魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
「クロノ、前回と同じように3組に分かれて行動するのか?」
「いや、ユグドラシルは発見場所から動いていないから全員で固まって移動だ」
探す必要はないから一気に叩くつもりか。
「今までいろんなロストロギアを見た事あるけど、まさかブラックホールもどきを相手にするとは思っとらんかった……」
俺と同じくリインとユニゾン状態のはやてが夜天の書使い辺りをサーチしている。
≪か、勝てるのでしょうか?≫
≪勝てるかどうかは賭けだが……自分の主を信じろ≫
≪はい!分かりましたねーさま!!≫
少しおびえているリインをアインが励ましている。流石にあれほどの危険すぎるロストロギアは今まで見た事無かったか?
「にしても随分お姉さんが板についたな。これもレイ達の影響か?」
≪あ、主!?からかわないでください!……もう≫
≪うゆ~……コダイはおかーさん?≫
「違う」
「レイちゃんはお腹痛いんやろ?なら寝てしっかり治さな」
≪リインがレイちゃんの分まで頑張るです!!≫
はやてがレイを寝かしつける様に俺の右腕の宝石を撫でる。少しすると朝と同じような間抜けな寝息が宝石から聞こえた。
「あはははっ!……こんなレイちゃん見とると本当に調子が戻ったって実感したわ」
「体の調子は治って無いがな」
「では全員、今回の作戦を確認する」
クロノがこっちのタイミングを見て空気を切り替えた。
「最初に気付かれずに目標に接近。まず僕とはやてとコダイが氷結魔法で目標を凍結させる、その間に全員分の全力攻撃を当てて殻を割って本体を捉えて僕たちが本体を凍結、後は長距離転移で次元の狭間に放り込むだ」
作戦は闇の書の防衛プログラムの時の奴に少し手を加えた物だった。ほぼゴリ押しの作戦だけど一騎当千の連中がゴロゴロいるメンバーならではだな、6年前のあれよりも強力になっている事だし………なるべく離れていよう、保身のために。
「クロノ君、ちょっと質問なんだけど」
作戦の確認を終えたところでなのはが手を挙げた。
「何だ?」
「闇の書の防衛プログラムの時みたいにアルカンシェルを使わないの?」
この作戦は以前の闇の書の防衛プログラムの焼き回し見たいなものである。以前の最期はアルカンシェルで蒸発と言う流れだった……最もそれは失敗して1人で嬲り殺したけど。
「危険だからだ、さっきも聞いたようにユグドラシルは全てを取り込む特性がある。それで無くても星1個分のエネルギーを有している、アースラが巻き込まれる可能性が高いからだ。だから本体を何も無い次元の狭間に放り込んで自滅を狙う」
「そっか、何も無ければ取り込む特性は自分に起きるもんね」
≪っ!!―――主、ユグドラシルと生命反応を確認!≫
≪はやてちゃん!こっちも発見しました!!≫
アインとリインのサーチに反応があり、全員臨戦態勢に入った。
ユグドラシルの近くに生命反応?……右腕は何ともないからあれ等では無いのは確かだ。
ともかく今はその現場に急いで向かう事になった…………
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
「「「「「「………………」」」」」」
反応があった場所に到達したが、その目の前の光景に誰もが固まっている……
と言うか反応に困る。
「……これマニュアル通り制止を呼びかけるべき?」
「いやいや通じる相手やないって」
そうだよな?はやてもそう思うよな?
誰もが目の前の現状に手を出せないでいた………
――ルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
黒い龍のユグドラシルとそれと互角の巨大さの龍種の魔法生物、恐らくここのボスが互いに咆哮を飛ばし合いながら決戦を繰り広げている。
「か、怪獣大決戦……どんな映画ですか」
「サクラ……これ現実だよ」
「分かってますよそれぐらい……ですがこれは現実逃避したくなります」
「まあ……サクラの言いたい事は我にも分かるが」
真っ先に喜びそうなサクラ、エル、アンズもこれだ……正直レイが寝ていて良かった。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
――ルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
ユグドラシルとボス(仮称)が咆哮する度に地面が揺れる。
ボスが噛みつけばユグドラシルが爪で裂く。今度はユグドラシルが恐ろしいほど圧縮した魔力の塊を吐き出せば、ボスも遠くの此方からも熱気が伝わる炎を吐き相殺する。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
――ルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
咆哮と暴風が2体を中心に吹き荒れ、ユグドラシルとボスは遥か上空へ飛翔し影でしか視認できなくなりそのまま空中戦に発展した。
「アイツ、相当頭にキテるな」
≪主、分かるんですか?≫
「あの魔法生物だけならな。無理も無いだろ、いきなり変な奴がやって来てデカい面して縄張りを土足で踏み込んで来たんだ」
影と影がぶつかり、炎と魔力がぶつかり合い相殺した閃光で何度も目が眩みそうになる。
「あの魔法生物はSSSランク以上はあるな……」
影の動きがどんどん加速していく、威力もさらに増している……
「そうだね……ロストロギアと渡り合えているし、それぐらいはあってもいいかも」
「このままじゃ、ユグドラシルがいつ暴走するか……」
上空の戦場に目を凝らしたまま呟くフェイトとアリシア…………あ。
「全員、ショックに備えろ……決着がついた」
一方の影が徐々に大きくなる……………先に降りてきたのはユグドラシルの方だった。そして次に落ちて行くのはボスの方、全身の傷からの多量出血の絶命か……
落ちて来たのを確認したユグドラシルが先ほどの咆哮とは違う雄叫びをあげる。すると絶命したボスとその周囲の木々が端から様々な色に光る細かい魔力の粒子に分解されて雄叫びをあげているユグドラシルに入って………いや、取り込まれていった。
すでにボスは半分以上、ユグドラシルに吸収されて行く。
「SSS以上の魔法生物が、全く歯が立ってねぇ……」
「それだけじゃないわヴィータちゃん。あのユグドラシル、降りて来た時にも傷1つ付いてなかったわ」
「確かに……あの殻は一筋縄では割れそうに無いな」
「それにあれがあらゆる物を魔力として取り込む特性か……魔法生物の周りの樹木も取り込まれ行く」
ユグドラシルの異常性を再確認して身構えるヴィータ、シャマル、ザフィーラ、シグナム。
今の内に魔法をキープしておくか……
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
キープ直後、ユグドラシルがこちらに向かって咆哮。ボスを吸収し終えて、こちらの魔力か気配に気づいてしまった様だ。
「食事中悪かったな」
「こんな時まで通常運転できるお前が少し羨ましいよ」
褒めるなよクロノ。
「それでどうするクロノ、当初の気付かれずは失敗したが」
「前回の3つ隊形に分断、撹乱しつつ攻撃を当てて殻を剥がす。後は当初の作戦通りだ」
「そう簡単に行くとは思っても無かったが……聞いたかはやて」
「勿論や、皆準備はええな」
全員聞くまでも無く準備万端の様だ、中にはカートリッジロードをしているのもいる。
「前線復帰には丁度良いかもな」
そう呟きながら、3つの隊になり散会した。
俺の分隊の隊列はアリシアとフェイトが前衛、俺となのはが後衛という陣形になった。
「まずはその邪魔な翼を潰す。ディレイスペルアウト」
≪デアボリック・エミッション×2≫
2つの闇色の球体が膨張して、ユグドラシルを押し潰して行く。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
生物じゃないからこの叫びが悲鳴かどうかも判別付かないな……だけどまだ膨張しきっていないはずのデアボリックが徐々に縮んで行く。
≪主!魔法が取り込まれて―――!≫
「見れば分かる、取り込むものは何でも有りか」
でも、吸収するには時間が掛かるようだ。なら質量で押しつぶす……要はゴリ押しだ。
相手はあの防衛プログラムと同じ魔力の塊の生命体なら……
「こいつはが効くだろう。ディレイスペル・アウト」
≪ミストルティン×2!!≫
押し潰しているユグドラシルの上に魔法陣を2つ展開、石化効果のある光の槍を飛ばして翼に突き刺し石化させる。ここで―――
「ディレイスペルアウト」
≪プラズマランサー・ジェノサイドシフト、ブラッディダガー、フォトンランサー・ファランクスシフト≫
金色の槍、血の様に赤い刃、紫色の魔力弾を上空に無数に設置、だけどコレだとダメージは期待出来ないから。
「ア・サンブル」
魔力刃と魔力弾をそれぞれの魔法同士に重ね合わせる。
プラズマランサーは槍から杭、フォトンランサーは弾から砲弾、ブラッディダガーは刃から槍とまで呼べるほど巨大化した。
「プラズマランサー・ジェノサイドシフト・
≪
アインの言葉でユグドラシル目掛けて発射。翼を固められて身動きを封じられたユグドラシルに3種の雨が降り注ぎ。地面へと押しつぶす。
雷光と魔力光がユグドラシルを覆い隠す。
その煙の中から起き上がったユグドラシルは翼は完全に砕けていて石化されている根元がわずかに残っていた。これで空は飛べないだろう。
「うわ……スゴ……コダイもだけどユグドラシルも……」
前にいるアリシアから声が漏れていた。と言うかあんなのと同列にするな。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
ユグドラシルが叫ぶと石化された翼の破片や立ち上る煙等が魔力の粒子になって吸い込まれていき、砕かれた翼を一気に再生させた……そんなのあり?
「再生速度が速すぎる……煙も魔力にして取り込んでいる」
「というより前より強そうなんだけど……」
なのはが言った通り、新しいユグドラシルの翼は前のより凶暴に変質していた。
ユグドラシルが新しい翼を広げ飛翔、一瞬でこちらとの距離を詰めて頭上で見下ろしている。
「強化と言うより進化に近いなこれ……」
「そんな事より今は離れるよ!!」
アリシアに手を引かれてその場から一気に離れる、なのははフェイトに手を引かれていた。当然、ユグドラシルも此方を追ってくる。
「動きを止めないと。アクセルシューター!」
「ガンブレイズ」
手を引かれたまま、後ろに向かってなのはが誘導弾を撃つそれと同時にこっちも散弾を放つ……だがユグドラシルはそれを意に介さず追跡する。
動きを止めるはずだった俺のなのはの魔力弾は魔法ははユグドラシルに向かう途中で分解されて吸収された。
「取り込まれちゃった!?」
「如何やら小さい魔法は無駄に餌を与える見たいだな……」
ユグドラシルは更に加速してこちらに近づいている……
「さっきよりも速く……なのは、コダイもっと速く!」
「こ、これで限界なの!」
「イレイザーになれれば問題無いが……肝心のレイがお休み中だ」
フェイトに促されるが鈍重ななのはと高速には向かないユニゾン状態の俺達はこの速度が限界だった。
因みにソニックムーブを多重化すればかなり速くなるがその代り『
ユグドラシルとの距離は徐々に詰められて行く……
「よそ見してんじゃねええええええええええええええええ!!!!」
「私達を忘れるな!!!」
だがユグドラシルの後ろ側から肉薄する2つの影があった。
ラーテンフォルムのアイゼンを持ったヴィータとレヴァンティンに炎を纏わせたシグナム、2人の1撃がユグドラシルの後頭部に振り下ろされて動きを止めた。
「チッ!動きを止めただけで傷1つ無ぇのか!!」
ヴィータが顔を顰める。どうやら大したダメージは与えられなかった様だ。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
首だけを後ろに向けたユグドラシルが2人に吼える。
「こうなりゃもっとを強いのを「待て」シグナム?」
ユグドラシルが首だけをヴィータとシグナムに向けて吠える、アイゼンを構え直すヴィータにシグナムが肩に手を置いて止めた。何があった?
「……ヴィータ、今すぐここを離れるぞ。甲冑を見ろ」
「甲冑?……ってなぁっ!?甲冑に穴が開いている!?」
ヴィータだけじゃない、隣にいるシグナムの甲冑もまるで虫食いの様に所々に穴が開き始めそれが徐々に広がっていく。
「魔法が取り込まれるし、近くにいるだけでこれか……」
「これじゃあ迂闊に近づけねーよ!!」
悪態を付きながらシグナムとヴィータがこちらにやって来て、即座に甲冑を修復した。
「コッチの攻撃が効かない……と言うよりそれを上回る再生力と強化で意味が無くなっている」
≪では、ディ・レント・フォールはどうでしょうか主≫
「あれって自分以外の魔力を吸収するから結構邪魔になるしな……」
「と言うか絶対ここで使わないでよ!?それってもれなく共倒れする奴じゃん!!」
1度喰らった事のあるアリシアが物凄い剣幕で詰め寄ってくる。
「だけどあっちの攻撃も限定されている。素手か魔力の塊を吐き出すか……此処までがユグドラシルの攻撃範囲だ……結局ジリ貧だけどな」
だけどさっきのヴィータとシグナムの攻撃は動きを止めたし物理系は僅かに有効なのか?
魔力を吐き出すには少し溜めがあるから避けられる。間合いも巨大だがこれ位の魔法生物だっている危険なのは吸収能力だけ。
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア………
ユグドラシルが再び咆哮。次に起きたのはユグドラシル自体の変化だった。尾が一回り肥大化、長さも倍以上に伸び始めた。
――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!
尾がしなり、鞭に様に跳ね上がると空気を引き千切る風切り音と共に薙ぎ払われた。その間にも尾は伸び続けている。
「っ!レイジングハート、カードリッジロード!!」
≪
なのはがカードリッジを使いながらヴィータやシグナムより前にでて迫るユグドラシルの尾にバリアを展開する。
「こっちもだ。ディレイスペル・アウト」
≪プロテクション・パワード×3≫
俺もなのはの隣に行き。同じ障壁魔法を3枚重ねをして展開して尾を防いだ。
「尻尾が伸びた?!そんなのありかよ?!」
「相手はロストロギアだ!高町、トキガワ無事か!?」
ヴィータとシグナムは驚きつつもすぐにフェイトとアリシアの元まで下がった。
「くぅっ……ダメ!やっぱり取り込まれちゃう!」
「3枚重ねでもこれか……」
尾を防いだプロテクションは罅が入りそこから漏れ出る魔力を取り込まれ強度を失っていく。どうやら意思とは関係なく触れれば取り込めるのか、だとしたらこれ以上の防御は意味が無いな………
「距離を取るぞ、なのはタイミングは任せた」
「うん。皆気を付けて……せーの!」
≪≪バリアバースト≫≫
タイミングを合わせて、障壁を爆発させた。
「っ……バランスが」
距離は取れたは良いがこっちも吹き飛ばされた。流石に崩壊寸前の障壁でやったから衝撃がこっちにも来て僅かに聞こえた悲鳴だと、全員違う方向に吹き飛んだみたいだ。
――ボスッ!
「……無事か」
「ん……一応無事。ありがとう」
上下逆さまで吹き飛ばされてのが止まって、声が聞こえた下(正確には上?)を見るとザフィーラが片腕を俺の腰に回している……どうやらザフィーラの方に飛ばされて拾ってくれた様だ。
「生え変わるだけじゃない。体を変化させられるのか」
破損した部分を補強し修復。さらに状況に合わせて体を変化させる……本物の生物と変わらないな、速度は段違いだが。
「コダイ君大丈夫?」
「はやてか、ザフィーラのおかげで無傷。あっちも似たようなものだ。触れたりするのは勿論、近づくだけで魔法やバリアジャケットを取り込んでくる。防御も意味が無いな……」
「うん、さっき見えたで……後、逆さまで真剣に言っても説得力無いで?ザフィーラ離してやって」
「はい」
回された腕が離されて、体勢を元に戻す。
「如何やら結構飛ばされた見たいだな」
ユグドラシルと今の位置を確認する。
「ほかの皆はシャマルが見に行っとるで」
暫くは回復は無理か……祝風の書に入っていはいるが、攻撃に集中したい……
「もう1度最初の攻撃で…………は、無理見たいだな」
「そやね……強化されとるから同じ魔法は2度も通用せんと思う」
「もっと強い魔法を使えばいいがこちらがガス欠になる……出来ればユグドラシルがヘマして自滅してくれれば……」
カウンター狙うのも自殺行為だしな。
「コダイ君、ちょお耳貸して」
突然はやてが腕を引き寄せて、耳元で小さな声で話し始めた。
「―――ってのはどや?」
≪主、そういう魔法なら、召喚魔法で唯一あります≫
あれか、あの即禁止を喰らった召喚魔法……ユグドラシル相手には丁度良いか、目には目をというし。
「問題は、どうやってそこまで持って行くかだ」
「それはコダイ君の特技やろ、人の揚げ足取ったり、煽ったりは得意分野やろ?」
「相手は人じゃないんだけどな……言ったからには手伝えよ?」
「勿論や、任せとき!」
祝風の書を背中に仕舞い。今クロノ達が交戦しているユグドラシルに向かって飛ぶ。
「もう1つの方を頼むぞアイン」
≪はい、ナイトフェンサー!≫
飛翔中に広げた両手に通常の2倍もあるサイズのナイトフェンサーを2つ展開する。やっぱりユニゾン状態じゃないと無理な集束魔法の複数発動。
「ア・サンブル」
重ねて、ユグドラシルの半分程度の大きさになったナイトフェンサー・
――ギャリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
「これでも喰ってろ」
押し付けられたナイトフェンサーを止めるために掴んで止めようとするユグドラシルから大量の火花が散っている、時間稼ぎになればいいが……
「コダイ~!!!」
真正面から飛んでくるエル。すぐ後ろにはサクラとアンズもいた。
「無事で良かった~!」
「だから言ったであろう、そう簡単に姫は死なぬと!」
「と、コダイ様が吹き飛ばされて真っ先にユグドラシルに攻撃をしたアンズでした」
「サクラ言うな!!!」
自分のデバイスのエルシニアクロイツをサクラに突き付けるアンズ、対してサクラは何時もの表情だ。エルは目の前で元気にアピールしている……うんいつも通りだ。
「所でクロノは?」
「ここだ」
後ろの声に振り返るとクロノがデュランダルを肩に担いでいた。損傷は無さそうだ。
「収穫あった?」
「いや……先ほどまでマテリアルズと効きそうな魔法を試してみたが無理だった、あの様子じゃ本来使うはずのエターナルコフィンも効きそうにないな」
「だろうな……ミストルティンも翼を石化させるだけだったし」
となると可能性があるのははやての作戦だな。
「作戦は省略して指示だけ言うぞ………サクラ、エル、アンズは右脚、クロノは一緒に左頬を頼む」
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
ユグドラシルがナイトフェンサー・
それと同時に全員、位置についていた。
「では行きます。ブラストファイアー!!!」
「必殺!!光翼斬!!!」
「消し飛べ!アロンダイト!!!」
サクラが炎の砲撃を、エルが雷の斬撃を、アンズが闇色の砲撃を一斉にユグドラシルの右脚目掛け発動した。
「コダイ、こっちも行くぞ」
「分かっている『
クロノが構えたデュランダルを自分も掴み
「いくぞ!ブレイズカノン!!」
普段のクロノでは考えられない程の極大の砲撃をユグドラシルの左頬に向かって放つ。
これはジュエルシードの時フェイトの魔力に変換して封印させたのを思い出して戦闘向けに使ってみたんだが………何しろ最低でもオーバーSランクの魔力になるから、運用が上手いクロノでしか成功した事が無い……
マテリアルズとクロノの魔法は同時に命中。だけどこれが効くとは思って無い………本来の目的は体勢を崩させるため。
「重心を中央にその両端を正反対の同等の力で押せばどんなものでも崩せる」
――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
右脚と左頬に同時に強力な魔法を受けたユグドラシルは無理矢理体を横に寝かされて、そのまま地面へと叩きつけられた。
「準備万端や!皆戻ってきて!」
クロノ達と一緒にはやての方に向かうとはやては杖を掲げて魔力を溜めている。
「行くでコダイ君、アイン。夜天と祝風のコンビ技や!」
≪リインも頑張るです!≫
はやての足元には白のベルカ式魔法陣が展開した。
「俺もか……即興で上手くいくか?」
≪私達なら問題ないでしょう≫
俺の足元には黒のベルカ式魔法陣を展開する。
「まずは俺から………祝風の書、祝風の主が問う、全てに情無き答えを――――」
≪怒れ、祝風の嵐!!≫
「夜天の書よ、夜天の主が命ずる、眼下の敵を打ち砕く力を、今ここに!」
≪来たれ!夜天の雷!!!≫
ユグドラシルが倒れている地上に黒いベルカ式魔法陣、その真上の空に白いベルカ式魔法陣が展開された。
「遠距離殲滅魔法!…………えっと……コダイ君名前!」
「決めてないのかよ………これで良いだろ」
適当に思いついた物を念話で伝える。
「同時にいくで?せーの」
「「ナトゥーア・カタストロフィ!」」
地上から幾つもの竜巻が倒れているユグドラシルを打ち上げその先にある嵐を圧縮した巨大な球体に押し込み。空から落ちた巨大な白い雷撃が嵐の球体に入り込み、その内部で雷光と轟音を撒き散らし暴れ回った。
――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
「なぁコダイ君。さっきの名前ってどんな意味があるん?」
「……ベルカ語で『自然災害』って意味」
「ピッタリ過ぎるわ」
目の前の光景にはやてだけで無くそこに居た全員が頷いた。
アルクオン様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~