【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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ふぁもにか「これはひどい」
キンジ「\(^0^)/」

 どうも、ふぁもにかです。今回は記念すべき第100話。どんな話を載せるか迷った結果、ぶっ飛んだ本編を載せることに決定しました。ま、サブタイトルで大体の内容の予測はつくでしょうけどね、ふふふ。



100.熱血キンジとバニーガール♡

 

 キンジ、理子、レキ、白雪の四人がカジノ「ピラミディオン台場」警備の依頼を受けることにした、その数日後。キンジの部屋にて。

 

 

(どうする、どうする……!?)

 

 今現在、遠山キンジは絶体絶命の窮地に追いやられていた。

 

 

「無駄な抵抗はやめて大人しくしてください、キンジ。そうすれば悪いようにはしませんから」

 

 玄関へと通じる廊下を背に小太刀を両手に構えるは神崎・H・アリア。

 

「に、にに逃がさないよ、キンジくん」

 

 ベランダへと通じる窓の前に銃を装備した上で腕を組んで立ち塞がるは峰理子リュパン四世。

 

「さ、諦めよっか。キンちゃん。世の中諦めが肝心の時もあるんだよー?」

 

 ワキワキと手を不自然に動かしながらキンジへと近づいてくるのは星伽白雪。

 三人に共通している点は、異性を存分に魅了できるであろうニッコリ笑顔を浮かべていながら邪悪極まりないオーラを一身に背負っている所だ。

 

「「「ふふふふふ……」」」

(どうする、どうすればいい!? どうすればこのピンチから抜け出せるッ!?)

 

 もうこの三人だけでイ・ウー壊滅させられるんじゃね? と錯覚してしまうほどに凶悪なオーラを纏い、人を威圧ついでに殺しかねないスマイルを浮かべる三人。世界最強の武偵を目指す男こと遠山キンジに過去類を見ないレベルの危機が今まさに迫ろうとしていた。

 

 

 ――事の発端は十数分前にさかのぼる。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 キンジはこの日、届いていた段ボール箱の開梱作業に入っていた。送り主はカジノ「ピラミディオン台場」を運営しているTCAという会社だ。

 

(そういや、ユッキーが入ってた段ボールもこんな感じだったなぁ。ま、ユッキーのはもっと大きい箱だったけど……)

 

 キンジはかつてドッキリのために宅配業者を利用して段ボール箱に梱包された状態で配送されてきた白雪の姿を思い浮かべつつ、段ボールに入っていた衣装や小物を取り出していく。『来場客の気分を害さないために、客・店員に変装の上で警備していただきますようお願いします』と書かれた手紙を同封してきたことから鑑みて、これが依頼に書かれてあった『被服の支給』なのだろう。

 

 キンジは次々と衣装や小物を取り出していく。取り出して取り出して、すべて取り出し終えた時、キンジは困惑していた。キンジの視線の先には、バニーガールの衣装。

 

 これ自体には何も問題ない。理子たちには女性店員としてバニーガール衣装を着てほしいという意思をTCAが示してきただけなのだから。問題なのは、このバニーガールが三着(・・)送られてきたという点だ。

 

 

(え? ここにバニーの衣装が三着来るって、え? どういうこと?)

 

 キンジは想定外の事態に困惑の色を隠せない。三着のバニーガール衣装。一つはユッキーのもので、もう一つは理子のものなのは間違いない。レキの分はちゃんとレキの住んでいる女子寮に送られているはずだ。なのに、ここにバニーガール衣装が三着もある。

 

(レ、レキの分も纏めてここに送られてきたのか? ……そうだな、うん。そうに違いない)

 

 キンジは己が打ち出した仮説にうんうんとうなずいて無理やり納得しようとする。しかし、そう考えると俺の男性用の衣装がないのが妙だ。『女子を推奨』との言葉に逆らうように男の俺が依頼を受理した腹いせに、男は服ぐらい自費で用意しろと暗に言われてると受け取っていいのだろうか? それとも、単に女子4人が依頼を受けたと勘違いしてるのか?

 

 

「あ! 衣装届いたんだ!」

 

 キンジが三着のバニーガール衣装を凝視して思考にふけっていると理子が喜色満面の笑みでパタパタと駆け寄ってくる。その後ろから「「ただいま」」とアリアと白雪がやってきたことから、どうやら三人は帰り道でバッタリ出くわしたようだ。

 

「あぁ。まぁ、そうだな。届いたぞ?」

「? ど、どうして疑問系なの? キンジくん?」

「いや、何か俺たちとカジノ側との間に情報の齟齬があったみたいでさ。多分あっちは今回依頼を受けるのは女子4人だと思ってる」

「ぅん? えと、それで間違ってないよ?」

 

 理子はキンジの発言がよく理解できていないのか、頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる。しかし首を傾げて疑問を顕わにしたいのはむしろキンジの方だった。

 

 

「え、何言ってんだ、理子? おかしいだろ、俺男だぞ? なんで間違ってないんだよ?」

「あ、え、えーとね、キンジくん、その……」

「昨日TCAに連絡して、依頼を受けるのは遠山キンジじゃなくて遠山金子(かなこ)さんってことにしたんですよ。武偵高には連絡していないから、カジノでは金子さんとして依頼を全うしても単位はキンジが貰えます。心配しなくても大丈夫ですよ」

 

 どう言葉にしたものか迷ってる風な理子にアリアが横から助け舟を出してくる。キンジの肩にポンと手を当ててキンジの不安を取り除こうと微笑みを浮かべるアリアだったが、キンジの不安は増長するばかりだ。何せ、先ほどから己の第六感が逃げろ逃げろと警鐘をやたらめったら鳴らしているのだから。

 

「は? え? なに、どういうこと?」

「……ずっと思ってたんだよね。キンちゃんって女装したら映えるだろうなぁ~って」

「うんうん。キンジくんってカナさんの弟だもん」

「キンジのお兄さんがあれだけ綺麗なら、弟のキンジがどれだけ変貌するか、気にならない方がどうかしてる。そうは思いませんか?」

「お、おい。待て。まさかお前ら……俺にバニーガール姿でカジノ警備させる気か?」

 

 白雪、理子、アリアと立て続けに紡がれた言葉によってアリアたちの思惑の大体を把握したキンジが恐る恐る問いかけると、三人そろって「「「うん」」」と首肯した。

 

 

「ちょっ、何考えてんだよお前ら!? 誰が女装なんかするか!? 仮に百万歩譲って女装するにしたって、バニーガールとか完全にアウトだろうが!?」

「それはどうでしょうか? 確かにただ普通にキンジがバニーガール衣装を着れば悲惨なことになるでしょうが……ここには変装術のスペシャリスト:理子さんがいます。なに、安心してください。気づいた時には、もう――終わってますから」

「安心できるかぁぁぁあああああああああ!!」

 

 あたかも獲物の草食動物を見つめる肉食動物のような、すっかり据わりきった瞳を向けてくる女子三名。キンジは危機意識から玄関へと全力ダッシュを試みるも、「無駄な抵抗はやめて大人しくしてください、キンジ。そうすれば悪いようにはしませんから」と行く手をアリアに遮られる。

 

「に、にに逃がさないよ、キンジくん」

「さ、諦めよっか。キンちゃん。世の中諦めが肝心の時もあるんだよー?」

 

 と、そうこうしている内にもベランダへと通じる道を理子に防がれ、白雪がワキワキと手を不自然に動かしながらキンジへ迫ってくる。退路を塞ぐはシャーロック・ホームズのひ孫&アルセーヌ・リュパン四世のひ孫の夢のコンビ。迫りくるは星伽神社の優秀な武装巫女。たかが強襲科Sランク武偵に勝てる道理などあるはずがない。

 

「「「ふふふふふ……」」」

「くそッ! 何か、何か手は――ぎゃあああああああああああああああ!?」

 

 かくして、キンジの断末魔が部屋を反響することとなるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 キンジは絶句していた。アリア&白雪の息の合ったコンビネーションにより化粧台の椅子にロープでグルグル巻きに拘束され、為されるがままに理子からメイクを施されていたキンジ。十数分の時を経て。仕上げにウィッグを取りつけられた後に目を開けるよう理子にお願いされて目を開けたキンジは、文字通り言葉を失っていた。無理もない。何せ、鏡に映った自身の姿が黒髪黒目バージョンのカナとそっくりの姿をしていたのだから。

 

(……カ、カナ姉?)

「どう、かな? ボクのメイク術?」

「おー、凄いよりーちゃん! キンちゃんがホントにキンちゃんになってるよ! あ、今は金子ちゃんだっけ?」

「そ、そうかな? えへへ」

 

 切れ長の瞳をした、クール系の美女。いかにもスーツやジーンズが似合いそうなタイプの美女。そんな眼前のクール系美人が自分自身だという現実を受け入れきれないキンジをよそに、白雪が理子のメイク術のクオリティを絶賛し、理子は掛け値なしの真正面からの褒め言葉に照れ笑いを見せる。ちなみに。アリアは二人の傍らに座り込み「女なのにキンジにこうも敵わないなんて……」と『の』の字を延々と描いている。

 

「ま、まさかここまで化けるとはな……」

(いや、確かに俺も一応兄さんの弟だから女装してもそんなに酷くはならないだろうとは思ってたけど……俺にも兄さんと同じ血が流れてたんだなぁ。あ、何か嬉しいなこれ)

 

 キンジは呆然と鏡に映った自分の姿を見つめつつも兄との新たな共通点を見つけられたことに薄く笑みを浮かべる。これが遠山金子の姿、中々にいいかもしれない。若干新たな道を開拓しつつあったキンジだったが、しかしキンジの笑みは次の瞬間、ビシリと凍りつくこととなる。

 

 

「さて、それじゃあ次はバニーガールを着せてみよっか」

 

 キンジは白雪がワクワクしながら呟いた言葉に思わず「What!?」と裏返った言葉を上げ、信じられないといった感情を多分に含んだ目で白雪を凝視する。

 

「あ、そういえばキンジにバニー衣装を着せるんでしたね。女装姿のインパクトが凄かったせいですっかり忘れてました」

「待て待て待て! それはマズいって! いくらなんでもバニーガールなんて俺に着こなせるわけないだろ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。ここにはキンちゃんをここまで美人さんにビフォーアフターしたりーちゃんがいるんだよ。バニーガールも絶対似合うって、ね?」

「う、うん。ボク頑張るよ」

「やめろお前ら! 早まるな! 頼むから早まらないでくれ!」

「やだ」

「却下です」

「ご、ごめんね」

「うぎゃああああああああああああああ!!」

 

 化粧台の椅子に拘束されているキンジは必死に体を動かしてロープの拘束から逃れようとするも、アリアと理子が見守る中でヒラヒラのバニーガール衣装を持って近づいてくる白雪から逃れる術などあるわけがない。結果、本日二度目のキンジの断末魔が部屋中をこだまするのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 キンジは絶句していた。決死の抵抗も虚しくバニーガールを三人がかりで無理やり着せられ姿見の前に立たされたキンジは文字通り言葉を失っていた。無理もない。何せ、鏡に映ったバニーガールな自身の姿はキンジを絶望させるのに十分な代物だったのだから。

 

(こ、骨格がごまかせねぇえええええええええええええええええ!!)

 

 男性らしい肩幅。それなりにある筋肉。しっかりとした骨格。それら全てが組み合わさり、典型的なオカマバーにいそうな人と化したキンジは両手で顔を覆い心の中で涙を流す。

 

 

「……」

「あ、その……キンジ。似合ってます、よ?」

「ボ、ボクにもっと実力があれば……」

「うーん。キンちゃんならバニーガールでもいけると思ったんだけどなぁ」

 

 顔だけはカナレベルに美人なままなため、顔とそれ以外とのクオリティのアンバランスさが凄まじいこととなっているキンジを前に、アリアはどうにかキンジを元気づけようと心優しい嘘を吐き、理子は己の無力さに表情を暗くし、白雪は「あれー? おかしいな?」と眉を潜めて首を傾げる。そんなアリアたちの反応が今のキンジには総じて心を突き刺す鋭利な刃と変化し、キンジの精神をより傷つけていく。

 

(俺は、やっぱり兄さんの領域にはたどり着けないんだな……)

 

 きっと兄さんならバニーガールだって見事に着こなしてくれるだろうなどと華麗に現実逃避しつつ、同情と憐憫に満ちた視線を向けてくるアリアたち三人の前でorz状態となるキンジであった。

 




キンジ→女子三人の暴走の被害者となった熱血キャラ。金子ちゃん超かわいい。
アリア→キンジを女装させ隊の一員なメインヒロイン。女装させ隊には悪乗りで参入した。
白雪→キンジを女装させ隊の一員な怠惰巫女。女装させ隊の中で最もやる気をみなぎらせていたりする。
理子→キンジを女装させ隊の一員なビビり少女。女装させ隊の良心、異論は認めない。
遠山金子(かなこ)→キンジの女装バージョンの名前。白雪命名。体のラインの隠れるタイプの女性服を着ればクール系の超絶美人となるが、露出の激しい衣装となると悲惨なことになる。

 というわけで、100話終了です。「黒髪の子かわいそう」と言わんばかりにキンジが精神的にボッコボコにされるお話でした。いやね、キンジくんは露出の少ない女性服で初めてその真価を発揮すると思うんですよ、私は。だってキンジくんって別に男の娘レベルに小柄で女性的な体型してませんしね。あくまで平均的な男性の体型してますしね。


 ~おまけ(ネタ:もしもカナの睡眠期がこのタイミングで終了したら)~

金一「……ん」
金一(睡眠期が終わったみたいだな。それはそうと、ここはどこだ?)

 ベッドからムクリと起き上がる金一。その視線に入るは、クール系美人へと変貌したキンジもとい遠山金子の姿。もちろん、バニーガール衣装になる前の状態である。

金一(な、なんて美し――ガフッ!?)

 謎の吐血とともに再びベッドに倒れ込む金一。
 かくして金一は睡眠期第二フェイズへと突入するのだった。

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