【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。ついに今回から飛行機回ですね。ようやく原作一巻クライマックスへと突入します。ええ。ようやくです。ちなみに。熱血キンジと冷静アリア12話の『怖がり理子と電話相手』の『神崎ヶ原・H・アリアドーネ』を『神崎ヶ原・H・アリアドゥーネ』にちゃっかり変更しました。うん。何てどうでもいい修正報告。この修正報告の裏に『カツ・ドゥーン』の存在がチラついているとは誰も思うまい。

 さて。ここで皆さんにとっても私にとっても非常に残念極まりないお知らせなのですが、ここ最近私のリアルの生活(主に大学の課題関連)の方が加速度的に忙しくなってきたので、ここしばらく何だかんだで続けてきた『3日に1話更新』ができなくなりそうです。真の意味で不定期更新になりそうです。ごめんなさい。まぁ、エタる気は全くないのでその辺は安心していてください。豪華客船、アルザイル・フェンボルス・ベラルージュ・リーザス・ルキオス号、略してアンベリール号にでも乗った気分で待ってやってください。



14.熱血キンジと鉢合わせ

 

「アリア。気をつけろよ。ここはもう武偵殺しの腹の中なんだからな」

「キンジこそ。わかっているとは思いますが、くれぐれも警戒を怠らないようにしてください」

 

 途中、幾度か立ち塞がった航空関係者に武偵証を見せつけてどうにか時間ギリギリでANA600便に乗り込んだキンジとアリア。飛行機が飛び立つを止めることができず、離陸の間、空いている部屋の座席でシートベルトを締めて待機していた二人は今現在、理子を捜しに機内を慎重に探索している。もちろん、通行路にはまばらながら一般人の目があるので公然と拳銃を構えるような真似はしない。無意味に乗客たちに不安や恐怖を与える必要もメリットもないからだ。 

 

「――ひぅ!?」

 

 キンジとアリアは理子を捜索する。乗客として理子に割り当てられた客室には既にいなかった理子の行方を捜す。と、その時。ANA600便の周辺で雷鳴が轟いた。一瞬稲光が飛行機内を白く照らし、直後に大気をつんざく鋭い爆音が響き渡る。すると。アリアはキンジの前方で何とも可愛らしい悲鳴とともにビクリと体を震わせた。

 

「……アリア。お前、もしかして雷が怖いのか?」

 

 キンジは体をプルプルと小刻みに震わせているアリアに問いかける。別にわざわざ問いかけなくともアリアが雷嫌いなのは今の反応から一目瞭然だ。それでもキンジがアリアに尋ねるのは単にイタズラ心だ。以前、アリアをアーちゃん呼ばわりした時の心境によく似ている。尤も、未だに先の武偵殺しの物言いに対して怒りの矛を収めきれておらず、殺気立っているアリアの感情を本格的に鎮めようとする意図もあるのだが。アリアが冷静さを欠いたままで武偵殺しとの戦闘に突入すれば、どうなるかなんてわかったものではないのだから。

 

「な、何の話ですか、キンジ? 言いがかりは止め――きゃう!?」

 

 対するアリアは顔を青くしながらも上ずった震え声でどうにか雷嫌いを誤魔化そうとする。しかし。続けて轟いた雷鳴二連続に今度は弾かれたようにしゃがみ込んだ。アリアはそのまま両腕で自身の小柄な体を抱きしめるとガクガクブルブルといった擬態語が似合いそうな感じで震え始めた。今まさに捜している理子を彷彿とさせる怖がりっぷりだ。身を丸めてガタガタ震えるアリア。ジィーとアリアを見下ろすキンジ。二人の間を何とも言えない沈黙が支配する。

 

「アリア」

「……皆まで言わないでください、キンジ。自分で自分が情けなく感じられてしまうので」

 

 もう言い逃れはできないと悟ったのだろう、両手に両膝をつきうなだれるアリアの声は明らかに沈んでいた。これから武偵殺しと戦う可能性が非常に高い状況下にも関わらず、ズーンといった効果音を伴った負のオーラを纏っていた。orz状態になっていた。

 

「ま、まぁ、何だ。誰だって苦手なモノの1つや2つぐらいあるって。俺も実は蜘蛛とか苦手なんだよ。だから、さ。気に病むことじゃないさ、アリア」

「……そう言ってくれると凄く助かります」

 

 今のアリアは例え武偵殺しを前にしても怒りに我を失うことはないだろう。だが。これはこれで戦闘に支障が発生する。キンジが慌ててアリアにフォローの言葉を掛けると、暗い雰囲気を幾分か払拭したアリアがおもむろに立ち上がる。どうやらキンジにも苦手なものがあると知ったことでどうにか立ち直ることができたようだ。尤も、キンジが苦手なのは蜘蛛は蜘蛛でもモ●ハン4の『ネルスキュラ』、別名『影蜘蛛(かげぐも)』なのだが。物は言いようとはまさにこのことか。

 

 アリアは「うぅぅ。こればっかりは昔からどうしてもダメなんですよね。どうしてなのでしょうか。雷が直撃するわけなんてないってわかってるのに……」とブツブツ呟きながらキンジの前方を歩く。顔が真っ赤に染まっていることから、よほど雷が怖いことがバレ、さらにキンジに励まされたのが今になって急に恥ずかしくなったのだろう。ついさっきまで怒りを感じていたかと思えば膝をついて落ち込み、今度は赤面する。忙しい奴だなぁと内心でアリアへの純粋な感想を抱きつつ、キンジはアリアの背中を追った。

 

「で、次はどこに向かおうか?」

「そうですね。ひとまずコックピットに向かいましょう。武偵殺しの犯行予告があったことを機長たちに伝えておいた方が後々何かと都合がいいでしょう。それに。武偵殺しも本気でこの便をハイジャックする気ならまず真っ先に狙うのはコックピットでしょうし。理子が割り当てられた客室にいなかったことを考慮しても、これが最善の選択だと思います」

「確かに、それもそうだな。じゃあそれで行くか。コックピットの場所はわかるのか?」

「大丈夫です。これでもこのようなタイプの飛行機には何度か乗ったことがありますので。ついてきてください」

 

 Sランク武偵:神崎・H・アリアの見た目相応の弱点を目の当たりにした所でキンジが問いかけると、完全とはいかないものの平静を取り戻したアリアは周囲に最大限警戒を払いつつ、操縦室行きを提案してきた。このいかにもセレブ御用達感の漂う飛行機への搭乗経験があることや、以前のアリアの「……いくらですか? こう見えて私、結構持ってますよ?」発言からしてアリアの家は裕福なのかもしれない。そんなことを想起しつつ、キンジはアリアの提案に即座に了承の意を伝えた。

 

 キンジは主に自身の背後に目を配りながら、アリア先導の元でコックピットへと向かう。役割分担としてはアリアが前方、キンジが後方を警戒するといった具合だ。その他の想定外の襲撃に関しては臨機応変に対応することになっている。

 

 数分後。コックピットまであと扉一枚といった所まで到着した所で、キンジとアリアは拳銃に手を当てる。ここまで来ればさすがに乗客はいない。コックピットに用事のある乗客なんて余程のことがない限りはいないと言っていい。二人はコックピットで武偵殺しが待ち受けている可能性を加味して拳銃を取り出す。今の二人を第三者目線から見れば今まさにハイジャックを目論む危ない二人組に見えたことだろう。偶然にも周辺にキャビンアテンダントの姿がないことに二人は内心で感謝しつつ、扉へと慎重に進んでいった。

 

 そして。キンジはコックピットへ繋がる扉へと手を掛けてアリアと視線を交わす。二人はともに一度うなずくと、キンジは扉をゆっくりと開けた。その先に、キンジとアリアの視界に見覚えのある金髪の人物の姿がはっきりと映った。

 

「「あ」」

「う?」

「「「……」」」

 

 キンジとアリアの視線の先。そこには機長と副機長らしき中年男性二名の首根っこを掴んでズルズルと重そうに引きずってコックピットの外へと持っていこうとするキャビンアテンダント姿の理子がいた。大の大人二人を移動させるのは中々骨の折れる作業なのか、今の理子は息切れ状態だ。理子が力を入れるのと連動して金髪ツインテールがゆらゆらとあちこちに揺れている。

 

 キンジとアリアは別の意味で想定外極まりない光景に無意識のうちに声を漏らす。二人の出した声に反応して顔を二人の方へと向けた理子もどこか呆けたような声を出す。まさかの状況での鉢合わせにキンジとアリアは思わず思考停止した。理子にとってもここで二人と会うのは予想の埒外だったのか、石像の如く見事に硬直している。痛いぐらいの沈黙がその場を包みこんでいく。世界からあらゆる色が失われたような、そんな錯覚さえ三人には感じられた。

 

「……決まりですね。大人しく投降しなさい! 武偵殺し、峰理子!」

「――わわッ!? ちょっ、神崎さん!? 待ッ――機長バリア!」

 

 どれだけ時間が経った後だろうか。ハッと我を取り戻し、『理子=武偵殺しの真犯人』だと断定したアリアは即座に二丁のガバメントを理子に向ける。いきなり銃を向けられた理子はビクッと肩を震わせつつも咄嗟に右手に持っていた機長を盾にする。一体理子に何をされたのか、白目を剥いている機長は全く動く気配がない。うめき声すら上げていない。返事がない。ただの屍のようだ。機長を人質とされたことでアリアはうかつに理子へと発砲できなくなってしまった。

 

「理子ッ!」

「ッ!? 副機長シールド!」

 

 アリアに一歩遅れてキンジも拳銃を向けるも理子はすかさず左手に持っていた副機長をも盾にしてくる。照明の光を反射することで現在進行形で頭が照り輝いている副機長も全く動く気配がない。呼吸をしているのか疑いたくなるほどにピクリともしない。返事がない。ただの屍のようだ。副機長をも人質にされたことでキンジも容易に理子を撃てなくなってしまった。

 

 様々な機械が所狭しと設置されているコックピットにて。それぞれ理子に拳銃を向けるキンジとアリア。操縦席を背に絶賛気絶中のパイロット二名を盾にする理子。何とシュール極まりない光景であろうか。

 

「え、えっとさ。遠山くん。神崎さん。とりあえず場所移さない? さすがに操縦室(ここ)で暴れるわけにはいかないでしょ?」

「……それもそうですね。どこかいい場所はありますか?」

「二階の客室でいいと思うよ? あそこ解放的だし。それに満室じゃないみたいだよ?」

「……はぁ。そんじゃあ、そこ行くか」

「……ですね」

 

 夢の世界へと旅立っている機長と副機長の顔の間からおっかなびっくりといった風にひょっこり顔を出した理子が依然として銃を理子に向けたままのキンジとアリアに提案を持ち掛けてくる。

 

 確かに理子とこの場で交戦してしまえば、流れ弾が操縦室の機材をぶち抜いてしまう可能性は大いにあり得る。例えここで機長&副機長を気絶させた理子を上手いこと捕らえることができたとしても、結果としてANA600便が墜落したのでは話にならない。理子の方もANA600便が墜落するなんて事態は避けたいのだろう。だったら。この理子からの提案を素直に受け入れることは双方にとって悪い話ではない。キンジは拳銃を下ろすと、ため息混じりに理子の提案に応じる旨を伝えた。アリアも同意見だったのか、キンジの言葉に同調した。

 

 かくして。どこか気の抜けた雰囲気の中、キンジ&アリアと理子との会合は二階の空いている客室にて仕切り直しとなった。

 




キンジ→蜘蛛(ネルスキュラ)に苦手意識を抱く熱血キャラ。モ●ハン(武藤から紹介されたものの一つ)はボチボチやっている。
アリア→原作通りの雷嫌い。一刻も早く克服しようと敢えて雷雨の日に外に出かけたりして頑張ってはいるものの、結局ダメなものはダメな子。キンジが蜘蛛(通常サイズ)嫌いだとしっかり誤解している。
理子→機長と副機長を盾として使用する辺り、意外と鬼畜なビビりさん。

 ビビりこりんがいると大抵のシリアスシーンは無効化されますね。笑いに変換されますね。ホント、ありがたい限りです。ええ。


 ~おまけ りこりんの装備(一部公開)~

・機長(属性:盾、短髪、ダンディ)
 重さは結構あるが、あらゆる攻撃から使用者を守ってくれる中々ありがたい盾1号。襟首を持つと比較的使いやすい。無属性。ただし使用回数制限アリ。何度か使うと血飛沫が舞うことも。使い切ったら死ぬ。消耗品。定期的に手入れをする必要がある。どこをとは言わない。

・副機長(属性:盾、ハゲ、ちょびヒゲ)
 重さは結構あるが、あらゆる攻撃から使用者を守ってくれる中々ありがたい盾2号。襟首を持つと比較的使いやすい。光属性。たまに相手の目潰しをかって出てくれることも。ただし使用回数制限アリ。何度か使うと血飛沫が舞うことも。使い切ったら死ぬ。消耗品。定期的に手入れをする必要がある。どこをとは言わない。

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