【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

145 / 147

 どうも、今更ですが、皆さんはこの割とガバガバ設定な番外編でちゃんとワクワクドキドキできていますか? 大丈夫ですか? とりあえずワクワクドキドキが『窪苦窪躯恕飢恕危』になっていないことを願いつつ、EX12、スタートです。



EX12.ワクワクドキドキ☆寮取り合戦(12)

 

 ――15:00

 

 

 それぞれ全長30メートルを誇る『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の巨大ロボットと皇帝ペンギン型の巨大ロボットとの前代未聞なギガントロボット大戦、あるいは怪獣大戦争は、その始まりから既に約1時間もの時が経過していた。『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の操縦を担当する平賀文と皇帝ペンギン型の操縦を担当する市橋晃平はそれはもう頻繁に場所を移しながら絶えることのない激戦をただただ繰り広げ続けていた。

 

 

『ペェェエエエエエエエエエエエエエエングィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!』

『ホモォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

「ひ、ひぇぇえええええええええ! こっち来たぞぉぉおおおおおおおおお!!」

「叫んでないで早く逃げるわよ! あんなのに踏み潰されたらひとたまりもないわッ!」

「逃げるんだよぉぉおおおおおお! どいたどいたぁぁあああああああ――ッ!!」

 

 巨大ロボット2体による対決を前に、全長2メートルにも満たない武偵にできることなど限りなくゼロである。それゆえに、割と頻繁に場所を移して戦うはた迷惑な巨大ロボット2体の接近に気づくや否や、ほぼ全ての武偵が退散していく。例え撃破ポイント目当てで戦っていようと、闇組織同士の抗争が行われていようと、巨大ロボットという抗いようのない一種の災害のようなものを前にした時、武偵たちは蜘蛛の子を散らすように全力逃走していく。時には、勇猛と無謀とを履き違えてロボットを退治せんと立ち向かってきたアホ武偵もいたが、彼らの結末については地の文で描写するまでもないだろう。

 

 

(ま、こんなバカでかいのが近づいて来たらそりゃあ逃げるわな。わしだって逃げる。……それにしても、まさかこの巨大ロボットの操作をわしがやっているとは誰も思うまい)

 

 そんな中。皇帝ペンギン型の巨大ロボットの操縦席にて。若白髪の目立つ黒い短髪が特徴的こと市橋は、自身が操る巨大皇帝ペンギンの二本足でうっかり武偵をプッチンと下敷きにしてしまわないように足元に細心の注意を払いつつ、巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の出方を伺っていく。

 

 市橋と対戦中の平賀も同じような心持ちらしく、平賀もまた巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の四本足の踏みつけ被害に武偵が遭わないように気をつけているので、本当ならそこまで一目散にこの2体の巨大ロボットから逃げる必要はない。

 

 だが、マシンガンの銃口を向け引き金を今すぐにでも引ける状態にしている人が「私は君に危害を加えるつもりはない! 安心するんだ!」などと爽やかに宣言した所で逃げたくなるのと同様に、巨大ロボットから逃げたくなるのは常識的に考えて無理からぬことなのである。

 

 

『ホモォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

(にしてもあのホモォ、いくらなんでも怖すぎるだろ。どうして平賀はここまで人の恐怖を煽り立てるような設計方針にしたんだ?)

 

 結構な頻度で威嚇の叫び声を上げる巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』に市橋が改めて恐怖を感じ、同時に平賀のロボット製作方針に疑問を抱いた時。唐突に『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の巨大ロボットがピタリとその場に制止した。「お、動きが止まった」と、市橋が様子見のために皇帝ペンギン型の巨大ロボットの動きを停止させると、『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の口からニュッと巨大メガホンが飛び出て、そこから市橋へ向けて声が発せられた。

 

 

『ふふふ、今更ながら確認させてもらうけど、そのペンギン型ロボットに乗っているのは武藤くんで合ってるよね?』

『む?』

『って、聞くまでもないか。その巨大ロボットを作って、きちんと操作できる東京武偵高の生徒は私を除けば武藤くんしかいないしね、なのだ』

(……何か唐突に平賀が語り始めたんだが、わしはどうすればいいんだ? わしは空気読みにそんなにスキル振ってないから人の機微はよくわからんぞ?)

『ずっと、ずっと機会を待っていた。私が武藤くんよりも上だと証明できる機会を待っていた。私がどれだけ力作を作って見せびらかせても武藤くんは飄々としてるだけで、余裕の表情を崩さない。私のことなんて眼中になくて、まるで私の作品なんていつでも超えられると言わんばかりの態度を崩さない。……私は、武藤くんに負けてない。絶対負けてないんだ。私は武藤くんよりも天才なんだ。だから、私は今日を待ちわびてたんだ。――今日! 私は! 武藤くんを越える! 武藤くんを越えて、私の方が優れた技術者だってことを証明してみせる! 今日こそ武藤くんのその澄ました顔に敗北を刻み込んでみせる! 覚悟するのだぁぁああああああああ――!』

『……悪いが、このロボットに乗っておるのは武藤ではない。わしじゃ』

『え、誰!?』

『わしは市橋晃平。しがない一武偵じゃ。残念ながら、お前のお望みの武藤は今、別行動を取っている。わしにこの武藤作のロボットの操縦を託してな』

『な、そんな……!? それじゃあその素朴なペンギンロボットを倒しても、私が武藤くんを越えた証明にならないじゃん!? これじゃあ意味がないのに……!』

『……ふむ』

 

 平賀の切羽詰まったような声を前にして、市橋は心底意外そうに目を細める。市橋と平賀とはほとんど関係はない。ただビジネスライクに、時たま市橋が平賀に武器の調整や修理を頼むことがある程度だ。そして、市橋にとっての平賀の印象はただのお調子者だった。精神年齢が習熟していないがゆえに、やりたいことをただやりたいようにやる。漫画家と武偵を両立しつつ、周囲のことなど何も考えずに、自分さえ良ければそれでいいと遊びまくる。そのような印象だった。

 

 だが、それはあくまで平賀の一面に過ぎず。平賀も普通に高校生だった。他者を気にして、武藤を勝手にライバル視していて、案外年相応の感情を抱えて生きていた。それならば、と。その平賀の本心を聞いた市橋は気まぐれながら決めた。先輩らしいことをやってやろうと。

 

 

『今まで個人的にお前には灸を据えてやろうと考えていたのだが、今の言葉を聞いて少し気が変わった』

『へ?』

『今のお前はどこか自分を追いつめているようだからな。まずはお前のロボを完膚なきまでに倒した後、お前を教え導いてやる』

『――今のは頭に来たよ。舐めないでよね、私のロボは負けるわけない。武藤くんが操縦してないロボに、シャーちゃんの知識と私の英知を詰め込んだ最高の『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』ロボが負けるなんてあり得ないのだぁぁああああああああああああああああ!!』

 

 市橋の、相手からすれば上から目線の宣言と思われても仕方のない発言に案の定平賀は激怒したため、言葉によるやり取りはこれにて終了する。まず最初に仕掛けたのはやはり平賀。平賀は巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の口の中に巨大メガホンを仕舞うと、目一杯巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の口を開かせる。その口の奥からキラリと一筋の光が見えた瞬間、市橋は巨大皇帝ペンギンでびょいーんと空高くジャンプしていた。

 

 

(あっぶなッ!?)

 

 市橋は眼下に目をやり、『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の口から発射された青白いレーザービームに冷や汗を流す。もしも自分がジャンプという選択をしていなかったら、皇帝ペンギン型の巨大ロボットの腹部が大きくくり抜かれ、操縦席の自分も確実に無事では済まなかったことが容易に読み取れるからだ。

 

 だが。巨大『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』がとんでもない兵器を抱えていたことが発覚した所で、市橋の気持ちが退くことはない。市橋はレーザービームの射出が終了した直後に『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の目の前にズガンと着地し、ギュイイイイインとドリル型に変形させた左手で『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の顔面を殴りつけようとする。

 

 しかし。まともに命中すれば『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』に甚大なダメージをお見舞いできたであろう巨大皇帝ペンギンのドリルははたして届かなかった。なぜなら。ホモォの口からシュイッと妙に歯並びの良い白の輝きに満ちた歯が表れ、巨大皇帝ペンギンの左手ドリルをバリバリ噛み砕いてみせたからだ。

 

 

「いいッ!? ウソだろ!?」

『ショタァァァアアアアアアアアアアアア!! ロリィィィイイイイイイイイイイイイイ!! ペドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! ユリィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

「待て待て待て!? こいつさっきまでホモホモ言ってたくせに実はどのネタでも結構いける系かよ!? こいつの趣味嗜好はどうなってるんだ!?」

 

 左手のドリルの消失に市橋は動揺しつつも一時的にバックステップを選択し、巨大皇帝ペンギンがさらなる『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』からの手痛い反撃に晒されないように距離を取る。

 

 すると、そのような市橋の対応など想定通りと言わんばかりに、『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』の白い饅頭のような中心部の背部装甲がシュカカカといくつも開き、ひゅるるると十数ものミサイルが旅立ち、巨大皇帝ペンギンへと襲いかかることとなった。様々な変則的軌道を描きつつもその全てが巨大皇帝ペンギンへと収束していく様から、このミサイルが追尾式だと悟った市橋は、全ミサイルを事前に破壊し、巨大皇帝ペンギンに被害が生じないように対処することが不可能だと悟り、はたして全ミサイルが巨大皇帝ペンギンへと着弾した。

 

 

(これで私の勝ち……!)

 

 平賀は心から勝利を確信した。ミサイルは確かに全弾命中したことをこの目で確かに確認した平賀は、自分が勝ったという事実に一瞬だけ安堵したものの、すぐに当然だと思い直した。いくら相手が武藤製の巨大ロボットだとしても、搭乗者は所詮一般人。ゆえに、天才の頭脳を持つ自分が繰り出す神のごとき戦略の前に叶うはずがなかったのだと平賀は自己完結した。それだけに。

 

 

「えぇッ!?」

 

 平賀は驚愕した。数多くのミサイルが一斉に巨大皇帝ペンギンに直撃したことで生じた土煙が晴れた時。平賀は信じられないものを見たと言わんばかりに目を見開いた。無理もない。何せ、操縦席の平賀へ『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』が見た光景を届けるモニターには、全身をピンク色に染め、額の部分にオレンジ色の炎を宿し、背後にこの世のものとは思えない赤黒いオーラを纏った巨大皇帝ペンギンが無傷で鎮座していたのだから。

 

 市橋が一体何をしたのか。答えは単純である。武藤が市橋に託したこの皇帝ペンギン型の巨大ロボットには4つの必殺技:『ギア2』『神気合一』『超死ぬ気モード』『妊娠できない体にしちゃうキック』が登録されている。市橋はその必殺技の内、巨大皇帝ペンギンの性能を大幅に跳ね上げることのできる『ギア2』『神気合一』『超死ぬ気モード』を同時に発動させたのだ。ゆえに、巨大皇帝ペンギンのスペックは一気にインフレし、ミサイルごときでは傷一つ与えられない装甲を保持することとなったのである。

 

 

『さて、後輩。今からカウンセリング(圧倒的武力制圧)を始めようか』

 

 未だ事態を呑み込みきっていない平賀へ向けて、市橋が改めて宣言する。かくして。現時点で1時間を超えて続いていた巨大ロボット同士の激闘が第二フェイズへと移行するのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ――15:05

 

 

 天井が一部崩壊したり床や壁が氷漬けにされたりともはや散々なことになっている体育館にて。自作のとんでも兵器を次々持ち出す武藤と念動力を用いたワイヤーを張り巡らせる中空知とが一進一退の攻防を繰り広げる傍ら。不知火とジャンヌとの戦いは今まさに決着がつこうとしていた。

 

 

「ゲホッ、コホッ!?」

「これで仕舞いだな、ジャンヌ」

 

 体育館の壁を背にし、お腹を手で押さえた状態で座り込み、苦悶の表情を浮かべるジャンヌ。そのジャンヌの体に銃口を向ける不知火。ジャンヌと不知火との戦いは不知火の勝利に終わろうとしていた。なぜジャンヌがここまで追い込まれているのかというと、偏に武藤の援護の賜物である。

 

 あの時。武藤が擬似イロカネを利用して中空知の髪を操作し、中空知の両手を縛り上げていた時。武藤は同時並行でジャンヌの銀髪をも操作し、ジャンヌの首をキリキリと絞めていたのだ。

 

 唐突に自分の髪の毛で首を絞められるという謎現象に襲われたジャンヌは軽く想定外な出来事に一時は動転する。だが、その後速やかにジャンヌは自身の髪に雷の超能力を通し、武藤による髪支配を断ち切ってみせる。しかし、この時。ジャンヌは己の髪に気を取られすぎたため、「ウラァ!」と不知火の繰り出す強力な蹴りの存在に気づけなかったのである。

 

 結果。ジャンヌは不知火に蹴り飛ばされ、その勢いで体育館の壁に体を叩きつけられ、不知火の蹴撃のあまりの強烈さに思わず咳き込み、不知火が自身に接近し銃を突きつけられるだけの隙を晒してしまったというわけである。

 

 

「こんな形で勝っても何も嬉しくはねぇが、四の五の言ってられねぇか。恨むなら2対2の構図になっちまったことを恨むんだな、ジャンヌ」

「くッ……」

 

 不知火はこれ以上何も言うことはないと、銃の引き金に人差し指をかける。ジャンヌは不知火に悟られないようにこっそりと中空知の様子を盗み見てみるも、当の中空知は武藤の相手に集中しており、ジャンヌの方を気にかけるほどの余裕はないようであった。

 

 

(……ここまでか。すまない)

 

 ジャンヌは抵抗するという手段を捨てて、素直に目を瞑り、心の中で謝罪する。謝罪の対象は、自分が油断していたばっかりに守れなかった、自分を慕って付き従ってくれた女子テニス部の後輩武偵たち。そして、ルームメイトの中空知美咲。彼女たちに向けて謝罪の念を抱きつつジャンヌは撃破を覚悟したが――天はまだジャンヌを見捨ててはいなかった。

 

 

「させない!」

 

 突如、横合いから不知火の顔面目がけて放たれた銃弾。不知火が「うぉッ!?」と咄嗟に銃弾をさけつつ、銃弾の発射方向へと目を向けると、そこには計7名の女子武偵が各々武器を構えて不知火への敵意を前面に表出させていた。そして。先ほど半ば不知火を殺す気で不知火の頭部目がけて発砲した女子武偵が不知火へとさらに2、3発発砲し、不知火が銃弾を避けるためにジャンヌから距離を取った隙に、女子武偵たちはジャンヌの元へ駆け寄った。

 

 

「ジャンヌ様、大丈夫ですか!?」

「ジャンヌ様、苦しそうです。何て痛ましい……」

「ジャンヌ様をこんなに痛めつけるなんて、許せない!」

「貴様ら、どうしてここに――」

「ジャンヌ様に危機が迫っている時、それを瞬時に察知できないような者は『氷帝ジャンヌ一派』に所属していないのです!」

 

 ジャンヌが女子武偵の一人になぜこのタイミングで『氷帝ジャンヌ一派』が助っ人として登場できたのかを問いかけるも、当の女子武偵からは少々ピントのズレた答えが返ってくる。内心。そういうことを聞きたいんじゃないのだがと思っていたジャンヌだったが、今は些事を気にしている場合ではないとの考えの元、「要するに勘か。まぁいい、恩に着るぞ」と、感謝の意を表明しながらゆっくりと立ち上がった。

 

 

「……おい。どういうことだ、ジャンヌ。テメェの取り巻きはさっき全員俺が潰したはずだが?」

「残念ながら、あの時我が連れていたのは半分だ。もう半分のメンバーには別行動を取らせてたんだ。あまり我の都合に付き合わせていては、彼女たち自身が撃破ポイントを稼げず、彼女たちの住まう寮のクオリティが劣悪なものになりかねないからな」

 

 『氷帝ジャンヌ一派』が、がるるるるると獲物を見つけた肉食獣のごとく、目をギラリと光らせながら不知火を襲撃せんと構えている中。ジャンヌから『氷帝ジャンヌ一派』の事情を知った不知火は「チッ、また多数対一の構図に逆戻りかよ」と愚痴を零す。と、その時。

 

 

「不知火! 不知火じゃないか!?」

「こんな所で油を売っていたのか、お前!?」

「お前、『あやや先生の素晴らしさを全世界に広める連盟』略して『ASS』の仕事はどうした!? ちゃんと役割振っただろう!?」

「おい、あそこに『氷帝ジャンヌ一派』のリーダーがいるぞ! あれを潰せば、『ASS』はまた一つ、規模を拡大できる!」

「これでまた一つ姉御に貢献できるぜ、ヒャッハー!」

 

 不知火の背後からも援軍が現れる。そう、かつて平賀が作ったボストーク号の模型をプールに浮かべたり平賀の凄さをどこまでも褒め称える役を担っていた平賀の取り巻き勢は不知火へと接触しつつ、前方の『氷帝ジャンヌ一派』への全面攻勢の構えを見せる。

 

 が、『あやや先生の素晴らしさを全世界に広める連盟』に所属しつつも、組織内で寄り集まって他の組織を潰す姿勢を気に入らないと、当初割り振られていた役目を放棄していた不知火は「面倒なことになってきやがったな、クソッ……」と悪態をつくばかりだ。ところで、状況が大きく変化したのは何も不知火&ジャンヌサイドだけではない。

 

 

「見つけたぞ、同志武藤。『ダメダメユッキーを愛でる会』の会員ナンバー003はここにいたか。おい、テメェら! 同志武藤に助太刀するぜ!」

「「「「「おお!」」」」」

「させない! 『美咲お姉さまに踏まれ隊』一同、フォーメーションγ! その身を盾に、美咲お姉さまを守るのです!」

「「「「「応!」」」」」

 

 『ダメダメユッキーを愛でる会』の会員ナンバー002の砂原杙杵(くいしょ)が、『美咲お姉さまに踏まれ隊』の隊長の衣咲命が、大切な対象を守るために、それぞれ武藤と中空知の横に一列に勢ぞろいする。否、彼らのような、武藤や中空知の味方な存在だけではない。

 

 

「えー、いましたね。あそこに『ダメダメユッキーを愛でる会』幹部、砂原と武藤がいますね。えー、奴ら二人を撃破すればですね。えー、『ダメダメユッキーを愛でる会』は崩壊するも同然です。ではでは皆さん、全ては『ビビりこりん真教』のため、やっちゃいましょう!」

「「「「「イェア!」」」」」

「ほう、これはこれは思ったよりも色んな方々が集結しているようですね。皆さん、ここが正念場ですよ。ここで一人でも多くの者をタコ殴りにして、『アリアさま人気向上委員会』の組織基盤を盤石なものとするのです!」

「「「「「イェッサー!」」」」」

「我は『クロメーテル護新教』の教祖代理、安久亜(あくあ)泰難(たいむず)。教祖、小早川先輩の代わりに規模拡大を望む者。さぁ、者ども、戦を始めようぞ」

「「「「「押忍ッ!」」」」」

「私は『擬人化した得物について語ろうの会』の会長代理の代理、ベレッタです。皆、今が最初で最後の好機。しっかり掴んで全ての擬人化した得物たちの市民権を獲得していきましょう!」

「「「「「ヤッフゥゥゥウウウウウウウウウ!」」」」」

「私は『百合の花を育て上げる会』の会長代理、佐々木志乃です。どうして夾竹桃なんかの協力をしないといけないの……いや、でも協力すれば強烈な媚薬をいっぱいプレゼントしてくれるって言質は取ったし、それに百合がもっと武偵高に広まるのは私にとっても悪いことじゃないし……やるしかない。皆、覚悟は良いですか! 自分の秘める感情を、今ここで解き放つのです!」

「「「「「フィィィイイイバァァァアアアアア!」」」」」

 

 『ビビりこりん真教』の信者ナンバー004の三ヶ島咲良が、『アリアさま人気向上委員会』の委員会ナンバー006の影縫千尋が、『クロメーテル護新教』の教祖代理の安久亜泰難が、『擬人化した得物について語ろうの会』の会長代理の代理のベレッタが、『百合の花を育て上げる会』の会長代理の佐々木志乃が集結する。東京武偵高三大闇組織の幹部たちを筆頭に、あらゆる闇組織の牽引者がそれぞれまだ撃破されていない手下を大勢引き連れて、わらわらと体育館へと一堂に会していく。もちろん、闇組織の連中だけではない。闇組織に関わりのない武偵たちも、敢えて闇組織の一員に扮する形で体育館に潜入し、いかにも闇組織の構成員ですといった雰囲気を醸し出しつつ、大量の撃破ポイント獲得の機会を虎視眈々と狙う態勢に入っていた。

 

 

「……これは……」

「あらら。こりゃ2対2で楽しくバトルやってる場合じゃなくなってきたかな? どっちが上か決着つけたかったけど、わがままが通じる状況でもなさそうだしね。それにしても、『美咲お姉さまに踏まれ隊』って、命ちゃんったらいつの間に……」

 

 武藤と中空知はもはや個人個人で戦えるような状況でないと、一旦武器を収める。そして。いつ様々な闇組織が入り乱れた全面戦争が始まってもいいように体勢と心の準備を整える。この時。全面戦争が、勃発しようとしていた。大人数が暴れ回るには狭すぎる体育館にて、もはや誰が敵で、誰が味方かもわからなくなること必至なカオスな闘争は回避不可能な状況となりつつあった。

 

 

 しかし、この瞬間。体育館の壇上から声が響いた。それは緊迫した戦況を切り裂き、暗沌とした空気に風穴を生み出す、一筋の澄んだ声だった。

 

 




武藤→中空知との決着がつけられなくなってしまった技術チート。邪魔がなければおそらく中空知を倒していただけに、残念な展開になった模様。
不知火→武藤のサポートのおかげでジャンヌ相手に優位に立てたものの、ジャンヌ撃破のチャンスを逃した不良。何気に『あやや先生の素晴らしさを全世界に広める連盟』略して『ASS』に属していた(※97話参照)。
ジャンヌ→己の窮地を女子テニス部後輩武偵たちに救われた厨二少女。炎・氷・雷の3種の超能力を使えるはずなのにあんまり目立てていないのは、周りの面子が濃すぎるせい。
中空知→「決着つけたかった」とか言ってるけど、実は武藤と戦わなくてよくなったことに内心でホッと安堵の息を吐いている系ドS少女。ちなみにただいまショートカットな髪型をしている。
平賀→実は意外と武藤に対して劣等感に似たライバル感情を抱いていた天才少女。天才だって人間だもの、そりゃあ時には悩みもしますよ。
佐々木志乃→緋弾のアリアAAから参戦した女の子。ここでは『百合の花を育て上げる会』の会長代理をやっている。原作とそこまで性格は変わっていない。要するに、ヤンデレ。ところで、熱血キンジと冷静アリアにはAA勢のキャラは出さない的な発言を感想への返信とかでやっておいてこの体たらくとか何というふぁもにかのテノヒラクルー技術。

■『読者さんが実際に番外編に登場しちゃう企画!』からのキャラ
①衣咲命→読者のアイディアから参戦したキャラ。尋問科Aランク、1年・女。中空知の戦姉妹。今回で初めて『美咲お姉さまに踏まれ隊』のことを中空知にお披露目する形となった。
②砂原杙杵→読者のアイディアから参戦したキャラ。強襲科Aランク、3年・男。『ダメダメユッキーを愛でる会』の会員ナンバー002。一人称は『俺』。会員ナンバー003である武藤とは割と仲がいい。悪友といった間柄な模様。
⑨市橋晃平→読者のアイディアから参戦したキャラ。装備科Bランク、3年・男。若白髪の目立つ黒い短髪が特徴的。天才の頭脳を持つ平賀を相手にちゃんと戦えている所から、割と頭は良い様子。今現在、たまには先輩風を吹かせてみたい感情に駆られている。
⑨ベレッタM92F→市橋晃平の武器(※ただいま擬人化中)。市橋に託されたため『擬人化した得物について語ろうの会』の会長代理の代理を全力でこなしている最中である。

■その他のオリキャラ(モブ)たち
三ヶ島咲良→『ビビりこりん真教』の信者ナンバー004。ウザい喋り方に定評がある。
影縫千尋→『アリアさま人気向上委員会』の委員会ナンバー006。
安久亜泰難→『クロメーテル護新教』の教祖代理。
『ダメダメユッキーを愛でる会』の構成員たち
『ビビりこりん真教』の構成員たち
『アリアさま人気向上委員会』の構成員たち
『美咲お姉さまに踏まれ隊』の構成員たち
『クロメーテル護新教』の構成員たち
『擬人化した得物について語ろうの会』の構成員たち
『氷帝ジャンヌ一派』の構成員たち
『百合の花を育て上げる会』の構成員たち
『あやや先生の素晴らしさを全世界に広める連盟』の構成員たち
その他大勢

 というわけで、EX12は終了です。巨大ロボット同士の対戦の描写が初経験すぎて拙い感じになってるんだろうなとか思ったりします。ま、普段は絶対に書かないタイプの文章を手掛けたのは素晴らしく良い経験になったのでそれで良しとしましょう、そうしましょう。

 そして、今体育館に何人武偵がいるのか全然把握できない件について。これだけ人物を一気に登場させたのはさすがに初めてなので、上手く場面を描写できるか果てしなく不安ですぜ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。