問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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ようやくの投稿☆

どうも、お久しぶりです。

こんなに時間を空けてしまったため見てくれる人がいるか不安ですが、無事に二部スタートです!


二十二話 狼の試練

 

「……ゼェ………ハァ………」

 

ペストとの戦いから一ヶ月。

 

明は今、イアと出会った森、すなわち"森の団(フォレスト・ブリゲート)"の領地でとあるギフトゲームをしていた。

 

『ギフトゲーム名"母なる大地の賛歌"

 

"プレイヤー側 勝利条件"

 

・対戦相手の戦闘不能及びリタイア

 

"プレイヤー側 敗北条件"

 

・戦闘不能及びリタイア

 

・勝利条件の達成が不可能になった場合

 

"両者の禁止事項"

 

・この森から出ること

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

"フォレスト・ブリゲート"印』

 

以上が、明が現在行っているギフトゲームの詳細だ。

 

そして、誰と戦っているのかというと………

 

『明さま。貴方の力はそんなものなのですか?』

 

「……いや、そうは言いますけどねグライさん。いくらなんでもこれはチートですよ。大地のすべてが敵とかあり得ないと思いますよ!?」

 

そう、何を隠そうイアのお母さん兼フォレスト・ブリゲートのリーダーでもあったグライさんなのだ。

 

実に十九話ぶりの登場でございます。

 

(それにしても、グライさんがコミュニティのリーダーだって聞いたときは驚いたな。まぁ、今となってはなるほどとしか言えないけどな。)

 

さっき明が愚痴った通り、今となっては大地のすべてが敵となっている。

 

木が、草が、葉が、根が、森のすべてが明を攻撃し、拘束してくるのだ。

 

具体例をあげるのならば、所謂葉っぱカッターや木の根の触手みたいなものだ。

 

文字通り、森そのものが敵というわけである。

 

どうやらグライさんの力は大地に関するものらしい。

 

それも、かなり強大な力のようだ。

 

『そうでもないわ、明さま。ギフトゲームは基本的に"弱いほうが悪い"のよ。クリア条件が確立されているのなら、どんなに不利なものでもゲームは成り立つわ』

 

「……あぁ、そうでしたね。それに、俺も今となっては十分チートみたいなもんですしね………」

 

"正体不明(コード・アンノウン)"。

 

それが、明がペストとの戦いの時に手に入れた新たな力。

 

十六夜のものと同じく、その力の全貌は掴めていない。

 

今わかることは、"ギフトを切り裂く風のギフト"であることだけだ。

 

まぁ、その時点ですでにすごい事なのだが………。

 

『さて、それでは続きをしましょうか』

 

「……えぇ、そうですね……」

 

さて、ここで一つ説明しなければならないことがある。

 

それは、なぜこのような状況になったのかだ。

 

それを語るには、少し前に遡らなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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~数日前のノーネーム~

 

「"アンダーウッド"?"収穫感謝祭"?何それ?」

 

明達は今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。

 

大広間の中心に置かれた長机には上座からジン、十六夜、飛鳥、耀、黒ウサギ、レティシア、明、そして年長組筆頭に選ばれた狐娘のリリが座っている。

 

ノーネームの会議では、コミュニティの席次順に上座から並ぶ礼式がある。

 

リーダーであるジンの次席に十六夜が座っているのは、水源の確保とレティシア奪還の際にその手立てを整えた事が大きい。

 

だが、この席に座るのは本来彼ではない。

 

なぜなら、レティシアの奪還にペスト撃破という十六夜以上の戦績を挙げた人物がいるのだから。

 

そう、明である。

 

彼が今座っているのは、レティシアとリリの間なのだ。

 

「……おい、明」

 

ものすごい不満そうな十六夜が明に声をかける。

 

「なんであなたはそんなところに座っているのかしら?」

 

そのとなりに座っていた飛鳥も機嫌が悪い。

 

「え、ダメ?」

 

しかし、その本人は全く気にしないとばかりの反応だ。

 

ピキリ

 

二人の額に怒りマークが浮かぶ。

 

「「当たり前だ(でしょう)!!」」

 

二人は机を叩きながら叫ぶ。

 

二人が怒っている理由は一つ。

 

本来自分たちより格上の明が、最下位なみの席に座っていることだ。

 

プライドの高い二人は、それが受け入れがたかったらしい。

 

さらに明がそこに座っている理由も拍車をかけ、二人の怒りは際限なく募っていく。

 

「いや、だってレティシアの隣がいいし」

 

子供かっ!

 

と思いなくなるような理由だった。

 

「明。これは決まりなんだ。大人しくもとの席に座ってくれ。それに、私としても明が上座に座ってくれると嬉しいのだ」

 

レティシアも説得に回る始末だ。

 

「はぁ、わかったよ。次からはそうするよ。………それで、何なのそれ?」

 

ちなみに、明は今来たところである。

 

というのも、ノーネームの子供たちにお願いされて今の今まで遊んでいたのだ。

 

いつもならハリセン片手に暴れまわる黒ウサギも、今回ばかりは納得してくれた。

 

たまにはそういうことがあってもいいだろう。

 

と、まぁそんなわけで。

 

明がいない間にノーネームの現状や"黒死斑の魔王"討伐による報酬、飛鳥やその新たなギフトである赤の巨兵、ディーンの働きで農園区の1/4が使える状態にあることなどが報告された。

 

そして、その農園区に植える植物や牧畜をギフトゲームでかき集めようという話だった。

 

そこで、ノーネームに招待状が届いている南側の"龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)"連盟からの収穫祭で暴れまわり、バカ儲けしようという話だった。

 

「い、いえ。別に暴れまわらなくても………。えっと、今回の招待状は前夜祭から参加を求められているものです。しかも旅費と宿泊費はあっちが請け負うという破格のVIP待遇!場所は南側屈指の景観を持つという"アンダーウッドの大瀑布"!皆さんが喜ぶこと間違いないございません!」

 

ドンッ!と胸を張る黒ウサギ。

 

箱庭の貴族が言うのなら間違いは無いのだろう。

 

「ただ、一つだけ問題があります」

 

「問題?」

 

ジンがわざとらしく咳払いをし、皆の注目を集める。

 

どうやらこの収穫祭は前夜祭含め二十五日ほど開催されるらしい。

 

しかし、そんな長期間コミュニティを空けるのは好ましくないとのこと。

 

そんなわけで、誰か一人がレティシアと共に残らなければならないのだが………

 

「「「嫌だ」」」

 

はい、満場一致です。

 

まぁ、ジンも予想通りだったらしくもう一つの提案をしてきた。

 

「では、前夜祭を三人、オープニングセレモニーからの一週間を四人、残りの日数を三人と日数を絞らせてくださいませんか?」

 

実に合理的でシンプルな案。

 

しかし、問題児たちを納得させるには少し足りないものがあった。

 

それだと二人だけは全日程を遊び尽くせるのだ。

 

本来ならよりノーネームに貢献している順、つまりは十六夜と明が行くべきなのだが、それではあまりにも不公平すぎる。

 

そんなわけで、前夜祭の全日までの戦績で上位二名が全日程を遊び尽くせる事になったわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんなこんなで悩んでいた明がイアに相談してみたところ、『なら、母様のところに行かれてはどうでしょう?』というアドバイスを貰った。

 

いく宛がなかった明は、素直にそうすることにしたわけだ。

 

そしてゲームに勝ったらギフトを貰えることとなり冒頭に戻る。

 

『……"生命育む森の守護者"(フェイタル・ガーディアン)!!』

 

「うぉっ!?またかぁぁぁぁーーーー!!」

 

"生命育む森の守護者"

 

明を苦しめるギフトの正体にして、今現在確認できるなかでは大地と自然の全てを味方につけることが能力を持つ、非常に厄介なものだ。

 

"正体不明"の風で空を飛んでいるから良いものの、もし地に足を着けて戦うとなると勝ち目はほぼ無いだろう。

 

四方八方から木葉が、木の根が攻撃を繰り出してくる。

 

明はそれを空を駆り、風の刃で切り裂くことで何とか対処するが、何処からどう見ても劣勢である。

 

「(くっ!このままじゃ押し負けるか………)……仕方ないっ!」

 

明は己を中心に風の爆発を起こし、攻撃の隙をつくる。

 

そして、腰に差していた刀を抜き放つ。

 

「いきますよ…………グライさん!」

 

"風刀影絶(ふうとうかげたち)"

 

明の父である渡が、明のためだけに作った最高傑作の刀。

 

あらゆる恩恵を収め、その刃に纏わせることの出来る刀だ。

 

明がレティシアと言った謎の館で見つけた刀である。

 

明はあの後、幼き日の記憶を少しずつ取り戻した。

 

のだが、まぁその話は今は関係ないので置いておこう。

 

今重要なのは、明が風刀影絶を抜いたことにある。

 

「風を集め…………圧縮するっ!」

 

明が刀を掲げると、それを中心に風が巻き起こる。

 

まるで、刀に吸い寄せられるように。

 

『っ!?やらせません!』

 

それに脅威を感じたグライさんは、再度明に攻撃を仕掛けた。

 

「くっ!逸らせ………"重力支配(グラビティ・ルーラー)"!!」

 

しかし明は重力支配を使い、直撃する攻撃の軌道を僅かに逸らすことで致命傷を免れた。

 

『まさかっ!あんな無茶苦茶なっ!?』

 

そんな無茶をするのは予想外だったのか、グライさんに決定的な隙が生まれた。

 

そして、明はそれを見逃さない。

 

「いっ………けえぇぇぇぇーーーーーー!!!"旋風刃"!!」

 

明が掲げた刀を降り下ろすと、そこから巨大な竜巻が発生した。

 

圧縮した風を一気に爆発させたその威力は、大地を抉り木々を凪ぎ払う。

 

『くっ!………なんて威力!』

 

風が収まるその頃には、森の一部が広野へと変貌していた。

 

ギリギリで避けたのか、グライさんは先程の場所より少し離れたところにいた。

 

しかも、無傷で。

 

「………避けたんですか?」

 

『ふふっ………さすがですね。これ以上森を破壊されても敵いませんし………そろそろ終わらせましょうか』

 

「っ!?」

 

刹那、グライさんを中心に空気の流れが変わる。

 

明は反射的に後退してしまう。

 

『明さま。貴方を、私が全力を出すに値する相手だと認めましょう』

 

一字一句が重圧となって明を襲う。

 

まるで、明だけ重力が何倍にもなったかのようにそこから動けなくなってしまう。

 

『いきますよ?………()()()()()()()()()()ーーーーー"掟をもたらす者(デメテル・テスモポリス)"』

 

「え?」

 

おおよそ聞きなれない言葉と共に、変化は突然現れる。

 

グライさんの回りに無数の()が出現したのだ。

 

『竜堂明………《このゲームにおいてギフト、"正体不明"の使用を禁じます》』

 

キィン………

 

そんな不思議な音と共に、明の腕に一本の鎖が巻かれていた。

 

明がそれを認識した瞬間………風は勢いを失い、明は地面へと落ちていった。

 

 




タブに独自設定、独自解釈を追加しました。

二部では作者の妄想がさらに加速します。

それと、もしも一部との矛盾が生まれた際には、二部の方を優先してください。

こんなダメダメな作者ですがこれからもよろしくお願いします!

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