問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》   作:ソヨカゼ

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どうしてこうなった。
たいていの作者は言いますがまさしくその通りです。
結構重要なとこを削てしまったかも.....。
そんな七話ですが、どうにか最後まで読んでください!!
では、どうぞ!!


七話 風霊王

一応勝負には勝った。

 

しかし、遊ばれ過ぎてその実感はわかない。

 

実際に白夜叉は一回も攻撃をしていないうえ、全力の攻撃を扇子一つで抑えられた。

 

わかっていたが、まだまだだな。

 

耀たちは互いの死力をぶつけ合っていたのに、こっちはこの様だ。

 

もっと強くならなきゃな。

 

さて、話を進めよう。

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしらの勝利だの。.........ところで、おんしの持つギフトだが、それは先天性か?」

 

唐突に話が耀に向けられた。

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

首を傾げる白夜叉に三毛猫が説明する。

 

「にゃにゃにゃ、にゃー。『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』」

 

「ほほう........彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉に差し出す。

 

白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。十六夜、飛鳥、明もその隣から木彫りを覗き込む。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「.....これは」

 

木彫りは中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

 

白夜叉だけでなく、十六夜、黒ウサギも鑑定に参加する。

 

表と裏を何度も見直し、表面にある幾何学線を指でなぞる。

 

黒ウサギは首を傾げて耀に問う。

 

「材質は楠の神木? 神格は残っていないようですが.....この中心を目指す幾何学線、そして中心に円状の空白.....もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの。ならこの図形はこうで、この円形が収束するのは.....いや、これは.....これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ? でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。―――うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

熱弁した白夜叉だったが、耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げた。

 

白夜叉は、お気に入りの玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりした。

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

十六夜に問われ、白夜叉は気を取り戻すが、首を捻った。

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話できるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

黒ウサギの要求にゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

ゲームの褒章として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。

 

白夜叉は困ったように白髪を掻きあげ、着物の裾を引きずりながら四人の顔を両手で包んで見つめる。

 

「どれどれ.....ふむふむ...,うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトをどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「今日知ったのでほとんど知らん。」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに。」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札張られるのは趣味じゃない」

 

ハッキリと拒絶するような声音の十六夜と同意するように頷く飛鳥と耀。

 

(俺はして欲しいな。もっとこの力を知りたいしな。)

 

困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ。何にせよ“主催者”として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには“恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

白夜叉がパンパンと拍手を打つ。

 

すると四人の眼前に光り輝くカードが現れた。

 

カードを見てみるとそれぞれの名前と体に宿るギフトを表すネームが記されていた

 

コバルトブルーのカードに逆廻 十六夜・ギフトネーム“正体不明”(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠 飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

パールエメラルドのカードに春日部 耀・ギフトネーム“生命の目録”(ゲノム・ツリー)“ノーフォーマー”

 

サンライトイエローのカードに竜堂 明・ギフトネーム“重力支配”(グラビティ・ルーラー)と、そして.....

 

「風霊王(ロード・オブ・ウィンド)?」

 

そう、重力支配の上にはそんな文字があった。

 

「.....なるほどのぅ」

 

俺の問いに、白夜叉が何かに納得した。

 

「白夜叉様、知ってるのですか?」

 

黒ウサギの疑問に白夜叉はこう答えた。

 

「あぁ、知ってるとも。何故なら“霊王のギフト”は、この世に四つしか存在せんからな」

 

「霊王のギフト?何だそれは」

 

皆の疑問を十六夜が言った。

 

「あぁ。火、水、土、風、それぞれの属性の最強のギフトを霊王のギフトいう。それぞれ過去に一度だけ存在した、まさしく王のみが持つ物だ。そやつの風霊王は風の属性最強と言うわけだ。」

 

ほう、と十六夜が興味深く頷き、その他三名はまたもや唖然としていた。

 

「だがおかしいな。“過去に一度だけ存在した”物を、何故こいつが持ってるんだ?」

 

十六夜の指摘は最もだ。

 

「ふむ、そこなのだ。この世界に来て目覚めたらしいが、その時何があったのだ?」

 

「あぁ、なんか皆がヤバイと思ったら、母さんの指輪が輝いた。そしたらなんか使えたな」

 

そういって首にかけていた形見のリングを白夜叉に渡した。

 

「!?こ、これは.....微かだが神格を感じるぞ。なるほど、これは風の神格を固めて作ったものだ。だから風霊王のギフトを閉じ込めている事が出来たのか。」

 

つまり、風の神格とやらで出来ていて、ギフトを封印し保存するための道具らしい。

 

「ふむ、これを持っていたおんしの母親とは一体.....。今はどうしておる?」

 

「うん?あぁ、俺が物心つく前に死んだらしい。よくわからんが.....」

 

全員が息を飲む。

 

「す、すまんかった。不謹慎じゃったな。」

 

「あぁ、気にしてないから。両親の顔わかんないし、叔母さんや義妹もいたからな」

 

笑顔で返す。

 

皆まだ表情が硬いが、まぁ気にしてないんだよね本当に。

 

さて、そろそろ夕方なので、ギフトの事はまた今度という事になった。

 

わかった事は、このギフトがすごいと言う事。

 

頑張って強くなろう。

 

そう思った。

 

ちなみに、カードはギフトカードといって、ギフトを収納できる便利アイテムだそうだ。

 

あと、十六夜の正体不明も本来はあり得ないことらしい。

 

 

 

 

 

そのあとノーネームの本拠地に戻って自己紹介をした後、十六夜が手に入れた水樹で水路を復活させた。

 

そして夕食を食べた後、風呂にはいる事になった。

 

まず女性陣がはいるので、上がったら呼びにきてくれといって、今は屋根の上にいる。

 

ちなみにイアは子供達と遊んでいるらしい。

 

仲良くしている様で何よりだ。

 

「それにしても、星が綺麗だな.....」

 

明が住んでいたのは都心部だったため、今の様に綺麗な星を見た事はあまり無かった。

 

「箱庭か。本当にいいとこだな。緑が多くて、空気が綺麗で、何より人が生き生きしてた。来て良かったかな」

 

今日一日で起きた様々な出来事を思い返しながらリングに手を伸ばす。

 

「母さんのリング.....。今までは何も知ろうとしなかった。それでも何とかなった。でもこれからはそれじゃあダメなんだ。」

 

母さんのリングからギフトが出てきたという事は、母さんは少なからず箱庭と関わっているという事。

 

今まで両親について考える事がほとんどなかった明にとっては、ある種の覚悟が必要だったのだ。

 

なぜ両親死んだのか、と。

 

「.....まぁ、この世界に生きていれば、どうにかして情報を得る事も出来るだろう。」

 

そうして重くなったまぶたに逆らわず、そのまま目を閉じた。

 

 

 

 

 

「フフフ、やっとギフトを手にいれたのね?」

 

!?

 

綺麗な女性の声に目を開けると、そこはさっきまでいた屋根の上では無かった。

 

そこは方向感覚すら狂わすほどの常闇の中だった。

 

「ここは.....何処だ?」

 

周りを見渡しても、360°真っ暗で何も見えない。

 

「ここわあなたの深層心理.....。心象世界と言ったところです。」

 

女性の声は常闇に響く。

 

「心象世界?.....なるほど、じゃああなたは誰?ここの事より気になるんだか.....姿は見せてくれないの?」

 

とりあえずここが自分の心の中だとわかったので一番の疑問をぶつけて見た。

 

「.....ええ、ごめんなさい。それはまだ出来ないの。でもそうね....私の事はウェンディとでも読んでください」

 

「ウェンディ.....、風か?」

 

最近、いや今日よく聞いた言葉だな。

 

「ええ、それで今回は貴方に、その力の事を教えに来たの。」

 

「力?風霊王のことか?」

 

それしかない。

 

それしか謎がないのだ。

 

「ええ。まず貴方は、その力の事をどこまで知ってるの?」

 

「うーん。風を操る事くらいかな?っていうか、他にも出来るのか?」

 

「ええ、基本はそんな感じね。ただ、本来その力は“大気を隷属させる”事が出来るの。」

 

「え!?大気を.....隷属?いや、俺が言ったのと規模が違い過ぎだろ!!」

 

「フフフッ。まぁ、あくまで本来は、だけどね。今の貴方でも風くらいなら隷属出来るわよ?」

 

「へー。使うのと隷属ってどう違うんだ?」

 

「そうね.....、それが風なら他人が使うギフトであっても扱う事が出来るし、大気を隷属出来れば天候もある程度は操れるわね」

 

どうやら予想以上にすごいらしい。

 

強くなるためにはまずギフトを使いこなす、つまり大気を隷属される事から初めるか。

 

「.....どうやら時間見たいね。」

 

「っつ!!」

 

目の前が霞む。

 

「大丈夫、あなたは起きるだけだから。これは一種の夢の様な物よ。安心して、また会えるから」

 

そうして女性、ウェンディは微笑む。

 

 

 

 

 

「あっ、起きました!」

 

「えっ!あ、あぁ.....」

 

そういってイアが目の前にいた。

 

風呂上りらしく髪が湿っていてなかなか色っぽかった。

 

この年でこれなら、きっと将来とびきりの美人になるだろう。

 

「どうしました?」

 

「いや、何でもない。冷えたら大変だから、早く中に入ろうか。」

 

可愛らしく首をかしげる彼女に見惚れてたと言うのは恥ずかしいな。

 

「はい!」

 

元気良く返事をするイアと一緒に屋根を降り、その後風呂に入りすぐに寝床につく。

 

今日は本当に色々あった。

 

さぁ、明日のガルド戦は張り切って頑張るか。

 

飛鳥と耀を守り、イア達との約束を果たす。

 

さぁ、頑張ろう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なかなか話が進まない....。
そんな事より、いよいよガルド戦です。
でわまた次回(=゚ω゚)ノ



追伸
お気に入り20件突破!!
これからもよろしくお願いします!!

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