問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

24 / 42
ついにペスト戦完結です。
ただ、内容が見にくいと思うので、わからない事は
感想などで聞いてください。
できる限り答えます。
では、どうぞ。


二十話 白銀の風

「そんな!『正体不明(コード・アンノウン)』だなんて!」

 

黒ウサギは驚いていた。

 

それも仕方ないだろう。

 

明が気絶している間に『風霊王』が変化していたのだ。

 

しかも、十六夜と同じ『正体不明』に。

 

「あぁ、これが俺の本来のギフトらしい。まぁ、切り札にはもってこいだろ?」

 

そして明はギフトを発動させる。

 

すると、突然明を中心に風が吹く。

 

風が止むと、明の髪と目が白く変化していた。

 

「え?」

 

わけがわからない。

 

黒ウサギはただ混乱していた。

 

「それじゃあ、行ってくる。」

 

「明さん。......頼みます」

 

黒ウサギは祈る事しか出来ない自分が憎かった。

 

ただ悔しかった。

 

そう思っていると、明が目を細める。

 

「黒ウサギ。お前は、お前にしか出来ない事をしろ」

 

「えっ?」

 

すると今度はフッと笑う。

 

まるで、全てを見通した様に。

 

「ただ仲間を信じて待つ。これは仲間を心の底から大切に思っている黒ウサギにしか出来ない事だ」

 

違うか?

 

明はそう投げかけた。

 

「......はい。そうですね。それはまさしく、この黒ウサギにしか出来ない事なのですよ」

 

ニコッと満面の笑みで黒ウサギはいった。

 

「行ってらっしゃいませ、明さん。黒ウサギは皆様の勝利を信じています!」

 

「あぁ、任された」

 

そう言うと彼は、自信満々に窓から飛び出して行った。

 

誰もいなくなった部屋で、黒ウサギはもう一度つぶやいた。

 

「えぇ、黒ウサギは心の底から信じてます。皆様の勝利を......」

 

 

 

 

 

「すごいな」

 

それが明の新たなギフト、『正体不明』への感想だった。

 

今までとは比べものにならないくらいの力が体の中をめぐる。

 

そしてその風は以前よりも綺麗に、白銀に輝いていた。

 

明は今、白銀の風を纏いレティシア達のところへと向かっていた。

 

「あぁ、以前よりもしっくりくる。威力も上がってるし、文句無しだな」

 

そこまで考えて、明はふと思い出す。

 

アイカの、母さんの言っていた言葉を。

 

「よっしゃ!とっとと終わらせて、レティシアと一緒にコミュニティ跡地に行くか!」

 

きっとそこに行けば何かがある。

 

アイカの言葉からも、それは予想される。

 

すると、突然空が黒く染まる。

 

いや、あれは.....

 

「ペストの死の風か!」

 

明の目に入ったのは、それが無情に、無差別に放たれるところ。

 

そしてその先には、逃げ遅れた一人の少年がいた。

 

「っ!間に合え!!」

 

明はさらに速度を上げる。

 

しかし距離がありすぎるため、恐らく届かないだろう。

 

明が必死に間に合わせようとする中、その予想は良い意味で裏切られた。

 

レティシアが盾となり、食い止めている。

 

これならばあるいは....

 

「いや、間に合わせる!!」

 

明は風の形を変える。

 

さっきまで纏っていた風を、今度は竜巻状に二つ背中につけブースターにする。

 

「くっ!はぁぁーー!!」

 

レティシアは押し負け態勢を崩す。

 

しかし、レティシアが黒い風に飲み込まれる寸前に間に合った。

 

明はレティシアを抱え、そして.....

 

死の風を切り裂いた。

 

「「「はぁ!?」」」

 

その事実にペストと、一緒に戦っていたサンドラ、そしてちょうどこちらに着いた飛鳥が驚愕する。

 

それもそのはず。

 

明がした事はただ手刀を振るっただけなのだ。

 

そうしていると、レティシアがユックリと目を開ける。

 

「よう、待たせたな?」

 

明は腕の中のレティシアそう言い放った。

 

「.....明、なのか?」

 

レティシアは信じられないという顔をしながら言う。

 

「どうした?まるで幽霊でも見た様な目をして」

 

よくみればその他の方々もそんな感じの反応だった。

 

あ、そう言えば俺死にかけてたっけ?

 

と思い出すがまぁいいだろうとながす。

 

実際には変化した髪と目の色もその驚きを手助けしているのだが、まぁいいだろう。

 

自分の事は置いといて、まず飛鳥に突っ込もうとするが、そっとして置いた。

 

まぁ、あんなに大きな鉄の塊があったら誰でも思うだろう。

 

「ねぇ、何で動けるの?確かに殺してはいないけど、起きるはずは無いのに」

 

そんなペストの疑問に、明は目を細める。

 

ここで切り札を切ってもいいのかと。

 

(いや、むしろ切るべきだな)

 

「レティシア、俺が合図したらこのギフトを使ってくれ」

 

明は小声で指示し、黒ウサギのギフトカードを渡す。

 

え?と首を傾げるレティシアに頼んだぞと言い残して前に出る。

 

「ねぇ、聞いてるのかしら?」

 

どうやらペストは、無視された事にご立腹らしい。

 

「あぁ、聞いてるよ。俺が今ここにいる事、そしてさっきの風を切り裂いた事の正体はこれだよ」

 

そう言って明は自身のギフトカードを見せる。

 

「『正体不明』?あなた、バカにしてるの?」

 

ペストはそれを見てさらに機嫌を悪くしたが、その意味を知ってるレティシアと飛鳥は言葉を失っていた。

 

そう、ギフトを素手で砕く、あの十六夜と同じギフトである事に。

 

すると、何処からともなく十六夜が降ってきた。

 

「ヤハハ、これは面白い事になってんなーーー!」

 

たぶん、いや絶対に俺のギフトを見て言ってるよな。

 

「それにしてもどうした?その頭。中二病か?」

 

「いや、自然体だから!そもそもそんな痛い趣味はない!」

 

十六夜の華麗なボケに何とか返す明。

 

「ふん、何人集まろうが同じ事。全員死になさい!」

 

茶番に付き合ってられないと、ペストは一気に決めにかかる。

 

「「させるか!!」」

 

十六夜の拳と明の手刀は見事に死の風を消し去る。

 

「いまだ、レティシア!!」

 

それを好機と見た明はレティシアに指示をだす。

 

「了解した!」

 

レティシアは黒ウサギのギフトカードを掲げる。

 

そして、発動させたギフトは......

 

「月界神殿(チャンドラ・マハール)!」

 

そう月神の神格を持つギフト『月界神殿(チャンドラ・マハール)』だった。

 

刹那、世界は反転した。

 

 

 

 

 

「まさか!月だと!?」

 

十六夜は驚愕と歓喜の入り混じる声を上げていた。

 

それも仕方ないだろう。

 

気がついたら月の上なのだ。

 

「さぁ、ラストゲームだ。『黒死病の魔王(ブラック・パーチャー)』ペスト」

 

手を出すなよ。

 

明は一人で戦う事を宣言する。

 

「いいわ。あなたを殺して、他の奴らも全員皆殺しよ」

 

明は白銀の風を、ペストは黒の風をそれぞれ纏う。

 

そして合図もなく二人の戦いは始まった。

 

 

 

 

 

「死になさい!」

 

ペストは死を与える風を広範囲に展開する。

 

一切の手加減なし、触れただけで死に至らしめる風だ。

 

「はぁ!」

 

しかし、またしても明の一振りで散る。

 

いや、これは.....

 

「恩恵を無効化している!?」

 

ペストは自分の至った答えに驚愕する。

 

もしそうだとしたら、今の自分には勝ち目など無いと。

 

「まぁ、少し違うな」

 

明は白銀の風を二つの竜巻状の翼に変え、その片方を叩きつける。

 

「くっ!」

 

ペストは黒の風で防ぐも、その防御はまさしく紙同然に切り裂かれた。

 

「俺のギフトは、恩恵を絶つ風だ」

 

やはり、とペストは苦笑する。

 

それでも、たとえ勝ち目がなくとも......

 

「負けられない!」

 

そう言ってペストは仕掛ける。

 

今度は一点に集め、圧縮した死の風。

 

さっきよりも強力なはずだ。

 

「はぁ!」

 

そんな気合と共に死の風を集めた球を放つ。

 

しかし、明はそれを手をかざすだけで消してしまった。

 

「ペスト、終わりにしよう」

 

「っ!?」

 

周りの空気が蠢き出す。

 

刹那、明の姿が消えた。

 

「なに!?」

 

ペストが気づいた頃にはすでに、明は目と鼻の先にいた。

 

明はペストの首の付け根をめがけ、手刀を横になぐ。

 

「この!」

 

無駄と知りながらも、黒の風で防ぐ。

 

しかし、その明は黒の風をすり抜け消えた。

 

「がら空きだよ」

 

「!?」

 

突然の後ろからの声に、ペストは完全に不意を突かれた。

 

明は風による光の屈折を利用し、前から攻撃するフェイクをいれ後ろから攻撃したのだ。

 

明はペストの腹部に掌を入れる。

 

「ふっ飛べ!!」

 

明は気合とともに、ペストを風の檻に閉じ込め前方にふっ飛ばした。

 

「く!この!?」

 

その風は恩恵を切り裂く。

 

故に、ペストはギフトを使えず、逆らう手段などない。

 

文字通り、風に任せるのみなのだ。

 

「こんな.....ところで!!」

 

「いや、もう終わりだ」

 

なおも抵抗しようとするペストに、明は無機質に言い放つ。

 

そして、全力で手刀を薙ぐ。

 

その手刀から発生した風の刃は、何のためらいもなくペストを貫いた。

 

「くっ......そ。覚えて.....なさい」

 

ペストは途切れ途切れにそう言った。

 

「あぁ。次会う時は、友達かな?さて、哀れな霊達に、魂の救済を」

 

某エクソシストの言葉と共に、明はペストを送る。

 

「....そう。気づいてたのね。そうね。次に会えたら...ね?」

 

そしてペストは、光の粒子となって消えて行った。

 

つまるところ、ペストとは黒死病で死んだ人たちの塊、それを代表する魔王だったのだ。

 

故に、明は最大限の敬意をもっておくる。

 

「さて、帰るか。皆!」

 

こうして、魔王襲来は終止符をうった。

 

 

 

 

 

「さて、明よ。説明してもらえるか?」

 

明はサウザンドアイズにて拷問中だ。

 

まぁ、仕方ないのだけど。

 

「そうなのですよ!何ですかそのギフトは!!」

 

白夜叉に便乗し黒ウサギも同じ事を聞く。

 

ちなみに、今の髪と目の色は以前のままだ。

 

どうやらギフトを使う時だけ白に変わるらしい。

 

「しかも、俺と同じギフトだとはな!」

 

ヤハハと実に楽しそうに笑う十六夜。

 

ある意味では彼が一番怖いな。

 

「まぁ、そうだな。隠す必要もないし」

 

さて、それではまとめよう。

 

まず、風霊王は明の本来のギフトではなかったこと。

 

次に、新たなギフトの力が恩恵を切り裂く風であること。

 

そして最後に、母さんのことを。

 

「ふむ、なるほど。どうやらそのギフトはラプラスの紙片の恩恵さえも無効化するらしいな。故に正体不明。何もわからないことがわかったと」

 

そう、白夜叉の言うとおり。

 

このギフトはあらゆる恩恵を絶つことができるのだ。

 

「ほう?面白い!実に俺好みなギフトじゃねーか!!」

 

「ちょ!?十六夜さん止めてください!!」

 

一人で興奮し戦いを挑んできそうな十六夜を、黒ウサギがストップをかけている。

 

「うむむ....。まさかラプラスの紙片でもわからぬギフトが二つも存在するとは」

 

白夜叉は白夜叉で難しい事をブツブツ言っている。

 

「さてと。それじゃあ俺、明日はレティシアと出かけるからよろしく」

 

そう、明日はいよいよ、コミュニティ跡地に向かう。

 

そこで何が待っていようと、明は乗り越えてやると覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『正体不明(コード・アンノウン)』

十六夜のと違い、ギフトの力は理解しているため、完全に使いこなせる。

能力は恩恵を絶つ風。

簡単に言うとギフトの無効化だ。




まぁ、こんな感じになりました。
あと、アンケートの件について、すみません!
本当につまらぬ事を聞いてしまいました。
作者はこれからも頑張ります!
よろしくお願いします!
それではまた次回に!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。