問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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どうも、衛宮です。
かなり久しぶりの投稿ですねw
さて、今回はタイトルにもある通り、地蔵菩薩NEWさんの『三大怪物』とのコラボです!

それではどうぞ!


コラボ編『蒼の英雄』

「……はぁ」

 

俺は、竜童明は今とても疲れている。

どれくらい疲れているのかというと、ぶっちゃけもう一度巨龍と相手していた方が楽なんじゃないかと思うくらいだ。

さて、何故俺がこんなに疲れているのかというと……実は天照さんからお使いを頼まれたのだ。

それも半ば脅しという強引な手口で。

いや、太陽を司る神様に笑顔で『手伝ってくれなきゃノーネーム本拠に太陽落としちゃいますよ?』とか言われたら逆らえないだろ。

俺の一存でノーネームを焦土に変えるわけにはいかないし。

さて、ここまでの話でだいたい気づいたと思うが、あの天照さんが強行手段を使ってまで行きたくない場所or会いたくない人物なわけだ。

つまり……面倒事の臭いしかしない。

さて、それでは話を戻そう。

何故俺がここまで疲れているのかだ。

まず前者だが、ズバリ大当たりだと思う。

なにせその目的地が箱庭の外、ずっと南の方にある絶海の孤島だったのだ。

俺は風化すれば半日ほどで着いたが、普通に来れば一週間やそこらじゃこれないだろう。

……だがよく考えたら天照さんのギフトがあれば一発なんだよな。

つまりそれが一番の理由ではないと考えていいだろう。

では後者はどうか?

……うん、まぁこっちが本命だろう。

上陸して一時間弱になるが、風を使って探してもまるで見つからない。

それどころか生き物一つ見つかってない。

これでは無人島どころか無生物島だろう。

本当にこんな島に住んでるのかさえ怪しい。

まぁそれでも頑張って島中を探した。

このまま帰ったらノーネームが燃えてしまう未来しか見えないので仕方がない。

そしてその結果、島の中心にある洞穴が怪しいと目をつけた。

そして向かったのだが……そこで予想外の事態が起きたのだ。

 

 

 

グギュルルルルルルルルルルッ!!

 

 

 

「……マジで何の音だよこれ」

 

そう、洞窟の中からはまるで巨大な生物が唸っているかのような不思議な音。

マジでもう帰りたい。

でも、帰るわけにはいかない。

 

「ま、まぁ最悪の場合は風化して逃げればいいんだし、大丈夫……だよな?」

 

俺は何度もそう自分に言い聞かせることで前に進む。

風で空気を圧縮し発生したプラズマを明かりの代わりにし、中へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

グギュルルルルルルルルルルッ!!

 

 

 

「さぁ、鬼が出るか蛇が出るか」

 

はたまた巨龍でも眠っているのか。

俺の奇妙な冒険が幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

しばらく、時間にすると三十分くらいだろうか?

けっこう歩いているが、それでもまだ先がある。

そうとう深い洞窟のようだ。

しかし、それももうすぐ終わりを告げるらしい。

 

 

 

グギュルルルルルルルルルルッ!!

 

 

 

すぐ近くまで来た。

もうすぐこの唸り声の主と御対面出来るらしい。

 

「……ッ!?曲がり角か……」

 

音の位置を考えると、発生源はこの角の奥。

つまり、ここを曲がればこんにちはだ。

俺は一つ、深目の深呼吸をする。

そして覚悟を決め、ゆっくりと角を曲がった。

そこにいたのはなんと……

 

「……我が人生、一片の悔いなし」

 

「……は?」

 

餓死寸前のおっさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

「う、うまい!こんなに飯をうまいと感じたのはいつ以来だ!!」

 

「は、はぁ」

 

あの後なんやかんやあり、洞窟の中で餓死しかけていたおっさんを何とか外まで引っ張り出し、とりあえず天照さんから預けられたお使いの荷物である大量の食料をギフトカードから出した。

するとおっさんは「飯だッ!」と即復活し、今の現状に至ったわけである。

 

「カカカッ!にしても坊主みたいなのがあいつの使いだったなんてなぁ……まぁお陰で餓死しなくてすんだんだけど」

 

「……明。竜童明だよおっさん」

 

坊主という単語にムッと来た俺は、とりあえず名前を名乗り精一杯のお返しをする。

だが、どうやら当の本人はあまり気にしていないらしい。

 

「ん、なんだ坊主。気に触ったか?」

 

否、気にしていないどころか子供の背伸び程度に捉えられているらしい。

なんというか、とても悔しい。

 

「なはは、すまんな。でも坊主は坊主だろ?」

 

どうやらこのおっさん、名前で呼んで欲しけりゃ呼ばせて見せろと言っているらしい。

すぐにでも反論したいところだが、そう簡単にはいかない。

俺でもわかる、このおっさんはマジで強い。

十六夜や俺なんかとは格が違いすぎる。

 

「……わかった、もう坊主でいいよ。それより、おっさんの名前は?俺も名乗ったんだし、いい加減教えてくれよ」

 

お?と意外な顔をするおっさん。

どうやら素で忘れていたらしい。

 

「あー、そうだったな。俺の名前は……」

 

とそこまで言っておっさんは口を止める。

そして口を開く代わりにニヤリと笑った。

 

「んー、普通に教えても面白くないし、ここは一つギフトゲームをしないか?」

 

「つまり、それに勝たなきゃ教えないと?」

 

「うんにゃ、別に勝っても負けても名は名乗るさ。ただ挨拶代わりにどうだって話だよ。ルールも超絶簡単なものだし」

 

正直理不尽だと思わなくもはい。

仮にも俺は命の恩人な訳だし、そうじゃなくても出会ってすぐのやつにゲームなんて押し付けないだろう。

……でも、俺にやらないなんて選択肢はなかった。

つくづく俺もノーネームの問題児なんだな。

 

「……わかった、やろう。それでルールは?」

 

「カカカッ!そう来なくちゃな!!」

 

ほい、といって出されたギアスロールに書かれたルールはただ一つ。

『お互いに一発殴って相手を吹っ飛ばした方が勝ち』というものだった。

なるほど、確かに超絶簡単なルールだろう。

ルールだけはだが。

ゲームその物の難度はハード級なのだ。

体格も膂力も差は歴然。

パッと見て身長は約一・五倍、体重は筋肉量を考えれば軽く二倍はいくだろう。

もしもギフトが使えなかったら勝負なんて放棄してすぐさま逃げ出したいくらいだ。

 

「よっしゃッ!じゃあいくぜ!!」

 

「おうッ!」

 

俺たちは軽く距離を取り、互いに拳を構える。

……余談だが、気がついたら食料はきれいさっぱり無くなっていた。

軽く一ヶ月分はあったはずなのだが。

そして呼吸を整え、全く同時に動き出す。

 

「せーッ!」

 

「のーッ!」

 

『でッ!!』

 

瞬間、襲ってきたのはとてつもない衝撃。

風を纏って放ったはずの拳は、一瞬の均衡もなく押し出された。

 

「なっ!?」

 

気づいた時には既に、俺は地面に背中を付けていた。

そう、俺の敗けだ。

 

「カカカッ、なかなか楽しかったぜ」

 

そう言っておっさんは拳を引っ込め、バキバキと首や腰を鳴らしていた。

まるで寝起きに背伸びをするような感覚で。

つまりこの男にとってこのゲームは、それこそ寝起きの準備運動程度のものだったのだろう。

圧倒的な実力差。

明確すぎる敗北。

俺は、久しぶりに思ったんだ。

素直に『悔しい』って。

 

「お?おい、大丈夫か?もしかして何処か痛めたか?」

 

なかなか起き上がらない俺を心配したのか、おっさんはこちらに寄ってくる。

怪我は……一切無いようだ。

 

「だ、大丈夫だ。すぐ立てる」

 

よっと、と頼りない気合いと共に、俺はようやく体を起こす。

すると、目の前に大きな手が差し伸べられた。

 

「ほれ、手ぇ貸すぜ?」

 

「……ッ!?」

 

恐らく、いや確実に無意識だったのだろう。

しかし、俺はおっさんの海のように蒼い瞳に、何か懐かしいものを重ね合わせていた。

そう、それは……

 

「……父……さん?」

 

幼き日の記憶。

今ではほとんど取り戻したそれの中の一つ。

道端で転んだ俺を心配する父さんの瞳。

それと似ていたんだ。

 

「あん?どした?」

 

「あ……いや、何でもない」

 

おっさんの声で現実に戻ってきた俺は、何事もなかったかのように繕い、その手をとって立ち上がる。

見た目通り、とてもたくましい手だった。

 

「そうか……っと、また忘れるとこだったな」

 

「……?」

 

俺を起こしたおっさんは何かを思い出したかのようにニカッと笑う。

俺はそれが何か分からず……いや、そうか。

そういえば、まだ名前を聞いてなかった。

 

「俺はロタンだ。よろしくな、明」

 

「……あぁ、よろしく、ロタン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

「あー、なるほどなぁ。俺が眠ってる間にそんなことがあったのかぁ」

 

俺はあの後、俺が知る限りの箱庭の歴史をロタンに話していた。

歴史といっても白夜叉から聞いた些細なものと、俺たちノーネームに降りかかった面倒事の話なのだが。

どうやらこの男、この島で千年も眠っていたらしい。

理由を聞いたら苦い顔をして流されたので追求はしないが、どうやらそのせいで餓死しかけていたらしい。

 

「それより、本当にありがとな。お前が来なかったら完全に餓死してたぜ」

 

「あ、あぁ。天照さんに伝えとくよ」

 

「カカカッそうしてくれ!っと、そうだな。御礼と言っちゃなんだが……こいつを持ってけよ」

 

そう言ってロタンが取り出したのは、海のように蒼い宝石で装飾された綺麗な首飾りだった。

 

「これは……いや、でもかなり高価なものじゃないのか?」

 

何の宝石かは知らないが、おそらくそうなのだろう。

海のようにどこまでも深く濃い『蒼』。

透明なはずなのに、宝石を通して見えるものは何もないのだ。

まるで光さえも吸い込まれているみたいに。

 

「気にすんなって!そんなもんいくらでも作れるんだからな!」

 

ロタンはまた豪快に笑う。

なんというか、本当に器が深い男なのだろう。

……というか、これはロタンが作ったらしい。

とりあえず俺はありがとうとだけ伝え、その首飾りをギフトカードにしまう。

やはり何らかのギフトだったらしい。

見ると、示された名は『蒼の凱旋(トライアンフ)

どんなギフトなのかは想像できないが、せっかく貰ったものだから大切にしよう。

 

「『トライアンフ』……なんか、綺麗な名前だな」

 

「ん、そうか?まぁ気に入ってもらえたならいいんだが」

 

「あぁ、本当にありがとな」

 

ロタンはおうよ!と答えると、俺の頭に手を置きワシャワシャと荒く撫で始めた。

 

「おわっ!ちょっ!?」

 

「おっと。悪いな、つい癖でやっちまった。嫌だったか?」

 

急に来たので思わず悲鳴のような声をあげてしまった。

ロタンも無意識にやったためか、少し申し訳なさそうな表情を浮かべている。

……いや、別に嫌だったわけじゃない。

むしろ痒い感じで、とても懐かしい感覚だった。

まるで父さんに頭を撫でられたような、そんな感じ。

どうにも俺はこの男に父さんの姿を重ねてしまっているようだ。

ロタンが無意識にとる、しかし安心できるその行動に俺は一つ、どうしても聞きたいことができてしまった。

 

「……なぁ、ロタン」

 

「ん?」

 

「あんた、子供とかいるか?」

 

「……は?急にどうしたんだ?」

 

俺の発言に、ロタンは思わず固まってしまった。

自分で言っておいてなんだが、文脈がメチャクチャだな。

それでも、ロタンは少し考えた後に答えてくれた。

 

「……うーん、まぁいるぜ。血は繋がってないが、胸を張って俺の子供たちだって言える奴等が」

 

「……そっか。それじゃあさ、親って子供のことどう思ってるのかな?」

 

俺はどうしても知りたかったんだ。

父さんがどんな気持ちで俺を育てたのかを。

そんな俺の問いにロタンはこう口にした。

 

「……別に、子供(ガキ)子供(ガキ)だろ?それ以外の何でもない。例え大きくなろうと、親にとっちゃ子供はいつまで経っても子供のままだ。だから、どうもこうもねぇんだよ」

 

「……そっか」

 

あぁ、なんて簡単な事だったんだ。

何で気づけなかったんだろう。

 

「まぁ何に悩んでるかは知らないが、親子なんてそんなもんだろ?」

 

家族の繋がりとは、最も簡単で一番強い。

割りとそんなものなのかもしれないな。

 

「あぁ、そうなのかもな……っと、それじゃ俺はそろそろ帰るよ。これ以上長居すると今日中に帰れるか心配だからな」

 

「おう、気を付けてな!まぁなんだ、機会があったらまた来いよ。今度はもっと面白いゲームをやろうぜ!」

 

カカカッ!と盛大に笑うロタンの声を背に、俺は風化し箱庭はへと急ぐ。

大事な今の家族の元へと。

俺の大事な居場所へと。

 

「ロタン、か。なんか不思議な人だったな。……でも、次は負けないぞ!」

 

俺はロタンから貰った蒼い首飾り『トライアンフ』を握り締めながら帰路に着いたのだった。




如何だったでしょうか?
もし三大怪物を知ってる人に『こんなのロタンじゃない!』とか言われたらショックで三ヶ月は寝込む自信がありますw

実はこの作品、自分が初めて読んだ二次小説なんですよね。
そんな作品とコラボさせていただき、本当にありがとうございました!

自分から見たロタンさんは、まさしく背中で語るお父さんみたいな感じだったので、明の親という存在についての悩みを打ち明けるのにピッタリだと思ったんです。
それでこんな話になりましたが、できればもっとロタンさんを動かしたかったですね。

さて、長くなりましたがコラボさせていただいた地蔵菩薩NEWさん。
本当にありがとうございました!

次回からはリメイク版を投稿しようと思います。
といっても、主に物語の前半を読みやすくしたりするだけなんですけど。

それでは、また次回!

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