【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回はキリの良さ的に短めの内容となってます。とはいえ、それでも軽く7000字は超えてますけどね。熱血キンジと冷静アリアの連載当初は1話3000字とか4000字とかが普通だったと記憶しているのに、いつの間に私はこんなにも1話にぎっしり話を詰めこむ派になってしまったのでしょうか。いや、悪いことじゃないんですけどね。



EX8.ワクワクドキドキ☆寮取り合戦(8)

 

 ――13:30

 

 

 男子寮付近の道路上にて。風魔陽菜(属性:忍者)と金建ななめ(属性:ムードメーカー)とレオぽん(属性:着ぐるみ)は鳥人型ロボットと皇帝ペンギン型ロボットの、それぞれの集団同士の激しい戦闘の渦中に巻き込まれていた。

 

 

『私は鳥人だよ。証拠が見たいかい?』

「そんなの欠片も見たくないでござる!」

 

 鳥人型ロボットは皇帝ペンギン型ロボットに暴力を差し向けながらも陽菜たち3名をも撃破しようと襲いかかってくる。そんな、誰が相手でもまず自身の種族を明かすことを欠かさない鳥人型ロボットを陽菜は刀で真っ二つにする。鋼鉄製の鳥人型ロボットの首と胴体とをさも当然のように離れ離れにして、鳥の頭と人間の体とを上手いこと分断する形で破壊していく。

 

 

『ならば友達の証にこのタキシードの胸元を開いて、人間の体と鳥の頭とのちょうど境目を見せてあげよう』

「ちょっと待ったぁーッ! いつあたしとあんたが友達になったのさ!?」

 

 その陽菜の傍らにて。金建は別の鳥人型ロボットの襲撃に対し、スコップを振るって鳥人型ロボットのひざ裏にヒットさせ、鳥人型ロボットを膝カックンさせる。そうして、隙を上手く作り出した金建はスコップの先端を鳥人型ロボットの頭部に突き刺し、貫く形で破壊していく。

 

 だが。敵意を持って襲いかかってくるのは鳥人型ロボットだけではない。基本的に鳥人型ロボットを標的としているらしい皇帝ペンギン型ロボットは、陽菜と金建こそ狙わないものの、レオぽんに対しては普通に襲いかかってくるのだ。どうやら皇帝ペンギン型ロボット的には、自身の視界に映るレオぽんは鳥人型ロボット側の存在であるらしい。

 

 

『オレはプリニーッスゥゥウウウウウウウウ!』

『おいらはレオぽんッスゥゥウウウウウウウウ!』

『ペェェエエエングィィイイイイイイイイイイン!』

『これがレオぽん稲妻飛び後ろ回し蹴りッスゥウウウウウウウウウ!』

 

 ゆえに。レオぽんを破壊しようと包丁を振り下ろしてくる、皇帝ペンギン型ロボットのイレギュラー体であるプリニー型ロボット(※全体的に丸みを帯びたフォルム、青い背部、白い腹部、死んだ魚のような瞳、黄色いくちばしが特徴的)を、今現在他の武偵の返り血で血塗れなレオぽんは正拳突きで一思いに破壊する。

 

 その後、プリニー型ロボットを相手している今がチャンスだと攻撃を仕掛けてきた皇帝ペンギン型ロボットをレオぽんは蹴り一つであっさりと返り討ちにする。この時、何気にプリニー型ロボットの口調がレオぽんにも移っている件についてはツッコんではいけない。

 

 とにかく。上記のように割とハイペースでロボットたちを撲滅していく陽菜たち3名。だが、ロボットどもの数は減る気配を見せない。それどころか、数がズンズンと膨れ上がっているように陽菜たちには感じられてならなかった。

 

 

「くぅッ、これではキリがないでござる! ここは戦略的撤退にござるよ!」

「りょーかい! ロボット狩っても撃破ポイント稼げないもんねー!」

『おー、殿はおいらに任せろー! バリバリー!』

「やめるんだ、レオぽん!」

 

 このままではいずれ自分たちが体力の限界を迎え、ロボットたちに撃破されてしまう。そのように考えた陽菜が戦場からの撤退を提案した直後、待ってましたと言わんばかりに金建とレオぽんが同調してくる。どうやら考えていることは皆一緒だったらしい。その後。陽菜は煙玉でロボットたちの視界を潰し、レオぽんが縦横無尽に手足を振り回して周辺のロボット共をひとしきり吹っ飛ばして血路を作り、金建はポケットから取り出したボイスレコーダーをレオぽんが作り出した血路――とは反対の方向へ投げ捨ててから血路を一番乗りで通り抜けていく。

 

 そうして。ボイスレコーダーから「ぎゃー。こっち来るなー(棒読み)」との金建の名演技な悲鳴が轟き、主に武偵狩りを目的とする鳥人型ロボットがその声に釣られている隙に、陽菜とレオぽんも金建の後を追うようにロボットたちの戦場のど真ん中から脱出する。かくして。3名は事前の打ち合わせなしの高レベルな連携により、誰一人撃破されることなく事なきを得るのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ――13:40

 

 

 ロボット同士がシュールな抗争を開催している中心地帯から抜け出ることに成功した陽菜、金建、レオぽん。この3名は今、教務科の一個室にて軽い休息をとっていた。

 

 

「……な、何だかおかしな輩がいっぱい湧いてきてるでござるなぁ」

 

 陽菜が自前の魔法瓶水筒から熱々のお茶を補給しつつ漏らした感想に、金建とレオぽんはそろって首を縦に振る。それだけ、今の陽菜の言葉が金建とレオぽんの心情をも正確に汲み取っていたということか。ここ1時間の間、3人は散々『おかしな輩』に出会ってきた。所構わず猛威を振るう鳥人型ロボットやその鳥人型ロボットを止めにかかる皇帝ペンギン型ロボットが軽く3ケタは人口浮島に解き放たれているらしいことはもとより、現状、生き残っている武偵の中にもおかしな輩が増えてきているのだ。

 

 やれ「アリアさま以外の神は認めない、この世から駆逐せねば!」とか「ユユユユユッキキキキィィィイイイイイイ様はァァァアイヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィイイイイ!」とか「りこりん様はりこりん様してりこりん様のためにりこりん様を捧げてりこりん様がりこりん様でりこりん様のりこりん様でりこりん様りこりん様りこりん様りこりん様!」とか、クスリでもキメているのではないかと真剣に疑いたくなるほどに酷い精神状態の連中があちらこちらに跋扈し始めているのだ。そんな現状に3人がげんなりするのも無理からぬ話だろう。

 

 

「だよねだよねぇ。さっきは『アリアさま人気向上委員会』の過激派とかいうのが徒党を組んで『アリアさまを崇めない奴は全員死刑ぇぇええええええいッ!』とか叫びながら半狂乱で襲撃仕掛けてきたし、ホントに何がどうなっちゃってるん? 教えて、レオぽん先生!」

『ググれ』

「酷ぇ!? 先生の発言じゃないよ、それぇ!?」

『うるさいぞ。クレクレ厨にプレゼントしてやる情報なんてない』

「そんなぁー(´・ω・`)」

 

 意識的か無意識的なのか、場を和ます茶番を展開する金建とレオぽんをよそに。熱々のお茶で水分補給を果たした陽菜はおもむろに携帯を取り出し、耳に当てる。

 

 

『お、どうしたー?』

「いえ、少々協力を仰ごうかと思ったゆえ」

「誰、誰かな? もしかしてヒナヒナの忍者仲間!? ニンニンフレンズ!?」

「残念ながら忍者ではないでござる。しかし、忍者である拙者より、隠密及び情報収集能力に長けた御仁にでござる。彼ならきっと、今のどこか狂った状況を正確に把握しているかと――お、繋がったでござる」

『どうも、こちらは清く正しい咲実です。お掛けになった電話は現在使われていないか、電波の悪い所――』

「拙者は騙されないでござるよ? 機械音声と機械音声を真似た肉声とを聞き分けられない拙者ではないでござる」

『あれ、これじゃあ騙せませんか。さすがは忍者ですね』

 

 陽菜は現状がどうなっているかの情報を求めて咲実に電話をかけ、さも電話が繋がりませんでした然を装う咲実の擬態を見破ってみせる。どうやら陽菜が頼りにしている咲実という存在は、一度は電話が繋がらなかったかのような演技をする辺り、茶目っ気を持ち合わせた武偵であるようだ。

 

 

「いえいえ、拙者はまだまだ修行中ゆえ、大したことないでござる。それより、電話が繋がるということはそちらも無事のようでござるな、咲実殿」

『潜伏と逃走は俺の専売特許ですからね。寮内での話し合いで俺が潜伏組に割り振られた時点で寮取り合戦を最後まで生き残れることは確定したも同然です。あと、俺に『殿』付けはいりませんよ。ランクも実力も俺の方が陽菜さんよりも下ですからね』

「そんなことはありません。咲実殿からはまだまだ学ぶ所がたくさんありますから」

『それは光栄です』

「さて。そろそろ本題に入らせてもらうでござる。単刀直入に聞くでござるが……咲実殿はどこまで現状を把握しているでござるか?」

『ま、人並みには理解しているつもりですよ。聞きますか?』

「お願いするでござる」

『わかりました。一度しか言わないので、しっかり聞いてくださいね』

 

 咲実は事前に陽菜に傾聴をお願いすると、己が収集した雑多な情報を整理する意味合いも込めて現状を陽菜に語り始める。一方。陽菜は、自分も話を聞きたいと耳を陽菜の携帯にズイズイ寄せてくる金建とレオぽんに苦笑いをしつつ、自身も咲実の話に耳を傾けた。

 

 

 咲実の話を要約するとこうだ。今現在、これまでは表舞台で派手に活動をすることのなかったはずの東京武偵高三大闇組織の『ダメダメユッキーを愛でる会』『ビビりこりん真教』『アリアさま人気向上委員会』が、寮取り合戦という絶好の機会を利用してそれぞれ抗争を行っている。最初こそ『打倒、遠山キンジ!』で結束していた三大闇組織は今や、三陣営に分かれて戦争を行っているのだ。抗争の目的は単純に自分が所属する闇組織の規模拡大や他の闇組織の勢力減衰。そのために、それぞれの闇組織の構成員は各々の崇める神の素晴らしさを競い合うように、他の闇組織の構成員との戦闘を行っている。

 

 これらはあくまで構成員同士の争いであるため、気をつけてさえいれば闇組織に所属しない武偵が抗争の被害に遭うことはない。しかし、現状、三大闇組織は一枚岩ではなくなっている。それぞれの三大闇組織の一部が過激派と化して組織の統率から離れ、暴徒のごとく好き勝手やらかしているのだ。特に目立っているのは、他の闇組織が神として祭り上げる存在を直接血祭りにしてやろうと、峰理子や星伽白雪、神崎・H・アリアの身柄を虎視眈々と狙っている過激派一派である。

 

 だが、問題はこれだけではない。何と、三大闇組織の抗争に乗じて、三大闇組織が潰し合っている今こそが好機だと、勢力拡大を狙った闇組織が数多く湧いて出てきているのだ。今の所、咲実が確認しただけでも『美咲お姉さまに踏まれ隊』『クロメーテル護新教』『擬人化した得物について語ろうの会』『氷帝ジャンヌ一派』『百合の花を育て上げる会』『あやや先生の素晴らしさを全世界に広める連盟』などの少人数闇組織が、三大闇組織の勢力を弱め、あわよくば自分こそが新・東京武偵高三大闇組織の一柱に君臨せんと暴れ始めているのだ。

 

 また、何も上記の闇組織の所属メンバーは、全員がただ1つの闇組織のみに入っているわけではない。いくつもの闇組織に複数所属し、多重スパイを行っているなんてことはしばしばであり、組織内から構成員を潰していくといった、内部からの反乱も勃発しているそうだ。

 

 さらに。これに加えて、人口浮島には平賀文が効率よく多量の撃破ポイントを稼ぐべく作り上げた鳥人型ロボット軍団と、そんな平賀の抑止力として武藤剛気が作り上げた皇帝ペンギン型ロボット軍団とが軽く1000体は解き放たれ、そこかしこでロボット大戦を繰り広げているのだ。これが闇組織の暴れっぷりにカオス要素をプラスしている主因である。

 

 

 今の所、奇跡的に死亡者こそ発生していないものの、数多くの闇組織が倒し倒されの抗争に参戦し、血で血を洗うような闘争を繰り広げている。これが、寮取り合戦の裏側で展開されていた、ほとんどの武偵が知り得ない裏事情であった。

 

 

「……さすがは咲実殿。まさか、ここまで詳細な情報を得られるとは正直思ってなかったでござる。情報提供、感謝するでござる」

『どういたしまして。それでは、私はそろそろ失礼します。大変な状況ではありますが、陽菜さんもどうか頑張ってください』

 

 陽菜は咲実が電話を切ったことを確認してから携帯を閉じる。そして。陽菜は今の話をちゃんと聞こえていたかと、陽菜の携帯に耳を澄ませていた金建とレオぽんに目線で尋ね、二人がこれまた目線で肯定の返事を返してきたため、陽菜は自分の口から事情を再説明せずに、今後自分たちが選ぶべき行動について話し合うことにした。

 

 

「……思ったよりとんでもないことになっていたでござるな」

「全くだよ! 寮のメンバーでチームを組んでポイントを稼ぐっていう、寮取り合戦の主旨が根本から崩壊しちゃってるじゃんか! これは世界を股にかける美少女と名高いななめちゃんもビックリな展開だよ!」

『……』

「おろ? レオぽん? どったの、調子悪いん? いつもの調子だったら、ここで『いや、君は精々“微”少女だとおいらは思うぞ?』みたいな感想をぶちまける所だよね?」

「レオぽん殿、大丈夫でござるか? ぽんぽん痛いでござるか?」

 

 と、ここで。レオぽんの様子がおかしいことに対して、陽菜と金建はそれぞれからかいの要素を含めつつもレオぽんの体調を心配して言葉を掛ける。すると、レオぽんはしばしの沈黙の後に、『おいら、もう考えるのをやめにするよ。後のことは二人に任せたー。あはははは』と投げやりな言葉を発したかと思うと、その場にビタンと背中から倒れ、微動だにしなくなった。どうやらレオぽんはあんまりな現状に対して現実逃避を選択したようだ。

 

 

「レ、レオぽん殿が現実逃避したでござる!?」

「ちょっ、待って! 戻ってきて、レオぽん! 確かに目を背けたくなるカオスな状況だけど、レオぽんみたいなメルヘン世界の住人にまで見限られちゃったら収集つかなくなっちゃうよぉ!」

 

 かくして。陽菜と金建は今後自分たちが選ぶべき行動について話し合うより前に、案外メンタル面が脆弱であったレオぽんがきちんと現実と向き合えるように、しばらくポジティブな言葉をかけ続ける必要に駆られるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ――13:55

 

 

 同刻にて。アリアと宮本もまた、陽菜&金建&レオぽんグループが入手した情報とほぼ同等のものを脅しという手段により、過激派たる寺和(てらわ)呂守(ろす)の後輩の男子武偵から入手していた。

 

 

【強襲科Eランク:宮本リン(3年)が探偵科Dランク:覚覚(かくさだ)(さとる)(1年)を撃破しました。宮本リンに9ポイント付加されます】

 

 

「宮本さん。お願いがあります」

「わかってる。戦いはやめだ、行っていいぞ」

 

 宮本リンが全てをペラペラと喋り終えた男子武偵の意識を峰打ちで刈り取り、撃破ポイントを入手する中。真紅の双眸に強い意志を宿したアリアが宮本へと1つのお願いを口にしようとするも、アリアが言わんとしたことを先回りで把握していた宮本はアリアのお願いを即座に了承する旨の返事を実にあっさりと返した。

 

 

「……いいんですか?」

「あぁ。その代わり、日を改めて決着をつけようぜ。今度は神崎の体力が万全な時にさ」

「それいいですね、わかりました」

「何をする気なのかは何となく想像つくが……俺が神崎の護衛をしなくても大丈夫か?」

「その必要はありません。宮本さんが脅しで事情を聞いている間に少しは休憩できましたし、宮本さんがそこまで私に気を遣うことはありません。宮本さんは自分の寮のグレードアップのため、ポイント稼ぎを頑張ってください」

「そうかい。ならお言葉に甘えて、そうさせてもらうぜ。――状況が状況だ、くれぐれも気をつけろよ」

「宮本さんこそ」

 

 アリアと宮本はどちらからともなく差し出された右拳でコツンと軽くぶつけたのを最後に、二手に分かれての活動を開始する。かくして。アリアと宮本との勝負の結果は、イレギュラー極まりない事態を知った二人が休戦協定を締結する形で後日へと先延ばしとなるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ――14:00

 

 

 同刻。救護科棟の一室に執事の葉月を寝かせ終えた後の神崎千秋もまた、自らの窮地を救ってくれたアキ経由で一連の状況を聞き及ぶこととなった。

 

 

「ま、まさかこれほどまでにカオスなことになっているとは……あぁ、平和な日常は一体どこに行ってしまったんだ……」

「嘆きたい気持ちはわかるが、現実逃避はやめとけよ。んなことしても根本的な対策にはなり得ないんだしさ」

「あぁ、そうだな……」

 

 黒の両眼からハイライトを消し去り、「あははは」と力なく笑う千秋だったが、千秋のことを心配してのアキの言葉に千秋の心はほんの少しだけ前向きになる。と、ここで。千秋は何の得にもならないはずなのにわざわざ時間を割いて自分に今の状況を説明してくれたアキに対して「ありがとう、アキ」と簡潔に感謝の言葉を口にした。

 

 

「ま、感謝してくれるんなら、今の話を少しでも多くの武偵に伝えてくれ。それが被害を最小限に抑える最善の方法だからな。もちろん、自分にできる範囲でいい」

「わかった」

 

 真っ向から感謝されたのがこそばゆいのか、プイッと顔を背けながら千秋に頼み事をするアキ。本当なら危険すぎる外をうろつきたくなんてないが、命の恩人からの依頼を無下にするような千秋ではなく、すぐに首肯した。そして。千秋は救護科棟の外の様子をうかがおうと窓から外の景色を見つめて――「は?」と固まった。

 

 その後。千秋が外へと視線を固定したまま体を石のごとく硬直させたことに「ん?」と疑問を抱き、ひとまず千秋と同じ景色を共有しようと窓際へと近づいたアキもまた「え?」と、目を真ん丸に見開き、呆然とした声を吐き出した。

 

 

 その時。誰もが『それ』を見た。

 寮取り合戦にて今の所生き残っている誰もが『それ』を見た。

 

 それぞれ別れたばかりのアリアと宮本が見た。

 教務科に滞在中の陽菜と金建とレオぽんも見た。

 現在、闇組織の過激派から絶賛逃亡中の理子も見た。

 誰にも見つからない絶好の隠れ場所に潜伏中の灰塚礫も見た。

 ジャンヌとその取り巻きたるテニス部後輩女子武偵たちも見た。

 次なる標的を同じSランクのアリアに定めている中空知美咲も見た。

 次なる理子へのドッキリ内容を考案中の大菊寿老太も見た。

 

 誰もが見上げ、ある者は固まり、ある者は驚愕の声を上げ、ある者は現実逃避に全力で走り。ある者は興奮ゆえの意味不明な言語を漏らす光景。それは――。

 

 

 

 

 

『ペェェエエエエエエエエエエエエエエングィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!』

『ホモォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 全長30メートル強の、皇帝ペンギン型の巨大ロボットと『┌(┌ ^o^)┐ホモォ』型の巨大ロボットとが文字通り体と体とを全力でぶつけ合う、重量感の凄まじすぎる激突シーンだった。

 

 




アリア→宮本と休戦協定を結んだために単独で行動することとなったメインヒロイン。彼女は一体何を考えているのやら。
風魔→鳥人型ロボットと皇帝ペンギン型ロボットとの抗争に意図せず巻き込まれた被害者その1。レオぽんのことを冗談をぶつけて遊べる対象だと思っているが、金建ほど全力でレオぽんを使っての遊びはしなかったりする。
レオぽん→鳥人型ロボットと皇帝ペンギン型ロボットとの抗争に意図せず巻き込まれた被害者その2。この度、中の人のメンタルの弱さが露呈した模様。
神崎千秋→アキの頼みを受けて、撃破ポイント目当てに否応なく相手に襲われるリスクを背負いつつも、それでも現状を一人でも多くの武偵に伝えることにした一般人代表。

■『読者さんが実際に番外編に登場しちゃう企画!』からのキャラ
⑤金建ななめ→読者のアイディアから参戦したキャラ。探偵科Cランク、1年・女。ショートな金髪ストレートと活発な性格とが中々マッチした感じ。鳥人型ロボットと皇帝ペンギン型ロボットとの抗争に意図せず巻き込まれた被害者その3。

⑬咲実→読者のアイディアから参戦したキャラ。諜報科Bランク、2年・男。敬語がデフォルトであり、一人称は『俺』。とある烏天狗のごとく「清く正しい咲実です」が口癖である。陽菜とは世間話する程度の仲であり、所属は新聞部。武偵高の情報を集めてはそれを新聞にして発表するのが趣味なのだが、割りと洒落にならないプライバシー情報もそれなりの頻度で発表して記事にされた者の怒りを買うが、逃げ足だけは早く、また後々のフォローも完璧であるため、咲実に対して恨みを募らせる者はほとんど存在しない。

⑦宮本リン→読者のアイディアから参戦したキャラ。強襲科Eランク、3年・男。艶のある黒髪をオールバックにしている。もしもキンジくんがいない世界だったら宮本くんとここのアリアさんはくっついてたかもしれない、と私が一瞬思い至ったぐらいにはアリアとの相性が良い模様。

⑫アキ→読者のアイディアから参戦したキャラ。強襲科Bランク、2年・男。肩にかかる程度に伸ばしたボサボサな栗色の髪に、榛色をした瞳が特徴的。ふぁもにか的に真正面から素直な気持ちをぶつけられることに弱い印象がある。

■その他のオリキャラ(モブ)たち
○テキトーな名前のオリキャラ作ったったシリーズ
覚覚(かくさだ)(さとる)

 というわけで、EX8は終了です。今回はまさしく『衝撃のラスト!』って雰囲気を醸し出せたので私としては満足です。でもって、一部の武偵が寮取り合戦の実情を知りつつある所で中盤は終了。次回辺りからは終盤へ向けて駆け始めていきますので、よろしくです。

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