Fate/Zepia   作:黒山羊

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0days PM8:59 『騎兵乱入』

 さて、ズェピアが荷物をマンホールに隠し、乱入の機会を伺っている頃。

 

 倉庫街で戦う二人の英霊はお互いの宝具と真名を晒し、お互い手負いながらも充実した闘気を纏い、戦いを楽しんでいた。

 

 が。

 

 次の瞬間、爆音と共に雷光が迸り、一台の戦車が倉庫街に降り立った。赤い髪とヒゲを持つ戦車の主は呆然とする2人を前に吼える。

 

「我が名は征服王イスカンダル!!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した!!」

 

 だが、その名乗りに茶々を入れる者がまた一人。

 

「ふむ。一騎打ちを台無しにしたのは問題だが、自分から名乗るとは中々にキャラクターが立っている。やはりトリックスターは奇天烈でなくてはなるまい。その点君は中々だよイスカンダル。最も、マンネリズムと化したデウス・エクス・マキナに成りかねない点も持ち合わせているが」

 

 そう。バーサーカーこと、ズェピア・エルトナム・オベローンである。

 

「……なんだか小難しい奴が出て来たのぅ。誰だお主は?」

「誰に見えるかね?」

 

 質問に質問で返すズェピアとそれを聞いて「うぅむ、謎掛けときたか」と何やら楽しそうなイスカンダル。そんな彼等を眺めていたセイバーとランサーは漸く機能を復活させ、質問を投げかける。

 

「先に名乗った心意気にはまぁ感服せんではないが……何をしに来た征服王。理由もなく一騎打ちに水を差したとなれば、ただでは置かんぞ」

「そう急くでないランサー。なに、簡単な事よ」

 

 そう言ってイスカンダルは一息入れると簡潔に言い放った。

「ひとつ我が軍門に降り聖杯を余に譲る気はないか? さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を制する快悦を共に分かち合う所存である」

「ふむ、やはり君は底抜けに馬鹿だな。いやなに、君を貶すわけではないとも。喜びたまえ、二人の騎士に『明らかな侮辱を投げかける』という君の身体を張ったボケに観客席は爆笑に包まれること間違い無しだ」

「……良く舌が回るのぅお主」

 

 またもや入ったワラキアの茶々にげんなりするイスカンダル。彼にセイバーとランサーは暫くの沈黙の後言葉を返す。

 

「……俺の内心は既に彼が代弁して居るようだが、その提案は承諾しかねる。俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人だけ。断じて貴様ではないぞライダー」

「そもそも、そんな戯れ言を述べ立てるために貴様は私とランサーの勝負を邪魔立てしたと言うのか? 戯れ言が過ぎるぞ」

 

 怒り心頭と言った様子のセイバーとランサー。彼らの気迫に流石の制服王も、懲りるかと思いきや。

 

「待遇は応相談だが?」

「くどい!」

 

 とアホな言葉によって二人からの総ツッコミを受けていた。

 

「実に愉快な喜劇だが、少々この愚昧に台詞を戴きたい」

 

 其処に、またもや茶々を入れるのは矢張りズェピア。だが今回は先程のおどけた様子を一切消して三人の英霊とアインツベルンのマスターに向き直る。

 その姿に、セイバーとランサーは渋々その切っ先を下げ、ライダーは興味津々と言った様に向き直る。

 

「さて、実は私の目的はイスカンダルと似てはいるが、その内容は少々異なる。だが、此処は彼の敷いた道を利用させていただくとしよう」

 

 そう言うとズェピアはマントをはためかせ優雅に一礼し、セリフを言い放つ。

 

「我が名はズェピア・エルトナム・オベローン。この度、狂戦士の配役を得て壇上に立つことに相成った。さて、今回此処に登場したのは他でもない諸君に提案が在っての事」

 

 一拍。身振り手振りとその話し方は確実に周囲の目を彼に向け、その間が次の内容を聞き逃すまいとする皆の耳を一層研ぎ澄ませる。そしてズェピアは、この戦争において恐らく過去類を見ない言葉を紡ぐ。

「聖杯を得た暁には諸君とそのマスターに差し上げる故、誰か同盟を組まないかね?」


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