魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
俺のデバイスの推測もそこそこに。アルフに運ばれてフェイト達のマンションに戻った。重傷だが、寝ていた3日の間に治療は済んでいたので後は絶対安静らしい。
そこで全員リビングのソファーに座ったのを確認して、今度はなのはとフェイトのデバイスの新システムの説明をエイミィが始めた。
「カートリッジシステムは扱いが難しいの。本来ならその子達みたいに繊細なインテリジェントデバイスに組み込む様な物じゃないんだけどね……本体の破損も大きいし、危ない、って言ったんだけど……その子達がどうしてもって――」
それは以前俺がベルカ式と一緒に説明したな。そういえばシグナムとヴィータのデバイスもAI入っていたよな?あれはベルカ式のインテリジェントデバイスなのか?
「よっぽど悔しかったんだね。自分がご主人様を護ってあげられなかったこととか、ご主人様の信頼に応えきれなかったこととか」
「ありがとう、レイジングハート」
≪All right≫
「バルディッシュ」
≪Yes,sir≫
自分のデバイスにお礼を言うなのはとフェイト。
こうしてみるとあんまり変わって無いような気がする……レイだけが違うのか。
「モードはそれぞれ3つづつ、レイジングハートは中距離射撃のアクセルとバスター。フルドライブのエクセリオンモード。バルディッシュは汎用のアサルト、鎌のハーケン。フルドライブはザンバーフォーム。破損の危険があるからフルドライブはなるべく使わない様に、特になのはちゃん!」
「は、はい!?」
突然の名指しに慌てるなのは。
「フレーム強化するまでエクセリオンモードは起動させないでね」
「はい……」
少し残念そうな顔をしている……もしかして見たかったのか?
「以上、デバイスの説明は終了。次は闇の書の事件について――クロノ君」
事件という言葉を聞いて空気がさらに静かになった。
「今回の闇の書に事件で腑に落ちない事がある。それは守護騎士達がまるで自らの意思で闇の書を完成させている様な感じがすると言う事だ」
「えっ、それって何かおかしいの?」
クロノの発言に疑問を持つアルフ。
「でも、闇の書って要はジュエルシードなんかと同じで、力が欲しい人が完成させようとするんだろう?だったらその人の為にあいつらが頑張るってのは当然じゃないかい?」
「その為の守護騎士だろ?主に忠義を尽くすのは当然だと思うが……」
俺もアルフの意見に同意だ。
「いや、第一に闇の書の力はジュエルシードみたいに自由に制御の利く物じゃないんだ」
いやいや、ジュエルシードも利かないだろ。と経験者は言いたいが、話が進まないのでやめよう。
「完成前も完成後も純粋な力にしか使えない。少なくともそれ以外に使われたという記録は一度もないわ」
クロノに付け足す様にリンディが言う。
完成前、と言う事は過去何度か事前に対処を行っていたのか。話を聞くに生半可な物では意味を成さない、純粋なエネルギー放出による滅却か……可能性の1つとして頭に入れておくか。
「それからもう1つ、あの騎士達――闇の書の守護騎士の性質だ。………彼らは人間でも使い魔でも無い」
クロノの言葉に思わず息を呑むなのは達。
「闇の書に併せて魔法技術で創られた擬似生命……主の命令を受けて行動する、ただそれだけのプログラムに過ぎない筈なんだ」
これに付いては事前に貰った情報に書いてあった。
「あの……人間でも使い魔でも無い疑似生命って言うと………私みたいな……」
「ち―――」
自分で言って顔が暗くなっていくフェイト。
それに対してなのはが何か言おうとした瞬間。
「必殺!お姉ちゃんチョップ!」
――ビシッ!!
「あぅ!」
アリシアの手刀がさく裂した、しかも顔面に横に向けて……
「この口か~!言ってはいけない事を言ったのはこの口か~!」
「いふぁい!いふぁいおへぇさん!」
口を横に引っ張られて何を言っているか分らないフェイト。
「アリシア、その辺にしておきなさい」
「む~」
「うぅ~」
プレシアに引き剥がされて膨れるアリシア。フェイトは引っ張られた頬を摩っていた。
「一家の団欒は放置して先に進めてくれ」
正直そっちの方が気になる。
「あはは……じ、じゃあモニターで説明しよっか!」
エイミィが部屋を暗くして、闇の書と守護騎士が映っているモニターを出す。
「守護者達は闇の書に内蔵されたプログラムが人の容を取った物。闇の書は転生と再生を繰り返すけど、この四人はずっと闇の書と共に様々な主の下を渡り歩いている」
「意思疎通の為の対話能力は過去の事件でも確認されてるんだけどね。感情を見せたって例は今までに無いの」
「闇の書の蒐集と主の護衛、彼らの役目はそれだけですものね」
モニターを元に解説をするクロノとエイミィとリンディ。
「でも、あの帽子の子、ヴィータちゃんは怒ったり悲しんでたりしてたし……」
「シグナムからもハッキリと人格を感じました。為すべき事があるって……仲間と、主の為だって」
シグたんミ☆……じゃなくてシグナムを弄って時も怒っていたりしたり、ヴィータの時だってあの感情は本物―――
誰かの言葉を借りるつもりは無いがプログラムにしては余分な感情が多すぎる。
それに主の為………完成には時間制限が設けられているのか?いやそれとも主自身に……
「それについては捜査に当たってる局員からの情報を待ちましょっか」
リンディが重い空気をはらいのける様に部屋の電気をつけた。
「転移頻度から見ても、主がこの付近にいるのは確実ですし。案外、主が先に捕まるかもしれません」
「あぁ~それは分りやすくていいねぇ!」
「だね。闇の書の完成前なら持ち主も普通の魔導師だろうし」
クロノの推測に。笑顔で答えるアルフとエイミィ。
「うん、それにしても闇の書についてもう少し詳しいデータが欲しいな……コダイ、明日からユーノを借りていいか?」
「ん?別にいいが……何で聞く?」
今は、なのはの肩に乗っているフェレット状態のユーノを見る。
理由は先日聞いたから無限書庫とかと分るが……
「一応、君が飼い主だから」
「おい!」
しれっと答えるクロノに即座にツッコミを入れたユーノ。
「はい、それじゃあ今日はこの話はおしまいね!もう遅いし」
「わっ!もう、こんな時間!?」
リンディの言葉にエイミィは時計を見て驚く。
「うわ……本当だ、もう帰らないと」
「そうだ、メール貯まってないか調べ―――あ」
取り出した携帯を見て、固まる。
それに気づき全員集まってくる……
「うわぁ……ひどいの」
なのはが口元を手で覆う……俺の黒い携帯は本体が溶けて固まった状態になってくっ付いていた。
「中身大丈夫だろうな……」
僅かな隙間に爪を引っかけて開けようとする……
――バカンッ!
見事に2つに分かれた。
「……………IDは無事だな。明日買いに行くか」
「そうだわ!」
突然手をポンと叩くリンディ。
「明日の帰りにフェイトさん達の携帯を買いましょう!コダイ君と一緒に」
「別に1人で―――と言うか買って無かったのか?」
「う、うん」
「色々あったからね~」
フェイトとアリシアを見ると少し照れ笑い。
その後、なのははリニスに送られて家に帰って行った……
俺は安静にと事で泊まる事になった……
「コダイ君と会ったの久しぶりやな~」
「そうだな」
翌日、前回の件でしっかり体を治す事と言われてリンディが勝手に学校に俺が休むと連絡した。放課後に携帯を買うために後で店でおちあう予定だ。
デバイスも結果待ち。それまでは何もすることが無いので、図書館で偶然再会したはやてと話していた。
「そんでな、すずかちゃん家は猫さんが沢山おってな、それがええ子でな~」
はやてはこの前、すずかの家に遊びに行ったようだ。その日は2度目の守護騎士との戦いと重なっていた。
「すずかちゃんは猫好きやから、あのこにゃいくんを見たら暴走しそうやな?」
「………あ~」
実際あった。暴走した、これでもかって位に頬が緩んでいた。
「一応、コダイ君にもメール送ったんやけど、返事が返ってこなかったし……忙しかったん?」
「メール?………あ」
貰った覚えは無いと思ったが。送られた日を思い出すと理由がわかった。
「その日に携帯が壊れたんだ。IDは無事だったから今日買いに行く予定だ」
「そうやったんか………どんな携帯にするつもりや?」
「ん?別に電話とメール機能があればどれでも良い」
「あかんって!せっかく新しく買うんやからええのにしないと」
「例えばどんなのがあるんだ?」
「う~ん……最近は似たような性能やけど、第一にデザインやろ」
どこからか取り出した携帯のカタログを自分の膝の上で開いて俺に見せてくる。
「これは絵文字やデコメが多いし、これはカメラが綺麗やし……」
カタログの携帯を指差しながら簡単に説明してくれるはやて。
こうしてみると色々あるんだ……前の持っていた機種とは偉い違いだ。
「だがそれよりも重要なのは操作性だろ」
「あ~そうやな、それに外部メモリーついとると楽しいで?写真とか音楽とか沢山とれるし」
「ん?音楽なんか取って意味あるのか?」
「それはもちろん、着信音にしたりイヤホンに繋いで気軽に音楽を聴いたりとか……」
「もう何か携帯電話と言うより携帯パソコンの方が合って無いか?」
「それ言ったらお終いやコダイ君」
ツッコんでは駄目なのか………ん?
「これはどうなんだ?」
俺が指したのは画面だけの携帯とは言って良いのか微妙な形の奴。
「あ、これは画面を触って操作するタイプの携帯や色んな事も出来てそれこそパソコンみたいな感じや……でも結構値段高いで?」
「携帯は消耗品だし、どうせなら多少値が張っても長く使える奴が良いか」
「買ったら見せてくれへん?生で使っているとこ見たことないんや」
「別に構わないが……」
ふと、壁に掛かっている掛け時計を見る。
もうそろそろ、学校が終わる頃だな……
「もうすぐ待ち合わせの時間だ、また今度」
「またな~約束やで~」
図書館を後に、携帯ショップに向かった………
なのは、アリサ、すずかにフェイト、アリシアが加わった五人娘と一緒に携帯を探し、リンディとプレシアが後ろで楽しそうに見ていた。
俺は既に決まったので迷う事無く購入。
フェイトとアリシアも候補は決まっていたらしい。どうやら学校で俺とはやてと同じ様に話し合っていた様だ。
「お待たせ」
「買って貰ったよ~!」
あ、どうやら終わったみたいだ。
そのはるか後ろでプレシアとリンディが嬉しそうにしていた。
「良い番号あった?」
「アリサ、番号に良い悪いとかあるのか」
「それはあるわよ」
理解できない……
「2人はどんな携帯買ったの?」
「えっとね……これ」
「これだよ~母様ともお揃い!」
フェイトとアリシアが持っていた包みから取ったのは2人とも黒い機種だった。ちなみにプレシアは同じ機種の紺色だった。
「黒好きだな2人とも」
「うん好きかな」
「えへへ、それにコダイの色~」
確かに何時も黒ずくめだけど……
「そう言えばコダイ君も変えたんだよねどんなの?」
「ん?これだ」
新しく買ったばかりの携帯をなのはに見せると、一斉に集まってきた。
「あ!これって最新機種の……!」
「そうそう!よくCMでやってる!」
「スッゴイ性能だけどスッゴイ高いって言う奴だよね!」
「え?……それってそんなに凄いんだ」
「何か普通の携帯と違う形だね~」
これかどんな物なのか分っている、アリサ、すずか、なのは。
あんまり分っていないフェイトとアリシアに分かれた。
「あ、そうだ折角だからコダイ君の携帯でみんなの写真撮ろうよ!」
「何で俺の携帯なんだよすずか」
「コダイ君の携帯が一番綺麗に映るからだよ、後で送ってね」
送ったとしてもその通り送られるとは限らないぞ……画素とかで。
「じゃあ、私が取ってあげます。コダイ君貸してくれる?」
やっぱりリンディが入ってきた……
携帯のカメラ機能を起動させて、簡単に操作を説明してからリンディに渡す。
「は~い♪みんな寄ってね~コダイ君は真ん中ね、どうせならみんなコダイ君に抱き着いたら?」
――ギュッ!
リンディがそう言った瞬間に囲むように、なのは、フェイト、アリシア、アリサ、スズカと俺から見て右上から時計回りに抱き着いて来た……お前ら乗りすぎ。
「あらあら大胆ね~♪」
からかう笑みのリンディに顔が赤くなっている5人娘……だったらやるなよ。
「さ~て取りますよ~……35×51÷24は~?」
「え、えっと……74.375です!」
「2すら無いのか」
――カシャ!
とっさに答えたフェイトも、そんな問題を出した事も無視してシャッターを押したリンディ。
とれた写真を早速、交換したばかりのアドレスで送った。
その後、アリサとすずかは用事、リンディも用事で本局、なのはとフェイトとアリシアは携帯の操作を覚えるために翠屋に。
俺はベアトリス式の新魔法開発の為にプレシアとフェイト達のマンションに向かった。
「……よし、完成だ」
新たにもう一つの魔法を完成させた。
「相変わらず、ふざけた魔法ね……」
実際これも、図書館でケーキの本でミルフィーユを見て考えた魔法だし……
「コダイ、絶対安静って言われなかったけ?」
子犬フォームのアルフが近づいてきたので抱き上げた。
「ん?治ったぞ」
「ほんとに~」
と言って、鼻で胸をグリグリ押しつける。少し痛い。
「そう言えばユーノは無限書庫にいるんだっけ…」
今度、使わせて貰おう…ん?お前には『シード』があるだろ?いや、あれは実際使いづらいし――
「たっだいま~」
「遅くなりました」
あ、エイミィとリニスが買い物から帰って来た。
「あれ?艦長もう本局に出かけちゃった?」
「確かアースラの武装追加が済んだから試験航行らしい……」
確か武装ってアルカンシェルだっけ?
「アルカンシェルか……ハァ、あんな物騒な物最後まで使わずに済めばいいけど」
「確かにな………」
聞く所によると闇の書を退ける力はあるが結局は解決していない………闇の書を破壊するには何かが足りないのか。
「あのコダイさん、フェイトとアリシアは?」
「携帯の操作に慣れるために翠屋に、夕食前には帰るようにってリンディが言い聞かせていたから問題ないだろ」
「そうですか、分りました」
「後エイミィ、リンディからの伝言『クロノもいないから指揮代行よろしくおねがいします♪』だって」
リンディの声で伝言を伝えた。
「せっきにんじゅ~だ~い」
アルフが煽る。
「物騒な事言わないでよ~」
そう言いながらカボチャを掴む…………片手で。
「でも、そうそう非常事態なんて起こる筈が―――」
――ビー!!ビー!!
「噂をすれば………だな」
「うぅ……トドメ刺さないでよ……」
エイミィは掴んでいたカボチャを落とした――――が、それを済んででリニスがキャッチした。
通信室に集まり、状況を確認する……
「文化レベル0、人間は住んでいない砂漠の世界だね」
「となると……魔法生物からの蒐集か」
モニターにはシグナムとザフィーラが写しだされている。
「結界を張れる局員の集合まで最速で45分………マズイなぁ」
「なのは達は今翠屋だ、足止め無しでも45分何て待ってくれないぞ」
「うわどうしよう………」
エイミィはコンソールを操作しながら作戦を組み立てている。
「―――レイ、行けるか?」
≪うん!ダイジョーブ!いっぱい寝たから元気いっぱい!≫
ずっと寝てたのかよ。けど今は良い―――
「エイミィ、俺が出る」
「ちょ!何言ってるの!?コダイ君は絶対安静って言われたでしょ!?」
「時間が無い―――」
闇の書の事件に関して一番の問題が残っている。あの仮面の男だ―――
何者かは知らないが、今分るのは二人組で戦闘能力はクロノを凌ぐ程。分らない所は何で守護騎士でも無いのに闇の書を完成させ様とする事だ。
確か、闇の書は主にしか使えない筈。もしかして闇の書について何か知っているかもしれない。
また現れるかもしれない、だから………締めて吐かせる。
「―――分った。けど3つ約束して」
「何だ?」
「まず1つ、あの金ぴかにはならない事」
金ぴかって、それ以前にやり方知らないし………
「2つ目、最低2人で行く事」
無茶させないためか。
「最後………ちゃんと生きて帰ってきてね」
「分った」
それは死ねないから問題ないだろ………
「コダイさん、私を連れてってください」
「リニス?……大丈夫なのか?」
「任せてください。そこら辺にいる魔導師には負けませんから」
胸を張るリニスの後ろで『維持するのも楽じゃないけど』とプレシアが愚痴を零していた。
「じゃあコダイ君、現場に送るから準備して」
「分った」
右腕の包帯を解くと。先日進化したばかりのレイが露わになる。
「レイ・モモ・ブラッド。
≪OK♪
足元にベアトリス式の六角形の虹色の魔方陣が展開。
魔方陣から漆黒の装甲パーツが跳び出したと思った瞬間に装甲が全身に装着された。
「お、起動の速度が上がった」
目の前に現れたウィンドウが現在の状態を表示してくれた。
『疑似神経との伝達――40%上昇』
『装甲強度状態――50%上昇』
『装備者の状態――不明』
『機能の状態――〈バーニア〉・〈リコール〉・〈シーリング〉・New〈カートリッジシステム〉・New〈スタイル・イレイザー〉・New〈エアシューズ〉・New〈?????〉』
『シンクロ率――589%』
シンクロ率が軽く倍?
色々と追加されすぎだろ……それに何だ?この最後のは?
『?????―――????????????????????????????????????????????』
何書いてあるか一切分らない。多分、あの金色になる状態の事だろ。
「でも、進化しても見た目は変わらないんだな………」
≪そう見たいだね≫
「準備完了だ、後プレシア念の為にフェイト達に連絡を入れてくれ」
「分ったわ」
「じゃあ、行くよ!」
俺とリニスは現場に転送された。
liqueur様、シーザス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~