【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも。ふぁもにかです。前回の次回予告でりこりんと接触しに羽田空港に行くぜ的な感じの宣言をアリアさんにさせましたが、まだ動き出しません。飛行機上に舞台が移るのは次回のことです。あと今回は文字数ちょっとだけ少ないです。その代わりと言っては何ですがあとがきの文字量が結構多いです。あとがきの方に色々とネタが詰まっています。あとがき1400字もあります。……何かごめんなさい。

 それはそうと。ここ、ハーメルンについに挿絵機能が付きましたね。やりましたね。これで画才と文才を兼ね備えた天に二物を与えられし素晴らしい作家さんたちの活躍が期待できますね。これからのハーメルンライフが非常に楽しみです。……まっ、棒人間レベルの絵しか描けない私には関係のない話ですけど。



13.熱血キンジと宣戦布告

 

 武藤から『理子=武偵殺しの真犯人説』を有力なものとする機械音声の解析結果を得たキンジとアリア。羽田空港の午後7時のロンドン行き飛行機――ANA600便――の離陸まであまり時間がないことから二人が急いで準備を始めようとした時、まるでタイミングを見計らっていたかのようにアリアの携帯に電話がかかってきた。アリアの赤色携帯が初期設定そのままの無機質な着信音を淡々と奏でる。

 

「ッ。非通知、ですか……」

「非通知?」

「はい。とりあえず、出てみます」

 

 非通知からの電話。タイミングがタイミングなだけに自然とアリアは警戒心を募らせる。しかし。何か重要な連絡である可能性が捨てきれない以上、アリアに電話に出ないという選択肢はない。アリアは一つ息を吐くと不審そうな視線を向けるキンジと武藤をよそに携帯を耳にあてがった。

 

「……もしもし」

『神崎ヶ原・H・アリアド――って違う違う。えー、ゴホン。神崎・H・アリアで、やがりますカ?』

「ッ! この声、武偵殺し!?」

「なッ!?」「――ッ!?」

『ご名答、でやがりマス。神崎・H・アリア』

 

 電話越しに聞こえてきた機械音声にアリアは驚愕を声に出す。まさか武偵殺しの真犯人の方から電話が掛かるとはつゆにも思っていなかったキンジ、アリア、武藤の3人は驚きを隠せない。対する電話先の相手は何とも得意げな機械音声を返してきた。今にも携帯電話片手にニタァと口角を吊り上げていそうな機械音声だった。

 

「わざわざ私に連絡を取ってくるとは……一体何のつもりですか?」

『簡単な話で、やがりマス。今夜7時、ロンドン行きANA600便は我……じゃない。私の手によってハイジャックされ、やがりマス。もし貴様がANA600便に乗り、やがれば特別に相手して、やがりまショウ』

「「「ッ!?」」」

『パートナーがい、やがるのであれば同行を許可し、やがりマス。パートナーがいなくとも同行者は一人までなら以下同文で、やがりマス。ただし仲間を二人以上連れて来、やがれば別の旅客機を即座に爆破し、やがりマス。賢明な判断を心より期待し、やがりマス』

「「「……」」」

 

 三人は電話先の相手の言葉を一言一句漏らさないよう声を殺して耳を傾ける。アリアへの犯行予告及び挑戦状を決して聞き漏らすことのないように声を殺す。

 

『では。これにて失礼し、やがり――』

「待ってください、武偵殺し! 1つ、聞きたいことが――」

『拒否し、やがりマス。私は何一つ答える気はあり、やがりまセン。聞きたいことがあ、りやがるのであればANA600便、午後7時発、ロンドン行きのチャーター便にずべこべ言わずにとっとと乗り、やがれデス』

 

 伝えたいことだけを一方的に伝えて電話を切ろうとする武偵殺しにアリアは咄嗟に待ったの声を上げる。聞きたいことはもちろん、武偵殺しと理子との関係性だ。しかし。電話先の機械音声はアリアの問いに取り合うつもりは微塵もないらしい。アリアの言葉を早々に打ち切り、有無も言わさず言葉を重ねてくる。

 

『あァ。もちろん、尻尾巻いて逃げだし、やがるのもアリで、やがりマス。敵地に乗り込まず、戦略的撤退を選ぶことは恥ではあり、やがりまセン。彼我の圧倒的な実力差を前に涙を呑んで戦闘を回避し、やがることもまた勇気で、やがりマス。……で、神崎・H・アリア。貴様の答えは何で、やがりマスカ? 無理を承知で私に挑んで命を散らし、やがりマスカ? 命を惜しんで泣き寝入りし、やがりマスカ?』

「……上等です」

『?』

「私に直々に宣戦布告したこと、死ぬほど後悔させてみせやがりますヨ。首を洗って待ちやがなサイ! 武偵殺しッ!!」

 

 嘲笑の念を存分に含んだ挑発的な機械音声を前に、アリアはフッと電話先の相手を見下すように鼻を鳴らすと強気の姿勢に打って出る。怒りの感情を隠すことなく通話口に向けて声を荒らげる。口調が武偵殺しのものへとしっかり移ってしまっている辺り、アリアは相当ご立腹のようだ。

 

 ただでさえ自分の母親に濡れ衣を着せてきたにっくき武偵殺し相手にコケにされたのが許せなかったのだろう。格下だと見られていることに我慢ならなかったのだろう。むしろ今まで怒りに我を失わなかっただけよく頑張ったと言えよう。

 

『クククッ。良い返事でやがりますネェ。威勢がいいのは結構なことで、やがりマス。楽しみにして、やがりマスヨ』

 

 現在進行形で沸々と怒りゲージが溜まっているアリアの答えに満足したのか、武偵殺しは愉快そうに言葉を紡ぐ。電話先の武偵殺しが悦に入っているであろう様子が目に浮かぶようだ。かくして。武偵殺しの喜色混じりの声を最後にブツリと電話が切られた。

 

「キンジ。私は――」

「一人で行くなんて言うなよ。俺も行くぞ。何たって俺はアリアのパートナーだからな。それに敵も一人で相手してやるとは言っていないし、そもそも武偵殺しが単独犯とは限らない。何より今の機械音声には理子のキョドキョドした感じがなかった」

 

 沈黙がキンジの部屋を包む中。キンジは今にも単独で武偵殺しに挑む覚悟を決めてしまいそうなアリアの肩を掴んで一旦動きを止める。真紅の瞳に憤怒の炎をメラメラと燃やすアリアが怒りの赴くままに独断専行でANA600便に乗り込むことのないように言葉を畳みかける。

 

 キンジには武偵殺しのあのあらかさまな物言いはアリアが単独でANA600便に乗り込むよう仕向けているように思えて仕方なかった。武偵殺しにとって神崎・H・アリアは自身が罪を着せた神崎かなえの娘であり、同時にチャリジャックにバスジャックと二度も自身の犯行を妨害してきたSランク武偵だ。そろそろアリアを邪魔だと思っても何ら不思議じゃない。そもそもそういった理由でもないと武偵殺しがわざわざアリアに犯行予告の電話を掛けてくる思惑がわからない。

 

「……確かに。言われてみればそうですね。失念していました。では、キンジ。一緒に行きましょう。行き先は羽田空港。午後7時にロンドンへ向けて飛び立つANA600便です」

「あぁ。二人で武偵殺しを逮捕するぞ」

 

 キンジの意見を受けて考え直したのか、アリアはフルフルと怒りの念を振り払うように首を振りフゥーと大きく息を吐く。それでも沸々と煮えたぎる怒りが収まらないのか、赤色携帯を握りつぶさん限りにギュッと握りしめているが、怒りで判断力を失うほどではない。これでひとまずアリアは大丈夫そうだな。キンジは武偵殺しの思うつぼとならなかったことに安堵の息を吐いた。

 

「……キンジ。峰さんのことは……?」

「今は黙っててくれないか、武藤? まだ理子が完全に武偵殺しだって決まったわけじゃないからな。変に混乱させるのはマズいだろ」

「……ん。わかった……」

 

 バスジャックの件みたいにそこまで深刻な被害なしに解決できればいいんだがな。キンジがどこか遠い目でそんなことを考えていると、武藤がキンジに判断を仰いできた。つい先ほど機械音声の解析結果を話す際に他言無用だとキンジとアリアに前置きしていた武藤だったが、大方さすがに状況が急転したことで自身の持つ情報を公開すべきか否か迷っている。そんな所か。

 

 しかし。武偵殺しの正体がまさかの武偵、それも白雪ほどではないがそれなりに武偵高内で人気の高い理子だったとなれば、事実を知った者たちの衝撃は計り知れないものとなるのは確実だ。それに。まだ理子が武偵殺しの起こした一連の事件の主犯だと現時点では断定できていない。世の中には知らぬが仏という言葉がある。無闇に『理子=武偵殺しの真犯人説』を広める必要はないだろう。

 

「……キンジ、神崎さん……」

「どうした、武藤?」

「……二人とも、気をつけて……」

 

 拳銃にバタフライナイフといったお馴染みの武器一式を装備したキンジ。双剣双銃(カドラ)としての装備一式を整えたアリア。いざ行かん、羽田空港へといった感じで玄関へと向かう二人を武藤が背後から呼び止めてくる。心配そうに二人を見つめる武藤の言葉に二人はピッタリ同じタイミングで一つ頷いた。そして。二人は外へと駆け出した。決戦の時は、近い。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「クククッ。上手く乗ってくれたようだな。まぁ、銀氷の魔女(ダイヤモンドダスト・ウィッチ)たる我にかかればこの程度、造作もない」

 

 某所にて。アリアとの電話での接触を終えたジャンヌは心底愉快そうな声を漏らす。あらかじめキンジの部屋に小型カメラを仕掛けていたジャンヌはキンジとアリアが部屋を飛び出し自分の望んだ通りに羽田空港に向かっていったことにニヤリと笑みを深くする。

 

「さて。お膳立てはしたぞ、リコリーヌ。後はお前次第だ。我はこれから星伽ノ浜(ほとぎのはま)白雪奈(しらゆきな)をイ・ウーに誘か……歓迎する準備をしなければならないから協力はできないが……存分に暴れるといい。リコリーヌの力をしかと見せつけるといい。何せ、勝利の女神は我らに微笑んでいるのだからな。フフフッ、ハァーハッハッハッハッハッハッハッ!」

 

 ジャンヌはこの場にいない理子へ向けて言葉を連ねる。そして。愉悦に満ちた気持ちを抑えきれなかったのか、某所――静かな雰囲気が売りの東京のとあるネットカフェ――に銀髪の眼鏡美少女:ジャンヌの高笑いが響き渡った。

 

「申し訳ございません、お客様。他のお客様のご迷惑となられますので当店で電話をお掛けになったり大声を出されたりするのはちょっと――」

「ん? あぁ。すまない。つい隔離結界を張り忘れていた。我としたことが、少々配慮が足らなかったな。以後気をつける(バカな!? いつの間に我の背後に――!? まさか、こいつ……超能力者(ステルス)か!?)

 

 ――が。高笑いしていた場所がネットカフェ内だったこともあり、すぐさま店員に注意されて内心で驚愕を顕わにする策士の一族、ジャンヌであった。何とも締まらないイ・ウー構成員である。

 

 ちなみに。キンジたちが既に『理子=武偵殺しの真犯人説』に辿り着いており、特にジャンヌが理子に代わって武偵殺しになりすまして挑発行為を行わなくてもキンジとアリアがANA600便に向かっていたであろうことをジャンヌは知らない。

 




キンジ→ついに武偵殺しの待ち受ける飛行機に乗り込むこととなった熱血キャラ。
アリア→ジャンヌ扮する武偵殺しの挑戦状にやる気と怒りを沸々と煮えたぎらせている子。
武藤→武偵殺しに関する事態が急変したことに内心でちょっとだけ動揺している男。
ジャンヌ→ハイジャック準備に専念する理子の代わりにノリノリで武偵殺しを演じていた中二病重篤患者。ネットカフェ(主にフラット席)に入り浸っている。

 ~おまけ(その1)~
ふぁもにか「次回。怒り狂った『修羅・サヴァン・シンドローム』通称SSSを発現させたアリアさんが勢いあまってビビりこりん殺戮!? キンジ、ビビりこりんをこっそり埋葬するの巻(キリッ)」
理子「…………え? ちょっ、待っ、エッ、ボボボボク死ぬの!? 死んじゃうの!? ねえ!? 答えてよ、ねえッ!?(←ふぁもにかの胸ぐら掴んでガンガン揺らすビビりこりん)」
キンジ「落ち着け理子。お前が死ぬようなことはないさ(←ポンと理子の肩に手を置きつつ)」
理子「ホ、ホホ、ホントに?(ウルウル)」
キンジ「……多分きっとおそらくメイビー(←目を逸らすキンジ)」
理子「うわああああああああああああん!!(理子は逃げ出した!)」
アリア「見つけましたよ? 武偵殺し? さっきはよくも散々コケにしてくれましたね?(残念! 修羅を纏いしアリアからは逃げられない!)」
理子「うぁ、ぁ……(ブルブル)」
アリア「さぁ。風穴の時間ですよ。峰さん(ニタァ)」
――この後の展開は皆さんの類まれなる妄想力にお任せします。とりあえず……強く生きろ、ビビりこりん。

 ~おまけ(その2:没ネタ)~
店員「申し訳ございません、お客様。他のお客様のご迷惑となられますので当店で電話をお掛けになったり大声を出されたりするのはちょっと――」
ジャンヌ「ん? あぁ。すまない。つい隔離結界を張り忘れていた。我としたことが、少々配慮が足らなかったな。以後気をつける(バカな!? いつの間に我の背後に――!? まさか、こいつ……超能力者(ステルス)か!?)」
店員(?)「……クククッ。良い表情(かお)だ。なぜこのオレがテメエの背後(バック)を取れたのか不思議(ストレンジ)で仕方がない、って顔(フェイス)をしてるなぁ」
ジャンヌ「ッ!? 貴様、何者だ!?」
店員(?)「おいおい、忘れたのかぁ? オレだよオレ(ビリビリィ! ←顔のマスクを破く音)」
ジャンヌ「なッ!? 貴様はあの時の!? なぜ生きている!? 貴様は確かに我が聖剣、デュナミス・ライド・アフェンボロス・クライダ・ヴォルテール、略してデュランダルで息の根を止めたはず――」
店員(?)「あれは偽者(フェイク)だ。オレの超能力(ステルス)はテメエもよく知ってるだろう?」
ジャンヌ「ちッ、万物創造(クリエーション)か」
店員(?)「そういうことだ。さて、『銀氷(ダイヤモンドダスト)の魔女(ウィッチ)』。テメエは今オレに背後(バック)を取られている。この意味(ミーニング)、わかるよな?(ニタァ)」
ジャンヌ「……何が目的だ?(苦々しげに)」
店員(?)「何、取引(トレード)がしたいだけさ。テメエにとってもこれは悪い話じゃねえはずだ(ニヤニヤ)」
ジャンヌ「――。――」
店員(?)「――。――、――」
ジャンヌ「――!? ――」
他の客&店員((((いつまでやってんだこいつら……))))

 ……何でしょう。何かおまけの方が本編より遥かに盛り上がってる気がしますね。ええ。
 結論:中二病重篤患者同士を出会わせること勿れ。中二病重篤患者は極力孤立させるべし。

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