問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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えー、いつかの活動報告に張りましたがそんな感じです。
しばらくはこちらに専念いたしますのであしからず。

今回はタイトル詐欺です。

ではどうぞ!


二十四話 過去と現在

「ヤハハ、意外と速かったな明」

 

「あぁ。結構飛ばしてきたからな……大丈夫か二人とも?」

 

「は、はい。なんとか……」

 

「うむ。大丈夫だ」

 

というわけで、明とレティシア、イアはサウザンドアイズ支店前に来ていた。

 

文字通り飛んできた。

 

するとそこにいかのも「お嬢様」といったオーラを醸し出している久藤飛鳥が入ってくる。

 

「遅い、遅いわよ明くん!いったい何をしていたのかしら?まさかこの事を忘れてレティシアとお茶をしていた何て事は無いわよね?無いわよね!!」

 

「え?……あ、うん。そんなことはないよ?……うん(言えない。十六夜が来るまですっかり忘れていて尚且つ飛鳥の言った通りだなんて……口が裂けても言えない……)」

 

そう。

 

実は明は皆との集合時間をすっかり忘れていたのだ。

 

そのため、時間が押してるのにも関わらず仕事を終えたレティシアとゆっくりお茶をしていたというわけだ。

 

ぶっちゃけ十六夜が来なかったら明はあのままノーネームにいたことだろう。

 

「本当かしら?……怪しいわね」

 

キョドる明の内心を見抜いたのか、飛鳥が疑いの眼差しを向ける。

 

「どうだった、十六夜?」

 

そこに今まで我関せずを通していた春日部耀が表れた。

 

「うん?あぁ……バッチシお茶してたぞ」

 

「ちょっ!?十六夜「明くん?」……なんでしょう、お嬢様」

 

十六夜に売られた明は、飛鳥の冷たい一言の元に諦めた。

 

それほどの威圧感があったのだ。

 

「フフ……フフフッ……ずいぶん余裕なのね明くん。もしそれで最下位だったときは……わかっているわね?」

 

「……はい」

 

「えっと、皆さん。これ以上ここで騒ぐとサウザンドアイズに迷惑が掛かるのでそろそろ中に行きましょう」

 

今ごろではあるが、救いの手を伸ばしてくれたのは意外にも我らがリーダー、ジン=ラッセルだった。

 

そうして明たちはサウザンドアイズ支店の暖簾を潜ったのだった。

 

刹那、店の奥から少女が……というか白夜叉がトリプルアクセルを決めながら飛んできた。

 

十六夜の元に。

 

「ブフォ!?お、おんし!もう少しましな受け止めかたはできんのか!!」

 

十六夜は白夜叉を足で止めたのだ。

 

「ヤハハ、受け止めてやったんだからいいだろ?それより、何が……ほう、これはこれは……」

 

なぜか言葉を詰まらせる十六夜。

 

不思議に思った明だったが、答えは目の前にあった。

 

何故なら、入ってすぐのところにワンサイズ小さいミニスカの着物を着た黒ウサギと黒髪の美女がいたからだ。

 

大方、白夜叉が無理矢理着せたのだろうと予測した明は、とりあえず黒ウサギに声をかけようとする。

 

「おい、黒ウサギ。なにやって………え?」

 

しかし、それは叶わなかった。

 

いきなり視界が真っ暗になったからだ。

 

「……明は見てはダメだ。断じてダメだ」

 

「そ、そうですね。明さまは見てはダメです。私は耳を塞ぎます」

 

どうやらレティシアが目を塞いでいるらしい。

 

高さ的に大人ver.だろう。

 

さらに耳も塞がれたことから、イアが先程言っていたことを実行したのだろう。

 

そんなわけで、明はこの後に起こることを見ることは無かったのだった。

 

 

 

 

 

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「まったく、ひどい目にあったのですよ……」

 

「本当だ……白夜叉殿も冗談がすぎる」

 

あれからしばらくどんちゃん騒ぎが続き、今ようやく収まったところだ。

 

それと、黒ウサギと一緒にミニスカの着物を着せられていたのは『白雪姫』といって、箱庭に来てすぐの十六夜が喧嘩を吹っ掛けた蛇の神格だそうだ。

 

いわゆる黒髪の和風美人である。

 

「さてと。それじゃあみんなの戦果を発表しようじゃないか」

 

「お前が言うな」

 

「あなたが言わないで」

 

「明が言うことじゃない」

 

「……ごめんなさい」

 

どうやら問題児三人組は未だに根に持っているらしい。

 

「で、でも明さんの言う通りです。そろそろ始めましょう」

 

救いはやはりジンなのであった。

 

「ふぅ、まぁいいわ。ではまず私からね。細かい戦果は後に置いておくとして、牧畜を飼育するための土地の整備と、山羊十頭を手に入れたわ」

 

これには子供たちも大喜びだそうだ。

 

派手な戦果ではないが、コミュニティ全体としては大きな一歩なのだろう。

 

「じゃあ次は私。私は、"ウィル・オ・ウィスプ"のジャックが作った炎を蓄積できる巨大キャンドルホルダー」

 

ジャックとは皆さんご存じ、カボチャをくりぬいて作るジャック・オー・ランタンの事だ。

 

火龍誕生祭にも出ていて、耀と再選するためにわざわざ招待状を出したらしい。

 

まぁ、とにかくそのキャンドルホルダーがあればノーネームの本拠内は恒久的に炎と熱が使えるんだとか。

 

「ほう?二人ともなかなかやるじゃねーか。そんで、明はどうなんだ?」

 

これまでの戦果を聞いても余裕綽々な表情をする十六夜。

 

よほどの戦果をあげてきたのがめに見える。

 

そう、絶対に負けないという自信がほとばしっているのだ。

 

「ふぅ、じゃあ俺の番ってことで……さてと、俺の戦果はこれだ」

 

そういって明が取り出したのは、明るい茶色のギフトカードだった。

 

「ギフトカードでございますか?しかし、いったい誰の………」

 

「イアのだよ」

 

「わっ、私の!?」

 

イアだけでなく、その場の全員が驚いた。

 

イアの母親のコミュニティに行ってくるとは伝えていたが、まさかこんなものを持ってくるとは自分でも驚いた。

 

しかも、そのなかに入っているギフトも規格外だった。

 

「そう、イアのギフトカードだよ。なんでも、強すぎるからしばらくの間グライさんが預かっていたらしい。そしてこの中に入っているギフトは"母なる大地"(デメテル)というものだ。俺の戦果はこのギフトと、芋や根菜などを主にした植物の種や苗だよ」

 

「なっ!?"デメテル"だと!!オリュンポス十二神にして人々に豊穣を教えたとされるあの……」

 

「あぁ、なるほど。最初見たときから気になっていたが、その名を聞いて確信した。おんしの母はグライか?」

 

デメテルという名に十六夜だけではなく白夜叉も反応した。

 

どうやら知り合いらしい。

 

「か、母様を知っているのですか?」

 

「あぁ。なぜかは知らんが、上層からふらっと現れたやつにあの森を与えたのは他でもないこの私だ」

 

ここで意外な関係性が発覚した。

 

本当に世間とは狭いものである。

 

それに、上層から来たというならあの規格外の強さも頷ける。

 

「それに、その"母なる大地"というギフトはとても貴重だ。なにせ、植物の成長を制御できるギフトだからな。早い話、その貰った種や苗を植えてそのギフトを使えば、数秒の後に収穫できるところまで成長するだろう。小僧とは勝るとも劣らない戦果だ」

 

「あぁ、そうだな白夜叉。今回は圧倒的な差で勝つつもりだったが、一泡噴かされたのはこっちだったぜ」

 

「そ、そういえば十六夜さんの戦果はいったい………」

 

「ふむ、そうだったな。それではジン=ラッセル。これをおんしに預けるぞ」

 

「こっ、これは……外門の利権証!僕らが地域支配者(レギオンマスター)!?」

 

ジンの驚愕は正しい。

 

なぜなら、十六夜の戦果は遠くを行き来するのに便利な境界門(アストラルゲート)のを無償で使用できるだけでなく、その使用料の八割をノーネームに納めるというとんでもない利権証だった。

 

「ねぇ、これって………」

 

「うん。私たちの負け………だよね」

 

喜ぶ一同を傍目に、飛鳥と耀はこの戦績に落ち込んでいた。

 

今度こそ勝てるも思ったのに、と。

 

「あぁ、そういえば言い忘れてた」

 

明の突然の声に、一同は声を潜める。

 

だが、明の口から出た次の一言は、予想以上にぶっ飛んだものだった。

 

「俺、前夜祭に出るの遠慮するわ」

 

「「「「「「「「………はぁっ!?」」」」」」」」

 

じゃあこのゲームは何だったのかとその場の全員が思ったのだった。

 

「だってレティシアも行かないんでしょ?」

 

その場に残るのは、一同の心からのため息だった。

 

 

 

 

 

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その日の夜、ノーネームでは宴が開かれた。

 

普段ご飯を作っているレティシアはもちろん、黒ウサギも腕に寄りをかけて作った料理がところ狭しと並べられた。

 

そんな料理が振る舞われる中、明はレティシアが作ったカレーライスに舌鼓をうっていた。

 

宴の席にカレーライスとはこれ如何に?

 

というのも、今更ながらもレティシアが明に好きな食べ物を聞いたら、明は迷わずにカレーライスと答えたのだ。

 

「どうだ明。美味しいか?」

 

「あぁ、すごく美味い。レティシアの作る料理は最高だな」

 

明は本当に幸せそうな顔で微笑む。

 

「そ、その………少し恥ずかしいな……でも、悪くはない」

 

そんな明とは真逆に、レティシアはなんの恥ずかし気も言われた言葉に赤くなっていた。

 

「そ、そういえば明は何でカレーライスが好きなんだ?」

 

「なんというか………母さんとあっちの世界で世話してくれた人が得意な料理だったからかな?」

 

「あ………うん」

 

レティシアは顔を伏せる。

 

なにせ、明の母親はすでに亡くなっており、世話してくれた人とも恐らく一生会えないのだから。

 

「そんな悲しい話じゃないさ。ただ、母さんに関してはあまり覚えてないんだよね。いくら記憶を取り戻したといっても、四、五才児の記憶力じゃ拙いからね。でも、それでもカレーライスの味だけは何となく覚えてるんだ。母さんがよく作ってくれたから。義母さんは少しひどい話だけど、ぶっちゃけカレーライスしか作れなかったんだ。ご飯はもっぱら俺と義妹が作ってた。だけど、俺はカレーライスの日がすごく楽しみだったんだ。義母さんのカレーライスを食べると、心が暖かくなったから。だから、そんな母さんと義母さんが作ってくれるお袋の味が好きなんだよ」

 

それを聞いて、レティシアは一つの決心をする。

 

「明。私はもっと美味しいカレーライスを作れるようになる。明の母上や義母さんに負けないくらいに」

 

「レティシア………うん、待ってるよ」

 

このあと二人は十六夜に無理矢理風呂に押し込まれることになるが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~二人を見ていた問題児+α~

 

「誰かっ!苦丁茶持ってこい!!」

 

*苦丁茶とは世界一苦いお茶です

 

「い、十六夜さん!?どうしたのですか!!」

 

「うるせー!いいからなんかないのか!」

 

「な、何かと言われましても………あ、これなんてどうです?」

 

「あ?ドリアン?なんでそんなものが………って、甘い臭い?」

 

「YES!これは白夜叉様が品種改良して作った『他人の恋愛は口に甘し』という新種のドリアンだそうです。甘さにしてネオテームの三十倍だとか」

 

*ネオテームとは、高甘味度甘味料の1つで、砂糖の七〇〇〇倍から一三〇〇〇倍の甘さがある。

 

「白夜叉のやつ、嫌味かっ!ってか、なんだその殺人兵器はっ!食ったやつ全員もれなく舌壊滅だろそれ!」

 

「まぁ、確かに。というか、もうこれドリアンじゃありませんよね☆」

 

「………極論だな。まぁいい、腹いせにあいつら浴場にぶちこんでくる。ついでにこれも食わせる」

 

「ちょっ!十六夜さん!?」

 

こんなことがあったとかなかったとか。

 

 




今さらですが明の好物はカレーライスです。
作者も好きです。

次回もなるべくはやく投稿できるよう頑張りますよ。
ではまた次回(・ω・)ノシ


そういえば最近、レティシアヒロインの作品増えてきましたね。
負けられない…………
頑張らなければ!!



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