問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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投稿だぜヒャッハー!
……すみません、あまりにもはやく投稿できたためテンションが少しだけおかしいです。
また、勢いだけで書いた感がすごいと思いますが、突っ込まないでいただけると幸いです。
では、どうぞ。


二十九話 ぶつかり合う魂

「レティシア……待ってろ!!」

 

明は全力で駆ける。

 

たった一つ、守りたい者のために。

 

迷いながらも突き進む。

 

「……例え愚者と言われようとも、俺は守りたいんだ。このアンダーウッドも……レティシアも」

 

運命の刻は、すぐそこまで迫っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

空に浮く城がすぐそこまで来たとき、明の前に不思議な何かが現れる。

 

例えるなら、どこまでも二次元的な穴。

 

まるで円盤のようで、しかしどの角度から見てもそう見える現実感のない穴。

 

「邪魔するなら、切り捨てるのみ……ッ!?」

 

明がギフトカードから刀を出そうとして、固まった。

 

それもそのはず。

 

なにせ、目の前の穴が形を変えたのだ。

 

いや、それだけなら明が固まる理由にはならない。

 

問題はその形だ。

 

「レティ……シア?」

 

そう、その姿は明の知るレティシアそのものだった。

 

なぜ?

 

そんな疑問ばかりが頭を巡り、明の思考をガリガリと削っていく。

 

「……違う。お前はレティシアじゃない!!」

 

事実、それはレティシアではなく城についた自動迎撃システムのようなものだ。

 

しかしその強さは今のレティシアを大幅に上回っている。

 

魔王レティシアとしての力が備わっているのだ。

 

明一人だけでは荷が重すぎるほどの強敵。

 

『………』

 

黒い、まるでレティシアの影のようなものは無言で槍を構える。

 

明は……動けない。

 

頭では違うとわかっていても、明は動けなかった。

 

刹那の出来事。

 

明の視界には、()()の黒い影が遮った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「明を行かせた!?」

 

おそらくアンダーウッド全土に響いてもおかしくないくらいの大声。

 

その持ち主は十六夜に他ならない。

 

「仕方ないじゃない。行きたくて仕方がないって顔してたんだから」

 

その怒鳴り声を真っ向から受けているのはペスト。

 

間違いなく先刻の一件だろう。

 

「ったく、これじゃ何のためにお前を送ったかわからねーだろ」

 

しかし、過ぎたことは仕方ないと十六夜もわかっているため、大きなため息一つでなんとか己を落ち着かせた。

 

「しっ、しかし、明さんは本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

「ええ。怪我もしていたし、今の明くんは何故かとても弱そうに見えたわ」

 

黒ウサギも飛鳥も、この現状を快く思っていないらしい。

 

それもそのはず。

 

仲間が無謀にも単身で敵地に突っ込んでいったのだ。

 

心配するなと言う方が無理な話だろう。

 

「ふふっ、明さんなら大丈夫ですよ」

 

「え?」

 

突然の声にキョトンとする一同。

 

その視線の先にいたのは青空を連想させる蒼の長髪に、太陽を思わせる金の瞳をもつ絶世の美女。

 

天照大御神その人だった。

 

「えっ、えっと……あなたは?」

 

「あら、これは失礼しました。私は天照大御神。どうぞよろしくお願いします」

 

さて、ここで彼女の登場はいったい何を指すのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「いっつ………ッ!?」

 

『目が覚めたか』

 

明が目を覚ますと、目の前に黒の道化が佇んでいた。

 

なぜここに?

 

いや、そもそもなぜ自分は気絶していたのか?

 

明は先程まで停止していた思考を無理矢理動かして、一つ一つ思い出す。

 

「そうだ、レティシアッ!!」

 

『落ち着け』

 

「ガッ!何すんだよ!」

 

自分のやるべき事を思い出した明は、動かない体に鞭打って飛び起きようとした。

 

しかし、それを黒の道化によって止められる。

 

『何をするだと?それはこちらの台詞だ!自分の体をよく見てみろ!!』

 

「え?」

 

黒の道化に言われて、明は改めて自分の体を見回す。

 

すると、なぜ自分の体が動かないのかがわかった。

 

「なんで……こんな」

 

ズタボロなんだ。

 

明は最後まで言えなかった。

 

今まで痛みを感じなかったのが、目の前の男のせいだと気がついたから。

 

そして何より……

 

「お前……その腕」

 

黒の道化が、あの攻撃から自分を守ったのだと理解したから。

 

『そんなことはどうでもいい。それよりも、理解できただろう。お前の弱さを』

 

「ッ!」

 

明はなにも言い返せなかった。

 

全てが黒の道化の言う通りだったから。

 

全部守るなどと抜かしておきながら、実際は自分の命一つ守る力すら持ち合わさせていない。

 

どうしようもなく愚かで、どこまでも滑稽で、これではただのバカではないかと。

 

誰に言われるのでもなく、己自身でそう思ってしまった。

 

「……ちくしょう……ちくしょう!!」

 

『………』

 

「力が……欲しい」

 

明は手を伸ばす。

 

それでもなお遠い、レティシアのいるであろう場所に。

 

「全部、全部守れるくらいの力が……欲しい!」

 

『お前には無理だ』

 

「……そんなの」

 

『お前には力がない。お前には覚悟がない。お前には戦うことなど叶わない』

 

「ッ!!」

 

明は唇を噛み締める。

 

それこそ、血がにじむほどに強く。

 

『……つまらんな』

 

「え?ッ!?」

 

突然、黒の道化が明を蹴り飛ばした。

 

あまりにもいきなり過ぎる出来事に、明は受け身をとることさえ出来なかった。

 

「うっ……」

 

何をする。

 

動かない口の代わりに、睨み付けることで明はそれを訴えた。

 

しかし目の前の男から帰ってきたのは、明を軽く越える怒りのこもった視線だった。

 

『貴様はなぜ戦う?その覚悟は、思いはっ!誰かに指図されただけで消えるような安っぽい物だったのか!!』

 

「ッ!?」

 

黒の道化は大股で明に近づき胸元を掴む。

 

仮面で隠れたその顔は、しかしそこからでも伝わるほどの怒りを明へとぶつけた。

 

『力がないなら求め続けろ!覚悟がないなら今決めろ!戦うかどうかはお前が決めることだ!』

 

「でも、俺は……俺じゃ救えないんだ!皆に黙って出てきて、絶対に勝てるって思い上がってて……それで、蓋を開ければこの様だよ。もう、俺には……」

 

『……なぜ、力が及ばなければ戦わない?なぜ最後まで抗おうとは思わない!』

 

「俺は……俺はっ!!」

 

明の瞳から水滴が零れる。

 

それは、紛れもなく涙だった。

 

何に対する涙なのか。

 

色々ありすぎて、明自身も理解できていないだろう。

 

「守りたいんだよ!レティシアも、アンダーウッドも!でも……でも俺には力がなくて……ただ理想を語るだけで何もできなくて……挙げ句、心配してくれる仲間さえ置き去りにして来たんだよ!もう、俺は……」

 

『話にならん!』

 

黒の道化は、明を突き放す。

 

明はそれに逆らうことなく、地面に打ち付けられた。

 

『アイカは……貴様の母親はそうじゃなかった!』

 

「……え?」

 

突然出てきた母の名前に、明の顔は戸惑いに染まる。

 

『アイカは、どんな困難があっても立ち向かった!何度倒れようとも立ち上がった!どんなに不可能な状況でも、すべてを守るために何度でもぶつかって行った!!』

 

明には両親との記憶が少ししかない。

 

思い出したといっても、共に過ごした時間があまりにも少なかったのだ。

 

しかし、明はなぜか腹立たしかった。

 

自分が親をけなしているようで、そんな自分に腹が立っていた。

 

『それにあいつは……お前の父親のことに関しては、一度も身を引いたことが無かったぞ』

 

「………」

 

『どんなに危険で無謀だったとしても、コミュニティの仲間や時には自分自身さえ置き去りにして、ただ一人の男を愛するために生きていた。まぁ、そのコミュニティだってそんな二人の下だから集まったような馬鹿者揃いだったんだがな』

 

遠い昔を懐かしむように、黒の道化は空を仰ぎ見る。

 

いつの間にか夜空はうっすらと明るくなっていた。

 

「あんたも、その仲間だったのか」

 

『……まぁな。さて、話が逸れたな』

 

黒の道化は改めて明に向き直り、今一度問う。

 

その覚悟の在り方を。

 

『貴様はなぜ戦う?』

 

「……レティシアの事が好きだから。彼女を、愛しているから」

 

『アンダーウッドはもう良いのか?』

 

「良くはないさ。でも……あんたの言葉を信じた訳じゃないけど、俺もそんな馬鹿者になりたいと思えたから」

 

『覚悟はできたのか?』

 

「ああ。俺は、全てを守るために戦う。……けど、やっぱりレティシアが一番だ」

 

『……ふっ、そうか。ならば、力を求め続けろ。常に叶わぬ理想を語り、それに素直に生きろ。叶わぬ理想はいずれ、叶うかもしれない理想に変わるだろう』

 

「……わかった。なら、さっさとあんたのゲームを始めよう。力をくれるんだろ?」

 

黒の道化は、また微笑む。

 

明もつられて、少しだけ笑う。

 

『ならば、速攻でクリアして見せろ竜堂明!新なる神の奇跡(オーバーレイ・ギフト)ーーーーー"万物創造の神"(イザナミ)

 

次の瞬間、世界が反転した。

 

否、一つの世界が生まれたのだ。

 

「なにっ!?そうか、これがあんたの……」

 

『そうだ。我の"万物創造の神"は、世界でさえも創造する。さあ、今からこの世界の全てが貴様の敵だ。貴様が生き残るすべは一つ……力を手に入れることだけだ』

 

これより始まるのはゲームを越えた、文字通り神々の遊戯のほんの一端にすぎない。

 

二人はそれぞれ拳を構え、そして………

 

『「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」』

 

神を定める戦いが、今ここに幕をあげたのだった。




さて、次回は明VS黒の道化の決着がっ!!
そして最終話(予定)です。
ここまで本当に長かったですね、はい。
それでは、また次回!

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