【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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キンジ「来いよアリア! 銃なんか捨ててかかってこい!!」
アリア「お断りです! 銃を捨てたら貴方に勝てなくなるでしょうがッ!」

 どうも、ふぁもにかです。今回はキンジくんとアリアさんとの戦いですが……戦闘描写が物凄く下手くそになっている気がするのは私の気のせいだと考えたい今日この頃。こんな体たらくでシャーロック戦を盛り上げられるかが非常に心配になってきたでござる(´・ω・`)

P.S.緋弾のアリアAAのOPがナノさんなのが超絶嬉しい件について。これは盛り上がるOPになること不可避ですわ! ヒャッハハハハハッハハハハハァァァアアアーー!!



122.熱血キンジと立ち向かう心

 

 ボストーク号内の教会にて。両手に小太刀を装備したキンジは「ハァァアアアアアアア!!」と、素早くアリアとの距離を詰めようと駆ける。そのキンジに向けてアリアは白黒ガバメントの照準をキンジの足元に定め、威嚇射撃を目的として数発銃弾を放つ。

 

 当然、この程度の銃撃をかわせないような、ヒステリア・ベルセを発動中のキンジではない。キンジはズンと強く踏み込んだ右足を起点にして軽く跳び上がる。そうして、アリアの銃弾を飛び越えたキンジは前方へジャンプした勢いのままにアリアへ「せいッ!」と小太刀を振り下ろす。

 

 だが。キンジが着地した時には、振り下ろした小太刀の先にアリアの存在は既にない。迅速な横飛びでキンジの攻撃をかわしつつ、小柄ゆえのフットワークですぐさまキンジの背後に回ったアリアはキンジの背中目がけて「そこですッ!」銃弾を放たんとするも、キンジが振り向きざまに振るってきた小太刀を防ぐために一旦発砲をやめてガバメントを盾にする。

 

 結果、キンジの膂力任せの小太刀の攻撃をしっかりと受け止めたアリアの体は「くッ!」と軽く吹っ飛ばされる。否、アリアは敢えて吹っ飛ばされたのだ。キンジにぶっ飛ばされることで上手いこと距離を取ったアリアは再びキンジへとズガガガッと連続して銃弾を放つ。キンジを攪乱するように聖堂をグルリと一周しながら、アリアは絶え間なく銃弾を浴びせようとキンジへ発砲する。

 

 

 キンジとアリアの戦いは互角の様相を呈していた。当然だ。何せ、キンジとアリアは白雪の護衛を始めた頃からお互いの戦い方を知り、切磋琢磨するために何度も模擬戦を行ってきたのだ。いくら不定期開催だったとはいえ、これまで何回も模擬戦を行ってきたキンジとアリアにとって、今回の衝突は最初から相手の手札がわかりきっている状態での戦いなのだ。

 

 アリアはキンジを見て銃技を学び、銃弾撃ち(ビリヤード)を習得した。

 キンジはアリアを見て、2本の小太刀を使った戦い方を習得した。

 

 模擬戦にて相手を観察し、自身に取り入れられる技術は積極的に吸収し、そうして己を高めてきた者同士の衝突は、どこまでも決着がつかず、平行線を辿っていく。

 ゆえに、重要となってくるのは体力の使い方。いかに体力を温存し、ここぞという時に取っておいた体力を存分に使用するかがカギとなる。

 

 

(……って、アリアは考えてそうだな)

 

 キンジはアリアの繰り出す弾幕を横っ飛びでかわしつつ、キンジはアリアの考えに検討をつける。確かに。俺とアリアの模擬戦はいつも互角で、拮抗していて、どっちが勝つかは実際にやってみないと最後までわからなかった。

 

 けれど、それはあくまで俺がノーマルモードの時の話だ。今の俺はヒステリア・ベルセに身を委ねている。思考力・判断力・反射神経などが通常の51倍にまで跳ね上がっている俺にとって、俊敏な動きにさえ気をつけていれば、アリアは正直そこまで脅威ではないのだ。

 

 それだけでも俺の勝利は固いのに、それに加えて今のアリアの動きはどこかぎこちない。本領発揮にはまるで程遠い。今のアリアとの戦いが互角のように見えるのは、俺がアリアになるべく怪我をさせないように細心の注意を払いながら戦っているからだ。

 

 

「キンジ、どうして……どうして銃を出さないんですか!?」

「ハッ、出すわけないだろ。アリアの後ろにはシャーロックが控えてるんだ。こんな所で、弾数を無駄に消費するわけにはいかない。それに――これぐらいがちょうどいいハンデだろ? それが嫌なら、俺に銃を抜かせてみろよ」

「ッ、この……!」

 

 アリアの弾幕をひとまずかわしきったキンジに向けて、アリアが声を荒らげる。その問いにキンジがヒステリア・ノルマーレの紳士具合からかけ離れた、人を小バカにしたような笑みとともに返答すると、アリアはギリリと怒りをままに歯噛みする。キンジの挑発に見事なまでに乗ってくる。

 

 実をいうと、キンジが銃を使わないことには他にも理由がある。というのも、キンジはシャーロック戦に備えて少し銃に仕込み(・・・)をしているのだ。その仕込みがうっかりアリアに発動してしまい、大惨事となるのを未然に防ぐために、キンジは今回の戦いでの銃の使用を封印しているのだ。

 

 

(あの仕込みが発動したら、アリアに怪我をさせない所の話じゃなくなっちまうしな)

 

 キンジはアリアが教会を駆け巡りながら四方八方から放つ銃弾を小太刀2本で全て弾き飛ばし、軌道を変更させる。しかし、弾き飛ばされた銃弾の行く先をあらかじめ予測していたアリアは、あらぬ方向へと飛んでいく銃弾を目がけて「まだですよ!」と続けざまに発砲する。アリアのガバメントから解き放たれた銃弾は虚空へと散っていこうとする銃弾勢に全てもれなく命中し、その銃弾勢の行く先を再びキンジの体へと押し戻していく。

 

 銃弾撃ち(ビリヤード)を上手く活用して、弾き飛ばした銃弾の軌道をキンジに襲いかかるように修正してきたアリアに、キンジは「ちッ」と舌打ちをしつつ、迫りくる銃弾の包囲網を抜けるために、一旦バックステップで後退する。

 

 キンジの後退をチャンスと踏んだアリアは装備を白黒ガバメントから小太刀2本へと切り替え、キンジに一気に接近し、キンジの首を狙って「ふッ!」と横薙ぎの一閃を繰り出す。一方のキンジがさらに一歩引くことでギリギリかわすと、今はこれ以上接近戦をするべきでないと判断したアリアがキンジから距離を取ろうとする。

 

 だが、今のキンジが。銃縛りで戦っているキンジが。わざわざ自身から近づいてきてくれたアリアが、キンジから一定の距離を置こうとするのを許すわけがなかった。

 

 

「逃がすかよ!」

 

 キンジは右手に持っていた小太刀を一旦虚空へと放り投げると、瞬時に己のベルトに内蔵されているワイヤーを射出する。すると。風を切って迅速に射出されたワイヤーの先端はキンジから離れようとするアリアの右腕にグルグルグルと巻きつき、しっかりと固定される。

 

 

「えッ!?」

 

 アリアがしまったと顔を歪めるよりも早く、キンジはグイッとワイヤーを引っ張り、アリアの幼女な体をいとも簡単に引き寄せる。そうして。実に乱暴な形でアリアとの距離を縮めたキンジは、いきなり引っ張られたことで「わ、ちょッ!?」とバランスを崩しているアリアの顔面へ向けて、さも当然のようにゴウと唸りを上げる右拳を繰り出そうとした。

 

 

(まずは一撃、お見舞いしてやる! 顔面クリティカルヒットだッ! ……って、違う! 何やってんだ俺!? アリアを傷つけちゃ意味ないだろうが!)

 

 と、ここで。キンジは正気に戻る。時には女性を傷つけることをも厭わないヒステリア・ベルセの血が強くなった影響による暴走から我に返ったキンジは、繰り出した右拳を引き戻そうとする。しかし。一度勢いを込めて繰り出した拳は急には止められない。引っ込められないまま、キンジの拳はアリアの顔面に突き刺さらんとする。

 

 

(くそッ、このままじゃアリアの顔を殴り飛ばしてしまう! アリアの回避も間に合いそうにないし……こうなってしまった以上、なるべくアリアを傷つけずに済む軽い攻撃に変えるしかないぞ!? どうする、遠山キンジ!?)

 

 キンジはヒステリア・ベルセにより通常の51倍にまで飛躍的に向上した思考力で、アリアへのダメージをできるだけ抑えられる攻撃手段を瞬く間に導き出し、すぐさま実行に移す。右手の人差し指を折り曲げ、親指でエネルギーを蓄えてからズラし、指先を相手に勢いよくぶつけていく。要するに、全力の殴打から全力のデコピンへと攻撃手段を転換する。

 

 通常、デコピンは威力の高い攻撃方法ではない。しかし、今回の場合はキンジが渾身の力を込めて繰り出した右拳を無理やりデコピンの状態に切り替えてから攻撃したためか、意外と強力なデコピンとなったらしく、ビシィッ!と乾いた効果音が教会に響いたかと思うと、アリアが「――あぅ!?」と可愛らしい悲鳴を上げる。

 

 

「~~~ッ!! 舐めるのも、いい加減にしてください!」

 

 キンジのデコピン攻撃に思わず上半身をのけ反らせたアリアはグイッと無理に体勢を戻しつつ、憤りに満ちた声を轟かせる。当然だ。アリアからしてみれば、銃の使用を封印した上で、デコピン攻撃を繰り出してくる今のキンジはただアリアを弄んでいるようにしか見えないのだから。

 

 

(ま、そりゃあ誤解されるよな。こればかりはそう思われても仕方ないし)

 

 一方。キンジはクルクルと空から降ってきた自身の小太刀を右手でキャッチすると、上段からX斬りを放つアリアの斬撃を小太刀2本で正面から受け止める。

 

 

 その後。キンジとアリアの戦いは半ば強制的に近接戦へと持ち込まれた。

 アリアは縦横無尽に小太刀二本を繰り出しキンジと切り結びつつ、斬撃の中に蹴撃をも混ぜつつも、隙あらば自身の移動範囲をキンジのベルトを中心として約3メートル範囲内に制限してくるキンジのワイヤーを切断しようとする。

 

 しかし。せっかく得られたアドバンテージをそう易々と放棄するキンジではない。ワイヤーの切断を目的としたアリアの斬撃の全てをいなし、受け止め、ズラすことでワイヤーを守りつつ、キンジはアリアへ斬撃を繰り出していく。もちろん、アリアになるべく怪我を負わせる気のないキンジが狙っている箇所はアリアの小太刀の柄部分や防刃制服に守られている箇所ばかりだったりする。

 

 それぞれの二刀の小太刀を激しくぶつけ合わせる激しい近接戦闘。体格差から、ヒステリアモードの有無から、ワイヤーで動きを制限され、キンジがワイヤーを引っ張ればすぐにバランスを崩してしまうことから、アリアが不利極まりない状況なのはまず間違いない事実である。

 

 しかし、これだけ不利な要素がそろっているというのにアリアは善戦する。キンジの繰り出す小太刀の連撃に対して互角に対抗してくる。どういうことだと、その理由をキンジは考えて、すぐに納得した。

 

 何も不思議なことじゃない。この状況は当然の結果なのだ。何せ、アリアはこれまで数多くの凶悪犯罪者を捕まえていて、その中にはとんでもない超能力を使ってくる輩もいたはずなのだから。そんな理不尽な攻撃を次々と放ってくる連中を相手に、超能力を持たない状態で、それでもいつも勝ち続けてきたアリアは、その積み重なった経験ゆえに不利な状況に滅法強いのだろう。

 

 

(アリア。やっぱ、お前はさすがだよ。けど――これで終わりだ)

 

 キンジは首元へ迫るアリアの斬撃を、首を背後に反らすことで回避しつつ、ワイヤーを力強く引っ張る。結果、無理やり体を前方へと引きずり出されたアリアはその勢いを利用してキンジを攻撃しようと力強く床を踏みつける。だが、その瞬間。床を踏んだ右足がズルリと滑り、アリアは思いっきりその場に転びそうになる。

 

 

「なぁッ!?」

「足元がお留守だったな、アリア」

 

 まさかの事態に驚愕を顕わにするアリアを前に、キンジはニヤリと笑みを浮かべる。

 なぜアリアが転びそうになっているか。答えは単純明快、アリアが床に転がる空薬莢を盛大に踏んだからだ。より正確に言えば、キンジがアリアと激しく切り結びながらも地味に移動することで、アリアが空薬莢を確実に踏んでくれる位置へとアリアを誘導していたからだ。傷一つ負うことなく眼前のアリアの対処をしながら、周囲の状況を隈なく把握し、さらにアリアに悟られることなく誘導することがいかに難易度の高いことかは言うまでもないだろう。

 

 

「頭を冷やしてもらうから、ちょっとばかり覚悟しろよ。アリア!」

 

 キンジは右手に持った小太刀を背中に仕舞うと、どうにか転ぶことなく踏みとどまったアリアの胸元を掴んで引き寄せ、そのまま渾身の頭突きを放つ。キンジの全力の頭突きはゴッという鈍い音を辺り一帯に響かせる。その頭突きは奇しくも、あの時の、バケツをひっくり返したかのような激しい雨の降りしきる中での、神崎かなえが犯罪に手を染めたことを疑い始めたアリアの思考を中断させた時と同じ方法だった。

 

 

「う、ぐ。頭が……」

 

 キンジのあまりに強烈な頭突きを心の準備なしにモロに喰らったアリアは、キンジがアリアの胸元から手を放すと同時に思わず両手に装備した小太刀2本を手放し、尻餅をつく。ズキズキと痛むせいでロクに考えの纏まらない頭に手を当てながら、まだ戦闘は終わっていないとバッと立ち上がろうとしたアリアだったが、その喉元に小太刀を突きつけられたことで動けなくなった。

 

 

「お前の負けだ、アリア」

「……そう、ですね。私の負けです。……キンジ。前に貴方に頭突きをされた時も気になっていたんですが、なんでキンジは全然痛がってないんですか?」

「遠山家は先祖代々石頭だからな。この程度じゃ特に何ともないんだよ」

「そうですか。……ハァ。私だけこんなに痛い思いをしないといけないなんて、理不尽です」

 

 アリアは容赦なく痛みを主張する頭を両手で押さえながら、目尻に涙を溜めたジト目でキンジを見上げる。一方。アリアから戦意がなくなったことを確認したキンジは、アリアの責めるような眼差しをスルーしながら左手の小太刀をも背中に仕舞う。

 

 

「なぁ。今の戦いでどうして負けたか、お前ならもうわかってるよな。アリア?」

「……」

「理由はいくつかあるけど、一番の理由はお前の意志が弱かったからだ。口では色々言ってたけど、本当は自分の決断が正しいだなんて思ってなかっただろ? 正確に言えば、お前は迷っていた。シャーロックの言い分を盲目的に信じる自分と、シャーロックを信じ切れずに否定する自分とで板挟みになっていた。だから、お前は俺に負けたんだ」

 

 キンジは今回のアリアとの戦いを振り返り、自分なりに分析し導き出した推測をアリアに話してみる。すると、アリアは少しだけ沈黙を貫いてから「よく、わかりましたね」とポツリと呟いた。

 

 

(やっぱりそうか。戦闘中のアリアの動きが終始ぎこちなかったこともそうだけど……何より、言葉で殴り合っていた時のアリアのあの荒ぶりようは、シャーロックを盲信しているというよりは、憧れのシャーロックを盲信したくて仕方ないって感じだったからな)

 

 アリアと口論をしていた時のアリアの様子を思い出しながらも、キンジはアリアと視線を合わせるためにしゃがみ込み、ポンと労わるようにアリアの頭に手を乗せる。

 

 

「あ……」

「とりあえず、アリアにとってシャーロックがどれだけ大切なのかはよくわかったよ。アリアにとってのシャーロック・ホームズは、憧れで、目標で、何よりの誇りで。だからこそ、アリアはシャーロックの言葉を受け入れるか否かで揺れている。でもさ、シャーロックの言葉を盲信できていないってことは、シャーロックの主張が、シャーロックの示したハッピーエンドのシナリオが間違ってるって、大なり小なり思ってるからだろ? だったら、アリアはシャーロックに憧れているからこそ、シャーロックの間違いを正してやるべきなんだ」

「私が、ひいお爺さまの間違いを正す?」

「そうだ。今のシャーロックは間違っている。少なくとも、今のシャーロックはアリアの思い描くシャーロックとは違っている。なら、アリアはシャーロック大好き人間の務めとして、シャーロックの間違いを正してやって、元の正義のヒーローなシャーロックを取り戻すべきなんだ。それが、誰か特定の人物に強い憧れを抱く人間の責務って奴だ」

「……」

「俺だって、カナ姉がアリアを殺すって言った時、全力で止めた。カナ姉に憧れてるからこそ、好きだからこそ、正しい道を歩いていてほしかったんだ。取り返しのつかない過ちを犯してほしくなかったんだ。アリアだってあの時の俺と同じ気持ちのはずだ。違うか?」

「キ、ンジ。話はわかります、わかりますが……私はひいお爺さまに嫌われたくありません。せっかく認めてくれたのに、ひいお爺さまに反抗して、嫌われたらと思うと――」

「――アリア。イエスマンになることだけが優しさじゃない。シャーロックのことを思って、奴のやり方を否定してやるのもまた優しさなんだ。それに、シャーロックはバカじゃない。アリアの否定に込められた優しさなんか軽く推理して、わかってくれるだろうさ」

「キンジ……」

 

 静かな口調でキンジに説得されたアリアはスッと目を瞑る。そして。何秒か経過した後にアリアはおもむろに目蓋を開ける。その真紅の瞳に確かに理性的な光が宿っていることから、どうやらアリアはシャーロックの提案を受け入れずに立ち向かう決意を固めたらしい。

 

 

「アリア、覚悟はできたか?」

「……はい」

「よし。それじゃあ、行こう。シャーロックの奴に、お前のやり方は間違ってるって、言ってやるんだ。俺の言葉なんてまずシャーロックには届かないだろうが、血のつながったひ孫の言葉なら、もしかしたら届くかもしれないからな」

「わかりました。上手くいくかは自信ありませんが、頑張ってみます」

 

 アリアの復活を目の前で見ていたキンジはいち早く立ち上がると、アリアに手を差し伸べ、アリアを立ち上がらせる。一方、アリアは先ほど手放してしまった小太刀2本を回収し終えた後に、胸の前まで持ってきた両手をギュッと握る形で意気込みを示す。

 

 

「言葉で説得できるならそれでいい。だけど、もしも言葉でダメだったなら、戦えばいい。そうすれば、きっといい感じの着地点が見つかるはずだ。今の俺たちのようにな」

「……キンジ。すみません。私は、ひいお爺さまと戦える気がしません。もしもひいお爺さまと戦うことになってしまったら、私はきっと何もできないと思います」

「そっか。なら、その時はアリアは俺に全部任せて見守ってくれるだけでいい」

「了解です。……パートナーの力になれないなんて、情けないですね、私」

「んなことないだろ。誰にだって得手不得手はある。それを支え合うのがパートナーなんだから、アリアはただ大船に乗ったような気持ちでいてくれればいいさ」

 

 申し訳なさそうに眉を寄せるアリアを元気づけようと、キンジは励ましの言葉を口にする。確かに俺は憧れのカナ姉を止めるために戦った。けど、俺がそうしたからといって、同じことをアリアに強要するのは酷だろうと考えながら。

 

 

「行こうか、アリア。シャーロックを逮捕するぞ」

「……今更な質問かもしれませんが、勝算はあるんですか? ひいお爺さまはキンジより遥かに格上の相手ですよ?」

「格上な相手との戦いにはもう慣れたよ。いくつか策は用意してるし、何とかなるさ」

(大丈夫だ。仕込みだって少しはしてるし、俺には切り札がある。いざという時は、それを使えばいけるはずだ)

 

 キンジはアリアの心配そうな問いにヒラヒラと手を軽く振りながら、いかにもシャーロックなんて相手じゃないと言わんばかりに返答する。その後。キンジとアリアはステンドグラスの奥にポツンと存在する扉を見据えて、ともに歩みを進めていく。この時。キンジが再びシャーロックとあいまみえる時が、もはや秒読み段階にまで迫っているのだった。

 

 




キンジ→アリアをなるべく怪我させないように頑張って戦った、暴れ馬なヒステリア・ベルセを発動中の熱血キャラ。なお、頭突きは怪我の内に入らない模様。
アリア→キンジに色々と手加減されていたにもかかわらず、何だかんだで負けてしまった系メインヒロイン。まぁキンジは人間の皮を被った化け物みたいなものだから、仕方ない仕方ない。アリアはよく頑張った方である。ナイスファイト!

 というわけで、122話は終了です。とりあえず、キンジくんとアリアさんとの戦いがあっさり終わっちゃった件についてですけど……ま、原作でも6ページぐらいでキンジくんとアリアさんとの戦いは終わってましたし、このぐらいの文章量でいいかなぁと。


 ~おまけ(圧倒的ネタ:ソードマスターキンジ)~
『打ち切り最終話:希望を胸に、全てを終わらせる時……!』

 時は、ボストーク号へキンジが乗り込んだ時までさかのぼる。
 シャーロックを倒しアリアを救うため、ボストーク号の艦内を突き進むキンジ。
 そのキンジに立ち塞がったのは、むき出しになった赤褐色の肌に雄牛のように盛り上がった筋肉、全身を覆う体毛と、そして何よりメイド服が特徴的な、巨躯の化け物だった。

キンジ「なッ!? ブラド!? お前、どうしてここに!?」
ブラド『ふふふ、教える道理はないけれど、今の私は気分がいいわ。特別に教えてあげる。私には娘がいてね、あの子の力を借りて拘置所から脱出したの』
キンジ「くッ、マジかよ。……やるしかないか。うぉぉおおおおおおおおおおお!!(←小太刀を右手に持ち、ブラドへと正面から向かっていくキンジ)」
ブラド『さぁ来なさい、遠山キンジ! 私には4つの魔臓があって、その4つの魔臓を同時に攻撃しないと倒せないって設定があったけど、今の私は大人の都合で普通に一突きされただけで死ぬように弱体化されてるわよぉぉおおおおおお!!』
キンジ「そぉぉぉおおおおおおなのかぁぁぁああああああああ!!(←ブラドに小太刀を突き刺すキンジ)」
ブラド『ぎゃあああああああああ!! そ、そんな……この無限罪のブラドが、人間ごときに負けるなんてぇぇええええええ!!(←断末魔を上げるブラド)』

 一方。隣の部屋にて。

夾竹桃「へぇ、無限罪のブラドがやられたようね。でも、アレは四天王の中でも最弱……(←ブラドの断末魔を聞きながら)」
ヒルダ「我が父ながら、平和な島国で生きてきた一武偵ごときにやられるなんて、四天王の面汚しね☆(←やれやれとため息を吐きながら)」
リサ(あれ? リサがここにいるのって、何だか物凄く場違いのような……?)
キンジ「うぉぉおおおお! 喰らえぇぇえええええ!!(←ブラドを刺した勢いのまま隣の部屋へと乱入するキンジ)」
三人「「「ぎゃああああああああああああああ!?(←既に突き刺さっているブラドごと纏めて串刺しにされる面々)」」」

キンジ「……やった。これでボストーク号に残ってたイ・ウー連中を全員倒せたぞ。これでシャーロックへたどり着く際の障害は全てなくなったはずだ」
シャーロック「よく来たね、キンジ君。案外早かったじゃないか(←キンジに近づきつつ)」
キンジ「シャーロック!? お前、この部屋にいたのか!? てっきりもっと奥の部屋にいるものだと思ってたぞ(←四天王の死体から小太刀を抜きつつ)」
シャーロック「キンジ君。戦う前に一つ言っておくことがある。先ほど凡人な私はアリア君を攫ったが、やっぱりあれは人道的にどうかと思ったので解放しておいた。今頃、彼女はアンベリール号へ戻っているはずだ」
キンジ「ふッ、そうかよ。上等だ、俺も一つ言っておくことがある。俺はかなえさんがイ・ウーに濡れ衣を着せられてると思ってたけど、あの人普通に極悪犯罪者だったよ! 弁解の余地もなかったぜ!」
シャーロック「そうかい。ふむ。言いたいことは全て言ったし、これで心置きなく戦えそうだ」
キンジ「うぉぉおおおおおおお! いくぞ、シャーロックぅぅううううううう!!」
シャーロック「来るがいい、キンジ君!」

 キンジの勇気が世界を救うと信じて……!
 ご愛読ありがとうございました! ふぁもにか先生の次回作にご期待ください!

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