問題児たちが異世界から来るそうですよ?~箱庭に吹く風~《リメイク中》 作:ソヨカゼ
お久しぶりの方はご無沙汰してます!
以前「衛宮」の名で活動していたソヨカゼです!
以前から予定していた〜箱庭に吹く風〜のリメイク版を本日やっと投稿します!
といっても、リメイクとは名ばかりのほぼ別の作品になりかけてますがどうか気にせずお付き合いください!
それではどうぞ!
一話 辿り着く風
自分が何処かこの世界と"ずれている"と錯覚したことはないだろうか。
自分がいきるべき世界は此処じゃないと思ったことはないだろうか。
馬鹿馬鹿しいと嘲笑う人だっているだろうが、おそらくその考えは正しいのだろう。
人は常に、自分の居場所を探し求めている。
自分だけの世界を。
そう、だからこそ俺はあの時こう呟いてしまった。
「――あぁ、やっと出会えた」
決して進むはずのなかった物語が、今幕を上げたのだった。
☆☆
夕方。
学生の帰宅や主婦たちの買い物もあって商店街が一番賑わう時刻。
絵に書いたような平穏だ。
しかし、その平穏を突き破るように鳴り響くクラクション。
音の大きさから大型のトラックだろう。
「危ねぇだろ!気を付けやがれ!!」
中年男性の野太い声に視線を向けると、制服に身を包んだ青年が大型トラックから身を乗り出す中年男性と対峙していた。
どうやら小さな接触事故があったらしい。
「おい、聞いてんのか!!」
「………」
怪我はないようだが、何故か青年は男の声に答えない。
それどころか、男を睨み付けている。
「クソ!覚えてろよ!!」
無言一貫する青年に男は諦めたのか、罵倒を残しながらトラックを出す。
それに伴ってギャラリーもまばらに散っていった。
「………大丈夫か?」
それを見届けた青年は抱えていた白い猫を地面に降ろす。
そう、彼はこの猫を助けるためにトラックに挽かれそうになったのだ。
「ニャー?」
猫は首をかしげながら青年を見上げる。
どうやら大丈夫だったようだ。
「もう、飛び出すなよ」
「ニャーニャー」
青年の声に答えるように、猫は早足に去って行く。
「………はぁ。俺も帰るか」
青年は少し汚れた制服の土を払い、苦笑いを浮かべながら帰路に着くのだった。
☆☆
この世界は不公平だ。
それを俺はよく知っている。
俺には、
いわゆる記憶喪失というやつらしい。
今は俺の親と知り合いだという叔母さんが院長を勤める孤児院で養ってもらっている。
あっちから見れば赤の他人なのだから申し訳ないばかりだ。
叔母さんが言うには、俺と家族は何かしらの事故に巻き込まれたらしい。
そのせいで俺の両親は亡くなり、俺自身も記憶というモノを失った。
まぁ、命があるだけましなのだろう。
形見と言って良いのかわからないが、俺に残されたのはこの空っぽな体と"不思議なカード"だけだ。
本当に、こんな俺を引き取ってくれた叔母さんには頭が上がらない。
そんな思考に頭を回していると、緩やかな風が頬を掠める。
「……ん?」
風に釣られて思わず顔を上げてしまう。
その視線の先にあったのは、見慣れない"白い封筒"だった。
不審に思いながらも、ヒラヒラと風にのって落ちてくる封筒を手に取る。
見ると、宛名らしきものが記されていた。
「……何?」
俺は驚かずにはいられなかった。
なにせ、そこには『風薙 明様へ』と記されていたのだ。
そう、間違いなく俺の名だ。
しかし、俺にこんなことをするような知り合いはいただろうか?
仮にいたとして、いったいどのような目的でこのような事をしたのだろうか?
疑問ばかりが募る。
「…………」
この封筒を開けなければ話は次に進まない、いや進まなくて良いのだろう。
それでも、俺にこの封筒を開けないという選択肢は不思議と存在しなかった。
俺は、導かれるようにその封を切った。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族を、友人を、財産を世界の全てを捨て
我らの"箱庭"に来られたし』
「……"箱庭"?いったい何の」
―――事だ?
そう言いきる事はできなかった。
俺が手紙を読み終えたと同時に、それが直視できないくらい強い光を放つ。
地面がなくなる感覚と共に目を開けると、そこにはビルも車も存在しない、完全無欠な異世界だった。
「――あぁ、やっと出会えた」
俺は、思わず呟いたいた。
その瞬間、何処からともなくカチリという音が聞こえた気がした。
まるで、何かの歯車が噛み合ったようなそんな音が。
「なッ!?」
しかし、突然襲ってきた強力な重力のせいでその微かな音への興味が一気に吹っ飛ぶ。
そう、俺は今落ちている。
雲よりも高い位置から地面に向けての自由落下、普通に考えれば間違いなく死ぬ。
「くッ!」
やっとつまらない日常から抜け出せたのに、来て速攻ゲームオーバーなんて洒落にならない。
そんな三流RPGも真っ青な展開はゴメンだ。
「何か……何かないのかッ!」
自分でも良く解らないくらい必死になって生き残る術を探すが、ここは空の上だ。
バンジージャンプのように足を縄で縛っているわけでもなければスカイダイビングのようにパラシュートを背負っているわけではない。
つまり、客観的に見て"詰んでいる"のだ。
更にいうと、少なくとも三人は同じ境遇のやつらがいるらしい。
チラッと見えただけだが、皆一様に驚いた顔をしていたことから俺と同様に助かる術は無いのだろう。
―――何か無いのか。
極限状態の中で頭をフル回転させて考える。
下に小さな湖が見えるが、落下速度を考えると深さが足りない。
もし足りたとしたも、この速度で水面にぶつかったらコンクリートに突っ込むのと同じ衝撃が来るはずだ。
と、そこまで考えてふと気がついた。
手紙を読むまであんなに空っぽだった自分が、今は何かに満たされていることに。
自分が、よくわからないほど生きようとしていることに。
「……そっか。俺は、生きてるんだ」
『やっと気づいたんだ』
「ッ!?」
何処からともなく声が聞こえた次の瞬間、ポケットから一瞬強い輝きが見えたかと思うと突然下からの風に体を押し上げられる。
あまりの風圧に落下速度が半減、いや徐々に低下していき、地面につく頃にはほとんど衝撃を感じないほどになっていた。
「た、助かったのか?」
この奇妙な力こそが両親からの本当の
何はともあれ、俺はこうして箱庭に出会ったのだ。
あまりにも違いすぎるため、当初は別作品として投稿しようと思ったのですが、タイトルが思いつかず断念してしまいました。
混乱させてしまった方は本当にすみませんでした!!
さて、次回もそう遠くないうちに投稿出来ると思うので、これからもよろしくお願いします!