問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

22 / 42
いきなりですが、番外編はたぶんペスト戦が終わってからになると思います。
みねらるうぉーたーさん、その他待っていてくれた皆さんすみません。
そんな訳ですが、明VSペストです。
ではどうぞ!


十八話 守ること

「じゃあ、ペスト」

 

そういって、明は氷で出来た機械のように冷たい顔をする。

 

「ゲームを始めよう」

 

「っ!?」

 

ペストは明の変わりように、纏っていた雰囲気の変化に戸惑う。

 

「あっ、あの.......」

 

近くにいたサンドラも、その代わり様に驚いていた。

 

「お前はレティシアとそこにいろ」

 

明から帰って来たのは、普段とは違う冷たい言葉。

 

その圧力にただ頷くしか無かった。

 

「はぁ!」

 

明は風を纏い突っ込む。

 

「くっ!」

 

突っ込むとは思っていなかったのか、ペストは対応に遅れながらも黒い風でそれを防ぐ。

 

「邪魔だ!!」

 

その風を自らのギフトで散らし、明は拳を放つ。

 

「なっ!?」

 

風があっさり散らされたのに驚きながらも、ペストはその拳をそらし袖をこちらに向ける。

 

「っ!?」

 

ペストの風は主に袖のなかから出てくる。

 

銃口を向けられてるのに等しいのだ。

 

「食らえ」

 

「されるか!」

 

ペストの攻撃がくる前に二人の間で風の爆発を起こし距離を取る。

 

「やっぱり強いな。魔王と言うだけはあるな」

 

明は構えを崩さずにペストに話しかける。

 

「そっちも、思ったよりも強いわね。そこの吸血鬼よりもいい手駒になりそう。......それに、貴方のギフトはどうなっているのかしら」

 

自身の風が明の意思で散った現象をペストは見逃さなかった。

 

「思ったよりもはやくばれたな。俺のギフトは他者の風も支配できる。それだけだ」

 

隠すつもりも無いので、明は素直に言った。

 

しかし、それが間違いだった。

 

「そう、貴方が操れるのは『風』だけなのね」

 

それを聞いたペストは不適に笑った。

 

「だったらどうする?」

 

明は周りに三つの風の球を作る。

 

「そうね......こうしましょうか」

 

するとペストは、さっきまでとは比べものにならないくらい黒く禍々しい風を放って来た。

 

「何だ!?」

 

明は直感的に理解した。

 

あれは死の塊。

 

触れてはいけないと。

 

「くそ!!」

 

まずいと感じた明はすぐにクイック・エアーをはなった。

 

しかし、球から放たれた三つの竜巻はその風にのまれてしまった。

 

「なに!?」

 

予想外の出来事に、明は混乱する。

 

しかも、なぜかその風を操る事ができない。

 

とっさに明は横に飛ぶ。

 

「ふふ、やはりね」

 

ペストはそれを見て納得し、勝利を確信したような笑みを漏らす。

 

(なぜだ!?格上だから?いや、ならはじめの時操れなかったはずだ。まさか、あれの本質は風じゃない?)

 

「戦いの最中に考え事とは、余裕ね」

 

「しまっ!?」

 

決定的なすき。

 

それを彼女が見過ごすはずもない。

 

先ほどとは比べものにならないくらいの広範囲に展開された黒い風。

 

避けきれない。

 

即ち敗北、死である。

 

(あぁ、こんな事になるんなら、もっとレティシアといろんな事しておくんだったな)

 

場違い過ぎる明の思考に、突然金色が割り込んでくる。

 

明の前に、盾のごとく立つレティシアが居たのだ。

 

「何やってるんだ!」

 

「明は、私が守る!!」

 

どうやら無理をしている様だ。

 

いや、そもそもなぜこんな事を?

 

「わたしも、明と同じくらい...

..いや、それ以上に明の事が好きなんだ」

 

そう言って彼女は微笑む。

 

「そんな事」

 

明は迷わなかった。

 

レティシアのその言葉は、むしろ彼に火をつけた。

 

「ありえないね!」

 

「!?」

 

明はレティシアを押し出し

 

風の届かないところまで吹き飛ばした。

 

「レティシア。残念ながら、俺の方がお前の事、大好きだよ」

 

そして明は風に飲まれた。

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

レティシアが目を覚ますと、何処かの屋根の上だった。

 

「目が覚めたか」

 

声の主はサンドラだった。

 

「そうだ、魔王は!」

 

自分の記憶が確かなら、明が突っ込んで行ったはず。

 

「彼が戦っている」

 

サンドラの指差す方をみると、互いに距離を置いていた。

 

「彼は、本当に強いな」

 

サンドラはつぶやく。

 

自分よりも強く、美しい明の戦いに。

 

そして二人で見ていると、戦況に変化があった。

 

ペストが先ほどよりも黒い風を広範囲に展開させたのだ。

 

「な、あれはまずい!」

 

サンドラは叫ぶ。

 

しかし、レティシアは反射的に動いてしまった。

 

気づけばボロボロの体にも関わらず、明の前に盾として立っていた。

 

(あぁ、私はよほど彼が好きなんだな)

 

「明は、私が守る!!」

 

本当に、気づいたらしゃべっていた。

 

「わたしも、明と同じくらい...

..いや、それ以上に明の事が好きなんだ」

 

よく考えたら、自分の方からこんな事を言うのは初めてだったな。

 

こんな時にも関わらず自然と笑みがこぼれる。

 

そかし、そんな事を彼は許さなかった。

 

「そんな事」

 

愛しの彼の声。

 

しかし、数秒後には私の体は吹き飛んでいた。

 

「ありえないね!」

 

彼がやったのだろう。

 

なぜ、彼は救わせてくれなかったのだろう。

 

「レティシア。残念ながら、俺の方がお前の事、大好きだよ」

 

そう言って彼は風に飲まれた。

 

「あき.....ら?」

 

そうか、私はまた、彼に守られたのか。

 

そうしてレティシアの意識は完全におちた。

 

 

 

 

 

そしてその数瞬後に、激しい雷鳴が鳴り響いた。

 

「そこまでです!」

 

黒ウサギの審判権限(ジャッジマスター)が発動された。

 

 

 

 

 

「十六夜さん、ご無事でしたか!?」

 

あの後運営側の本陣営にて審議決議を執り行う事になりノーネーム他参加者が集まっていた。

 

「こっちは問題ない。他のメンツは?」

 

十六夜の問いにジンが答える。

 

「残念ながら、十六夜さんと黒ウサギを除けば満身創痍です。飛鳥さんは行方不明で、明さんに至っては.....少なくともこのゲームには参加出来ません」

 

死の風をモロに食らった明は、息はあるものの昏睡状態。

 

今は死んだ様に眠っている。

 

しばらくは起きないだろう。

 

 

 

 

 

「それでは、審議決議及び交渉を始めます」

 

厳かな声で、黒ウサギが告げる。

 

内容はゲームの不備がないかというものだった。

 

しかし、それは一切なかった。

 

黒ウサギの耳は箱庭の中枢と繋がっているらしく、それを使った結果がそれだ。

 

そして、ペストの提案、簡単にいうとよくも疑ったなこのヤロー的な事で新たなルールが加わる事となった。

 

そして彼女の提案は、ゲーム再開まで火を跨ぐというものだった。

 

理由をまとめるのならこうだ。

 

彼女のギフト『黒死病の魔王(ブラック・パーチャー)』をゲームが始まる前に潜伏させていた。

 

発症すれば力の無い種は死滅するであろう呪いそのものだ。

 

ゲームを伸ばせる最大日時は一ヶ月。

 

それだけあればほとんどの奴が死ぬだろう。

 

「なら、ここにいるメンバーと白夜叉、そして明といったかしら。それらが私たち『グリムグリモワール・ハーメルン』の傘下に下るのなら、他のコミュニティは見逃してあげるわよ?」

 

「なっ!?」

 

ペストの提案。

 

つまり彼女は、初めからこれを狙っていたのだ。

 

「私、彼方達がきにいったわ。サンドラは可愛いし、ジンは頭いいし。あと明は強いし」

 

「そんなこと.....」

 

ジンは混乱していた。

 

どちらが正解なのか。

 

「参加者全員の命と引き換えなら安いものでしょ?」

 

微笑みを浮かべ、愛らしく小首を傾げるペスト。

 

彼女は従わなければ皆殺しだと言っているのだ。

 

そんな中、一人だけニヤリと笑っているものがいた。

 

逆廻 十六夜だ。

 

「ちょっと待てよ魔王様」

 

「.....何かしら」

 

疑う様に聞き返すペスト。

 

「いいのか?一ヶ月も延ばしちまって」

 

「どういう意味かしら?」

 

ペストは眉をひそめて聞き返す。

 

「そんなに延ばしたら、明が死んじまうぜ?」

 

ピクリと彼女の顔が引きつる。

 

そう、彼女は言ったのだ。

 

明が欲しいと。

 

その上で一ヶ月延ばすと言うことはつまり、

 

「つまりお前らは、俺たちに此処で折れて欲しいんだろ?」

 

「!?」

 

つまり、彼女らのコミュニティは作ったばかり、優秀な人材を無傷で手に入れたいのだ。

 

「その上で言うぜ。再開は明日だ」

 

「......一週間よ」

 

「明は昏睡状態だ。それと、ゲームに期限をつける。明日再開でその24時間後までに勝利できなかったらあんたらの勝ちだ」

 

「っ!?なら、五日よ」

 

ニヤリと、また十六夜は笑う。

 

「なら、黒ウサギも着けるぞ」

 

ごり押しとばかりの宣言。

 

「.....ねぇ、ジン。明日再開するとして、私に勝てるつもり?」

 

「勝てます!」

 

ジンの明確な意思。

 

「そう。なら、宣言するわ。貴方達を必ず、私の玩具にすると」

 

こうしてゲームは明日再開される事になった。

 

 

 

 

 

夜明け前、ゲームがあと数刻で始まろうとしている時、レティシアは明のところにいた。

 

と言っても、相変わらず昏睡状態である。

 

「明、すまない。私のせいで苦しい思いをさせてしまって.....」

 

レティシアはそっと、明の頬を撫でる。

 

「お前にばかり、苦労させてしまって」

 

その手は次に前髪に触れる。

 

「だから、今度は私が守る。絶対に皆を守って見せる」

 

そっと手を離す。

 

「行ってくるよ」

 

そう言うとレティシアは、踵を返し部屋を出た。




お気に入りがついに三桁!?
やった!(つД`)ノ
これからもよろしくお願いします!!
さて、次はまぁ......だいぶおかしな方向
行きますね。
すでにゴッチャですけど、頑張ってまとめます!
それではまた次回(_ _).。o○

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。