魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
ターエンは俺から抜き取ったハンドグレネード付き左腕に被爆したが。そう簡単に死んでないだろう。と言うか死んだらとんだ噛ませ犬だしな。
「今縄切るから少し待っていろ」
「そんな事より腕!腕がすっぽ抜けた!?」
「落ち着けアリシア」
「コダイが落ち着き過ぎ!!痛くないの!?」
「いや、痛いも何も」
俺は服の中に隠していた左腕を袖から出す。
「え?………生えた?」
「あれは偽物だ」
頭のキレるタイプは目的の達成する寸前の油断を狙う事がある。監禁場所は不意打ちできる開けた場所―――つまり校庭の体育倉庫だ。
あそこまでコケにしたんだ、頭の中は沸騰寸前だ。だから対策のために教室で最初に殺した女から腕とかを拝借した。
「逃げるのはもう少し後だ。リンディが騒ぎに駆けつけるか俺があれを始末するまでここで大人しくしていろ」
全員の縄をナイフで切りながら小声で伝えた。
ハンドグレネードはもう使えないし、銃弾も限られている、残っているのは………数えても仕方ないか。
「そこから出るなよ?」
折角の人が殺せるのに邪魔されたくないからな。
倉庫から吹き飛んだターエンを追った。
恐らく吹き飛ばされた筈の校庭に向かうと案の定ターエンは生きていた、さすが転生者。
そうでなければが態々殺しに行く意味が無いしな。
「爆発を受けても無傷……一体何をしたら死ぬんだ?と言うか殺せるんだ?」
死体を率いるターエンは無傷だった服には煤1つも着いていない。
「…………ふぅ」
それに対してターエンは深く息を吐いた。
「流石この世の悪をやり尽くした殺人姫だわ……力を手に入れても互角だなんて……」
「カミサマに摩訶不思議な神通力を恵んで貰って悦に入っている奴なんてそこらの
あれ?これって俺にも当て嵌らない?転生したし………いや、あの
「これでも死体を操るのは結構骨が折れるのよ?」
乗ってこないな。
時間が空いたから冷静になったか、このまま逆上させて自滅させようと思ったのに。
しかしこいつの―――正確には転生者達の能力が分らない。ターエンは望む力と言ったつまり魔法は共通でそれ以外に
この際だ、殺す前にそのネタを明かすとするか。
「少し本気を出すわ――」
「そう、ならこっちはもっと手を抜いてやる」
さて……こういうタイプは隠し玉の1つや2つ持っている筈だ。何が来るか―――
――ピキッ
後ろ?………何か来る。
「グルゥアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
振り向くと地面突き破って飛び出したのは、目測2メートル以上の筋骨隆々の大男が飛び出した。
「………おーい、俺が殺した奴限定だろ?思いっきり初対面なんだけど」
こんな強烈インパクトの奴忘れそうにないんだけど。
「それはそのままじゃないわ。作るのに時間がかかるけど、すべての面に置いて強化しているから今までの死体よりは役に立つのよ?それ」
「説明どうも」
――ガゥン!ガゥン!
躊躇いも無くデザートイーグルを頭を狙い撃つ――
だが大男は弾が当たる直前でその場から消え、直後には俺の後ろを取っていた。
「弾をよけっ……というよりどれだけ速いんだよ」
「アアアアッ!!!」
後ろに飛ぶも再び背後を取られ右腕を掴まれて持ち上げられた。
「言ったでしょ?すべての面において強化されたって」
ターエンは指を鳴らし地面から今度は普通の傀儡死体を出現させ、両足を掴んで拘束した。
「確かアナタって『
手を掲げると目の前を覆い尽くす程の魔力弾が形成される。と言うかターエンが物凄い愉しそうな顔してるな。
「何発目で死ぬのかしら………」
一気に発射される…………あえて訂正させてくれ……何発で死ぬのでは無くて、何回死ぬのかと言う事を。
「けど………当たるつもりは一切無い」
――スポン♪
腰を落とすと右腕が抜けた。実はこれも拝借した内の1つ、右腕をガッチリ掴まれているから当然服も上着も脱げる。
それを構いなしに今度は前に倒れて、地面に手を付き勢いよく倒立し足を掴んでいる傀儡死体を持ち上げて片手でズボンのベルトを外して、迫りくる魔力弾に向かってズボンごと投げ飛ばす。
――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
俺の身代わりになった傀儡死体は魔力弾を全身に浴び、爆発した。
――ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
「クッ……まさか服を脱いで抜け出すとは……だけどもうその手は2度と……っ!!」
ターエンが目を見開く。
まず俺の今の状況を教えよう、傀儡死体の拘束から抜け出すために制服を脱ぎ捨てた。じゃあ今は下着もしくは全裸か?どちらも違う正解は……
「その制服……いつの間に着替えたのかしら?」
しっかり制服を着ている、しかも女子の。
「服の下に着てた。やっぱり
これも拝借してきた物の1つ。下はイレイザー同様ショートパンツだ。
「女の子の服を着てようやくアナタも本気って訳ね――」
「着替えただけで強さが変わる訳無いだろ、それに女装はオシャレだ」
「違うわよ!!」
ヤケクソ気味でターエンが大男を含めた傀儡死体をターエン自身の周囲に転移させた。
「さっきみたいに爆弾でも吹き飛ばして見なさい!ここにいる死体に付けた装置が爆発してせっかく助けたあの子がどうなってもいいのかしら?」
「どうでも良い」
軽く返答した。
「別に、俺は貴様のゲームに乗ったつもりは無い――――それに人質に何もできないのは貴様自身が良く知っている筈だ」
「ッ――――!!!」
その答えにターエンの顔が酷く歪む。実に愉快だ……
縄は切ったし逃げる準備は出来てるしな。その気になればいつでも逃げれる。
「この瞬間、この時、私以外の人間に気を回せると思ってる?だとしたらとんだ大物ね」
ターエンが
もしもターエンが死体なり魔法なりで人質を殺すつもりならその隙でターエンを殺すには充分ね。
「それに―――1度でも戦った敵に私が何も対策をしないと思う?」
私は服の中から今までとは違う銃を取り出して、さっきまで俺を掴んでいた大男に銃口を向けて引き金を引く。
――キュッン!!
「ついさっき弱点も知ったし」
弾は大男の顔に当たり頭部だけで無く上半身半分も抉り飛ばし、大男を崩れ落とした。
「この死体についている装置は壊すと中にあるロストロギアが暴走して爆発する仕組みよね?更に言えばあの装置はただ人が殴っただけでも爆発するぐらい脆い素材。なら話は簡単よ、爆発す間も無く装置ごと死体をブチ撒ける……これでね」
見た目は大口径の散弾銃のような外観、重心に付けられた独特の照準器。
「M79 グレネードランチャー。動く死体には打って付けの兵器よ」
ストック上部のレバーを親指でひねり銃身を倒す、中にある空薬莢を抜き新たに弾を入れて銃身を戻す。単発式で連射は出来ないけど。死体相手なら手間取っても大丈夫よね。
「次はこれよ」
――キュッン!!
狙いをターエンの右の集団に向けて放つ、弾は射線上の傀儡死体の頭を装置ごと抉り飛ばして。
――ゴォウ!!
爆炎を撒き散らし、周囲の傀儡死体を燃やし始めた。
「焼夷弾―――装置ごと壊さなくても操る死体を消し炭にすれば装置はそのまま残る、金属は~……燃えないわよね~♪」
銃口を上に向けてレバーをひねる、そうするとわざわざ熱い空薬莢に触る事無く重力に従って空薬莢は落ちる。再び焼夷弾を込める。
――キュッン!!
今度は左に向かって撃つ。
――ゴォウ!!
焼夷弾が炸裂した場所から爆炎が起こり、周囲の傀儡死体を燃やし、その近くの死体も燃やしと徐々に連鎖される。
「へぇ~死体だから火付き悪いかと思ったら懐かしい燃え具合じゃない?それとも貴女は今度は私にパズルゲームをやらせるつもり?4つ以上つなげたら消える奴の」
「クッ――いつまでふざけるているつもりなの!?さっきから死体ばかりを狙って……何のつもりよ!!!」
あえてターエンを狙わず他の死体だけを焼き払っていたらターエンが痺れを切らして声を荒げた。
「そうね~そんなの素手で破壊できるし爆発何て痛いだけだし。強いて理由を挙げるとそれでは簡単に決着がついて面白くも無いし~」
グレネードランチャーを脇に抱え、色の違う弾をいくつも取り出してまるで吟味する様に眺める事にする。
「私は楽しみたいの。貴女達が私に復讐しようがどうでも良いのよ、ただ貴女達が手に入れた力がどういう物か楽しみだし貴女達に対する興味はそれだけ―――これにしようかな~」
「ッ――――」
「あれれ~?もしかして気に障った?ごめんね~私ってばつい心に思った事をそのまま―――あれ?これって謝って無い様な……」
そう言いながらも、選んだ弾を込める。
「それに~……ねぇターエン♪貴女何か勘違いして無い?」
「……勘違い?」
私がまるで親友に話しかける様に言った言葉に今までとは低い声で答えるターエン。うわ、これメッチャ怒ってるテレビでみた激おこだよこれ。
「――――1度私に殺された人間風情が私に本気を出せると思っているの?」
グレネードランチャーをターエンに向けたと同時に引き金を引いた。
――キュッン!!
「っ―――私を守るのよ!!」
ターエンの号令により、燃やし尽くされた残り少ない傀儡死体が前に集まり盾となった。そして…………
――グシャッ
「アアア……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
絶叫に近い悲鳴を上げるターエンが居た。それの直後に死体が糸が切れたように倒れる。遮っていた傀儡死体が無くなるとそこには右目を手で押さえているターエンがいた……どうやら、その怪我で集中力が切れて操れなくなったようね。
小さくてよく分からないが押さえている指の隙間から小さな針が見えている。
「フレシェット弾。簡単に言えば矢状の散弾よ、と言っても?貫通力はライフルを遥かに超えている代物だけど」
なるほど……死体を操るには集中力と魔力が必要で、操作と防御は同時に展開出来ないみたいね。あの時は爆弾で防ぐより魔法を使った方が堅実だし……
「けど残念だったわね?綺麗に穴が開いたら似合うピアスでも選んであげようと思ったのに……安心して?私こう見えても周りからセンス良いって褒められるから。お姫様にお任せってね」
「何がお姫様よ……化け物め!」
右目から流れ出る血を押さえながら私を睨みつけるターエン。
「それはそうよ、だって殺人姫は
他にも色々あったな~『白い死神』とか『
「今日はこれ位にしましょ……良いわよ帰っても」
グレネードランチャーを下ろして、手で虫を払う仕草をする。
「何ですって―――?」
「だから、帰っても良いって言ってるの。その傷治してまた来て良いわよ」
逃がすには強襲隊としても意味がある。転生者たちは少数で管理局に突撃して撤退出来るほどの実力の持ち主、法的に拘束しても脱走なり他の転生者が連れ戻しに来たらそれこそ被害が増える。
どうせなら人知れずこっそり殺さないと。
「あ~それと、1つアドバイス。私に一矢でも報いたいのなら人間でもやめれば?そうすればようやく対等よ」
「ッ――――このっ!!」
ターエンが怒りの形相で魔力弾を形成してそれを自分の周囲の死体に打ち込んだ。
「へ?ちょっとそれ―――」
後ろに飛んで回避。
その直後に閃光、そして爆音。私とターエンが挟んでいた動かなくなった死体の爆発が視界を防いだ。
「随分と派手な逃亡………だな」
光が収まり周囲を確認するとターエンと死体も綺麗に消え去っていた。
この時ようやく口調が素になっていたのに気付き、通常に戻した。
結界が晴れた空は夕暮れでは無く、もう日が沈み始めていた。
「でもまあ、これで1人の能力が分ったし……とりあえず、連絡来るまでここで待っているか」
俺は、レイ達が居る倉庫に戻っていった。
「ちょっとコダイ君それ!」
倉庫に戻るとなのはが驚いて俺の手に持っている物を指した。
「ん?グレネードランチャーがどうかしたのか?」
「名前言われても分からないから―――」
「と言うかそれ質量兵器!」
「心配するなフェイト、質量兵器の主な基準は『火薬や化学など魔力によらず大量破壊を生み出す兵器』だがグレネードランチャーはゴム弾や催涙弾など暴徒鎮圧用に作られているのがあるから例外だ」
「え?そうなんだ、なら……」
「いやいやフェイトそれ以前に地球じゃ銃刀法違反!」
「問題ないぞアリシア、許可書(偽造)も貰っている、ホラ」
「あれ?……じゃあいいのかな?」
「そんなブツより何でいつの間に女子制服を着とるのかにツッコまんかーい!!」
「女装はオシャレだはやて」
………こいつ等攫われたんだよな?
「アタシ達、攫われたんだよね?なにこの空気」
「あはははは……でも暗いよりは良いんじゃないかな?アリサちゃん」
なのは達の隣でアリサとすずかが疲れている様子だった。
「すぅ……すぅ……ん~もうたべれにゃいよ~ぅ」
………レイはアリサの膝枕で定番の寝言を言っている。
M79 グレネードランチャーはバイオハザート2,コードヴェロニカやターミネーター2にも出ています。
桜日紅葉雪様、Lullshare様、アルクオン様、零崎 式様、由伸ファン24様、不屈の心様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~