魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
「レイちゃ~ん!朝ですよ~!」
朝、用事からアースラに戻ると。俺とレイの部屋の前でアウトフレーム状態のリインが扉をノックしていた。
「レイちゃ~ん!早く起きてリインと一緒に朝ご飯食べましょう」
再びノック、だが返事は返ってこなかった。
「………ちゃんとご飯食べないと、パワーが出ないですよ~!」
今度は強めにノック……結果は同じだった。
「レイちゃ~ん…………レイちゃ~ん………レイ…ちゃ~ん………レイちゃ……」
何度も呼んで、何度もノックをする度に徐々に声が小さくなり最後には黙ったしまった………
「リイン」
俺が呼んで振り向いたリインは涙と鼻水で顔が歪んでいた。
「どーざま~………レイぢゃんが……グシュ……レイぢゃんがぁ~!!」
「………ほら、はやての所に行くぞ」
跳び付いて来たリインを抱き上げて、はやて達の所へ向かう………
ナナが死んで3日経った。あの時の事件を局員は公園に残っていた腕を見て、この前のロストロギア強奪事件と同一犯と考えている。そう勘違いしてくれると助かる。あながち間違っては無い……
シオンだが事情聴衆と保護のために管理局が用意したホテルを行ったり来たりの毎日で明け方に解放されて俺が家まで送った所だ。
そしてレイはナナが死んだ後、部屋に籠ったまま今日まで1度も出て来ていない………
「はやて、コレ」
「ありがとな……ほらリインも泣かんの」
食堂に着いて座っているはやての膝にリインを乗せると、はやてがリインの頭を撫でた。
「なぁコダイ……レイの奴大丈夫……な訳ねーよな」
俺の手を掴んで聞いて来た少し目が赤いヴィータ、いつもと違い表情が暗い……
ヴィータとリインだけじゃない。今ここにいる、なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか、サクラ、エル、アンズが同じように暗くなっていた。
「デバイスだから飢えは無いだろうが、あいつと1日以上顔を合わせないのは今まで無かったからな……」
ナナの事はレイが良く話していたので全員知っている……全員にはナナが死んだ事だけ話た。
「アタシも小さい頃に何時も一緒に居た犬が死んで、レイみたいに部屋に籠ってた事あったわ」
「うん、私も小さい頃に猫が………あの頃はずっと一緒だと思ってたから……」
流石のこれは何時までも慣れないよと声を揃えたアリサとすずか。
「私は物心付く前に両親が事故で死んで、その頃はよく分っとらんかったけど今なら分かる。あれは寂しいって気持ちやって」
はやてが膝の上のリインを抱きしめる、リインは肩が震えてまだ泣いている。
「コダイ君は大丈夫だったの?」
「ん?俺か?」
なのはが涙目で心配そうな顔でこっちを見てきた………大丈夫だった?
「コダイ君、昔両親が元から居ないって言ってたよね?大丈夫だったの?」
随分と昔の話を―――
「別に」
『あの子』から創られた架空の想像体だし……
それに私は『あの子』が居たから笑えて、泣けて、怒れたりできた。『あの子』がいない以上、私に感情なんてものはもう……
「トキガワ、帰ってきたのか」
「主、お帰りなさい」
この重い空気の中に入ってきたのはトレイを持っているシグナムとその後ろにいるアインだった。
「主はやて、これでよろしいですか?」
「ええよ、ありがとうなシグナム」
シグナムがはやてのテーブルに置いたのはシリアルだった。
「ほらリイン、少しでも食べな今度はリインが倒れてしまうで?」
「グスッ……はぃ」
はやてがシリアルをリインにゆっくりと食べさせている。
次にアインを目を向けるとシグナム同様にサクラ、エル、アンズにシリアルを目の前に置いていた。
「お前たちもだ。レイと同じ位食べているのに、このままでは体が持たないぞ」
「うむ………そうだな、もしレイが戻ってきて我らがこの有様なら笑われてしまうな」
「うん……いただきます」
そう言って両手を合わせて食べ始めたアンズだけど、いつもの勢いが無い……後に続いてエルも俯きながらモソモソをシリアルを口に運んでいる……
「そうですシグナム、この後私達と模擬戦をしませんか?」
「私としてはその誘いには乗りたいが今レヴァンテインをメンテナンスをして貰っている。先日の模擬戦で激しく消耗して……すまないな」
シグナムがサクラの模擬戦の誘いを断った……シグナムが言った様にレイが倒れたからずっとエル、アンズと一緒に模擬戦をしていた。
休憩中にサクラから聞くと気を紛らわせているらしい……
「サクラ、今度は私としようか」
今までで一言も喋らなかったフェイトがサクラの傍にやって来た。
「………いいのですか、フェイト?」
「うん。私もサクラ達がどれだけ強くなったか見て無いから……ほら、一緒の調査も分隊だったし。その後はアリサとすずかの護衛だったでしょ?……だめ?」
「いえ……元より誘ったのは私ですし断る理由はありません」
「え?今日はオリジナルが相手してくれるの?」
ずっと俯いていたエルが顔を上げてフェイトの顔を見た。
「まあよい……王たる我の実力を存分に見せてやろうぞ」
アンズは座ったまま腕を組んで胸を張った。
「うん……それじゃあまずはちゃんとご飯食べないと」
フェイとにそう言われた3人は再び食事を再開する……少しだけ明るくはなったのか?
「あの3人は私達に任せてよ」
肩を叩かれた方を見るとアリシアが肩に手を置いていた。
「フェイトは放って置けないんだよ。大事なモノを失って壊れていく人を間近で見てたから」
「大事な………あ」
思い出したのはプレシア……正確にはプレシア・クローンだった。本物を監禁してフェイトとアルフを騙し、アリシアを生き返らせるためにロストロギア『ジュエルシード』を回収させて、時には虐待をしていた『P・C事件』の黒幕、プレシア・テスタロッサのバックアップのクローン。
時の庭園の中でクローンは『自分は本物のプレシア自身、自分がやっていた事を本物もいつかすると』つまりこれは本物もクローンの道を辿っていた可能性があると言う事。
「その時は私は死んでいたから見ていないんだけど。フェイトにとってもそのクローンは今まで育ててくれた母様でもあるから………それじゃあ」
アリシアはもう一度俺の肩を叩いてからフェイトの元へ向かい、そのまま食堂を出て行った。
それと入れ替わる様にクロノがこちらにやって来た。
「すまない。コダイを借りたいんだが」
「誰にも借りられて無い………なのは、レイに何かあったら連絡頼む。はやては手を外せそうにないから」
「うん、分かったの」
一言なのはに伝えて、クロノと一緒に食堂を出た。
「さっきあの3人とフェイト達とすれ違ったんだが」
「模擬戦……気を紛らわす為の。で、俺に何か用なのか?」
「ユーノが先日貰った情報で気になることがあると」
「あの情報ね………」
その情報は俺も分からないんだよな。だって貰い物だから……
クロノに連れられて着いた場所は前回と同じ集合場所……だけど前回みたいな人数が居ないためやや広く感じる。
「それでユーノ、気になることって?」
「うん、まずはもう1度見てみて」
ユーノが渡した折り畳まれた紙を受け取り、開いて中身を再び確認する。その紙にはこう書かれていた……
――星の核に産まれし龍 龍は全てを喰らい その身を太陽の如く
「いつ見ても意味不明な文だな」
この紙はナナが死ぬ際に残した数枚の紙の内の一枚だ。ナナが『予知』の能力で見たものをこの紙に残したのかは死んだ本人しか分からない。
「この紙はコダイが直接貰ったんだよね?それを踏まえて仮説を立ててみたんだ」
そう言ってユーノは紙の前半の文を指す。
「まずこの『星の核に産まれし龍 龍は全てを喰らい その身を太陽の如く赫赫と燃やす』これはロストロギアの様な物の在りかを示しているのかも。次の後半の『龍は闇の呑まれ糧となる その力はまさに怒り狂う力』―――これは恐らく警告」
「警告?」
「コダイに直接渡したのならね。コレはコダイに対する警告文……簡単にまとめると『ロストロギアをコダイが取り込んで暴走する』かな?」
「またか……これで3度目……いや、ジュエルシードは2度に分けていたから4度目か?」
今思えばレリックを取り込まなかったのは奇跡なのかもしれない。
「そんな悠長な事も言ってられないよ。コダイが今度取り込む可能性のあるロストロギアは『星の核に産まれし龍』………つまり世界1個分のエネルギーを取り込む事になる。今度ばかりは運とか奇跡とかでどうにかなるレベルじゃない」
「そんな物取り込みたくも無いな……警告されているんだ、そのロスロトギアに触れなければ問題無いだろう」
「だけど今回の事件はロストロギアが密接しているから気を付けて。そのロスロトギアについてはそれまでに調べておくから」
死体に反応がないロストロギアに『星の核に産まれし龍』のロストロギア………謎が増えるばかりだな。
「分かった、俺も頭に入れておく」
「うん、それじゃあ僕は無限書庫に戻るよ。レイに皆が心配しているって伝えておいて」
「分かった。引き続き調査よろしく」
そう伝え終えるとユーノは無限書庫に戻っていった。
俺ももう1度レイの所に行ってみるか……クロノと今後の事を簡単に聞いてその場を後にした。
「さて……これをいつ見せれるかだな」
部屋に向かう道中、コートから取り出したのはナナが残した数枚の紙の内2枚……中身は一応確認した。
「『予知』か『読心』か……………ん?なのは?」
「あ、コダイ君」
レイが籠っている部屋の前でトレイを持っているなのはを見つけ、紙をコートに戻した。
「どうしたんだ?それに……それは?」
トレイで運んでいるマグカップの中身はコーンスープだった。
「うん、レイちゃんお腹空いているだろうけど、いきなり食べたらお腹壊しちゃうから消化の良い物を持って来たんだけど………」
「反応が無かったんだろ?」
「うん………」
リインも呼んでみたけど反応が無くて泣いてたしな。
「迷子の時といい……心配掛けすぎだろ」
「………逆……何じゃないかな?」
「逆?……何が?」
「うん、迷惑を掛けたくないから……心配させたくないから籠ったんだと思う」
なのはの言っている事がいまいち理解できなかった。
「私が小さい頃、お父さんが大怪我して入院していた事は知っているよね?」
「子供の頃に聞いた」
「皆忙しくて、私も手伝いたかったけどそれが出来なくて……誰にも迷惑を掛けたくないから1人でいよう、いい子でいようって……たぶんレイちゃんはその頃の私と似ていると思う」
どいつもこいつも賢すぎるだろ……当時の俺なんかただ殺すだけしか頭に無かったぞ?そんな難しい事考える暇なんて無かったぞ……
「………スープ冷めたら勿体無いし開けるか」
扉を開いて中に入る、明かりは付けていなく、真っ暗になっている。
「レイちゃ~ん、ごめんね入るよ~」
後からこっそりと入るなのは。
「あれ?……レイちゃん寝てる?」
「それは無いだろ……いつもご飯の匂いで起きてくる奴だし。スープはデスクに開いたところに置いてくれ」
取り敢えず一番居そうなベットに近づき被っている布団を捲り上げる。
暗い空間の中、一点を見て固まった……
「あれ?どうしたのコダイ君……暗くて見えないよ」
なのはに言われてベッドの傍の明かりをつける……
「えっ!?」
なのはがベッド見て驚いていた。
そのベッドには誰も居なかった………
湖月 秋博様、冷たいストラップ様、アルクオン様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~