Fate/Zepia   作:黒山羊

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+1days AM0:07 『夜間外出』

 雑炊も食べ終え、そのままポニーテールの女性アサシン、仮称ポニーちゃんを交えて今後の展望を考えるズェピアの下に雁夜からの念話が届いたのは日を少し跨いだ辺りの事だった。

 

『ズェピア、プランBによってセイバー陣営の情報を回収した。どうやら、冬木ハイアットホテルに居るランサー陣営をホテルごと発破解体するらしい』

『発破解体? また凝ったものを使うのだな、衛宮切嗣は。周囲の一般人を巻き込まないためかね?』

『多分な。……俺はもう寝るけど、何かあったら念話で起こしてくれ』

『分かった。おやすみ雁夜』

 

「何かあったのか?」

「どうやら私のマスターがセイバー陣営の動きを掴んだ。どうやら衛宮切嗣は冬木ハイアットホテルを発破解体するらしいぞ、綺礼君。……しかし、プランBはなかなか有効だったな」

「む……衛宮切嗣が動くか。ところで、プランBとは何だ?」

 

 そう呟く綺礼の表情は興味の色こそ有るものの、執念というほどのものではない。

「プランBは、マスターではないが敵と思しき人間への対応プランだな。具体的に言えば体内にマスターの蟲を植え付ける事で、その人間がどの陣営のどういう存在なのかを探るプランになる」

「お前は相変わらず神算鬼謀よな、吸血鬼。そこまで全力で形振り構わず聖杯戦争に臨む者は少なかろう?」

 

 そう言ってズェピアが持ってきた土産の酒を煽るギルガメッシュは何やら機嫌が良い。その原因がズェピアの料理と酒が中々に気に入ったからという単純な物である辺り、彼の本質は案外素直なのかも知れない。

 そんな英雄王にズェピアは非常に良い笑顔で答える。

 

「遊びというのは本気でやるから愉快なのだよ英雄王」

「ふむ、まぁ判らんでは無いがな。しかし、発破解体とは何なのだ?」

「ふむ……ポニー君。そこの袋から割り箸を取ってくれたまえ。……ありがとう。さて、今私が立てた四本の柱をビルの四隅にある太い柱だと思ってくれ。で、発破解体というのは、この柱が全て内側に向かって倒れるように爆薬を調整して爆破する事をいう」

 

 そう言ってズェピアは四本の割り箸を内側に倒す。

 

「こうすれば、下手にビルを吹き飛ばすより周りの被害が少ないのだよ」

「成る程、良く分かった。誉めて遣わすぞ吸血鬼」

 ギルガメッシュはそう言いながらふと何かを思いついた様に口角を吊り上げる。

 

「決めたぞ貴様等。我は発破解体とやらを見物しに行く。供をせよ」

「……私は構わんが」

 

 そう答える綺礼はクローゼットから私服を取り出し、手早く着替え始める。それを横目に見つつズェピアも肯定の意を示す。

 

「私も行こう。ポニー君はどうするかね?」

「……綺礼殿が出向かれるのであれば供をするのは当然にございます」

 

 そう言うポニーちゃん、もといアサシンの格好はブラジル水着に髑髏仮面。確かに、暗殺の対象を身体で釣る事もあるアサシンの服装としては正しいのだろうが、少々現代向きとは言い難い。

 

「……ちょっと待ちたまえ、ポニー君。君、その格好で外出するのかね?」

「はい。何か問題が?」

「霊体化すると物を持てないだろう? 君にはこれを装備して貰おうと思って持ってきているのだが」

「……これは?」

 

 ズェピアがそう言って指差すのは、彼の持ってきた紙袋。その中には、金属製のスリングショットいわゆるパチンコと、金属のパチンコ玉を詰めたウエストポーチが入っている。

 

「無音かつ、アサシンに使用しやすい武器を考えるとこうなった。背後から後頭部に撃ち込めば良くて昏倒、最悪死ぬ」

「……成る程、これは便利な代物ですな」「弱点は霊体化すると持てない事だがね。……と云うわけでこれを着たまえ」

 そう言ってズェピアが差し出すのは比較的大きなフードが着いたパーカーとホットパンツ。

 

「顔を隠し、なおかつ動きやすい物を適当に見繕ってきた。本来ならコレとパチンコは次回行動の以降で運用するために先に試着して本人の要望を取り入れようと持ってきたモノなのだが、まぁ今回はぶっつけ本番でも構うまい。時にはアドリブも重要なのだよ」

 

 そう言うズェピアに促され、アサシンはトイレまで着替えに行く。そんな中、着替えを終えた綺礼が何やら興味深げにパチンコを眺め始めた。

 

「……コレはただのスリングショットではないな?」

「まぁ、魔術で強化しただけだがね。最近強化ばかりやらせているせいで私のマスターは強化の腕前だけが異常に伸びているのだよ」

「さぞや大量に魔術を行使したのだろうな、お前のマスターは。……そう言えば、貴様のマスターは私の様に起源覚醒したのか?」

 

 その問いはある意味当然。そして、別段隠す事でもないのでズェピアは一つ頷く。

 

 と、そこでパーカーとホットパンツに着替えたポニーちゃんがやってきたため、話を中断し、4人は町に繰り出した。


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