問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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少しでも更新ペースを上げたい衛宮です。

そしていきなりのオリジナル&急展開。
なぜこうなったorz

そんな二十六話ですがどうぞ。


二十六話 理不尽なゲーム

「父さんと母さんが……同志?」

 

天照大御神(アマテラスオオミカミ)の言葉をそのまま受け止めるなら、少なくとも明の両親は一桁で戦っていたことになる。

 

だがそれでは噛み合わないこ事が出てくる。

 

そう、レティシアと行ったコミニティ『黒の細工師』(ブラック・ウォーカー)の本拠だ。

 

あれは間違いなく七桁の外門にあった。

 

「本当なんですか?」

 

「えぇ、本当です。貴方がもし『黒の細工師』の事を言っているのなら、確かにあのコミニティの本拠は最下層である七桁代の外門にあります。ですが、私たちが共に戦ったのはコミュニティができる前です」

 

しかし、目の前の人物の話が真実である保証はない。

 

そう、そのコミュニティも本人たちも、魔王によって滅ぼされたのだから。

 

「……あなたが父さんたちの知り合いだとして、一つ聞きたいことがあります。」

 

「……なんでしょうか?」

 

天照は目を細める。

 

「なんで……父さんたちが魔王に襲われたときに………助けてくれなかったんですか?」

 

目の前にいる彼女は間違いなく一桁代の実力を持っている。

 

だとしたら、そんな彼女が助けにきていたなら……全滅などあり得なかったのではないか?

 

明はそう思ってしまった。

 

「……間に合わなかった。ただそれだけの事です」

 

「間に合わなかった!?それで許されると……っ!?」

 

あまりにもアッサリと放たれた言葉に、明は天照に掴みかかる。

 

しかし、それを止めたのは道化の仮面をつけたコートの男だった。

 

『……止めろ』

 

男にも女にも、子供にも大人にも聞こえる不思議な響きを持った声だった。

 

否、あきらかに変声系のギフトだろう。

 

「……あんたは……」

 

「そこまでですよ"黒の道化"。明さんの言う通り、あの時私が間に合っていれば……恐らく、全滅は回避できたはずです」

 

"黒の道化"

 

そう呼ばれた男?は、天照の言葉に素直に身を退いた。

 

『だが、天照は悪くない。もし天照が竜堂明を異世界へ飛ばさなければ、今こいつはここに存在できなかった』

 

「……どういう、事だ?」

 

『そのままの意味だ。お前を異世界へ飛ばしたのは、天照だ』

 

「!?」

 

つまり、天照が助けに行けなかったのは、自分のせいだった。

 

その事実は、明の心を抉った。

 

記憶がないことから、そのときすでに封じられていたのだろう。

 

それでも、もしもあの頃の自分に何かできたらな……そう思わずにはいられなかった。

 

「この話はもう終わりです。それより、明さんも急いでいるようですし、本題に入りましょうか」

 

気まずくなった雰囲気を建て直したのは天照だった。

 

「……本題?」

 

「はい。これから貴方には、黒の道化と戦ってもらいます」

 

「おっ、おい!さすがにそれは無理だ!いくら明が強いといっても、それは精々六桁辺りが良いところだろう!」

 

天照の意外な要件に割り込んできたのは、今までも三人の会話を静聴していた白夜叉だった。

 

さすがに今の明では一桁代とは部が悪すぎる。

 

実力差は歴然だろう。

 

「わかっています。だからこそ、今ここで彼の秘めた才能を引き出すのです」

 

天照は今まで以上に真剣な顔になる。

 

「秘めた……才能?そんなものが俺に……」

 

「あります」

 

なんの躊躇いもない一言に、明と白夜叉は怯む。

 

「まさか……明の"正体不明"(コード・アンノウン)にはさらに上があるのか?」

 

白夜叉の推測に、天照は首を横に振る。

 

「その表現は正しくありません。正しく言うのなら"個としての覚醒"ですね」

 

天照の難しい言い回しに、明が首をかしげる。

 

「……何が違うんですか?」

 

「白夜叉ちゃんが言ったのは"ギフト"の進化です。ですが、貴方がこれから辿るのは、"貴方自身"の覚醒なのです。そう、貴方はこれから"真なる神の奇跡"(オーバーレイ・ギフト)へと至るのです」

 

「なっ!?」

 

真なる神の奇跡(オーバーレイ・ギフト)……なんだそれは?明は知っているようだが……」

 

思いがけないところで聞いた思いがけない言葉に、明は驚く。

 

白夜叉の言葉から彼女は知らないようだ。

 

階層支配者(フロアマスター)出さえ知らないことを、グライは知っていた。

 

明は、ますます真なる神の奇跡についてわからなくなってきた。

 

「……いや、俺も小耳に挟んだ程度だ。それは、いったい何なんですか?」

 

天照は一度目を閉じ、ゆっくりと語りだした。

 

「…… 恩恵(ギフト)でも才能(ギフト)でもなく、奇跡(ギフト)を越えた奇跡(ギフト)。ほんのわずかな者だけが至ることのできる力………それが"真なる神の奇跡"(オーバーレイ・ギフト)です。そして、一度のギフトゲームでの使用は一度きりと決められています」

 

「……なんと」

 

「……………」

 

ここまではグライさんに聞いた内容だ。

 

白夜叉は驚いているようだが、明は気を引き締める。

 

「至るべくして至るのか、それとも何かきっかけがあるのか……その全貌は今だ謎に包まれています。一説によれば、この箱庭を作った創造主が意図的に作ったバグだとか」

 

「っ!?……聞いたことも無いなぁ、そんな話は……」

 

「当たり前です。この事は至ったものだけが知っていることですから」

 

箱庭の創造主が意図的に作ったバグ。

 

もしそうだとしたら、明が思っている以上に大きな話になるだろう。

 

「しかし、その話が本当なら、誰が至かもわからないはずだ。なぜ明にその才能があると言えるのだ?」

 

白夜叉の疑問は、明も考えたことだった。

 

もしそれがわかるとしたら、天照にそういう能力があるのか、それとも……

 

「それはね……彼の両親が両方とも"真なる神"(オーバーレイ)覚醒者だったからよ」

 

「……結論の一つとしては考えてた。でも、まさか……ということは、天照さんもそうだったりしますか?」

 

どうやら明が予想していたことに少し驚いたようだが、天照は話を進める。

 

「……ええ、そうですね。私も"真なる神"覚醒者です。そして、両親が覚醒者だった貴方なら、必ず至れるでしょう。」

 

「だが、戦う必要があるのか?」

 

白夜叉の問いは最もだ。

 

両親が覚醒者で、尚且つ至れるという確信があるなら、今危険を犯してでもやる必要があるのだろうか。

 

時が経つにつれて至る可能性はないのだろうか。

 

「おそらく、戦わなければ至れないでしょう。私たちが至ったときに共通しているのは、"戦いの最中であった"ということだけなのですから」

 

圧倒的に情報が足りないなかに見つけた三人の共通点だったのだろう。

 

それは、今現在最も有力な仮説だとも言える。

 

「……わかった。やるよ」

 

「明………なら、私からはなにも言うまい。しかし、ここでやられては敵わん。ステージは用意させてもらおう」

 

そう言って白夜叉が柏手を打つと、一瞬の浮遊感の後に背景が替わる。

 

そこは、箱庭に来て初日に明が白夜叉と決闘した場所。

 

白夜を表現した氷雪のステージ。

 

「感謝します、白夜叉ちゃん。では、よろしく願いしますよ?黒の道化」

 

『解っている。ルールはこれだ』

 

そういって黒の道化が出したゲームの内容はこうだ。

 

『ギフトゲーム名"真なる神へと至る道"

 

"プレイヤー側勝利条件"

・"真なる神の奇跡"を一度でも使用する

 

"特別ルール"

・このゲームにプレイヤー敗北条件及びホスト側勝利条件は存在しない

・このゲームでの"真なる神の奇跡"の使用を無限に許可する』

 

「……これは」

 

白夜叉は絶句する。

 

黒の道化と呼ばれた男さえも"真なる神"覚醒者であり、さらにはそれを無限に使えるのだ。

 

このゲームを一言で表すなら、理不尽としか言えないだろう。

 

しかもゲームを終わらせるには勝つしかないときた。

 

白夜叉がそうなるのも無理はない。

 

しかし当の本人である明には、戸惑いの色が見えない。

 

どうやらやる気満々のようだ。

 

「さっさと終わらせて、俺は皆のところに行くぞ」

 

『そんな温い覚悟では、我は倒せないぞ』

 

今ここに、理不尽なゲームの開催が決定した。

 

明はゆらりと刀を抜く。

 

「どうやればいいのかわからないが……とりあえず突っ込む!!」

 

明はそのまま、抜いた刀に風を纏わせ突っ込む。

 

『……あまいな。Generation(生成)ーーー異常消滅の剣(イレイサーブレイド)

 

謎の詠唱の直後、黒の道化の手には不思議なオーラを纏った剣が握られていた。

 

そして、二振りの刃が交わりあった瞬間……

 

「なっ、風がっ!?」

 

『隙だらけだ』

 

「っ!?がはっ!!」

 

鋭い蹴りにより、明の体は後ろに吹き飛ぶ。

 

そう、本来ならなんらかの"恩恵"で創られたであろう謎の剣が砕けるはずだった。

 

なぜなら、明の風は恩恵を切り裂くのだから。

 

これらの事象と黒の道化が言ったギフト名であろう言葉から、あの剣は恩恵を消し去る奇跡の上位版……即ち、"真なる神の奇跡"によって創造されたものだろう。

 

「(ギフトを創った!?それに、"正体不明"(コード・アンノウン)を完全に吹き飛ばすなんて……)くっ!強い!!」

 

明は空中で受け身をとり、何とか着地する。

 

『そういうお前は弱すぎだ。ギフトを消された()()で驚くな。そんなんじゃ我に傷一つ付けることはできないぞ。』

 

いつもやっている側の明が言えた義理ではないが、いきなり自分の力が消えたら驚かない訳がない。

 

「なら……これでどうだ!!」

 

明は刀を掲げ、"重力支配"(グラビティ・ルーラー)を発動させる。

 

すると、刃からは電気が迸る。

 

"電磁誘導"という言葉に聞き覚えがあるだろうか?

 

詳しい話は省くが、要するに重力と共に地磁気を操ることでその現象を起こした。

 

『……ほう』

 

「即興だが上手くいったな。ギフトは消せても自然現象は消せないだろ!」

 

明は掲げた刀に風を纏わせ、雷を纏った竜巻を引き起こす。

 

『だからお前はあまいんだ。Evolution(昇華)ーーー全て消し去る消滅の音色(オールイレイサー・トーン)

 

黒の道化が剣を弾くと、鈴のような音色が周りに響く。

 

変化は歴然だった。

 

「なにっ!?」

 

「なんとっ!?」

 

「はぁ。やりすぎですよ黒の道化」

 

音色が鳴り止むと同時に、白夜叉のゲーム版が消えた。

 

気がつくと、いつの間にかサウザンドアイズ支店の白夜叉の部屋だった。

 

『すまん。もう一度あの空間を張ってもらえるか』

 

「大変です!!」

 

突然、店員が慌てて駆け寄ってきた。

 

「ん?どうかしたのか?」

 

店員を沈めるように語りかける白夜叉。

 

しかし、店員は予想を上回るものだった。

 

「レ、レティシアさんが……拐われました!!」

 

「なんだとっ!?」

 

動き出した運命は止まらない。

 

もしも運命を止めることが出来るとしたら、それはきっと人間では起こせない"奇跡"なのだから。

 




ーーDETAーー

天照大御神(アマテラスオオミカミ)

青空を連想させる蒼の長髪に、太陽を思わせる金の瞳をもつ絶世の美女。
しかし、レティシアLOVEな明からすればそんなことは些細なことだったようだ。
明の両親とはコミュニティができる以前からの知り合いだそうだが………。
明を異世界に飛ばしたら張本人らしい。
ギフトは不明。
真なる神の奇跡も不明だが、太陽に関するものらしい。
年齢は不明だが、見た目は二十代前半ほど。



黒の道化

拘束具の様な装飾を施した黒のコートに、道化を思わせる仮面で顔を隠した謎の人物。
どうやら仮面は変声系のギフトらしい。
"真なる神"覚醒者のようだ。
発言からして、明が異世界に飛ばされるところを見たようだが……。
ギフトは不明。
真なる神の奇跡は、今現在解っている範囲では"何かを創る奇跡(ギフト)"のようだ。
素顔、素性等はは不明。
黒の道化はもちろん偽名。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

黒の道化の正体がわかった人は本当にすごい。

ところで、一部は二巻分の内容を約二十話にまとめたのに対し、今回は一巻分が五話にも満たなかったような……完結が近いせいだろうかorz

次回もなるべく早く投稿したいと思います。
それではまた次回。

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