問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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お久しぶりです。
いやぁ、ようやく投稿できましたね。
ところで皆さん、風邪やインフルには気を付けていますか?
作者は……ダメでしたね。
そんなわけで風邪=箱庭に吹く風みたいな感じで久々に書きました。
ちょっと駆け足気味ですが気にしないでくれると嬉しいです。


二十八話 再会と決意

 

「二人とも無事だったのね」

 

「お嬢様か。あぁ、無事と言えば無事だが……明が少し怪我してな」

 

飛鳥と十六夜、そして明はアンダーウッドの地下都市に設けられた緊急治療所に来ていた。

 

急遽用意された治療所には、怪我人がところ狭しと並べられている。

 

そこで明は今、治療を受けていた。

 

というのも、巨龍が起こした突風に巻き込まれた際に少し怪我をしてしまったのだ。

 

明のギフトは確かに強力だが、十六夜のように強靭な肉体を持つわけではない。

 

つまり多少は威力を削ったとしても、常人並みの肉体しか持たない明には十分な脅威となったのだ。

 

その点に関しては飛鳥も同じようなものだが、被害を受けなかったらしく怪我一つなかった。

 

「そう……幸い、その暴風で魔物が一匹残らず本体に戻ったらしいわ。それと、春日部さんの姿が見当たらないのだけど……」

 

「なに?」

 

十六夜は辺りを見回すが、確かに耀の姿はどこにもなかった。

 

となると、耀もレティシアのように何らかの緊急事態に巻き込まれたと考えていいだろう。

 

と、そこへ明が手当てを終えて合流する。

 

「飛鳥も無事だったのか。あれ、耀は?」

 

「えぇ、今その事で話していたのだけれど……あなたは大丈夫なの?」

 

見ると、明は頭に包帯を巻いていた。

 

本人はまるで気にしていないが、見るからに痛々しい。

 

「まぁ、軽く頭を打っただけだから。取り合えず心配いらないよ。それより、早く黒ウサギたちと合流しよう。何か分かるかもしれないし……っと、噂をすれば何とやらだな」

 

「皆さん!耀さんの行方がわかりました!」

 

丁度タイミングを測ったように黒ウサギとジンが三人に近付いてくる。

 

この二人は今まで耀の行方を探していたらしい。

 

「本当なのか黒ウサギ?」

 

「YES……ですが、かなりまずいことになっているようです」

 

苦々しい表情を集めてきた情報を報告する黒ウサギ。

 

それによると、どうやら耀は魔獣に襲われた子供を助けようとして空の上、厳密には巨龍と共に出現した遥か上空に浮く古城に乗り込んだらしい。

 

目撃者の話が本当なら、無謀以外の何物でもないのだが。

 

「それともう一つ。ギアスロールの件も含めて考えるなら、あの城にレティシア様もいると考えていいでしょう」

 

「……あそこに、レティシアが……」

 

黒ウサギの言葉に、明は天空の城を見上げる。

 

その瞳は、心ここに在らずといった感じで、まるで今にも飛んでいきそうになっていた。

 

「明。わかってるとは思うが、今はまだその時じゃない。お前が今ここで勝手な行動をとったら、まず間違いなく失われる命のほうが大きいぞ」

 

「十六夜………わかってるさ、そのくらい」

 

十六夜は明の肩に手を置き、無慈悲にもそう告げた。

 

しかしそれは何処までも正しくて、明もその事を知っているからこそ反論はしない。

 

しかし、それでもと彼は手を伸ばした。

 

愛しき女性が居るであろう遥か彼方に。

 

「でも、わかっていても割りきれないんだ」

 

「明さん………」

 

「……まぁ、早ければ明日にでも救援隊が出されるだろ。さっきの話が本当なら、あの城にいるのは二人だけじゃないはずだしな」

 

十六夜の言う通り、この騒ぎで行方不明になっているのは何も耀だけではない。

 

そしてそのほとんどが耀と同様にあの城にいると見ていい。

 

「……レティシア」

 

その小さな呟きは、誰にも聞こえることなく虚空に溶けて消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「………」

 

その日の夜。

 

時刻的には、十六夜たちが他のコミュニティの人たちと今後の事について話し合っている頃だろうか。

 

明は今、例の古城が見える丘まで来ていた。

 

理由は言うまでもないだろう。

 

「……手を伸ばしてもなお遠い、か」

 

何度目になるだろうか、こうして手を伸ばしてはため息を着いたのは。

 

ここ数十分で三桁に迫る勢いだったりする。

 

「………はぁ」

 

「何してるのよ」

 

「へ?うおっ!?」

 

明が脱力して芝生に寝転がると、その視界に見慣れない、しかし見たことのある人物が映った。

 

その人物は腰に手を当てこちらをうかがっている。

 

………メイド服で。

 

「ちょっと、今なにを考えたのかしら?」

 

「い、いえ何も………ってか、何でお前がここにいるんだよ、()()()

 

そう、その人物とは紛れもなくペストだった……メイド服の。

 

しかしそれは妙だ。

 

なにせ、ペストを消し去ったのは他でもない明自身なのだから。

 

「なんだ、何も知らないんだ」

 

やれやれといった風なしぐさをするペスト。

 

それもそのはず、実はこの事を知らないのは明だけなのだ。

 

ジンや黒ウサギは元より、十六夜や飛鳥、耀はアンダーウッドに来たときに理由を聞かされている。

 

「えっと、良ければ聞かせてくれないかな?」

 

「……はぁ、良いわ。特別に聞かせてあげる」

 

そう言ってペストは、明のとなりに腰をおろした。

 

心なしか、その頬は若干赤く見える。

 

「……私が主催したゲーム、覚えてる?」

 

「あぁ、火龍誕生祭の時のだろ?」

 

「そうよ。簡単に言うなら、その時のクリア報酬ね。今の私はノーネームに隷属しているの」

 

「へえ。つまり、これからは仲間ってことで良いんだな?」

 

「そんなところよ」

 

そういえば白夜叉がそんなことを言ってた気がする、と今更ながら思い出す明。

 

なるほど、確かに驚きだ。

 

「………」

 

「………」

 

話が一段落したのか、二人の間に沈黙がうまれる。

 

しかしそれは険悪な雰囲気からくるものではなく、むしろ互いに納得しあっているからこその沈黙なのだろう。

 

「………ねぇ」

 

「ん?」

 

「何であのとき、次会うときは友達なんて言ったのよ」

 

「……何で、ね。」

 

明は目をつむる。

 

まるで、その時の事を鮮明に思い出そうとするかのように。

 

「……お前のやりたいことに共感が持てたから、かな?」

 

「……なによ、それ」

 

ペストは納得がいかないのか、明をジト目で睨み付ける。

 

しかし、明はそれでもお構いなしに話を続けた。

 

「何て言うのかな。お前って黒死病の八千万人の死者の霊群なんだろ?そしてそいつらのために太陽、今回は白夜叉に復讐しようとした」

 

「………」

 

ペストは黙って、ただ明の言葉に耳を傾ける。

 

「それにお前、まだあの二人……ラッテンとウェーザーだっけ?あいつらの事を大切に思っるてだろ」

 

「ッ!?なんで……」

 

「だって、その指輪の印、グリムグリモワール・ハーメルンのものなんだろ?」

 

「……あなたは」

 

「そんなやつが悪者なはずがない。だから今度あったときは友達になれるはずだ。俺はそう思ったんだよ」

 

「………」

 

絶句。

 

それはいとも容易く自分の内面を見抜く洞察力にか、それとも解りやすすぎる自分にか。

 

おそらくは両方にだろう。

 

「あなた、やっぱり甘いわね」

 

「ん?……そうかもな」

 

「絶対にそうよ。でも、だからこそわからない。なんであなたは迷っているの?」

 

「……なんの事?」

 

「とぼけないで。あなた、あのメイドを助けに行くのを迷ってるでしょ」

 

「ッ!?」

 

今度は明が絶句する番だった。

 

明が隠していた、隠したつもりでいたことは、おそらく他の仲間にも気づかれていたのだ。

 

今すぐ助けに行きたいという思いを。

 

「あなた、顔を出やすいのね。皆気がついていたわ」

 

「あぁ、やっぱり。それじゃあ、お前が来たのって………」

 

「そう、あなたの見張りね」

 

つまるところ、いち早く気がついた十六夜によって、ペストは顔合わせ兼見張りとして送られたのだ。

 

半ば予想していたとはいえ、あまりにも容易く見抜かれたのは少しショックだったらしく、明の顔は少しばかりひきつっていた。

 

「でも、それで諦めるの?」

 

「え?」

 

「あなたの思いはその程度なのかって聞いてるのよ」

 

「それは………」

 

ペストが大きな溜め息をもらす。

 

しかし、明の中の戸惑いは消えない。

 

十六夜の言う通り、明が城に乗り込んでいる間に巨人や魔物が襲ってこないとは断言できない。

 

その可能性を考慮するなら、少しでも戦えるものがいる方が良いに決まっている。

 

「はぁ、ハッキリしなさい。あなたは事故犠牲の出来る聖者になって、自分の大切なものを全て放り出してまでたくさんの命を守りたいの?それとも物分かりの悪い勇者になって、世界を捨ててまで大切な人を守りたいの?」

 

ペストの言っていることは最もだ。

 

今この瞬間だけに限らず、この答えはいずれ出さなければならない。

 

なにせ明の助けようとしているレティシアは、いかなる理由があったとしてもアンダーウッドを攻撃しているのだ。

 

世界とまでは言わなくてもレティシアを庇えば、最悪アンダーウッド全てを敵に回してもおかしくわない。

 

「俺は………わからない」

 

「………」

 

「でも……それでも俺は……レティシアもアンダーウッドも、全部を救いたい」

 

「出来もしない理想を平然と掲げる……まるで道化か愚者ね」

 

「それでも、俺は……」

 

「いいわ、私は何も言わないから」

 

「ッ!!………ペスト」

 

クスリと、ペストは悪戯な笑みを浮かべる。

 

ゾッとするような、まるで獲物に襲いかかろうとする獣のような瞳は、確かに明をとらえていた。

 

「ただし、条件が二つ。一つ、必ず生きて帰ってくること。二つ、帰ってきたら私の命令を一つ無償できくこと。良いわね?」

 

「……あぁ、ありがとうペスト」

 

迷いはある。

 

それでも、明は前を向く。

 

大切な人を助けるために、その白銀の風を宙へと舞わせる。

 

「……頑張りなさい」

 

誰にも聞こえないほどの呟きは、風によって何処かへと運ばれて行ったのだった。




あれ、これペスト?
書いてて思いましたね。
そして相変わらず話が進まないorz
さて、次回はあの方とガチバトルやったりします。
なるべく早く投稿したいとは思ってるので、気長にお待ちください(笑)
では最後に

今月の目標『目指せ!本作の完結☆』

それではまた次回!

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