問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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少し飛ばしすぎたとも思える二十三話。

展開が急で申し訳ないです。

そして書いてて思ったこと。

『グライさん強くしすぎたぜ★』


二十三話 新たな可能性

 

『いきますよ?………()()()()()()()()()()ーーーーー"掟をもたらす者"(デメテル・テスモポリス)

 

聞きなれない言葉と新たなギフト名。

 

そして、突然現れた謎の"鎖"。

 

明が混乱するには、十分すぎるだろう。

 

そして起こる新たな変化。

 

『竜堂明………《このゲームにおいてギフト、"正体不明"の使用を禁じます》』

 

「なっ!?うっ……ああぁぁぁぁァァ!!」

 

まるでグライさんの言うことを聞くかのように、"正体不明"(コード・アンノウン)は力を無くす。

 

無論、そのギフトで空を飛んでいた明は地面へと自由落下する。

 

(まずっ!?このままじゃ地面に………っ!!もし、グライさんの言葉がそのまま起こったとしたら、このゲームでは………二度と飛べない!?)

 

明は、地面に落ちる数瞬の間で状況をまとめる。

 

そして、その考察はたった今の出来事で認めざるを得ないだろう。

 

《このゲームにおいてギフト、"正体不明"の使用を禁じます》

 

いくらギフトゲームが"弱い方が悪い"といっても、これはあんまりだろう。

 

「うおっ!?"重力支配"(グラビティ・ルーラー)!!」

 

明は寸でのところで重力のクッションを作り、なんとか無事に着地する。

 

「………見間違いじゃない………か」

 

相変わらず腕に巻かれた鎖。

 

"正体不明"で絶ちきろうにも、そもそも出すことすらままならない。

 

恩恵を切り裂き無効化するはずのギフトが、その恩恵によって封じられた。

 

それが明をより混乱させた。

 

そして、先ほど口にしたギフト名………"掟をもたらす者"(デメテル・テスモポリス)

 

そうグライさんはデメテルと言ったのだ。

 

「………"デメテル"ーーー豊穣神であり、穀物の栽培を人間に教えた神とされる。オリュンポス十二神の一柱。その名は古典ギリシア語で「母なる大地」を意味するーーーそれが、あなたの正体ですか?」

 

そう、デメテルとは神の一体。

 

しかも、豊穣神なのだ。

 

もし、それが彼女の正体なのなら………このゲームの勝ち目は極めて少ないだろう。

 

『ふふっ……博識なのね。でも、それは違うわ。私たちの遠い祖先がデメテルなのよ。私は、その血を色濃く受け継いだだけ。………どう?リタイアする?』

 

そう、勝ち目は極めて少ない。

 

別にどうということはない。

 

ただ、存在の"格"が違うのだ。

 

神と人………次元が違いすぎる。

 

だが、忘れてはいけない。

 

「……ええ。確かに、力の差が歴然ですね」

 

『では「でも」………』

 

そう………彼も………

 

「だからこそ面白いです」

 

ノーネームの問題児なのだ。

 

『ふふっ………そうね。もしここでリタイアなんてしていたら、思わず食べちゃってたわよ』

 

「ハ……ハハ………(わっ、笑えない………)」

 

『私も奥の手を使ったのです。だから、あなたも最後までやりきるのが筋ですよね?』

 

「………そうですね」

 

明は刀を構える。

 

確かに"正体不明"は何らかの手で封じられた。

 

しかし、全てのギフトが封じられたわけではない。

 

現に、"重力支配"は使えたのだから。

 

明の頭が冷静を取り戻す。

 

(空を飛べないということは、あの攻撃の嵐の真っ只中にいるということ、状況は不利、風による攻撃と防御は不可能………ははっ、まさに崖っぷちか)

 

でも、彼は諦めない。

 

「今使えるギフトは二つか………なら、それらを合わせれば良い!!」

 

"重力支配"と"風刀陰絶"(ふうとうかげたち)を合わせる。

 

すなわち、風刀陰絶に重力支配を纏わせる。

 

「刃に………重力を……圧縮………圧縮……」

 

ギフトを収め、刃に纏わせる特性を十分に発揮し、重力を刃に集めていく。

 

そもそも"重力支配"は攻撃に向かない。

 

重力を産み出すのではなく、そこにある重力を支配するギフトだ。

 

だがしかし、どんなに小さな力でも一点集中させればその力はバカにはできない。

 

例えるのなら水鉄砲だろうか。

 

とにかく、明は刃に重力を圧縮していく。

 

『っ!?………何度も驚かされてばかりですね。……"生命育む(フェイタル)……「遅いですっ!」なっ!?』

 

明はグライさんがギフトを発動する前に奇襲をかける。

 

"重力支配"でブーストをかけ、重力を圧縮した刃で切りかかった。

 

『まったく、あなたという人は……年甲斐もなく楽しくなってきましたよ』

 

その刃は完全にかわされたかのように見えた……だが、宙には綺麗な茶色の、グライさんの毛が一房ばかり舞っていた。

 

「重力を圧縮して作った刃です。リーチこそありませんが……切れ味はなかなかですよ?」

 

『ふふっ……でも、これ以上は本当に森が無くなってしまいますね。次で最後にしましょうか』

 

グライさんはそう言い、回りに無数の鎖を出現させた。

 

「…………」

 

対する明は無言で刀を構え、重力を圧縮する。

 

合図はいらない。

 

二人の呼吸が重なった瞬間………

 

二人の攻撃は衝突した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ハァ……ハァ……」

 

『ふふっ……良い一撃でしたよ』

 

激戦を勝し、最後に立っていたのはグライさんだった。

 

「はあ……俺の負け、ですか」

 

『いえ。あなたの勝ちですよ?明さま』

 

は?

 

そんな間抜けな声が聞こえた。

 

明は地に背をつけ、グライさんは堂々と立っている。

 

この光景を見て、いったい何人の人が「明が勝った」と思うだろうか。

 

いや、ただの一人も思わないだろう。

 

ではなぜ、グライさんは明が勝ったと言ったのだろうか?

 

その答えはすぐにわかった。

 

二人……もとい一人と一匹の目の前にギアスロールが現れたからだ。

 

「『ホスト側のルール違反によりプレイヤー側の勝利』………ってはぁっ!?」

 

いつの間に?

 

そんな疑問が明の頭を過る。

 

始まってからさっきまで違反になるような行動は一切なかった。

 

「いや………まさか『オーバーレイ・ギフト』って言うのに関係あるんですか?」

 

もし違反と呼べる行動があるとすれば、協力無比なあのギフト、"掟をもたらす者"の使用だけだ。

 

今わかっているだけでも、鎖を操りギフトの使用を制限できるのだ。

 

グライさんに限ってドーピング等はないだろうが、不自然なくらい強いのは明白。

 

『……ふふっ、そうね。私の犯したルール違反は、"オーバーレイ・ギフトを二回使ったこと"なのよ』

 

「二回?そもそも、オーバーレイ・ギフトって何なんですか?」

 

明の質問に、グライさんは少しの間悩む。

 

おそらく、あまり広めていいような情報じゃないのだろう。

 

現に、明は今までそんな言葉を聞いた覚えがなかった。

 

『……あまり詳しいことは話せません。ただ、オーバーレイ・ギフトはその強大な力故に、一回のギフトゲームでの使用が一度に限られます』

 

暫しの考察の後、グライさんはポツポツと話始める。

 

「ギフトとは違うんですか?」

 

『えぇ。恩恵(ギフト)でも才能(ギフト)でもなく、奇跡(ギフト)を越えた奇跡(ギフト)。ほんのわずかな者だけが至ることのできる力………我々は"真なる神の奇跡"(オーバーレイ・ギフト)と呼んでいます』

 

ということは、ギフトを破壊、あるいは無効化する類いのギフトはオーバーレイ・ギフトには効かないということだろうか?

 

真なる(オーバー)……(レイ)………。そこに至るにはどうすればいいんですか?」

 

グライさんは静かに首を横にふる。

 

『わかりません。至るべくして至るのか、それとも何かきっかけがあるのか………』

 

「そう……ですか……」

 

『ふふっ、そう落ち込まないでください。それより、これが報酬です』

 

目に見えて落ち込む明の前に現れたのは、明るい茶色のギフトカードだった。

 

「ギフトカード?いったい誰の……」

 

『イアの物ですよ』

 

それは以外な人物だった。

 

そういえば、イアがギフトを使っているところは見たことがないと今更ながら気がつく明。

 

『イアには強力すぎたのですよ。だから、ギフトカードごと私が預かっていました。でも、今のイアなら大丈夫でしょう。明さまもいることですし』

 

「は、はぁ……ちなみに、どんなギフト何ですか?」

 

『ふふっ、それはですね………豊穣を司るギフト、"母なる大地"(デメテル)ですよ』

 

………イア恐るべし。

 

まさか神格級のギフトだったとは夢にも思わなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいま、レティシア」

 

「あ……お帰り、明」

 

あの後、明はとりあえずノーネームに帰ることにした。

 

"真なる神の奇跡"やイアのギフトなど考えたいことは山ほどあったが、帰ってから考えることにしたのだ。

 

そうしてノーネームに着くと、レティシアがちょうど洗濯物を干していたところだった。

 

「うん。何か手伝おうか?」

 

「いや、ちょうど今終わったところだよ。」

 

そう言ってレティシアは洗濯物の入っていた篭を抱え、明に微笑む。

 

「そうだ。これから暫く自由時間なんだ。一緒にお茶でもどうだろう?」

 

「あ、うん。レティシアの入れる紅茶は美味しいからね。ぜひお願いするよ」

 

そう言って笑い合う二人。

 

そのわずかな会話が、二人にとっての幸せだと言わんばかりに。

 

「さぁ、行こうか。あ、篭持つよ?」

 

「そうか?では、頼もうかな」

 

二人は手を繋ぎ、ノーネームの本拠へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たぞ。……それで、調子はどうだ?」

 

レティシアは、自身が作ったクッキーと淹れたての紅茶を並べながら明に問う。

 

「うーん……ペルセウス戦やペストの一件が結構広まっててね。なかなかギフトゲームに出させてもらえないんだよなぁ。ま、今回漸く大物を釣ったって感じかな?……いただきます。ハムッ……美味いよ」

 

レティシアは、話ながらクッキーに手をつける明に苦笑いしつつ、自身も一枚手に取り口へと運ぶ。

 

 

「ハムッ……うむ、なかなか良く焼けたな。まぁ、ギフトゲームに関しては仕方がないだろう。明はもう、ここら辺では強すぎるからな。それで、どんなギフトを貰ったんだ?」

 

「ん?それはサウザンドアイズに着いてからのお楽しみかな?」

 

明たちはこの後、十六夜たち問題児組をつれてサウザンドアイズにいく予定なのだ。

 

まぁ、それぞれが手にいれたギフトを鑑定してもらい、順位をつけるためだが。

 

「あ、明さま。お帰りなさいませ!いかがでしたか?」

 

すると、狼耳と尻尾をヒョコヒョコと揺らしたイアが現れた。

 

「ただいま、イア。うん、大物が釣れたよ。まぁ、あきらかに譲られた勝利だったけどね」

 

あそこで使われたのが"真なる神の奇跡"ではなく、普通のギフトだったなら……。

 

確実に明が負けていただろう。

 

グライさんはわざとルール違反を犯したのだろう。

 

わざわざ、普通では適用されないような見えざるルールを。

 

「おぉーーーーい!帰ってるか明!!!」

 

と、そんな事はお構い無とばかりに飛んできたのは問題児組の筆頭、逆廻十六夜だった。

 

十六夜はなんのこと無に中庭へと着地する。

 

………着地地点に割りと大きなクレーターができかことから、結構遠くから跳んできたらしい。

 

「あ、あぁ。どうした、十六夜?」

 

「あ?どうしたじゃねーぞコラ!お嬢様も春日部ももう向かったぞ!お前らも早く来いよ!」

 

そう言い残し、十六夜はまた空へと跳んでいった。

 

「……毎回思うけど、どうやったら人間はあんな感じで跳べるんだろうな?それにあの十六夜の態度は………どうやら当たりを引いたらしいな」

 

やたらとハイテンションな十六夜を見て、明は確信した。

 

「そんなことより明。早く片付けて…………って、もうないな」

 

「うん、美味しかったからつい。っと、そうだ。ちょうど良いからイアも行こう」

 

「えっ!?わ、私もですか?」

 

「よし。じゃあ出発!」

 

そんなこんなで、明一行はサウザンドアイズに向かってノーネームを後にするのだった。




はい。

読んでくれてありがとうございます。

今週中に二話投稿できてよかったです。

次回もなるべく速く投稿できるように頑張ります。

ではまた次回(・ω・)ノシ

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