魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
砂漠の世界に到着してすぐにリニスと二手に分かれて辺りを探した。
「ホントに砂漠ばっかりだな……」
≪バリアジャケットの隙間に砂が入っちゃうよ~≫
それは動きずらくなって嫌だな。
「そうだ、新しい機能について今の内に確認しておくか」
半年前の様な事態は御免だからな。
『カートリッジシステム――単発式。右前腕の装甲の一部が展開、そこにカートリッジを最大5発込める事でロード完了。カートリッジは毎起動の度に5発所持』
『スタイル・イレイザー――超高速戦闘形態。魔力運用高速化により発動時間を半分に短縮。速さに全てを置いているので防御力は一切無い。さらに〈バーニア〉〈カートリッジシステム〉の機能が使用不可能、その代り〈エアシューズ〉が使用可能』
『エアシューズ――スタイル・イレイザー限定の機能。周囲の魔力素を利用し足の裏に足場を形成し、空を駆ける事が出来る』
新機能の詳細が書かれたウィンドウを読んだ結果………
「どっちにしろ使い勝手の悪い機能だな……」
カートリッジに関しては当分使えなさそうだ。何発で金ぴかになるのか知らないし……なっても良いが意識が無くなるなら意味ないし。
バーニアとシードの時同様に同様に使い勝手の悪い機能だな……あ。
≪コダイ!≫
「シグナムだな―――」
シグナムと比例しても巨大なワームに細い触手で縛られている所に尾の先で狙いを定めている――
≪食べられちゃう!食べられちゃう~!≫
「距離は―――ここでいいか」
慌てているレイを余所に一定の距離を取る。
「『
久しぶりのレアスキルを使用。魔力光を虹色からシグナムの紫に変える。
左手に溜めた魔力がシグナムの変換資質により火球に変わる。
≪ガンブレイズ!!≫
放ったのは紫の散弾――それは極小の炎となりワームを襲う。
――ズドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
炎の散弾の雨はワームの全身に降り注ぎ、シグナムを縛っていた触手もついでに焼切った。
――グォォォォォォ………
断末魔を上げながらワームはこんがりと焼けた―――この表現美味しそうだな。
「焼きワームの一丁上がり」
≪美味しくなさそうだね≫
「そうとも言えないぞ?人は動物や魚とか食べるんだ、虫位食べる所もあるだろう…それに逆に美味しいかも知れないぞ?」
≪ん~……今度作って!≫
「作れるけど仕入れがな……」
≪そっかぁ~…≫
それよりお前デバイスだろ?………
「ちょっとコダイ君!助けてどうすんの!捕まえるんだよ!ってか何の話をしているの!?」
そんな事を言っているとモニターからエイミィが叫びだした。どうしたんだ?あ、捕まえるんだった。
「助けないと捕まえられないだろうが。それとも何だ?エイミィはあの女の縛られて悶え苦しむ様を視姦してろと?鬼畜だな……」
「そこまで言ってないよ!」
「言ってないだろ、数秒前の自分の言葉も忘れたか………」
「う~………いじめるよ~」
「エイミィには同情するよ……」
あ、アルフが人間状態でエイミィの頭を撫でてる。
「生きていたのか………」
第一声がそれかよ……
シグナムがいつの間にか俺と対峙していた……
「生きていた……とは言い難いが、おかげ様で」
「………礼を言われる覚えは無いが?」
「こっちの話だ」
シグナムのカートリッジを偶々拾って、それを噛み砕いていなければ、進化する事も無かったしな。
「だけど、こっちは言われる覚えはあるぞ?たった今助けたし」
「蒐集対象が潰されてしまった………」
≪えっと………ごめんなさぃ≫
突然レイが凄く落ち込んだ声で謝りだした。しかも語尾が弱々しくなっている……
「あ、いや……助かったのは事実だが、邪魔をされてしまったから…そのおあいこと言うか…その……」
うわ、シグナム動揺してる…………
「まぁ、落ち着けシグたんミ☆。レイはかなり天然で抜けた所があるから」
「天然は貴様も同じだ!!それよりもその名で呼ぶなと言っているだろ!!戦闘位真面目にやれないのか!?」
「何を言う、何時も真剣に弄る事を考えてるぞ」
あ、シグナムが震えだした………
「大体、真面目に戦って面白い所があるのか?」
取り敢えず聞いてみる…面白いと思えば行動に移すだけだし。
「あるぞ、それは……………戦いその物にある」
「……は?」
≪ほぇ?≫
「強い力を持つ人間を目の当たりにすればどの騎士だって戦いたいと思うだろう」
騎士じゃないし、それは多分シグナムだけ………
「テスタロッサの時もそうだ。前回よりも格段に強くなっている――デバイスだけでなくテスタロッサ本人もあの短期間でだ」
「そうなのか?善戦してくれなければ鍛えた意味が無くなるしな……」
「何?お前がテスタロッサを?」
「一応、強くなりたいって言ったから」
「フフフ―――面白い、あの短期間でテスタロッサを飛躍的に強くしたその実力を是非とも確かめたい……」
震え方が変わった……武者震いに。
分った、コイツ………
「実力って何度も手合わせしてるぞ?」
「だか――その時は多対一の時だ…それに」
シグナムがゆっくりとレヴァンテインを突きつける。
「貴様の本当の武器は拳では無いだろ」
「………何を根拠に?」
「最初の戦いだ。あの時、レヴァンテインの鞘で私の剣を受け止めた……あの太刀捌きはまさに熟練の騎士動きだ。違うか?」
「……概ね正解」
特に隠す必要もないので答えを出す。
「やはりか……ついでに言わせて貰うと貴様は明らかに手を抜いている」
「それも正解。で何?本気を出せと?」
「その通りだ」
「生憎、剣はもう持っていないんだ。それに手抜きはもう癖でな、治そうとも治せないんだ………」
「成程―――つまりこういう事か」
するとシグナムはカートリッジを補充する。
「本気を出させてみろと………」
なぜそうなる………
「では――往くぞ!!」
「往かないから」
もう何かその気だし……
……近くに俺とシグナムの他には、遠くで戦っているリニスとザフィーラの気配のみ。
仕方ない、戦って仮面の男を誘い出すか。
「ハァッ!!」
「聞けよ少しぐらい」
振り下ろされる斬撃を後ろに跳んでかわす。
シグナムのレヴァンティンは通常形態の剣と弓矢の形態がある。だけど弓矢のカートリッジの消費具合から見てもあれは必殺の技と考えれば……
「まずは距離を取る」
≪スローナイフ!≫
剣の間合いの外からスローナイフを数本投げ飛ばす。
「甘い!」
シグナムがレヴァンティンで薙ぎ払い全てのスローナイフを弾き飛ばした、しかも爆発の煙幕を利用されない様に遠くに……
「流石に同じ手は通用しないか。ディレィスペル・アウト」
≪ガンブレイズ≫
左腕にキープしていた魔法を解除して間髪入れず放つ。
≪
――ズドドドドドドド!!!
レヴァンティンが形状を変える。剣から刀身が幾つにも分かれてそれが一本のワイヤー状の物で繋がっている……鞭に剣を組み合わせた様な形になった。
無限に分裂する極小の魔力弾をソレを鞭の様に振るい、全て薙ぎ払った―――
弓矢だけじゃないのか?―――と言うか。
「剣の意味無いだろ……」
「ハァッ―――!!」
――シュアアアアアアアアア!!!!
シグナムが持ち手だけになったレヴァンティンを振り上げると、鞭とは思えない速度で此方に一直線に飛んでくる。
≪バーニア!≫
すぐにバーニアで後ろに飛ぶが、それでも鞭の切っ先は喰い付いてくる。何処まで伸びるんだコレ?
一気に急上昇をして振り切る。鞭は此方に来ず、俺とシグナムの周りを囲う様に飛んでいる。
見た事が無い武器だが、見た感じ鞭が主体に変わらない、手首の返しで動きを予測すれば―――
「――って、無理か」
後ろの僅かな風切り音に反射的に頭をずらすと、顔のすぐ横を鞭が通った。
――シュアアアアアアッ!!!
全方向、不規則にまさに
≪上!……後ろ!前!お箸!お椀!またお椀!下!えぇっとぉ!えぇっとぉ!!≫
レイも頑張ってナビゲートしてくれるが……いい加減左右を覚えろ。
迫りくる鞭をバーニアの出力を何度も調整してかわす。燃費の悪いバーニアだが細かい微調整が可能で小回りが断然利く。飛ぶと言うより泳ぐ感じだな。
「ほぅ………速度ではテスタロッサに劣るが、先読みと体のこなしの速さはテスタロッサ以上だな」
「褒めてくれてどうも」
このままではバーニアでガス欠起こるぞ。この包囲網を抜けるにはシグナムをどうにかするしか。
ガンブレイズはさっき切り落とされたし、スローナイフとプラスブレイクは論外。残りはバニシングバスターだけ……
「こうなれば――ディレィスペル・アウト」
≪バニシングバスター!!!≫
右手をシグナムに狙いを定めて、銃弾の様に回転する虹色の砲撃を放つ。
――ドォォォォォォォォン!!
砲撃はシグナム…………のかなり左にズレて命中した。
今はそれでも構わない。
「ズレたなら―――」
――ガンッ!!
砲撃を放っている右腕を思い切り殴る。
「無理やり直すまでだ」
「何だと!?」
砲撃をそのまま維持、前方一面をシグナムごと焼き払う。
――ズァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!
薙ぎ払う様にした砲撃は、水柱ならぬ砂柱を造り、シグナムのいた辺りを深く抉り取った。
「――っと……何とか成功したな」
地上に無事着地した。
いつの間にかあの鞭も周囲から消えている。
≪コダイすっごぉい!あんな事も出来るんだぁ~!≫
「いや、これ出来たの今さっき、思いついたのも今さっき何だが……」
流石トリッキー重視のベアトリス式。使い勝手悪すぎだろ……けど。
「これでもまだ駄目とは……」
見上げると空中からゆっくりと地上に着地して、鞭になったレヴァンティンを持ち直したシグナムがいた。
騎士甲冑には砂埃が付いているが目立った外傷は無い。
「標準がズレてしまう砲撃を戦闘中にあんなやり方を思いつくとは―――流石、我ら3人を豪語するだけの事はある………さぁ続けるぞ、貴様もまだ本気では無いのだろ?」
あ~何か火にガソリン投下したみたいだ。
あっちは引き下がる様子もないし。こっちは本気を出すつもりなんて一切無いし。
「≪コダイさん!≫」
「悪い通信だ≪リニス?≫」
突然リニスから念話が入った。
「≪私が相手をしている守護獣から聞きました。今回の事件は主は一切知らないとの事です≫」
「≪知らないだと?≫」
だとしたら守護騎士は完全に自分の意思でこの事件を起こしている。それに主が知らずに………知られては行けない理由でもあるのか?
なら仮面の男は協力者?……いや、映像を見た限り、あの反応は違うな。
別の理由で完成させたがっている―――多分、本来の目的で。
「≪それ以外に聞き出せないか?≫」
「≪何分戦闘中の事ですので……クッ!……スミマセン切ります!≫」
リニスとの念話が途切れた。
少し纏まってきた。
今までの守護騎士達の会話を総合すると―――完成させないと主に何かが起こる?
でも、それだと主が知らない方がおかしい………もしかして。
「あ……」
何かがガッチリはまった、全部分った………今回の事件の動機。
後は……仮面の男だけだ。
まだ来る気配は無い。
戦闘時間を引き延ばしてくるのを待つか……
「新機能……試してみるか」
≪スタイル・イレイザー!≫
レイが叫んだ瞬間、纏っていた装甲が一瞬で魔力に還り。その下にあったのは着ていた服では無く、レザーの素材の様な黒い服だった。
ノースリーブの黒いワンピースに腕には袖を切って腕に直接巻きつけている感じになって脇が露出している。スカートも太もも位の丈で、その上から地面に着きそうな程長い外套を前だけを残し被せて、コルセットの様な物で止めている。脚にはベルトが何本か巻かれている。
ついでに髪型も変わった様だ。ツーサイドアップになって結った髪を黒い髪飾りで止められて、パッと見猫耳に見えなくも無い感じに……
『疑似神経との伝達――正常』
『装甲強度状態――停止』
『装備者の状態――不明』
『機能の状態――以下使用可能〈リコール〉・〈シーリング〉・〈エアシューズ〉』
『シンクロ率――589%』
『現在の形態――イレイザー』
目の前に現れるウィンドウで状態を確認。特に異常は無いようだ。
「な………な………」
「ん?」
シグナムが真っ赤になって俺を指さして震えている………
「貴様男だろう!?何だその女装染みたバリアジャケットは!」
「問題無い、スカートの下はホラ、ショートパ「見せなくていい!!」そうか。それに――」
これは何度でも言ってやる……
「女装はオシャレだ」
「違う!!!目を覚ませ!!」
速攻で否定された………
スタイル・イレイザーのイメージはToLOVEるの金色の闇の戦闘服です。
桜日紅葉雪様、菜箸様、アキ様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~