【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 パトラはとある場所で鎮座していた。
 ゲンドウポーズを取ってただ玉座に坐していた。

パトラ「……」
パトラ「……まだ、来ませんわね」
パトラ「…………私はいつまでここでスタンバッていればいいのかしら? あと3ヶ月?」

 ということで。どうも、ふぁもにかです。約20日ぶりの更新でござりますね。う~む、リアル生活が忙しすぎるせいでただでさえヤバいふぁもにかの遅筆っぷりがさらに加速しちゃってますね。あんまり熱血キンジと冷静アリアの今後の展開を心待ちにしている読者を焦らしたくはないんですけどねぇ。かつてSALOを執筆してた時のあのバカみたいな速筆は一体なんだったのか。

 ですが、皆さん。ご安心ください! 私のテラ忙しライフは7月中旬になったら終焉を迎え――あ、その頃から単位認定試験の季節が始まるんでした、テヘッ。……何だかパトラ戦を終える頃には2016年になってるような気がしますね、ええ。



109.熱血キンジと技術チートの本領発揮

 

 車輌科(ロジ)の休憩室にて。カナの計らいにより、理子のパソコンのSky●eに映るジャンヌからイ・ウーの事情やカナ&パトラの目的など、実に様々な情報を得ることのできたキンジ。

 

 そんなキンジは今現在、『リコリーヌ。ユッキーお姉さまと遠山麓公キンジルバーナードをドックへ案内しろ』とのジャンヌの指示により、寝ぼけ眼の白雪共々、パソコンを大事そうに抱える理子の案内を受けて移動していた。ちなみに。服は武偵高の防弾制服に着替え直したため、今のキンジはもう遠山金子仕様ではない。

 

 余談だが、休憩室のベッドで熟睡する白雪を起こして一緒に連れていく時に『遠山麓公キンジルバーナード、ユッキーお姉さまを起こしてやれ。いいか、くれぐれも丁重に起こすんだぞ? もし我が愛しのユッキーお姉さまを雑に扱ってみろ。……貴様の命日は今日だと思え』とドスの利いた声&右手にバチバチと緑色の電気を宿しつつジャンヌが脅してきたため、白雪を起こすのにちょっぴり時間がかかってしまっていたりする。

 

 キンジと白雪は理子の歩くスピードに合わせてついていく。休憩室から出て階下へと降りていき、エレベーターを利用して地下2階にある車輌科(ロジ)のドックへと向かう。そうしてたどり着いた先の、エレベーターホールにて。見覚えのある緑髪琥珀眼の無表情少女がベンチにちょこんと腰を下ろしていた。

 

(ゲッ、レキ!?)

 

 キンジはレキの姿を視認した瞬間、反射的に戦闘体勢を取るも、対するレキから殺気がまるで感じ取れなかったためにすぐに警戒を解いた。

 

 

(よし。今回は攻撃してこないみたいだな……って、あれ? 何かレキの様子、おかしくないか? 心なしか、気落ちしてるような?)

「目が覚めましたか、キンジさん。無事で何よりです」

「あ、あぁ。全くだな」

「今からアリアさんを助けに行くんですよね? でしたら、これを」

 

 レキの様子が普段と違うことに内心で首を傾げつつもレキの言葉に応じるキンジにレキが両手をキンジに差し出す。その手に持たれていたのは、キンジが普段からお世話になっている武器:ベレッタにバタフライナイフ、そして小太刀2本だった。

 

 

「これ、俺の――」

「キンジさんが眠っている間に武器を手入れしておきました。不備がないか確認してください」

「わ、わかった」

 

 キンジの言葉に被せるようにして言葉を紡ぎ、キンジに己の武器の点検を促すレキ。キンジは言われるままに武器がきちんと整備されているか確認して――心底驚愕した。

 

 

(何だこれ、まるで新品同様じゃねぇか!?)

「大丈夫そうですか?」

「あぁ、問題ない。完璧だ」

「本当にですか?」

「あぁ。……どうしたんだ、レキ? 今日は何か変だぞ?」

「いえ、大丈夫ならいいんです」

 

 念押しで尋ねてくるレキにキンジが率直に疑問をぶつけてみると、レキはフルフルと首を左右に軽く振り、「それでは、私はこれで」との言葉を残して歩み始める。役目は終えたと言わんばかりにエレベーターの方へ向かい、ドックから姿を消そうとする。そのため、キンジは「え、ちょっ、レキ!?」と慌ててレキを呼び止めることとなった。

 

 

「? どうしましたか?」

「いや、レキ……お前はアリアを助けに行かないのか?」

「はい。今回、アリアさんを助けに行けるのは2人だけです。キンジさんを除けば、後1人のみ。交通事故でボロボロなジャンヌさんは当然、右目の見えない理子さんを戦闘に駆り出すのは危険です。相手が強力な超能力者であることを踏まえれば白雪さんが適任、ということです」

(なるほど、俺が眠ってる間にアリアの救出メンバーを決めてくれていたみたいだな)

「それに――どうやら私は敵に呪われているようです。私に降りかかる不幸がアリアさん救出の失敗の決め手になるわけにはいきませんからね」

「レキ……」

 

 琥珀色の瞳を細めて少々寂しげに語るレキを前に、キンジは思わぬものを見たと言わんばかりに目を見開く。

 

 

 本当はレキもアリアを助けに行きたいのだろう。しかし、なぜかはわからないが2人しかアリアを助けには行けない。加えて、レキはパトラに呪われている。呪いの効果がいつまで続くかはわからない以上、レキの存在はアリア救出の成功率を下げる要因になりかねない。だから、足手纏いにならないためにレキはアリア救出要員として名乗りを上げない判断を下したのだろう。

 

 さらに言うなら、先ほど入念に俺の武器の確認を促したのは、自分が武器の手入れをしたことが呪いの起点となり、俺にまで不幸が伝播することを未然に防ぎたかったから。レキのドラグノフみたいに、肝心な時に呪いのせいで俺の武器が壊れないか、俺の目で直接、事前に確認してほしかったからなのだろう。

 

 

(本当は助けに行きたいのに、助けに行けない。それなら別の形で協力しようと、俺の武器を整備するという形でサポートしても、パトラの呪いのせいで下手したら逆効果になるかもしれない。何かをすると逆効果で何もしないことが最善とか……これ、俺だったら絶対耐えられない状況だな。けど。それでもレキは、アリア救出に出向く俺が万全の状態で戦えるようにしてくれたんだな)

 

 相変わらず無表情で、感情を一切反映しない表情の奥で何を考えているのかそう易々とは読み取れないレキ。しかし、レキの言動からレキの思いを汲みきったキンジは、レキをしっかりと見据えて感謝の言葉を告げることにした。それが、レキの思いに報いる唯一の手段だと判断したからだ。

 

 

「レキ。理子から聞いたけど、アリアのために色々取り計らってくれたんだよな。武器もここまで丁寧に手入れしてくれたみたいだし、正直助かった。ありがとな」

「感謝の言葉はいりませんよ。今の私にはこれぐらいしかできませんから。……いえ、そうですね。何かお礼をしたいと言うのでしたら、今度24時間模擬戦闘を行い、お互いを高め合うというのは――」

「――悪い、それは却下だ。命がいくつあっても足りないからな」

「なるほど。私ではまだまだキンジさんの足元にも及んでいないため、24時間耐久の模擬戦を行えば100%の私の命が散ってしまう。だから24時間の模擬戦闘は時期尚早、ということですね?」

(いや、散るのはまず間違いなく俺の命の方なんだが……まぁいいか。わざわざ修正するようなことじゃないし)

 

 レキは一時はキンジからの感謝の言葉を受け取ろうとしなかったものの、ふと閃いたかのようにキンジとの模擬戦を提案してくる。今のらしくないレキにいつものバトルジャンキー気質が戻りつつあることは歓迎しても、レキとの模擬戦の約束が結ばれることは何としても避けたいキンジは、レキがいい感じに勘違いをしていることを利用して「ま、そういうことだ」とテキトーに頷いた。

 

 

「わかりました。それでは模擬戦はしばらくなしにしましょう。貴方の勝利を信じて待つのもまたライバルとしての務め、ということで私はひとまず研鑽を積むことにします。今の私にできることはもうありませんが――キンジさん、貴方の武運を祈っています。必ずアリアさんを取り戻してください」

「あぁ、任せろ」

 

 キンジの力強い返事を聞いたレキはコクッと1つうなずき、今度こそテクテクと歩き去る。風を引き連れて歩むレキの後ろ姿は、もうすっかりいつものレキそのものだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 レキが車輌科(ロジ)のドックから姿を消した後。理子の案内の元、エレベーターホールから次の扉へ向かったキンジと白雪。モーターボードや水上バイクがぷかぷかと海水に浮かべられる形で居並ぶブリッジをドンドン進み、第7ブリッジに差しかかった所で、これまた見覚えのある顔をキンジは視界に捉えた。

 

「……キンジか。それと、星伽さんに峰さん。ついでにダルクさん……」

 

 と、ここで。キンジたちの存在に気づいた武藤は整備を中断して振り向いてくる。その武藤の背後にあるのは、白と黒を基調にした、ロケットを横倒しにしたような謎の乗り物だった。

 

 

(え、何これ? 何の乗り物だ、これ?)

「キ、キンジくん。白雪さん」

「理子?」

「りーちゃん?」

「え、えっとね。これはオルクスって言って、ジャンヌちゃんが武偵高に潜入するために使った潜航艇なんだ。元々は魚雷だったんだけど、人が乗れるようにイ・ウーで改造したんだよ。それでね、キンジくんと白雪さんにはこれでアリアさんを助けに行ってもらおうと思って、さらなる改造を頼んでたんだ。そのせいで部品が増えて、元々3人乗りだったのが2人乗りになっちゃったんだけどね」

「へぇー、そうだったんだ」

「そういや、アリアは海上にいるんだったな。なるほど、これで行くのか」

(2人しか助けに行けないってレキが言ってたのはこのことか)

 

 キンジがまじまじと謎の乗り物を見つめていると、武藤にパソコンを渡してきた理子がくいくいと袖を引っ張ってくる。引っ張られるままにキンジと白雪が理子を見やると、理子がすかさず補足説明を入れてくれた。さすがの気配りっぷりである。

 

 

『ついでとは何だ、ついでとは。あと、我は銀氷の魔女(ダイヤモンドダスト・ウィッチ)だ。ダルクさんなどと呼ぶでない』

「……長い、呼ぶの面倒。ダルクさんでいい。そっちのが楽……」

『なッ!? 我の真名を面倒、だと!?』

「……ダルクさん、話が脱線してる。本題に入った方がいいかと……」

『クッ……まぁいい。今回は見逃してやる』

 

 一方。理子からパソコンを渡された武藤はジャンヌと言葉を交わす。真名(自称)を呼んでもらいたいジャンヌと長ったらしい名前で呼びたくない武藤。一時は武藤が真名を蔑ろにする発言をしたことでジャンヌが不穏で物騒な雰囲気をその身に宿したが、武藤の誘導によって何事もなく本題に入っていった。

 

 

『で、首尾はどうだ?』

「……順調。今は、ちょっと遊んでる……」

『ん、遊んでる?』

 

 Sky●e越しに武藤を見つめ、オルクスの出来具合を問いかけるジャンヌに武藤は相変わらず言葉少なに経過を伝える。しかし、乗り物の整備をしているにしては不自然すぎる言葉が飛び出したことにジャンヌが首をコテンと傾けた、その時。オルクスのハッチからガバッと、左右の一房を耳で纏めただけの短髪を引っさげた幼女――平賀文――が飛び出てきた。

 

 

「もうオルクスの改造は完成してるよ! ダルクくんの要望は一通り叶えてるよ! 部品を詰め込みまくったおかげで軽く170ノットは出せるようになったし、2000km程度なら余裕で走らせるようにできたよ! どうだ!? 凄いでしょ、なのだ!」

『あぁ、凄いぞ。素晴らしい。まさかたった3時間程度で改造を終わらせるとは思わなかった。さすがに無茶ぶりしすぎたかと考えていたのだが……文句なしの天才だな、2人とも』

「……それはどうも……」

「えへへー! もっと褒めてぇー♪ なーのだー!」

 

 ジャンヌからの掛け値ない称賛の言葉に武藤はそっけなく返事をし、平賀は得意満面にエッヘンと胸を張る。どうやら平賀の語尾の「なのだ」の取ってつけた感も健在のようだ。

 

 

『それで、遊んでたとは一体どういうことだ?』

「……オルクスの機能に影響が出ない程度に、追加兵装を少々。これで敵と水中戦になっても返り討ちにできる……」

「燃料効率が微妙だったからパパッと改良したり、部品の小型化にも手を出したりしたから、今の今まで2人乗りだったのがついさっき3人乗れるようになったよ! あと、今詰め込んだ燃料だけで往復も余裕でできるようにしたよ! やろうと思えば日本一周もできるんじゃないかな!? これでこのオルクスは敵までの片道切符、なんてことはなくなったってこと! なのだ!」

『……え、マジで?』

「……マジ……」

「マジなのだ! エッヘン!」

『そ、そうか。正直、そこまでは期待してなかったのだが……マジかよ』

 

 天才という言葉が軽く霞むぐらいの所業をいとも簡単にやってのけた眼前の武偵2人を前にジャンヌは思わず頭を抱える。イ・ウーの技術力に匹敵、ともすれば超越していそうな技術チート系武偵2名を前に『ま、まさかイ・ウーの技術力が武偵高の一生徒に劣るとは……いや、この2人がケタ外れにヤバいだけか?』とブツブツと呟く。

 

 この時、ジャンヌは心から思った。武藤剛気と平賀文。2人の存在をイ・ウー側が知れば、全力でイ・ウーサイドに取り込もうとするのだろうな、と。

 

 と、ここで。ジャンヌはハッと我に返る。今自分がやるべきことは、2人のぶっ飛んでいるにも程がある技量に絶句することではなく、キンジたちに今後の方針を伝えることだと、ジャンヌは武藤にパソコンをキンジたちに向けるように要請する。

 

 

『……今の話を聞いていたか、遠山麓公キンジルバーナード?』

「あぁ。とりあえず、武藤と平賀が非常識極まりないことをやってのけたってことはよくわかった」

『その通りだ。今から貴様とユッキーお姉さまにはこのオルクスでクレオパトラッシュの元まで向かってもらう。当初はオルクスを2人乗りの片道切符として使い、クレオパトラッシュを倒して神崎・H・アリアを奪還後、車輌科(ロジ)の水上飛行機の到着を待ってもらうつもりだった。しかし。オルクスが3人乗りかつ往復のできる仕様になった以上、必ずしもクレオパトラッシュを倒す必要はなくなったと言っていいだろう』

「つまり。最悪、アリアを取り戻してオルクスで逃げ帰ればいいってことか」

『そうだ、オルクスに乗ってしまえばクレオパトラッシュは追いつけないからな。となると、だ。……神崎・H・アリアを連れ帰ることを想定すると、やはり行きは2人しか乗せられない。ゆえに。先ほどレキヴァルトの言った通り、貴様とユッキーお姉さまに神崎・H・アリア救出に向かってもらうことになる。――改めて聞こう、覚悟はいいか?』

 

 ジャンヌの問いかけにキンジと白雪は同時に1つうなずく。そんな2人の反応にジャンヌは満足するように口角を吊り上げると、白雪へと視線を移して『ユッキーお姉さま。くれぐれもお気をつけください』と心配そうに言葉を綴った。

 

 

「大丈夫だよ。デュラちゃんが貸してくれた聖剣:デュナミス・ライド・アフェンボロス・テーゼリオス・クライダ・ヴォルテールもあるし、きっと大丈夫。安心してよ、デュラちゃん」

 

 対する白雪は宝石飾りのついた柄部分が特徴的な洋剣をジャンヌに見せつけつつ、勝気な笑みを浮かべる。どうやらジャンヌは白雪に例の聖剣デュナミス何たらを託していたようだ。かつて白雪の手によって根元から真っ二つに折られた聖剣デュナミス何たらを利用した洋剣は日本刀ぐらいの長さになっているため、かえって白雪にとって扱いやすそうに思えた。

 

 白雪の微笑みを真正面から受け止めることとなったジャンヌは『そ、そうですか……』と頬を染めながらつい視線を逸らしたが、恥ずかしさをごまかすように軽く咳払いをすると、今度はキンジの方へと視線を移してきた。

 

 

『さて、遠山麓公キンジルバーナード。今から貴様にはオルクスの操作方法を習得し、クレオパトラッシュの元へ向かってもらう。くれぐれも操作ミスがないよう、しっかり操作方法を頭に叩き込め。いいな?』

「操作方法のレクチャーは私に任せて、なのだ!」

「わかった。……いや、ちょっと待ってくれ」

 

 白雪に接した時とは対照的に、ジャンヌは強圧的な口調でキンジにオルクス操作方法を身につけるよう命令する。ジャンヌに便乗するように胸をポンと叩きつつ近づいてくる平賀をキンジは一旦手で制す。続いて、キンジはスッと目を瞑る。

 

 そして。『さて。思い出せ、遠山キンジ。カナ姉の手の温もりを。慈愛に満ちた眼差しを。後光に包まれた体躯を。天使のようななんて表現が霞むほどの微笑みを――(ry)』とカナのことを脳裏一面に映し出すことで、キンジは例のごとくあっさりとヒスった。

 

 

「いいぞ、始めてくれ」

『なるほど、HSSを使ったか。確かにそれならより理解もしやすいだろう。では、始めてくれ』

「? よくわからないけど、早速レクチャーを始めようか! 何かわからないことがあったらすぐにこの平賀先生に聞いてよね? なのだ!」

 

 右手でギュッと握り拳を作り、教える気満々の平賀にキンジはヒステリアモード特有の柔和な笑みで「了解だ」と応じる。かくして。キンジは平賀文の懇切丁寧なレクチャーを受けて、オルクスの操作方法を確実に身につけるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……なぜ、言わない?」

 

 キンジが平賀からオルクスの操作方法を学んでいる最中。武藤は理子のパソコンのSky●e画面に映るジャンヌに疑問を投げかける。その両眼がジャンヌへの疑心で染まりつつあるのはおそらく気のせいではないだろう。

 

『なに、簡単だ。敵を欺くにはまず味方からと言うだろう? 心配するな、我が貴様らを裏切ることはない。精々、遠山麓公キンジルバーナードに驚いてもらう、それだけさ。……ユッキーお姉さままで騙すのは非常に忍びないが、これもクレオパトラッシュを出し抜くためだ。仕方あるまい』

「……なら、いい……」

『クククッ。理解が早くて助かるよ。……さーて、クレオパトラッシュ。貴様は我を怒らせた。今の我は、えーと……巷で使われている言葉で表すなら【激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム】だ。日頃から策士をやっている貴様に策に踊らされる気分というものを味あわせてやろう、存分にな。クックックッ、ハァーハッハッハッハッ!』

 

 ジャンヌの反応を受けてひとまず疑心を解いた武藤。そんな武藤をしり目に、ジャンヌは凶悪性に満ちあふれた笑みを浮かべ高笑いをする。そのオッドアイの瞳は、確かにパトラへの強く深い憎しみの影響で黒く濁っているのだった。

 

 




キンジ→そこまで大した場面でないのに例の方法でヒスっちゃった熱血キャラ。レキの思いに触れた影響でレキへの好感度が上がってたりする。
白雪→あまり喋らず割と空気だった堕落巫女。今回あまり目立たなかったのは、起きたばっかりでまだ完全に意識が覚醒していないからという裏設定があったりする。
理子→今回も結構空気だったビビり少女。しかし、空気でもテラかわいい。
レキ→本当はアリア救出メンバーに入りたいのに入れないことに内心で若干落ち込んでるバトルジャンキー。今回はヒロインとしての風格を少しは醸し出せたのではなかろうか。
ジャンヌ→ボケキャラ筆頭のはずなのに、技術チート2名のせいで常識人化している不思議な厨二少女。パトラに対してただいま絶賛ブチギレ中なため、何かを企んでいる模様。個人的にはジャンヌちゃんに『マジで?』と言わせることができたため、大満足である。
武藤→技術チートなバランスブレイカーその1。以上。
平賀→技術チートなバランスブレイカーその2。かわいい。以上。

 というわけで、109話終了です。何だか本編にしては多めの登場人物数となりましたね。そのおかげで執筆するのも苦労しましたよ、マジで。たかが7人とはいえ、たくさんの登場人物を管理しつつ物語を進めていくのって大変なんですねぇ。

 そのせいか、これ以上人数を増やしてなるものかと、本来ここで出番のある不知火くんの出番を消し去っちゃいましたが……ま、いいですよね? 何たって彼、制限なき破壊者(アンリミテッド・デストロイヤー)ですからね?(←理由になってない)


~おまけ(完全なるネタ:舞台裏での出来事。綴先生の苦悩&レキがアリア救出メンバーに名乗りを上げなかった本当の理由?)~

 皆さんは覚えているだろうか? 104話でのパトラのあのセリフを。
 かつて、パトラが「尤も、約2割は私に仕えるのを望まず、野生に帰ってしまいましたの。残念なことに」と、発言していたことを。

 さて、皆さんは疑問に思わなかっただろうか? 「え、じゃあ残り2割のコーカサスハクギンオオカミは、パトラに雇われなかったオオカミたちはどこへ行ったの?」と。

 答えは以下に記されているので、ご確認を。


 ――綴先生ハウスにて。

野良オオカミ1「わん!」
野良オオカミ2「わふぅ」
野良オオカミ3「わふッ」
野良オオカミ4「わんッ!」
野良オオカミ5「くぅん」
  ・  ・
  ・  ・
  ・  ・
野良オオカミ98「わっふぅ!」
野良オオカミ99「わっふる!」
野良オオカミ100「ちわわっふる!」
野良オオカミ101「わんわんお!(∪^ω^)」
綴先生「ふぁッ!?」

 綴先生の家の前に、パトラの勧誘を断ったオオカミがわらわらしていた。

綴先生「なんで!? ねぇなんで!? なんでどいつもこいつも皆うちに来るん!? うちを最後の拠り所にするんや!? おかしいやろ!? 絶対おかしいやろ!? 何やこれ、新手の嫌がらせか!? うちはサファリパークちゃうぅぅうううううううううううううううううう!!」
綴家の番犬オオカミその1「くぅぅぅーん(←期待に満ちた眼差し)」
綴先生「無理無理無理無理、絶対無理! こんな大勢世話したらうちのエンゲル係数がとんでもないことなるって! 間違いなく100%なるって! 無理や、うちの財政力じゃ絶対、ぜぇぇぇぇぇぇぇったい無理やぁぁあぁああああああ!!」
綴家の番犬オオカミその2「くぅん……(←すがるような眼差し)」
綴先生「やから無理やって言ってるやろ!? 無理なもんは無理や! うちは不可能を可能にする女やないんやッ!!」
綴家の番犬オオカミその3「……わふぅぅ(←母性をくすぐるような眼差し)」
綴先生「う、うぅぅぅ。そ、そんな目で見られたら、うち、うち……ぅぅううううううううううううあぁぁぁああああああああ――ッ!!」

 痛む良心とエンゲル係数との狭間にて、絶叫する綴先生。哀れである。


 ◇◇◇


 一方その頃。

レキ(風が、風が教えてくれました。綴先生の家に、コーカサスハクギンオオカミが結集していると。今急げば、1匹くらいは武偵犬にできるかもしれません。あのモフモフを堪能できるかもしれません。待っていてください、ナイアルラトホテップ!)

 レキは一直線に綴ハウスへ向かっていた。ただただ疾走していた。 


 ◇◇◇


綴先生「あ、あれ? オオカミ逃げた? あんなにいたのにもういなくなってる? よ、よかったぁ! 助かったぁぁぁぁああああ!」

 レキの接近を第6感で察知した野良オオカミ101匹が綴ハウスから姿を消したことに、綴先生はペタンとその場に座り込み、安堵の涙と絶叫を零す。

 かくして、綴家の平穏は守られるのだった。めでたしめでたし。

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