魔法少女リリカルなのは~ある転生者の新たな世界~ 作:メガネ
レイとリインメインのお話。コダイ達が中学2年の時のお話です。
「いいか?車に気を付けるんだぞ?」
「OK♪アイン!」
こんな会話を玄関前でしているアインとレイ。
いつもと違うのはレイが黒いウサギのバック(コダイ作)を背負っている。
「あんまり寄り道はせずに真っ直ぐな?」
「ダイジョーブ!」
元気よく手をあげるレイ。
こうなったのは少し前までに遡る―――
「は?………このまま学校ですか?」
「そうだ、昨日の仕事が長引いてな」
早朝、何時もコダイが起きる時間に合わせて起床して身支度を済ませるとコダイから通信が入った。
「そのまま学校へ行く事になった。朝食については―――」
アインはコダイに朝食について簡単な説明を貰った。
日に日にスキルは上がっていると自覚しているアインだが、相手があの大食い5人である……未だに大量生産は不可能だ。
「はい、分りました。では道中お気をつけて」
「分った――――と言っても屋上に転移するだけだけどな」
………その事を朝食に起きたレイ、サクラ、エル、アンズ、エリオの5人に伝えた。するとエリオが―――
「って言う事はコダイさんのお弁当はどうなるんですか?」
と言うと、その流れで話は進み弁当を届けようという結論になった。
アイン、レイ、サクラ、エル、アンズ、エリオの6人はジャンケンをして勝った1人が弁当を届ける事になり、レイが見事に勝利。弁当はアインが作った物だ。
「いってきま~す!」
元気よく走って行くレイ……
アインはそれを見えなくなるまで見送った。
「大丈夫だろうか……」
「大丈夫ですよ。地図も持たせているんですよね?」
見えなくなった所で深く溜息を吐いたアイン。
その後ろ姿を見て心配そうにエリオが隣にやって来た。
ジャンケンに勝利したレイだが。そのレイはトキガワ家中でトップの迷子率をほこる、ジャンケンで勝った奴と言った手前変更は出来ないのでアインが学校までの道を地図に書く事にした。
幸いこの家から学校までは距離は長いが2,3回曲がれば学校に着くのでレイにも分り易いだろうと……
「僕も見ました。とても見やすくて目印のお店の看板も書いていたし問題無いですよ」
「そうだな、あそこまで綺麗に書いたから迷う訳―――――っ!!」
その時、アインはある重大なミスを犯した事に気づいてしまった。
レイの為に書いた地図は確認の為に歳の近いエリオに1度見せて確認して貰った。問題は無かったので大丈夫と思ってしまった……だが気づいてしまった。
「し――――――しまったああああああああああああああああああああああ!!!」
エリオとレイこの2人にはある決定的な違いがあった事を―――
トキガワ家の玄関前でアインの絶叫が木霊した……
「~♪……よし!ここまでは真っ直ぐだったから迷わなかった!」
レイの目の前には3方向に分れた横断歩道。鼻歌を歌いながら順調に進んでいた。
「えっとここから―――」
レイはアインに貰った地図を見る……手書きだったが、綺麗に線が書かれ次をどこで曲がればいいかと簡単な説明書きもあった。これも当然読みやすい――――――
「……………………漢字が読めない」
だが、レイにはそれ以前の問題だった……アインが気付いたレイとエリオの違い……頭の良さだった。
エリオの場合は保護者のフェイトとアリシアの教育によりスポンジの様に知識を吸収していった。
そして……忘れがちだと思われるがレイは右と左を未だにお箸とお椀で覚えている。過去に1度コダイが教えたが数日後にすっかり忘れていた……
つまりレイは物凄く頭が悪かった……簡単にいうとエース級の馬鹿なのだ。
「うゆ~……どうしよ~………あっ!分らなかったら人に聞けばいいってエリオが言ってた!」
それを思い出したレイは早速人を探す。対象はコダイ達と同じ学校に行く人、つまりなのは達と同じ制服を来ている人だが……
「ぅ~……見つからにゃいよぉ~……どうしよ~」
今の時間帯は完全に授業時間なのでいるはずもない……誰も見つからず泣きそうになるレイ――
「レイちゃ~ん!!」
「うゆ?」
泣きそうな顔で後ろを振り返ると、白いウサギのバック(これもコダイ作)を背負ったリインがコッチに向かって走っている……
「………リイン?」
「レイちゃ~ん!」
「………リイ~ン♪」
さっきの泣き顔から笑顔になりリインの元に駆け寄る。
「レイちゃ~ん♪」
――ぎゅ~♪
「「わ~い♪わ~い♪」」
抱き合ってはしゃぐレイとリイン。
「レイちゃんはどうしてココに居るのですか?」
「コダイにお弁当を届けるの!」
「レイちゃん1人でですか?偉いですね~!ナデナデ~♪」
「にゅ~♪」
リインに頭を撫でられて目を細めて変な鳴き声を出すレイ。
「奇遇ですね~実はリインもはやてちゃんにお弁当を届ける所なんですよ~」
リインが自分のバックから可愛らしい風呂敷で包まれた弁当箱を掲げた。
「お~きぐ~!はやてもお仕事?」
「い~え、はやてちゃんはお寝坊さんですよ~」
リインはこうなった経緯をレイに説明し始めた。
今日珍しくはやてが寝坊して慌てていて弁当は作ったが鞄に入れるのを忘れたらしく、それを届ける事にした。
………ちなみにリインはヴィータとジャンケンで勝ったらしい
「でも~私漢字読めないからここから分んなくなっちゃった~」
「ん~………レイちゃん地図を見せてください」
「うゆ?……はい!」
レイに地図を貰ったリインはじっくりとソレを見る。
「コレはねーさまの字ですね………コッチです」
ビシッ!と効果音が出そうな勢いで前の横断歩道を指した。
「分るの!?」
「ふふ~ん♪リインはレイちゃんよりおねーちゃんなので漢字が読めるのです!」
「すっご~い!!」
大きな目を更に大きく見開き、目を輝かせるレイ。
実はレイの方がリインより早く産まれたが精神年齢や実体化としてはリインの方が年上である。
「では行きましょうレイちゃん。あ、横断歩道は手を上げて渡りましょう」
「OK♪」
2人は手をつなぎ、空いてる手を上げて横断歩道を渡り学校へ向かって行った………
それを見ていた周囲の人たちはとても和んだとか……
「はぁ~………」
授業の半分が終わり昼休みの時間、はやてが机の上でくたびれた様に突っ伏していた。
「どうしたの?はやてちゃん……」
それを見たなのはが心配してはやての肩を揺する。フェイト、アリシア、すずか、アリサもはやての席に集まっていた。
コダイは我関せずと言って感じで置いていただけの授業道具を片付け始めた。
「――――お」
「お?」
「お弁当………忘れてもうた」
はやての呟きに周囲の空気が一気に緩んだ。
「お弁当を忘れる何てらしく無いわね?」
「それがなぁアリサちゃん……お弁当はちゃんと作ったんや……けど入れるの忘れてもうた」
「それ自業自得じゃん」
「うぅ~」
アリサの歯に衣着せぬ物言いに更に机に沈んだはやて。
「何やっているんだ?……これから狸でも捌く「誰が狸や!」お、随分活きが良いな」
そこに片付けを終えたコダイが輪に入るや否や物騒な事を言い出して遮る様にはやてがツッコミを入れた。
「と言うかアンタ話聞いて無かったの?」
「全く。どうせ何か忘れたんだろ?」
「弁当よ寝坊して入れ忘れ」
「自業自得か」
アリサから聞いたコダイがアリサと同様の答えにたどり着いた。
「……あれ?コダイ君、お弁当は?」
その時、すずかがコダイが手に何も持っていない事に気付いた。
「ん?今日は無いな」
コダイはいつもの様に何事も無いように答えた。
それを聞いてたはやてが顔を上げて表情を明るくする、まるで仲間を見つけたかのように。
「勘違いするな。こんな自業自得とは違って仕事場から直接来たから無いんだ。アインにはそう伝えたし」
「裏切り者~!こうなったら売店行ってしょぼいパンだけ残して買占めたる~!」
はやてが突然立ち上がり腕で顔を隠して泣き真似をしながら教室を出て行く……
「裏切りって……そっちが勝手に味方になった気でいただけだろ……」
出て行った先を見ながらコダイが呟く。
「と言うか良いの?速く行かないと良いの無くなるよ?……はやての事だから買い占めないと思うけど。よかったら少し分けてあげるけど」
「行く気がしない。別に1食抜いても問題無いし」
フェイトが自分の弁当を持ち上げてコダイに見せる。コダイはそれを手で制して断った。
「駄目だよ~ちゃんと食べないと大きくなれないよ~」
フェイトとは反対側からアリシアがコダイに抱き着いた。
「………ほぼ毎日3食でもこの体型を保っているが?」
「あ、何かゴメン」
「別に気にしてない」
バツが悪そうな顔をしてコダイから離れるアリシア。
コダイの身長は中学1年の頃から1.5cmしか伸びて無かった。
――キャー!
――……ゆ~!!
「何だ?廊下が一気に騒がしくなったぞ?」
今は昼休みの時間帯で廊下に生徒がいて騒がしくなるのは当然だが、それにしても度を越していた。
やたら女子の黄色い声が目立つ……それにコダイの耳は妙に聞き慣れた悲鳴を捉えた。
「コダイ君!」
そこにはやてが扉を開け放ち戻って来た。
「ちょいこっち来て!色々厄介な事が起きた!ウチらの家族ぐるみで!」
「………ああ、何となく分った。ちょっと拾って来るから先に屋上に行ってくれ」
はやての言葉にようやく現状を把握した。なのは達にそう言ってからはやての後に続き廊下を出ると………
「カワイイ~!!」
「ねぇねぇ!何処から来たの?!」
「誰かの親戚の子かな?」
「このバック可愛い~…何処で売ってるの?」
女子の大群が廊下の通路を占めていた。その中心にはコダイの予想通り……
「うゆ~!!」
「前にすすめませ~ん!!」
レイとリインが抱き締められ、頭を撫でられ、頬擦りされたりと揉みくちゃにされていた。
「何であいつ等が……」
「それはこっちが聞きたいわ……」
その光景を見て立ち尽くすコダイとはやて……
「あ、はやてちゃ~ん!!」
「コダイ~!!」
リインがその2人に気づき女子たちの拘束を振りほどきはやて抱き着いた、レイもリインに続き振りほどきコダイに向かって飛びついた。
「リイン?!何でここに………」
「はやてちゃんのお弁当を届けに来ました!レイちゃんと一緒に!」
「救いの天使がここにおる~!!」
「うぅ~くるしいです~」
感極まったのか……それとも空腹でおかしくなってしまったのか、はやてがリインをキツク抱き締めた。
「コダイ~!あのね!リインが漢字読んでくれたから迷わなかったよ!」
一方レイはコダイの傍で小さく跳ねながら、期待を込めた眼差しでコダイを見上げる。
その眼を見てコダイは慣れた感じでレイの頭を撫で始める。
「ああ、言うの忘れてたな………ありがとうレイ。ちゃんとリインにもお礼言ったか?」
「にゅ~♪うん。そしたらリインが私と学校に通った気分になって嬉しいって……かようって何?」
「学校に行く事を通うと言うんだ」
「なるほど!」
納得した顔で手を叩くレイ………だがすぐ忘れるだろうなとコダイは思った。
――ドドドドドドドドドドドドド!!!
大体の女性は可愛い物に目が無い……青みがかった銀髪に幼いながらもスラリと伸びた手足は妖精のような神秘さを醸し出すリイン。
小さな体に誰もが羨む早熟したボディラインを持ち、穢れの知らない人形を彷彿とさせるレイ。
そんな美幼女とも言える2人があんな愛くるしい仕草をしている。
その光景をみて痺れを切らした女子の群れがコダイとはやてに向かった。
「はやて、逃げるぞ」
いち早く危機を察したコダイはレイを片手で抱えてはやての手を取った。
「そやな……ってなぁ?!」
はやても空いた手でリインの腕を掴みここから避難しようとしたが。女子の群れに回り込まれてしまった。
「囲まれたな……フットワークの良さは男子以上だな」
普段、本人的には意味も分からなく男子に追われ慣れているコダイはこの女子の行動の速さに少し感心していた。
「その子達って八神さんとトキガワくんの所の親戚?!」
「名前から外国人っぽいけど何処からきたの?!」
「もしかして2人の子供!?」
そんな呟きも知った事かと女子たちはコダイとはやてに群がる。
「どうすればええんやろ」
「………多分もうすぐ解決すると思うぞ?」
「え?」
女子とのイモ洗い状態の中でコダイは何時もと変わらず無表情ではやてに答えた。
それに呆けたはやて、その直後に―――――
「いい加減にしなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
アリサの怒声が響いた。その後、アリサによって女子の群れは数分もしないうちに無くなった……
それ以外にも不安と恐怖で泣きそうになったレイとリインを見て罪悪感が半端なく出て一斉に平謝りをした女子軍勢だった。
「不特定多数に追われる怖さが身に染みてよ~分ったわ……」
徐々に散っていく女子軍勢を見て肩の荷が下りた様に息を吐いたはやてだった。
質問会を終えてレイとリインを連れて足早に屋上に向かったコダイ達。
「はい、はやてちゃんのお弁当です!」
「ありがとな~リイン」
「コダイ、はい!」
「ありがとう」
リインとレイがそれぞれのバックから取り出した弁当をはやてとコダイが受け取った。
「あ、そう言えば2人の分は?」
弁当を渡された時に、思い出したようにすずかが言った……そう言えばそうだな。
「大丈夫です!ちゃんとリインの分もあるです!」
リインはバックから小さい弁当箱を取り出す。
その瞬間、コダイとレイを除くなのは達に旋律が走る。まさか……そんな事は…………
「遊びに来たリーゼアリアに作ってもらいました~」
それを聞いて一気に安堵するコダイとレイを除く一同。八神家ではやてを除き料理が出来るのはシャマルのみ、だがその腕は全員が知っている………悪い意味で。
「私もあるよ~!」
そう言ってレイがバックから取り出したのは、コダイより大きい弁当箱。
これを周りから見れば弁当が逆なのでは?と思われるがなのは達は知っている……このレイが見かけの3倍以上は食べる事を……
「レイちゃんは本当に良く食べるよね……」
「何処に入っているんやろ……」
その弁当を見てなのはとはやてはレイを……正確にはレイの胸を見ていた。
「あ、これでも少ないぞ?この大きさでおかずと主食を2段にしないと」
「………食べる量増やせば増えるのかな?」
「……それは、その下が増えるフラグやなのはちゃん」
コダイの言葉に俯きながら自分の胸を確認し始めたなのはとはやてだった………
「うゆ?なのはとはやてどうしたの?」
「触れない方が良い。早く食べるぞ」
「うん♪……せ~の」
「「「「いただきま~す!」」」」
全員手を合わせて、食べ始めた。
「おいし~♪」
「コッチも美味しいです~」
「リイン、これ美味しいよ?あ~ん♪」
「あ~ん……美味しいです~♪さすがねーさま。ではリインはこれをレイちゃんにあげます!あ~ん♪」
「あ~ん……おいし~♪」
「はぁ~……和む……むっちゃ和む」
レイとリインが自分の弁当を食べさせ合う光景を見ながらお茶を飲んでるはやて。
はやてだけで無く屋上で昼食を食べている生徒も同じく和んでいた……今日は女子の方が圧倒的に多かった。
「アム………ん、悪く無い。焼き揚げにしたのは良い選択だな」
アスパラを豚肉で巻いたフライを一口食べたコダイが呟く。
その後、なのは達は何時もより遅めに食べ始めたので少し早いペースで食べ終わり。一息ついていた。
「くつろいでいる所悪いのだけど……アンタ達この後レイとリインをどうするの?」
「あ……どうしようコダイ君」
その時にアリサに言われて重大な事を思い出すはやて。救いを求める様にコダイを見る……
「その必要は無いと思うが?」
コダイが指した方にはやて達の視線が向く。
「すぅ……すぅ」
「すか~……すぴ~」
リインが小さな寝息をレイが可愛らしいイビキを立てて寄り添いながら眠っていた。
「え……なんやこの状況」
「何かお腹いっぱいになって眠くなったみたい」
「最初にレイが寝てそれをリインが見守ってたんだけど睡魔に負けちゃったんだと思う」
フェイトとアリシアが2人にブレザーを掛けていた声を小さくして答えた。
「時間ギリギリまでこのままで、後は運んでそのまま授業に出れば良い。レイは1度寝たらしばらく起きないから」
「あ~そう言う事ならウチの所のリインも同じや」
「なら、やるべき事は1つだな………」
「せやな………まあその前に」
はやては静かに携帯を取り出し……
「この天使の2ショットを待ち受けにせな」
「おい、この構図前にも見たぞ」
真剣な顔つきで携帯を構えた。それを見たコダイはリインの初起動とレイの初実体化の出来事を思い出した。
そう言ってる間に写真を撮り終わったはやては即座にコダイ達やその関係者にその写真送った。
昼休みも終わり午後の授業。
コダイとはやてが眠っているレイとリインを膝に乗せて授業を受ける(コダイは受けるフリ)と言う教師でも如何していいか分らない状況が出来上がった……教師も起こす訳にもいかず静かにしているので問題無いと許可を出した。
そしてこの日の授業は終わり。コダイとはやてはアリサの車で送られた。
翌日、学校で天使が舞い降りたと言う噂が広がったとか………
黒十字様、陽気な死神様、頭翅様、アルクオン様、機功 永遠様、バルサ様、桜日紅葉雪様、ミラ ランドラス様、感想を有難う御座います。
~次回もお楽しみにしてください~