問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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ようやく投稿できました。
しかし話が進まないorz


二十七話 アンダーウッドへ

 

「レ、レティシアさんが……拐われました!!」

 

「なんだとっ!?」

 

明は、店員の言葉に絶句する。

 

そう、たった数十分前に別れたばかりのレティシアが、何者かに拐われたと言われたのだ。

 

レティシア本人はもちろん、一緒にいた十六夜の戦闘力もかなり高い。

 

故に、店員の一言は疑問を持つには十分だろう。

 

「それは……本当なのか!?」

 

「っ!?はっ、はい!!たった今黒ウサギから連絡がありました!!」

 

 

黒ウサギからというなら、まず冗談でそんなことは言わないだろう。

 

そして、それを聞いた明がどう動くか。

 

そんなものはわかりきっている。

 

『どこへ行くつもりだ?』

 

「っ!?退けよ!!」

 

そう、真っ先に助けに行こうとする。

 

しかし、それを黒の道化が阻んだ。

 

まだゲームは終わってないと、その視線が語っていた。

 

『アンダーウッドへ行きたいのなら、我のゲームを終わらせてからにしろ』

 

「っ!?ふざけるな!!そんなことをしている暇はないんだよっ!!」

 

明は黒の道化を無理矢理どけようとする。

 

だが、黒の道化はそれよりも早く明に掴みかかる。

 

「っ!?何すっ……」

 

『今のお前に何ができる?』

 

「……なんだと?」

 

「止めなさい、黒の道化」

 

一発触発の空気。

 

それを壊したのは、今までの傍観していま天照だった。

 

『……勝手にしろ』

 

黒の道化は、天照の視線の意味を感じとり、明から手を離した。

 

「明さん。本当に助けに行きたいですか?」

 

「……当たり前だろ」

 

「そうですか。なら、送ってさしあげましょう。しかし、あなたは必ず後悔しますよ」

 

「……行かずに後悔するより、行って後悔したほうがましだよ」

 

明の顔を見て天照はふふっと微笑んだかと思うと、明の頭に手を置き撫で始める。

 

「なっ、なんだよ」

 

「いえ、ただ今の貴方があんまりにも渡さまに似ていましたから。そうですね、そんな貴方だから、一つ教えてあげます」

 

ゆっくりと名残惜しそうに手をどけた天照は、その手を虚空へと伸ばす。

 

すると、一枚の鏡が現れた。

 

「よく聞きなさい。あなたはまだ、"あなた自身のギフト"を使っていません。あなたが今まで得てきた力は、あなた本来の力ではないのです」

 

予想外過ぎる天照の言葉に、明は呆然と立ち尽くす。

 

それもそのはず。

 

なにせ、天照はこう言っているのだ。

 

"風霊王"でも"正体不明"でもない、まったく別の力を明は宿しているのだと。

 

それは新たな可能性を指す言葉であり、また今までの明を否定する言葉だった。

 

「それって、どういう……」

 

「さぁ、行きなさい。あなたの愛しい人のもとへ。そしてどうか忘れないで。あなたの運命はあなた自身のものだと」

 

すると、天照の持っていた鏡が強く輝きだす。

 

真なる神の奇跡(オーバーレイ・ギフト)ーーーーー"太陽の完全支配権"(アマテラス)

 

「っ!?」

 

これが天照の真なる神の奇跡。

 

使用者本人の名を冠す奇跡。

 

真名が語られたことにより、鏡はよりいっそう強く、太陽のように光輝く。

 

「あ、そうそう。明さん、高いところって大丈夫ですか?」

 

「……は?」

 

天照の間抜けな質問を最後に、明の立っていた地面が"消えた"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side《白夜叉》

 

むぅ、いったい何が起きたんじゃ。

 

おそらく転移系のギフトだと思うが……いや、余計な詮索はよそう。

 

何か触れてはいけないような気がする。

 

それほどまでに大きな力を感じるのだ。

 

「……さて、白夜叉ちゃん。準備はいいかしら?」

 

「む?いったい何の……」

 

「白夜叉さまっ!新しい情報です、魔王が……魔王がこちらに向かっているそうです!」

 

なんだと!?

 

そんなことが……いや、それよりも天照のやつ、この事に気がついていたのか?

 

そう思っていると、やつがこちらを向いて微笑む。

 

「あら?言ってなかったですか?私の"真なる神の奇跡"は、日の光を触媒に遠見をする事もできるんですよ?」

 

予想はしておったがとんでもない力だな。

 

"太陽の完全支配権"という名から察するに、太陽の主権すらも操る事が出来るのかもしれん。

 

「さて、白夜叉ちゃん。はやく神格を返上してきなさい。私と黒の道化がいれば何とでもなりますが、万が一ということもあります。万全を期すに越したことはないでしょう」

 

「……わかった。そうさせてもらおう」

 

どうやらそれが最善のようだ。

 

「さて、黒の道化。準備はいいですか?」

 

『あぁ、とっくに出来ている。』

 

やつの実力はさっきの戦いでわかっている。

 

しかしあの規格外すぎるギフト、おそらくギフトを創る類いのものだろう。

 

一桁の実力は、本当に恐ろしいな。

 

「黒の道化、わかっていますね?」

 

『あぁ。このゲームは、我等が蹂躙する』

 

……私もさっさと神格を返上してくるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「って、はあああぁぁぁァぁぁァァァぁぁ!?」

 

明が気がついたときには、すでにそこはサウザンドアイズ支店ではなかった。

 

()を見れば巨大な水樹を中心に広がる広大な緑、アンダーウッドだったのだ。

 

そう、下を見れば。

 

つまり今現在明がいる場所とは、アンダーウッドの上空に他ならない。

 

「なんかものすごくデジャヴなんですけど……」

 

箱庭に来たときもこんな感じだったなぁ、と呑気な思考をしつついくらか落ち着いた頭で今の現状を確認する。

 

おそらく、というか間違いなくこれは天照の"真なる神の奇跡"によるものだろう。

 

"太陽の完全支配権"

 

天照はそう呼んでいた。

 

「……っと、今はそれよりもレティシアだ。十六夜たちと合流しないと……っ!?」

 

そう言って周りを見回そうとする明の前に、一枚のギアスロールが現れる。

 

しかし、明が驚いたのはそこではない。

 

「なんだよ……これ。勝利条件が"レティシアの討伐って"どういう……」

 

戸惑う明。

 

だが、異変はそれに留まらなかった。

 

今まさに明が落ちてきただろう空が、二つに裂けたのだ。

 

そしてそこから見えたのは……

 

「龍……だと!?」

 

そう、雲海に隠れて見えないほどの巨大な龍だった。

 

龍の常識外れの雄叫びが一帯を震撼させたかと思うと、今度は鱗が雨のようにアンダーウッドへと降り注ぐぎ、一枚一枚が怪物へと変わっていった。

 

「いったい何が起きてるんだ」

 

いきなり過ぎる事態に、明の混乱は増すばかり。

 

「……あれは?」

 

だいぶ地面が近づいてくると、巨大な人型の怪物、人の幻想種である巨人と戦っている十六夜が見えた。

 

結構な数に囲まれているのに、十六夜はまったく退けを取っていないどころか、まるで巨人が紙切れのように飛んでいく。

 

「……落ち着け。今できることからやるんだ」

 

明は自分にそう言い聞かせ、十六夜の元へと急ぐ。

 

風を蹴り、落下の速度を加速させる。

 

「レティシア、待ってろよ」

 

明は思いを胸に、空を駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も加勢するぞ十六夜!」

 

落下の勢いに乗せて脇に差した刀、"風刀影絶"を降り下ろす。

 

その一撃は、実に三体もの巨人を同時に切り裂いた。

 

……そのうちの一体が近くの建物に突き刺さった気もするが、明はあえて無視する。

 

「明?……意外と早かったな」

 

明を傍目に、十六夜も近くの巨人を凪ぎ払う。

 

「あぁ。いろいろあってな」

 

対する明は、黒の道化との戦いで身につけた電磁誘導を使い発生させた電気を竜巻に纏わせて放つ。

 

「……明、すまなかった。今回は完全に俺のミスだ」

 

「聞いてないよ。それよりもさっさと終わらせるぞ」

 

「……だなっ!」

 

すまなそうにする十六夜。

 

しかし、明は元よりそんなことを気にしてはいない。

 

むしろ、一緒にいかなかった自分に非があるとさえ思っているのだ。

 

「だがその前に、どうやら一区切り着きそうだぜ?」

 

え?

 

明が何かを言う前に、黒ウサギのアンダーウッド全体に響くような声が響く。

 

『"審判権限"の発動が受理されました!只今から"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING "は一時休戦し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!』

 

「なるほど、審判権限か」

 

「あぁ。それにしても黒ウサギのやつ、遅かったな。これは後でいじり倒すしかないかな」

 

ヤハハとこんなときでも余裕な十六夜。

 

そんな彼に明が声をかけようとしたとき、それは起こった。

 

『……え?』

 

黒ウサギの戸惑いの声。

 

それに続くように、あの巨龍の咆哮が轟く。

 

それにつられて二人が空を見ると、そこにはアンダーウッドに向けて降下する巨龍の姿があった。

 

「っ!十六夜!」

 

「ちっ!くそったれ!!」

 

頭上僅か百メートルのところを通過する巨龍によって、強力な突風が巻き起こされる。

 

その威力は、あの十六夜でさえも軽々と吹き飛ばした。

 

「うっ……おおおぉぉぉぉ!!」

 

明は自身の周りに風を巻き起こし突風の相殺をはかるが、規模が違いすぎた。

 

明は十六夜と共に、なす術もなく空へと打ち上げられた。

 




ーーーーーDETAーーーーー

『太陽の完全支配権』(アマテラス)

天照大御神の"真なる神の奇跡"で、その全貌は未だ明かになっていない。
いまわかっているものだと太陽光の届くところの監視や転移ができるらしい。
発動すると装飾の凝った鏡が出現する。



◇◆

次回も不定期です。
気長にお待ちください(--;)

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