どうも、ふぁもにかです。『テキトーな名前のオリキャラ作ったったシリーズ』でモブ武偵の名前をたくさん考えてると、東京武偵高がDQNネームの巣窟のように感じてしまう今日この頃。これがDQNネーム世代、これは高天原先生が生徒の名前を覚えるのにメチャクチャ苦労して目を回す光景が簡単に想像できますな。うむ、実に良い光景です。
――14:25
不知火がジャンヌと邂逅している、まさにその頃。
路上の内、特に鳥人型ロボットがわらわらと存在する一角にて。一人の男子武偵がビルの日陰にて団扇をパタパタと振っていた。団扇の先にあるのは、七輪。木炭により熱せられた網に乗せられているのは、数尾のサンマ。この男子武偵――灰野塵――は今現在、夏真っ盛りな今とは少々季節外れな印象が否めないサンマを昼ご飯として調理していた。
「んー、こんなもんか。おいしそうに焼けたな」
灰野は香ばしい匂いを放ち始めたサンマを、サンマに突き刺した竹串を持ち上げる形で回収し、しばし凝視した後に頭からハグハグする。灰野の比較的近辺を鳥人型ロボットが徘徊し、潜伏中の武偵を根こそぎ狩っていき、「ぎゃああああああああ!?」とか「だ、誰か! 誰かぁ!!」とか「おいおいおい!? 何だよこれ、ロボットの侵略が始まっちまったのかよ!?」とか「ランサーが死んだ――ギャオスッ!?」とか「この人でなしぃ!?」とかいった武偵たちの切羽詰まった叫び声が時折遠巻きに聞こえる中、灰野はあくまでマイペースにサンマを食していく。
【装備科Aランク:平賀文(2年)が衛生科Eランク:
【装備科Aランク:平賀文(2年)が通信科Cランク:
【装備科Aランク:平賀文(2年)が強襲科Cランク:
【装備科Aランク:平賀文(2年)が装備科Bランク:
【装備科Aランク:平賀文(2年)が諜報科Dランク:
「つーか、この寮取り合戦ってマジで鬼畜企画だよな。何が酷いって、昼食タイムが設けられてないのがもう酷すぎるよなぁ。人間は一日三食きっちり食べないと死んじゃうぐらいには脆さに定評のある生き物なのに。……てか、他の皆はどうやってこの逃れられぬ空腹を凌いでるんだろ。もしかして一旦休戦協定結んでサイゼリヤとか行ってんのかなぁ? 俺ってハブられてるのかなぁ?」
一匹目のサンマをペロリと平らげ、二本目のサンマのハグハグに差しかかった灰野は、今の自分の食欲を鑑みた上でサンマの追加オーダーを決定し、手持ちのクーラーボックスから取り出したサンマに竹串を刺し、七輪の網の上に乗せる。
ちなみに。もう少し詳しく今の場面を描写すると。灰野は水のたっぷり入ったクーラーボックスから、狭い空間を泳ぎまくっている数あるサンマの内の一匹を素手で掴み上げ、竹串で貫き、七輪の網の上に乗せたため、灰野の視線の先にはまだ生きているサンマが血を流しながらビチビチ悶えている様子がしっかり映し出されていたりする。
『ペェェエエエエエエエエエエエエエエングィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!』
『ホモォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「まずは味付けなしで素材の味わいを楽しんだから、次からは荒塩で食べようかね」
皇帝ペンギン型の巨大ロボットと『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の巨大ロボットの雄たけびが周囲一帯を轟く中。眼前にて繰り広げられるちょっとしたサンマのグロシーンすらものともせず、灰野が三匹目以降のサンマの味わい方の方針を定めていると、ここで灰野の前に影が差した。灰野がふと背後を見上げると、鳥人型ロボットが一体。鳥類な両眼を灰野一点に固定していた。
『私は鳥人だよ』
「おぉ、これはご丁寧にどうも。俺は灰野塵。東京武偵高に通ってる、武偵の卵だ。よろしくな」
『友達になろう』
「おぉ、願ってもない申し出だ。ちょうど俺も同じことを考えていてな。そうだ、お近づきにこのサンマでも食うか? 美味いぞ? 人間の俺ですら舌鼓を打つくらいだ。鳥の貴方の舌もさぞ虜になるだろう。いやぁ、サンマの何がいいって、塩との相性――」
『――私は鳥人だ。決して鳥という下等種ではない。愚弄するか、人間!』
「タラバッ!?」
灰野はほどよく焼き色のついたサンマの竹串を七輪の網の上から回収し、鳥人へと差し出しつつ、サンマの良さを一人語っていく。灰野的には鳥人型ロボットに自身の意見に対して同意を示しながらサンマをムシャムシャするといった反応を期待していたのだが、現実に灰野へと帰ってきた反応は、鳥人の唸る拳だった。
「……な、何だ。サンマはお気に召さないか。もしかしてサンマアレルギーとかだったか? それは悪いことをしてしまったな。察しが悪くてすまない。ならばマンボウは? このマンボウはどうだ? なに、実は今朝、寮のリビングで2メートル級のマンボウが死んでいてさ。 強烈な嫌がらせか、はたまたプレゼントか。とりあえず、ルームメイトが巨大マンボウの惨事を発見して発狂しない内に手早く回収してキッチンで調理して刺身にしたんだ。マンボウなんて食べたことなかったからどんな味なのか楽しみでな、だから貴方も一緒にマンボウを食すというのは――」
『――断る。私は鳥人であり、平賀さまの傀儡だ。ポイントのため、貴様にはここで脱落してもらう!』
「グホッ!? マンボウもダメって、もしかして舌が肥えまくってて、その影響で安物の魚は好きじゃないのか? だけど俺、高級な魚は持ってないぞ。それともあれか。シーラか? シーラカンスとか持って来ればいいのか?」
『いい加減、沈め! 人間!』
「ケバフッ!? シーラもダメなのか!? どういうことだ!? こ、これはもしかしたらそもそも魚自体がダメなのかもしれないな。けど俺、鳥のエサの成分とかよくわからないぞ。確か穀類50パーセント、米ヌカ・フスマ35パーセント、魚粉15パーセントだっけか? 悪い、その辺の持ち合わせがないんだ。不甲斐ない俺をどうか許してくれ」
灰野は殴られる。鳥人型ロボットに何度も何度も殴られる。だが、灰野は鳥人型ロボットから逃げることも戦うこともしない。頭からダラダラ血を流しつつも、灰野はあくまでも鳥人型ロボットと仲良くして、発展的な異種交流関係を結ぶための方策について思考を巡らせていく。マスターである平賀に忠実な鳥人型ロボットとどこまでもマイペースな灰野。このツッコミ不在のカオスワールドに、ついに救世主が現れた。
「――ふざけてんのか、お前はぁぁあああああああああああああああああああ!!」
何と、鳥人型ロボットの背後から男子武偵の声を大にしたツッコミが聞こえたかと思うと、ビュオッと飛来したコンクリートブロックが鳥人型ロボットの頭部に命中したのだ。繊細な頭部部分に不意打ちの打撃を加えられた動作不良を起こす鳥人型ロボット。そこに追加のコンクリートブロックが続けざまに放たれたことで、鳥人型ロボットはついに完全に破壊されることとなった。
「あ、ぁぁああああああああああああああ!? と、鳥人がぁ!?」
「『鳥人がぁ!?』じゃねぇよ! 何やってんだ、お前!? 暑さで頭湧いてんのか!?」
地面に倒れ、完全に機能停止した鳥人型ロボットを前に顔からサァァと血の気が引いた状態で鳥人型ロボットに駆け寄る灰野。一方、コンクリートブロックを投げつけるという、スマートではないやり方ながらも鳥人型ロボットの撃破に成功した張本人こと神崎千秋はそんな灰野を指差し、容赦なくツッコんでいく。
「何って、異種交流だが? だって、ここでこのロボットたちと仲良くなってないと、近い将来、ロボットに支配される未来が透けて見えるじゃないか。ここでどこまで我々人間が歩み寄れるか、それで未来が決まると言っても過言ではない。だからこそ俺は多少の痛みには目を瞑ってロボットたちに歩み寄りをしてしたんだ。何せ、争いは何も生まず、どこまでも不毛――」
「――過言だ! どう考えても過言だッ! 平賀がロボットで世界征服を目論むようなトチ狂った奴であってたまるかよ! てか、お前さっきからマジで何言ってんだよ!? 意味わかんねぇぞ! まさかとは思うが、これが素なんじゃ――」
「――いや、ボケてるだけだ。俺はツッコミ役を待っていたんだ、人生はツッコミ役がいてこそ輝かしくなるものだからな。で、ツッコミ役をダイソンするにはやっぱりボケてこそだと思って、こんな路上で七輪を持ち出したりあの敵意満々なロボットに敢えて友好的に接したりしたわけだ」
「なぁッ!?」
「それにしても、君は素晴らしい。まだまだ粗削りだが良い切れ味のツッコミスキルを持っている。……将来が楽しみだな、やはり志望は吉本興業か?」
「ふ、ふっざけんなぁぁあああああああああああ!! お前、今の状況わかってんのかよ!? 能天気も程々にしやがれ、このやろぉぉおおおおおおおおおおおおおおッ!」
自身が灰野によって誘い出されていたという事実を知った千秋はブチ切れた。ガシガシと両手で頭を掻きむしりながら天へ向けて思いの丈を絶叫する。が、真夏の炎天下の中。感情の赴くままに叫ぶという行為が唐突に不毛に思えた千秋は冷静さを取り戻し、重々しくため息を吐きつつも灰野に寮取り合戦の現状を手短に説明した。
『ま、感謝してくれるんなら、今の話を少しでも多くの武偵に伝えてくれ。それが被害を最小限に抑える最善の方法だからな。もちろん、自分にできる範囲でいい』との、アキの言葉あってこその千秋の行動である。
「なるほど。そこまで混沌とした展開になっていたのか……」
「そういうこと。だからこんな所でバカやってないでお前もさっさとどっかに隠れてろ。それかまだ生き残ってるルームメイトがいたらそいつらと合流しろ」
「悪いが、それはできないな」
「はぁ? なんでだよ?」
「俺は今しがた昼ご飯を食べ始めたからな。こんな中途半端な状態で昼食を中断できるわけないだろう。よし、次のサンマを焼かないとな」
「~~~ッ! ぁぁぁあああああああああああもうッ! 勝手にしろ! 俺はちゃんと伝えたからな! 撃破されても俺を恨むなよな!」
「あぁ、情報提供ありがとう! 君のことは明日までは忘れない!」
「どうせならすぐ忘れろ! じゃないと何かのフラグになりかねないだろ!? お前みたいな無駄にキャラがメチャクチャ濃い奴に俺のこと覚えられるとか、俺の非日常入りのフラグにしかならないじゃねぇか!」
「うむ、了解だ。善処する。ところで、君の名前を教えてくれないか?」
「却下だ! それこそフラグが立つだろうが!」
千秋はどこまでもマイペースを貫く姿勢な灰野にこれ以上は付き合いきれないと、急いでその場を離れようとする。闇組織の構成員&大量のロボットがやりたい放題に暴れ回っている現状、その場に長くとどまることは基本的に命取りだからだ。
そんなわけで、灰野の元から走り去ろうとする千秋。と、ここで。灰野が千秋の背後の方向を指で指し示し、「お、そうだ。後ろ、来てるぞ?」と注意する。その文言に千秋が「え?」と背後を振り向くと、ギュィィイイイイとの金属音を鳴らすチェーンソーを両手に構えた二人の男子武偵が千秋へと今にも襲いかからんとする姿が千秋の両眼に映し出された。
「オラァァアアアア神崎千秋ィィイイイイイイイイ!」
「テメェ何気に邪神:神崎・H・アリアと名字一緒だからついでに死んどけやぁあああああああああああああああああああああ!!」
「ちょッ、何だよそれ!? いくら何でも理不尽だろ!?」
(過激派の襲撃!? くそッ、長居し過ぎたか! ……てか、こいつらよく見たらクラスメイトじゃねぇか!? 少しは同じクラスの生徒を襲撃することに罪悪感とか感じねぇのかよ!?)
千秋への理不尽な奇襲。灰野に気を取られていたせいで、精神的&体勢的な意味で全くもって備えのできていなかった千秋はとっさの横っ飛びでチェーンソーに体を切り刻まれるという最悪の事態をどうにか回避する。だが、今の回避行動で地面に転がる形になってしまった千秋が立ち上がり、逃走する暇を与えるほど、襲撃者二名は甘くない。「「これで終わりじゃぁああああああああああ!!」」と、トドメだと言わんばかりに次なるチェーンソーの一閃を二人同時に千秋へと放とうとした所で、二人は唐突に爆発した。そう、本当に爆発したのだ。
「ポトフゥッ!?」
「マカロンッ!?」
「え?」
派手な爆発音と珍妙な断末魔を引き連れて、すっかり煤だらけになってしまった武偵二名が顔から地面へと倒れる中。一時は呆然と眼前の光景を見つめるだけな千秋だったが、二人が爆発する寸前に何かが二人の顔へと飛来していたことに気づき、灰野へと振り向く。すると、右手でサンマを突き刺した竹串を持ち、左手にフリスビーのような形をした金属片のようなものを人差し指でクルクル回す灰野の姿があった。
ちなみに。灰野の持つ金属片のようなものの正体は地雷である。灰野は地雷をメインウェポンとして、地面や壁に仕掛けたりフライングディスクの要領で投げ飛ばす形で犯罪者をバッタバッタと倒していくことに定評のある、強襲科Aランク武偵なのである。
【強襲科Aランク:灰野塵(2年)が強襲科Aランク:
【強襲科Aランク:灰野塵(2年)が車輌科Cランク:
「……」
「他人に情報提供し、忠告をするのは非常に良い心がけだと思うが、自分の身の安全も確かめてからにすることだ。自分あっての他者だ、その辺の優先順位を間違えないように」
「……あ、あぁ、善処する」
思いっきり焼け焦げ、変わり果てた(※主に髪型)となってしまった武偵二名。それらを特に何の感慨もない様子で見つめながら焼きサンマをハモハモする灰野からのアドバイスに、千秋は少々引きつった表情ながら首を縦に振るのだった。
◇◇◇
――14:35
体育館にて。ジャンヌは今現在、焦りに焦っていた。理由は簡単、ただいま絶賛不機嫌状態の不知火との戦闘がもはや避けられない段階にまで迫っているからだ。
――今の闇組織の連中は正直、武偵の面汚しだ。だから、俺が矯正する。ボコって、それで頭を冷やしてもらう
(な、なぜだ!? なぜ、なぜ、よりによって『
不知火から銃口を向けられている中。ジャンヌは表面では平静を保ちつつも内心では混乱の極みに辿りつつあった。そして。策士を自称するにも関わらずまるで良いアイディアが浮かばないジャンヌがついに架空の女神へと他力本願し始めた頃、ジャンヌへと救いの手が差し伸べられた。そう、第三者が介入してきたのだ。
「随分困ってるみたいだね、ジャンヌさん」
ジャンヌに優しく語りかけつつ、体育館の入り口からテクテク不知火とジャンヌの元へと歩み寄る存在――もとい文学少女然な見た目をした中空知は、背中まで余裕で届く長い黒髪を揺らしながらニコリと微笑む。それと対照的に、中空知の登場を認知した不知火の表情が薄ら青ざめていく。
「ちッ、ここで中空知か。よりにもよってこの面子で三つ巴になるのかよ……」
「何言ってるの、不知火くん。三つ巴じゃなくて、2対1だよ」
「……何だ、中空知。テメェも『氷帝ジャンヌ一派』とやらのメンバーだってのか。テメェが誰かの下に大人しくつくなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「あれ? 不知火くん、何か勘違いしてないかな? 私とジャンヌさんはルームメイトだよ。ルームメイト同士、協力して撃破ポイントを稼ぐのは別に不思議なことじゃないでしょ?」
「は? え? 待て、ウソだろ!?」
ジャンヌと中空知がルームメイトであり同陣営。その原作と一致する事実に不知火が唖然としていると、ジャンヌが「事実だ、『制限なき破壊者』。我々は、我と
「不知火くん。あの時のこと、覚えてる?」
「あの時?」
「ほら。私の新しい尋問方法の実験台になってもらった時だよ。もう何か月も前のことだけど、あれは熱い一時だったねぇ。武藤くんにストップかけられちゃったからほんの少しだけ不完全燃焼だったけど、本当に楽しかったよねぇ」
「……おい、やめろ」
「というわけで、不知火くん。あれから随分と時が経ったけど……あの時の続き、しよっか。ちょうど試してみたい尋問方法を思いついた頃だったんだよね」
「や、やめてくれ……」
「はーい、ワンモアプリーズ♪」
まるで人の心臓をグワシッとわし掴みにするかのような底冷えた声。純粋という言葉とはまるで対極に位置する笑顔。そして、中空知が最後に付け足した魔法の言葉の3点セットを前に、不知火が「あ、ぁぁあああああああああ……!?」とガタガタと震え始める。
無理もない。不知火はかつて、この地の文ではとてもとても描写できないほどの惨劇を、武藤に依頼された中空知の手により強制的に経験させられているのだ(※11話参照)。ゆえに、その当時の
「ふふッ。怯えちゃって、かぁーわいいなぁ♡」
「……その、何だ。なるべくお手柔らかに頼むぞ、『深淵の招き手』?」
「ん、あぁ。そういえば、不知火くんって確かジャンヌさんが異性として好きな相手だったもんね。了解、今回は軽めにしておくよ。不知火くん一人に構いすぎてたら撃破ポイントもあんまり稼げないしね」
「す、すすすすす好きって、いきなり何をッ!?」
「別にそんなに否定しなくてもいいんじゃないかな。ジャンヌさんが不知火くんの日本語会話講座を受けた日の夕食なんていつもその話で持ち切りにしてるじゃない?」
「た、確かに言われてみればそうかもしれないが、だからといってよく我の口から話題が上がるイコール好きと結びつけるのは早計というか、そのような短絡的思考でいては――」
(おっと。ついジャンヌさんを沸騰させちゃった。この様子だとすぐには戻ってこないだろうし、今の内にちゃっちゃと不知火くんを撃破しておこっと♪)
顔を真っ赤に染め上げながら言い訳とも似つかない何事かを早口に口走るジャンヌをよそに、中空知は一歩一歩足音を敢えて鳴らしながら不知火へと近づいていく。その悪魔の足音に、不知火は動けない。ただただ体の震えが増すばかりだ。そのような完全に無防備な不知火へ向けて、中空知が念動力で操る極細ワイヤーが牙を剥かんとした、まさにその時。
不知火を横抱きにしつつ中空知の攻撃範囲から素早く離脱する存在が現れた。その存在こと皇帝ペンギン型ロボットは不知火を足からそっと床へと下ろすと同時に、胸部装甲に切れ目が入り前方へとパカッと開かれていく。そして。その開かれた空間から。全長3メートル以上の皇帝ペンギン型ロボットの内部から姿を現したのは、武藤剛気その人だった。
「なッ!? 貴様は技術チート!? なぜここに!?」
「……何をしている、正気に戻れ……」
武藤は皇帝ペンギン型ロボットの開かれた胸部装甲が自動で閉まっていくのを確認しつつ、不知火へと声をかける。何気にジャンヌのことは完全スルーである。
「へぇ。ここに姿を現すんだね、武藤くん。てっきり武藤くんは今各地で多大な影響力を及ぼしながら暴れている平賀さんへの対処に奔走するものだと思っていたよ」
「……平賀の鳥人型ロボットには俺の皇帝ペンギン型ロボットを宛がっている。平賀の操る『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の巨大ロボットには俺の皇帝ペンギン型の巨大ロボットを用意済み。頼れる先輩に巨大ロボを操作させてる以上、平賀の暴走対処に俺を割く必要性は皆無……」
「なるほどなるほど。ご親切にどうも」
中空知からの問いに武藤は至って簡潔に返答し、その後、立ちすくんだままの不知火の正面を位置取る。それをニコニコ笑顔のまま見守りつつ、武藤に無視されたことに憤慨するジャンヌを宥める中空知は、どうやら今の内に武藤や不知火を不意打ちで倒してしまおうとの考えは持っていないようだ。
「む、武藤。ど、どうしてここに?」
「……体育館にちゃっかり仕掛けていた盗聴器からお前の怒りの叫びを聞いた。俺も考えることは大体同じ。共闘するぞ……」
「だ、だが、俺は……」
「……そんなに中空知さんが怖い? Aランク武偵のくせにトラウマの1つも克服できないなんて、情けない……」
「だ、誰のせいでそのトラウマを植えつけられたと思ってんだ、テメェ!」
「……(・3・)~♪ヒュー、ヒュオー……」
「口笛吹いてんじゃねぇ! しかも全然上手く吹けてねぇじゃねぇか! 舐めてんのか、あぁ!?」
「……いつもの調子、戻った……?」
「あッ……」
「……構えろ、不知火。俺は中空知さんを相手する。お前はダルクさんを相手取れ……」
「いいのか、それで?」
「……お前に中空知さんは荷が重いでしょ? あっちのダルクさんはお前に苦手意識を持ってるみたいだし、これがベストな組み合わせ……」
「……わかった。気をつけろよ、武藤」
「……言われずとも……」
武藤は自分のペースに不知火を引きずり込むという手法でどうにか不知火を中空知恐怖症から一時的に解放した。さらに、武藤は自分が中空知という厄介な相手を引き受けることを通して、すっかり消え去っていたはずの不知火の戦意を確かに取り戻すことに成功した。
「そっか。武藤くんが私の相手をしてくれるんだ。そういえば武藤くんは『ランク詐欺勢』だったね。それなら、楽しめそうかな。撃破ポイントにあんまり反映されないのが残念って所だけど」
「……ランク詐欺勢? 何それ……」
「知らないの? 武藤くんみたいに本当はSランク級かそれ以上の実力があるのになぜか下のランクに収まっちゃってる人たちの総称だよ。武藤くんの他にも平賀さんや風魔さん、後は宮本くん辺りが該当してるってもっぱらの噂だよ」
「……勝手に分類しないでくれる……?」
「私に言われても困るな。私が噂を流したわけじゃないんだしさ」
中空知はニッコリスマイルを浮かべつつ、糸目状態にした両眼に爛々とした輝きを纏いつつ。武藤は自分の専攻的に前線に立って戦うことが得意ではないはずなのに泰然としたたたずまいを保ちつつ。両者ともにどこか和やかな雰囲気で言葉を紡ぐ。
「くぅッ、結局我は『制限なき破壊者』と戦わねばならないのか!? これもまた運命、我にこの試練を乗り越えよとの女神の思し召しか……!?」
「……当初と状況は様変わりしたが、俺のやることは変わらねぇな。ジャンヌ、テメェをぶっ飛ばして闇組織撲滅の礎にしてやらぁ!」
一方。ジャンヌは悲壮に満ちた表情を浮かべつつも不知火と戦う覚悟を固めつつ。不知火は中空知のことは武藤に任せてジャンヌ退治に意識を集中させつつ。両者ともにいつ戦端を開いてもおかしくないほどの緊張感を醸造する。
かくして。『車輌科Aランク:武藤剛気、強襲科Aランク:不知火亮』ペアと『尋問科Sランク:中空知美咲、情報科Aランク:ジャンヌ・ダルク30世』ペアによる、2対2のタッグバトルの火蓋が今、落とされるのだった。
武藤→もはや語る必要のないほどに安定の技術チートであり、『ランク詐欺勢』の一角を担う男。皇帝ペンギン型ロボットは無人でも人が直接乗り込んで操作することもできる模様。
不知火→中空知へのトラウマが今なお心に深く刻まれている不良。武藤のおかげでどうにか持ち直しているが、現状はまだ弱弱メンタルである。
ジャンヌ→何だかんだで不知火と戦う覚悟を決めた厨二少女。ルームメイトの中空知との仲は割と良好らしい。
中空知→原作通り、ジャンヌとルームメイトだったドS少女。ジャンヌに『
神崎千秋→思いっきりボケていることをする人を無視できない一般人代表。全長3メートル以上の得体の知れない鳥人型ロボットに立ち向かえる程度には武偵をやっている模様。
■『読者さんが実際に番外編に登場しちゃう企画!』からのキャラ
⑭灰野塵→読者のアイディアから参戦したキャラ。強襲科Aランク、2年。とりあえずはボケるという人情のクール(?)な男。一人称は『俺』。戦闘スタイルは地雷をフライングディスクの要領で投げる事。当然、地雷本来の使い方として地面などに仕掛けたりもする。何故かキンジくんを見かけると話しかけに行ってボケるという癖がある。天然ではないので、あくまで意識的にボケている。今回は優秀なツッコミ役を誘い出すために徹底的にボケ、神崎千秋を釣り上げた模様。
■その他のオリキャラ(モブ)たち
○テキトーな名前のオリキャラ作ったったシリーズ
というわけで、EX10は終了です。今回をもって、とりあえず『読者さんが実際に番外編に登場しちゃう企画!』からのキャラは全員出し終えました。ノルマ達成です。イェイ♪
全員に出番とある程度のセリフを与えるのは非常に苦労しましたが、いざ閃くと楽しくて楽しくて……って感じでしたね。どのキャラも何だかんだで濃かったので思いつきさえすれば後はキャラが勝手に動いてくれますしね。
あ、もしも私が出し忘れているキャラがいたら感想とかメッセージで連絡お願いします。どうにかセリフをねじ込みますので。