、現実逃避してる場合じゃないか……)

「……アリア。それ、何だ?」

「いえ、何だと言われましても……それ、キンジがネットショッピングとかで購入したものではないのですか?」

「いやいや。誰がこんな怪しさ満載の異様なモノ買うかよ。それに、俺がそもそもあんまりネットショッピングとかしない性質だってこと、知ってるだろ?」

「まぁ、知ってますけど……」

 

 恐る恐る異彩を放つ段ボール箱を指差してキンジに疑惑の眼差しを向けてくるアリアに、キンジはブンブンと首を振って否定する。と、その時。ゴトッと、一瞬だけ段ボール箱が動いた。確かに、段ボール箱の中から何か固いものを落としたような音が響いた。

 

「……まぁ、この段ボール箱のことはしばらく置いておきましょう」

「……あぁ、そうだな。うん、それがいい」

 

 触らぬ神に祟りなしということで、速攻で眼前の段ボール箱を華麗にスルーすることに決めたキンジとアリア。この辺の意見の一致が、二人がパートナーとしてしっかりと機能している所以の一因であろう。

 

「ところで、ユッキーさんはどうしたのですか? 姿が見えませんが?」

「それが待ち合わせ場所に来なくてな。俺の携帯の充電も切れてたから、充電しつつユッキーと連絡を取ろうかと――」

 

 右手を腰に当てつつキンジの後ろを覗き込むアリアに、キンジはため息混じりの言葉を吐く。と、そこで。キンジはふと相変わらず異様な存在感を放ち続ける段ボール箱へと視線を移す。今しがた無視すると決めたばかりの怪しげなオーラを滲ませている段ボール箱へと目を向ける。目の前の怪しさ満載の段ボール箱は割と大きい。体を少し丸めれば、小柄な人の一人くらいは余裕で入れる大きさだ。もしかしたら、もしかするかもしれない。

 

「……」

「いやいや、キンジ? ちょっと待ってください。いくら救いようがないほどにめんどくさがり屋のユッキーさんでもさすがにそれはないのではないでしょうか?」

「……」

 

 アリアはキンジの沈黙から彼の思考を読み取ったのか、不用意にも異質な存在感を持つ段ボール箱へと近寄っていくキンジを止めようと声をあげる。しかし。キンジはアリアの問いかけを無視してやけに存在感を醸しだす段ボール箱のガムテープをはがす。そして。キンジはゴクリと唾を飲み込むと、意を決して段ボール箱を一息に開けた。

 

「めりぃー、くりすまーす!」

 

 すると。中から勢いよく、今回の護衛対象たる白雪が飛び出してきた。その際、白雪は複数のクラッカーを一気に鳴らし、パンパパパンと部屋に乾いた破裂音を響かせる。

 

「「……」」

 

 自身の予想の斜め上を行く白雪の言動にキンジとアリアは絶句し、その場に立ち尽くす。そんな二人の上空からカラフルな紙吹雪がヒラヒラと降り注ぐ様は、もしもこの場に第三者がいたならば、果てしなくシュール(あるいはカオス)なシーンだと感じたことだろう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……まさか荷物として送られてくるとは思わなかったぞ、ユッキー」

 

 ひとまず、スッと異様さの消え去った段ボール箱をアリアの小太刀で解体して中の白雪を回収した後。キンジとアリアはテーブルを挟んで白雪と相対する。二人がジトーとした目線を白雪に向けているのに対し、白雪はどこか爛々とした視線で二人を見やっている。

 

「えへへ~、びっくりした? びっくりした?」

「あぁ、驚いた」

「はい。色々な意味でびっくりしました」

「わーい、ドッキリ大成功!」

 

 段ボール箱から飛び出すタイミングを見計らっていたらしい白雪は嬉々とした表情で感想を尋ねてくる。キンジとアリアが呆れを存分に含んだ声音で白雪の問いに答えると、白雪は二人の反応に嬉しそうに目を細め、どこから取り出したのか、『大成功』と赤文字で書かれたプラカードを見せつけてくる。どうやらさっきのゴトッという音はこれを床に落とした時の音のようだ。

 

「で、一応聞くけど、ユッキーの用事って――」

「うん! 段ボール箱調達して、衣装選んで、包装して、宅配業者の人呼んでたの!」

「やっぱりそうだったか……」

「何をやってるのですか、ユッキーさん……」

 

 エッヘンと言わんばかりに胸を張る白雪を前にキンジとアリアはそろって嘆息する。いつもダラダラとした怠惰生活を営んでいる白雪が珍しく精力的に行動していたこと自体は嬉しいのだが、そのやる気をもう少しまともな方向へと向けてほしいと切に願うキンジだった。

 

「あー、うん。その衣装、似合ってるぞ。良いセンスしてるな、ユッキー」

「ッ! やっぱりそう思う!?」

「あぁ。思う思う」

「キンちゃん……!」

 

 と、そこで。どこか物欲しそうな視線を向ける白雪の様子から、白雪が今現在欲している言葉を察したキンジはとっさに白雪の衣服を褒める。キンジの褒め言葉(※棒読み)に反応してズズイと顔を近づけてきた白雪にキンジがテキトーに相槌を打つと、白雪は花が咲いたような満面な笑みを浮かべた。

 

 ちなみに。4月下旬のこの時期にも関わらず白雪がなぜかサンタクロースのコスプレをしていることに関して、キンジはサラリとスルーすることにした。

 

「……とまぁ、前置き話はこの辺にしといてと」

 

 自身の季節外れのコスプレ衣装(※本人に季節外れの自覚はない)をキンジに褒められて輝かしい笑顔を見せていた白雪だったが、ふとキリッとした表情へと顔を引き締めると、ごくごく自然な所作で椅子から立ち上がってそのまま床に正座する。もちろん、背筋をピンと伸ばすことも忘れない。

 

「ふつつかものですが、これからよろしくお願いします。キンちゃん、アーちゃん」

 

 そして。どこか優雅さを感じさせる声で、物腰の柔らかさを感じさせる声で、人間としての深みを感じさせる声で、白雪はゆっくりと頭を下げた。そのどこまでも違和感のない白雪の行為に、突如白雪が作り上げた何となしに神聖な雰囲気に、キンジとアリアは思わず飲み込まれそうになる。実際に飲み込まれなかったのは、白雪の服装がいつもの白と赤を基調とした巫女装束でなく場違い極まりないサンタクロースのコスプレ衣装だったことが大きかったりする。

 

 普段はやたら怠惰っぷりを見せつけている白雪もやっぱり星伽神社の巫女の一人なんだと、キンジが再認識させられた瞬間だった。

 

「あぁ。こっちこそよろしく、ユッキー」

「私の方こそ、よろしくお願いします、ユッキーさん」

 

 床に座り直して姿勢を改め、そして未だに深々と頭を下げ続ける白雪。キンジとアリアも見ようによっては土下座をしているように見えなくもない状態の白雪と視線を合わせるために、白雪に倣って正座をして軽く頭を下げる。が、しかし。二人の言葉が言い終わらない内に、白雪は頭を下げた体勢からポフンと床に寝そべった。

 

「……えーと、何やってんだ、ユッキー?」

「んぅ? えっとね、ちょっとシリアスな雰囲気をぶち壊そうと思って。私、あんまり堅苦しいのは苦手だから」

「ユッキーさん、そんな所で寝そべらないでください。だらしないですよ」

「えー。だって床ひんやりしてて気持ちいいよ?」

「そういう問題じゃありませんよ。寝転がるならせめてソファーかベッドでしてください……」

 

 先までのどこか巫女特有の神秘さを醸しだしていた白雪と今の白雪とのギャップにキンジとアリアは内心で閉口する。白雪の本職(星伽巫女)モードと怠惰(通常)モードとの知り替えの速さに感嘆するべきか、呆れるべきかは微妙な所だ。

 

「あ、キンちゃんも一緒にやってみる?」

「悪いが、遠慮しとく。俺はあんまり日中からゴロゴロするのは好きじゃないしな。……あ、でもアリアが興味あるってさ。先達として、存分に指南してやってくれ」

「ちょっ、キンジ!?」

 

 白雪から上目遣いの期待の眼差しを受けたキンジ。大抵の男なら一つ返事で白雪の誘いに乗ってしまうだろうが、白雪そのものにある程度慣れているキンジは軽く白雪の期待をへし折りにかかる。

 

 だが。いつもならあっさり退くはずの白雪が漆黒の瞳をキラリと光らせつつキンジを自身の領域に無理にでも誘い込もうと両手をワキャワキャさせていることに気づいたキンジは、ちゃっかりアリアを白雪への生贄に捧げて台所へと逃げることにしたのだった。スケープゴートにされた当のアリアの俺を貫かんばかりの非難の眼差しなんか感じない。感じないったら感じない。

 




キンジ→強襲科(アサルト)Sランクの第六感により、段ボール箱に警戒心を抱いた熱血キャラ。何かがあるとすぐさまアリアを生贄に捧げようとする悪癖がつきつつある。
アリア→ホームズとしての直感により、段ボール箱に警戒心を抱いた少女。武偵高の制服以上に割烹着姿が馴染みつつあるが、これでも一応貴族様。
白雪→宅配される形で男子寮にやって来た怠惰巫女。たまに季節感をガン無視する。稀に変な方向にやる気を出す。一応、巫女としての所作をマスターしている。長女だしね。

 ……何というか、ここのダルダルユッキーがハイテンションの時って、何だか雰囲気的に原作りこりんと似てる気がしますね。ええ。その辺意識して書いてるわけじゃないんですけどねぇ。


 ~おまけ(ネタ:もしも段ボール箱の中に入っていたのがユッキーじゃない何者かだったら)~

キンジ「……(←段ボール箱に近づきつつ)」
アリア「いやいや、キンジ? ちょっと待ってください。いくら救いようがないほどにめんどくさがり屋のユッキーさんでもさすがにそれはないのではないでしょうか?」
キンジ「……(←段ボール箱を開けて、中身を空けるキンジ)」
キンジ「…………」
アリア「キ、キンジ? どうしたのですか? なぜ固まってるのですか?」
キンジ「……(←無駄に洗練された無駄のない動きで段ボール箱を閉めて、ガムテープを貼り付けるキンジ)」
アリア「キンジ? 何をしているのですか?(←困惑顔で)」
キンジ「……(←きびきびとした動きで段ボール箱を両手で抱えてベランダへと移動し、東京湾へと段ボール箱を投げ捨てるキンジ)」
キンジ「……これで良し(←安堵の息を吐きつつ)」
アリア「え、キンジ? なぜそれを投げ捨てて――」
??「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaa――(←やたら野太い悲鳴)」
アリア「ちょっ!? 何かこの世のモノとは思えないほどの悲鳴が聞こえてきたんですけどッ!? 何を捨てたんですか、キンジ!?」
キンジ「……アリア。聞いてくれるな。世の中にはな、絶対に知ってはいけないことがあるんだ。俺はもう手遅れだけど、頼むから、アリアだけは綺麗なままでいてくれ(←目を瞑って天を仰ぎつつ)」
アリア「何を見たのですか、キンジ!? 一体、あの段ボール箱に何が入っていたのですか!? 気になって気になってしょうがないんですけど!? このままじゃ夜眠れそうにないんですけど!?(←キンジの両肩を掴んでガクガクと揺さぶりつつ)」

 結局。いくらアリアが段ボール箱の中身について問いただそうとしても、キンジが段ボール箱の中身について話すことは終ぞなかったのだそうだ。

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