問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》 作:ソヨカゼ
ちなみに作者は病院です。
結構前にも話しましたが、大怪我をしていまだに通院中です。
さて、それでは予告した通り、クリスマス企画を始めたいと思います!
あ、ちなみに前編と後編に分かれていて、後編は明日投稿します。
side《白夜叉》
「ふっふははっ!ようやく……ようやくこのときが来た!これで……これでようやく………」
サウザンドアイズ支店の中に響く白夜叉の不気味な笑い声。
しかし、それに突っ込みを入れるものは一人もいない。
そう、あの店員でさえ。
「白夜叉さま」
「おんしか。準備はどうなっている?」
噂をすれば何とやら。
奥のほうから件の店員が出てくる。
その表情はどこか暗い。
「ええ、滞りなく進んでいます。……しかし、本当にやるのですか?」
「今更じゃな。……ここまで来たら後戻りはできまい。ボスにも私から言っておくから、おんしたちは準備を進めておいてくれ。」
「……わかりました。御武運を」
そう言い残し、店員は再び奥へと戻っていく。
「ふむ。では始めるとしようかの。狂宴を……な?」
後に残るのは、やはり白夜叉の不気味な笑い声だけだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
side《明》
えー、皆さんこんにちは。
竜堂明です。
今日はあれですね、世間一般に言うクリスマスイブというやつです。
残念ながら俺たちのコミュニティのある区画では雪が降らないので、あまり実感が湧きません。
まぁ、でもせっかくなのでレティシアと恋人らしくイチャつきたいと思ったわけで、朝からノーネームの敷地内をうろうろしていた訳なんですが………
「うぅ……腹が……減っ……た……」
「……なぁ、レティシア」
「……なっ、何だ?明」
「これって、助けた方が良い……のかな?」
「う、うむ。見るからにお腹を空かせているようだし、助けた方がいいだろう。……たぶん」
そう、俺とレティシアは敷地内で見るからに行き倒れている人を見つけたのだ。
黒いボサボサの髪をひとつに束ね、同じく黒の着物を着た青年だ。
これまた真っ黒の籠手と刀を装備していることから日本の武士を想像させる。
「……とりあえず、ノーネームに運ぼう」
「わかった。じゃあ私は皆に連絡しておくよ」
そう言ってレティシアは影の翼をだし、本拠の方へと飛んでいく。
「はぁ。ま、明日もあるよな」
せっかくのクリスマスイブを二人で楽しめなかったのを残念そうにしながら、俺は青年を抱えるとギフトを発動させ空へと舞い上がる。
歩くよりは早く着けるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とまぁ、そんなこんなで今、明を含むノーネームの主要メンバーが食堂に集まっていた。
というのも、目を覚ました青年が真っ先にご飯を要求してきたためだ。
「うまいっ!うまいぞこのツナマヨおにぎりはっ!」
「……ねぇ、十六夜くん。彼、あれで何個目かしら?」
「おそらく、三桁は越えたぞ?」
「むっ……負けられない」
「春日部さん。あなたがあれに加わったらノーネームの食糧は間違いなく底をつくわよ?」
そう、ノーネームの食糧はただですら少ない。
そんな中、ツナマヨおにぎりを三桁も貪り尽くされたら、ノーネームの食糧庫はもうすっからかんだろう。
「うんっ!マジでうまいぞこれっ!」
「……ふふっ。それにしても、スゴく幸せそうな顔なのです!」
まぁ、なんでそこまで止めなかったかと言われるとそれにつきるだろう。
料理を作る側からすれば、笑顔でうまいと言われるのがスゴく嬉しいのだ。
そのため、リリや黒ウサギですら止めることはできなかった。
「いや、それはいいけど……そろそろ止めないとマジでヤバイぞ?」
「あっ!そっそうでした!あのっ、すみません!」
明の声で気がついたのか、黒ウサギが青年を止めるべく声をかける。
「ん?あぁ、ごちそうさま!いやぁ助かったよ。かれこれ一週間は何も食べてなかったからなぁ」
青年は一同の視線の意味を理解したのか、動かしていた手と口を止めて苦笑いする。
そしてポツリととんでもないことを口にした。
「いっ、一週間!?何があったらそんなことになるんですか!!」
黒ウサギが叫ぶのも無理はないだろう。
この話が本当なら、一週間は飲まず食わずだったのだ。
この箱庭で考えるのなら、魔王に襲われたと言うのが妥当だろう。
しかし、目の前の青年からはそんな気負いはまるで感じられない。
とするなら、何か別の事情があるのだ。
「アハハ……まぁ、そんなことは置いといて。飯の恩は一生の恩ってね。そんなわけでしばらく恩返しさせてくれないか?」
突然の申し出に、その場の全員が顔を見合わせる。
「まぁ、良いんじゃないかな。協力してもらえるのならこっちも助かるし」
「だな。それに、こんなに食糧を消費されたんだ。元は取ってもらわないと困るぞ?」
明と十六夜の意見に、皆が頷く。
「よし!決まりだな。そういえば自己紹介がまだだっけ。俺の名前は徳川綱吉ってんだ。ま、気軽にツナって呼んでくれ。よろしくな!」
「「「「「「……はっ?」」」」」」
予想外のビックネームに一同がフリーズする。
そう、その名前は日本人ならほとんどの人が知っているであろうものだった。
「ちょっと待てっ!徳川綱吉っておいマジかよ!?"生類憐れみの令"をだしたあの綱吉か!?」
いち早く頭を回転させた十六夜が青年へと掴みかかる。
だが青年、徳川綱吉はそれをヒラリと避け、ニヤリと笑う。
「まぁ、正しくはその子孫だ。血と魂は受け継いでるが本物じゃないよ。今は訳あってとある傭兵集団に所属している、しがない流しの風来坊ってね」
どうやら、とんでもないのがノーネームにやって来たらしい。
しかし、誰もこのとき予想できなかっただろう。
これが、これから始まる聖夜の宴の序章に過ぎないと……。
「皆さん大変です!」
「リリ?どうしたのですか、そんなに慌てて?」
若干シリアスな雰囲気だった食堂は、慌てて入ってきたリリによってぶち壊される。
「そっそれが……サウザンドアイズからこんな手紙が!」
見ると、その小さな手にはサウザンドアイズ印の白い封筒が握られていた。
「サウザンドアイズから?えっと、なになに…………クリスマス企画のお知らせ?優勝コミュニティには食糧一年分プレゼント!?しかも明日だなこれ」
これだっ!!
皆の心がひとつになる。
「二人一組で出場、一つのコミュニティで二チームまで出場可能らしい。どうする?」
「まぁ本来なら俺と明、お嬢様と春日部で出るんだろうが……」
十六夜はチラリとツナの方を見る。
「当然、俺も出させてもらうぜ?」
「ふむ。……じゃあ、俺とレティシア、十六夜と綱吉でどうだ?」
「明、それお前がレティシアとイチャつきたいだけだろ?」
うんうんと、これまたノーネームの心が一つになる。
「いいじゃん、クリスマスなんだから。」
「ちっ。まぁ、メンバー的には悪くないから納得はしてやるよ」
「サンキュー。そんじゃ、明日に向けて……」
「飯かっ!」
「「「お前(あなた)はもう食べただろ(でしょ)!!!」」」
「うん、ご飯にしよう」
どうやら、耀だけがツナの意見に賛成のようだ。
それを聞いた一同がゲンナリしていたが、二人はそれを気に止めることなく厨房へとダッシュするのだった。
「本当に大丈夫なのか?綱吉を出させて」
そんな明の呟きに、誰も返すことはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
side《白夜叉》
「ふふふっ、これで準備は整った!それでは始めよう。聖夜戦争を!」
「白夜叉さま。キャラが思いっきり変わってますよ。そしてそれはいろいろとアウトです」
準備は着々と進んでいるのであった。
前書でも書きましたが、後編は明日投稿する予定です。
予定……なので、ずれるかもしれませんが。
年賀状とか大掃除とか今から忙しいですね。
冬休みはやることが多くてたいへんです。
それではまた明日!