【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。今回の話は若干笑い要素控えめです。さらにあとがきが素晴らしくカオスなことになっています。深夜のテンションで執筆した影響で凄まじいことになっています。そろそろ私の頭をどっかで本格的に調べた方がいいような気がしてきましたよ。はい。

 とりあえず、今回は原作1巻との矛盾があまりにも酷くならないように頑張ってみましたが……さて、どうなることやら。登場人物たちの性格が既に矛盾じゃね? といった疑問は華麗にスルーしてくれると助かります。



15.熱血キンジと理子の思惑

 

「で、理子。お前が武偵殺しで間違いないんだな?」

「え、えと……うん。間違ってはいない」

 

 ANA600便内の客室にて。キンジとアリアが理子との邂逅を仕切り直した後、キンジが理子に確認を取ると、鼻に絆創膏をしている理子は曖昧に肯定した。キンジとアリアは拳銃をしっかりと握って黒を基調としたキャビンアテンダント姿の理子の一挙手一投足に注意を向けているのだが、ついさっきコックピットで繰り広げられた鉢合わせの影響で場を包む雰囲気はどこか緊張感に欠けている。どこかほわほわしている。武偵と犯罪者が向かい合っているにも関わらず、どこかほんわかとした緩やかな空気が流れている。

 

 ちなみに。先ほど理子が盾として使用した機長&副機長は理子の手によって隣の空いている客室のベッドにしっかりと寝かせてある。良い夢を見ていてほしいものだ。何を思ったのか、理子が機長と副機長を同じベッドに寝かしたように見えたのは気のせいだろう。というか、気のせいだ。気のせいに違いない。そう思い込まないと精神的にやってられない。薔薇の花を咲かす機長と副機長の姿を脳裏に浮かべてしまったキンジはブンブンと頭を左右に振って脳内映像(ボイス付き)を振り払った。

 

「……何とも気になる言い回しですね。それはどういう意味ですか?」

「ボクは人殺しなんて一度もやったことないよ。なのに噂が勝手に一人歩きしちゃったんだよね。人殺しなんて相手に祟られそうなこと進んでするワケないじゃん」

「デタラメ言うのは止めてくれませんか、峰さん? 実際に以前峰さんが仕掛けたバイクジャックとカージャックで死者は何人も出ていますよ?」

「ホ、ホントだって! 神崎さん! ボクがやったのはあくまで人材の引き抜きだよ。あの人のお眼鏡に叶った、将来思いっきり化けそうな、ポテンシャルを秘めてる武偵をイ・ウーに勧誘するのがボクの仕事なんだよ。だから、武偵殺しって言うよりは武偵攫いって言った方が正解かな? それともヘッドハンティング☆理子りん? あ、でも別に経営者を引き抜いてるワケじゃないから武偵ハンティング☆理子りん? 青田買い☆理子りん? んぅ~。……まぁ、その武偵を引き抜く際にその人を死んだことにしてるから武偵殺しって言われてもあながち間違いじゃないんだけどね」

 

 アリアが疑念を存分にこめた視線をぶつけると、理子はワタワタと両手を駆使したジェスチャーを多用しながら弁明の言葉を重ねる。アリアの人を射殺さんばかりの鋭い視線は武偵殺し:峰理子から情報を吐かせるのに効果テキメンだったようだ。アリアに向けて釈明をしていた理子は途中で武偵殺しに代わる、自身のことを正確に表現する言葉を探し始める。目を瞑り、腕を組み、首を傾げ、眉を潜めて、ブツブツとアイディアを次々と口に出していく。

 

 今なら簡単に理子を捕らえられるような気がしたキンジだったが、寸での所で踏みとどまることに成功した。理由としては武偵殺し:峰理子の実力を未だ把握しきれていない所にある。キンジには今の理子が一見隙だらけに見えて隙がないように感じられて仕方がないのだ。いや、敢えて自分から隙を作って誘い込もうとしているように思えるといった方が正解か。

 

 今は理子の意図を知る方が先決だ。理子が躊躇いなく色々と話しているうちにできるだけ多くの情報を入手した方が賢明だろう。今仕掛けるのは時期尚早だ。そう結論づけたキンジは慎重に言葉を選んで理子へと疑問を投げかけることにした。

 

「じゃあ理子。なんでわざわざアリアにハイジャックの予告なんかしたんだ? 挑戦状を突きつけるような真似したんだ?」

「それはね。ボクがボクだからだよ。ボクが本当の意味でボクになるために必要なことだからだよ、遠山くん」

「「?」」

「ボ、ボクの名前はね、峰理子リュピャいッ!?」

 

 理子は胸に手を当ててキンジとアリアにあたかも子供に言い聞かせるように動機を告げるも、理子の抽象的な言い回しに二人は揃って首を傾げる。理子は頭に疑問符を浮かべるキンジ&アリアを見やると、一度深呼吸をして核心に迫る一言を告げようとして――思いっきり舌を噛んだ。

 

「うぅ~。舌かんだぁ」

「あー。とりあえず落ち着け、理子。言いたいことがあるならゆっくりと言え」

「う、うん。ありがと、遠山くん」

 

 ただでさえほわほわしている場の空気がさらに何とも言えないゆるゆるしたものに変化する中、見ていられなくなったキンジが頬を掻きつつ理子に気遣いの言葉を掛けると、理子は弾かれたようにキンジにペコペコと頭を下げる。よほど舌を噛んだのが痛かったのだろう、理子は涙目になっている。とてもSランク武偵と武偵殺し間とのやり取りだとは思えない。実際、キンジと理子とのやり取りを前にアリアは「こんなのが武偵殺しだなんて……」と頭を抱えてうめいている。

 

「……コホン。ボクの名は峰理子リュパン四世。世紀の大怪盗、アリュセーリュ・リュピャンの正真正銘のひ孫だよ」

「……は?」

「……え?」

 

 目じりに滲んだ涙を指で拭った理子は仕切り直しだと言わんばかりに一つ咳払いをした後、キリッとした瞳で自身の秘密を暴露する。理子が告げたまさかの真実にキンジとアリアは今度こそ驚愕に固まった。第三者から見れば、今のキンジとアリアの目が点になっている様子が如実にわかったことだろう。そのせいか、理子が自身の祖先の名前を上手く言えなかったことに気づいた者はいなかった。

 

「こ、ここまで言えば後は大体わかるよね? ボクの狙いは最初から君だよ。神崎さん。いいや、オリュメスさん」

「ッ!? ……正直言って、貴女がそれを知っているとは思いませんでしたよ」

 

 オリュメス。理子にそう呼ばれたアリアの真紅の瞳が見開かれる。キンジはアリアの様子をしり目に『双剣双銃(カドラ)のアリア』みたく『オリュメスのアリア』とも呼ばれているのだろうか、そもそもオリュメスって何を表す言葉なのだろうかと考えを巡らせる。もちろん、アリアと理子との会話に耳を傾けることも忘れない。

 

「というか、私はオリュメスではなくオルメスなのですが――」

「百年前。ボクのひいお爺ちゃんとオリュメスさんのひいお爺ちゃん&彼の優秀なパートナーとの対決は引き分けに終わった。だから。アリュセーリュ・リュピャンのひ孫のボクが初代オリュメスさんのひ孫とそのパートナーを倒せば、ボクはひいお爺ちゃんを超えたと証明できる。ボクは有能だって証明できる」

 

 アリアは理子にオルメスと呼ぶよう要求するも、理子はアリアの言葉を遮って話を進める。どうやらオリュメスではなくオルメスらしいのだが、理子はオリュメス呼びを止める気はないらしい。理子の平然とした様子から、ただオルメスの『ル』の部分が上手く言えないだけ&理子自身はちゃんと言えてると信じて疑っていないということも考えられるが。

 

「……なるほど。つまり貴方の目的はオルメスの血を継ぐ者とそのパートナーとの戦いに勝利すること、要は私とキンジと戦って勝利することですか。あと私はオルメスです。ちゃんと発音してください」

「う、うん。そういうことだよ。オリュメスさん」

「だから私はオルメスです!」

「うん。オリュメスさんだよね?」

「オ・ル・メ・スです!」

「え、えと……オリュメスさん?」

「~~~ッ!!」

 

 理子にどうしてもオルメスと言わせたいアリア。自分はちゃんとオルメスと言えていると思っているのだろう、どうしてアリアがオルメスという言葉を強調するのかわからないとでも言いたげに首をコテンと傾ける理子。

 

 アリアはあくまで自身のことをオリュメスと呼ぶ理子を半眼で見つめつつ、「……はぁ。もういいです」と陰鬱なため息を吐いた。アリアの脳裏で自身を『オリュメス』と呼び続ける理子の姿が自身を『アーちゃん』と呼び続ける白雪とダブって見えた瞬間だった。

 

「ま、待てよ、理子。お前がチャリジャックにバスジャックを仕掛けたんだよな? だったら。あれは何が目的だったんだ? 別に俺はイ・ウーに引き抜かれてないし、バスジャックに遭った連中も誰一人死んだことになんかなってないぞ? それに。俺たちと戦いたいのならわざわざハイジャック何て真似する必要ないだろ? 普通に武偵高で戦えばいい。誰かに見られるのが嫌なら場所を移せばいいだけの話だ。なのに、どうして――」

「えっと。あれはね、遠山くん。実を言うとあんまり意味はないんだ。チャリジャックはともかく、特にバスジャックの方はね。だって、チャリジャックの一件を終えた時点で君たち二人は上手いことくっついてくれたもん。そんなに意味がないのに殺そうとしちゃってごめんね。でも、あの人のお告げは色んな意味で絶対だから。意味がなくともやらないといけないこともあるってこと。――でも、今回のハイジャックの件は別だよ」

 

 理子の目的を知ったキンジが情報の整理を兼ねて理子に問いかけると、理子はキンジの疑問に嫌な顔一つせず丁寧に答えてくれた。だが。次の瞬間、普段のオドオドした理子からは想像もつかないような鋭い視線が二人に向けられる。言葉で表現するのならキッと二人を睨みつけたといった所だろう。いつものアタフタしていて人に敵意を全く見せない普段の理子とのあまりのギャップに二人は思わず後ずさりする。

 

「あの人のお告げのことを差し引いてもこれだけはどうしても実行する必要があったんだ。だって、そうしないと二人とも本気でボクと戦ってくれないでしょ? 半ば殺す気で、全力で戦ってくれないでしょ? ちゃんと本気だしてよね、二人とも。ボクに負けてから、あとであれは本気じゃなかったなんてふざけた言い訳は止めてよね。じゃないと、この飛行機――どこに落とすかわからないよ?」

「「――ッ!?」」

 

 先までとは打って変わって酷く底冷えするような理子の言葉にキンジとアリアは戦慄を覚えた。背筋に氷の柱を突っ込まれたかのようなゾワリとした感覚を感じていた。もはやこの場に先のふわふわした雰囲気など存在しない。

 

 理子の言い分を全面的に信じるとすれば理子は今までに殺人を犯していない。だが、今の豹変した理子は本気だ。俺とアリアが、いや、特に俺が知り合いだからという理由で理子相手に手加減して、そして理子に敗れるようなことがあれば、理子は躊躇いなくこの飛行機を墜落させるだろう。理子のハイライトの消え去った瞳からは、理子がともすれば市街地にANA600便を墜落させる可能性をも示唆していた。

 

「……やるしかなさそうだな」

「え、えと。やっと戦う気になってくれたみたいだね、遠山くん」

「あぁ。こっちは乗客全員の命を背負ってるみたいだからな。正直理子相手に戦うってのは気が引けるけど、安心しろ。じゃんけんから戦闘まで。俺は相手が誰だろうと勝負事で勝ちを譲るような真似はしない。どんな手段を使ってでも全力で勝ちをもぎ取る主義だ」

「そっか。そういえば遠山くんって勝利にこだわる人だったね。それなら大丈夫かな。神崎さんはともかく遠山くんは本気を出して戦ってくれないんじゃないかって心配してたけど、杞憂だったみたいだね」

 

 キンジは明確な敵意を漆黒の瞳に宿して、理子へと拳銃を向ける。キンジが自身への交戦の意思を明確に示したことに満足したのか、理子はホッと安堵のため息をつき「うんうん」と何度かうなずく。その声色は先までの人を本能的に畏怖させるものからいつもの特徴的なものへと変化していた。まるでさっきまでの理子が嘘みたいだ。

 

「ボクは今から君たちを倒す。一人で本気の君たちを倒す。そして。二人を倒して、ひいお爺ちゃんを超えて、ボクはボクになる! 自由になる! 幸せになる! リコリーヌ・ヴィ・ガルランディ……じゃなくて! 峰理子になる! 人間になるんだ! いや、なってみせる! ついでに君たちが壊したボクのセグウェイ計38台、オープンカー26台、全額50億円強の恨みを晴らしてやる! お金の恨みは怖ろしいってことを思い知らせてやる! 弔い合戦だぁぁぁあああああああああ!!」

 

 理子は光の戻った瞳でしっかりとキンジとアリアを見据える。そして。スッと前に出した右手を握りしめて高らかに宣言すると、アリアと同じく二丁の拳銃を取り出し雄叫びを上げながら二人へと襲いかかった。チャリジャック、バイクジャックを経て臨時収入の8割を喪失した理子の場違い極まりない魂の叫びは客室によく響いた。

 

 舞台はANA600便。現時刻は午後7時30分。今ここにおいて、強襲科(アサルト)Sランク武偵二名とイ・ウー構成員が一人:武偵殺しとの戦いの火蓋が切って落とされたのであった。

 




キンジ→ビビ理子と裏ビビ理子とのギャップに内心で「えぇぇ」となった熱血キャラ。
アリア→ちゃんとオルメスって呼ばれたいのに理子にオリュメスと言われ続けることに内心で「うがああああああああ!!」ってなってる子。
理子→ジャンヌの厨二チックなネーミングセンスの影響を少々受けている子。自身のご先祖様の名前が上手く言えない。時たま『ラ行(人名)』が上手く言えなくなる(自覚なし)。大枚はたいて買ったセグウェイ&ルノーコレクションを全滅させられたことにご立腹だったりする。八つ当たりなのはご愛嬌。
裏理子→理子のハッタリ人格。所詮、演技。卓逸した変声技術で中空知さんの尋問時の声を模倣して言葉を放つ。また、優れた変装技術の一環で瞳からハイライトを消し、俗に言うレイプ目を意識的に再現している。元々、理子が痴漢男を恐れおののかせ撃退するためにジャンヌが考案した人格だったりする。理子に手を出そうとした不埒者を恐怖で腰を抜かせて確実に警察行きにさせるのがジャンヌの目的。尤も、普段の性格がビビりなので裏理子になること自体がかなりのレアケース&裏理子状態でいる時間が非常に短い。

 というか、ちょっと待って。裏ビビりこりん怖い。演技だって設定あってもマジで怖いんですけど!? 今までのビビりこりんとのギャップが凄まじいんですけど!? いや、当初は裏ビビりこりんはただ強がってるだけのかわいい女の子に見えるように描写しようと思っていたのに、どうしてこうなったッ!?

~おまけ(突発的ネタ ※カオス注意)~

 一方その頃。女子寮にて。

白雪「……(ジィー)」
テレビ『わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー』
白雪「……か、かわいい(震え声)」
テレビ『わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー』
白雪「わ、わんわんおーわんわんおーわんわんわんおーわんわんおー、わんわん――(小声で口ずさむ)」

 星伽白雪は今週から放送開始となったとある犬アニメにハマっていた。ちなみに今テレビから流れているのは登場キャラである犬たちが歌う洗脳系オープニングだったりする。


 ふぁもにか恒例(?)、荒ぶるおまけ。性格改変の影響で原作2巻まで全然出番がないであろうユッキーが登場してきました。ユッキーは犬派なのです。ええ。

※『わんわんおー』→今期から放送開始の犬アニメ。主人公:チワワッフルと個性豊かで愉快な犬たちによる心温まるストーリー。犬好きにはたまらないアニメ。

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