緋弾に迫りしは緋色のメス   作:青二蒼

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平日だけど話が思い浮かんだので。

注意事項

・犯罪計画進行中
・被虐体質化
・相変わらずの霧さん


76:自らの意思

 

 通信科(コネクト)の3人が骨伝導式の簡易インカムを複数持っており、俺達はそれを受け取って周波数を合わせて互いに通信できるようにした。

 全員が配置についたところで、不知火から通信が入る。

「……遠山君。7号車のどこかにテレビのスタッフが数名乗ってて、カメラ機材を持ってる。新幹線の無線LANを使ってさっきから放送してるみたい」

『現実感の無い人達だね。無事に帰れる保証もないのに。いいの? キンジ』

 一応状況を把握するためにインカムをつけている霧がそう聞いてくる。

 多分、言葉的に俺がマスコミに良い感情を持ってない事を加味して言ってくれてるんだろう。

 だが――

「……放っておこう。報道は自由だ」

 どのみち情報は止められない。

 この報道で俺みたいに不幸な人が出ないことを祈るばかりだ。

 俺の隣では、

「キンジ、あんたも踵鈎爪(ヒールフック)を使いなさい」

 言いながら不安定な足場等で使われる金具を取り付けているアリアがいる。

 普段はベルトのバックルやホルスターに秘匿(ひとく)されているそれは、パズルみたいに様々な組み合わせが出来る。

 今回は白兵戦だ。

 以前、バスジャックの時には車の屋根にワイヤーを打ち込んで支点にしたが。

 それをすれば……切断されるだろうな。

「正しい判断だ」

 俺も同意しながら、鈎爪を靴に装着していく。

「ねえ、大阪でのあんたとレキのこと――」

 先に用意できたアリアが、こちらに背を向けて準備運動をしながら気まずそうに切り出してくる。

「気にしてないから」

 気にしてるな、間違いなく。

流石(さすが)にプライベートに踏み込みすぎた事、謝るわ」

「誤解してるようだが、俺はレキに狙撃拘禁されてたんだよ。お前と一緒に教室を片付けたあの日からな。レキは無口で多くを語らなかったが、どうも俺を守るためだったらしい」

「ふーん……」

 半信半疑って感じだな。

 それからアリアは顔をこっちに向けた、と思いきやすぐにプイと前を向いた。

 それから――

「ま、いいわ。そこら辺は待つことにしたから、それが”条件”みたいだし」

 などと、ヒステリアモードの俺でもよく分からない事を言い出す。

「待つって、何をだい?」

「別にいいでしょ。あーあ、こんな事件に巻き込まれて不幸だわ。来週、誕生日なのに」

 チラッと見ながらアリアが軽くスパイクの具合を確かめるように足踏みする。

「ほんと、ツイてないわ。来週、誕生日なのに」

 なぜ2度も言う……

 一応、認識してるぞ。俺は。

 霧の言う、その程度の男なんて思われたくないしな。

 それから再び俺を見てきたアリアに対して、ジッと見ると少し慌て出す。

「そう言えば、あんた実家どこなのよ?」

 あからさまに話題を変えてきたな。

 まあ、合わせてやるか。

巣鴨(すがも)だよ。祖父母が住んでる」

「スガモ……? 寄るつもりだったの?」

 と、アリアは名前自体は知ってる感じだが……まだ日本の地理には詳しくないみたいだ。

「都内だよ、巣鴨は」

「都内? じゃあ、あんた何で寮生なんてやってるのよ。通学すればいいのに」

「――色々とね」

 多くを語らず、それで準備完了という感じの雰囲気が流れる。

 今の雑談で多少はギクシャクした感じも少しは和らいだだろう。

 アリアは、気合いを入れるように自分の両頬をパシパシと軽く叩いて気合いを入れるという、かわいい一面を見せた。

 それからすぐに、

「――行くわよ」

 と気勢充分にココが上がった梯子(はしご)に手をかけるが、俺はすぐにその小さな手を上から自分の手で(おお)う。

「な、ななっ何よ!?」

 奇襲に弱いアリアが顔を赤くしながら慌てる。

「梯子や階段を上る時は、レディファーストの例外だよ」

 俺は示すように小指で軽くアリアのスカートの端を弾き、すぐに俺が上る。

 これは、上ってる途中で俺とスカートの位置関係に気付いたアリアに風穴を空けられないためでもあるが。

 おそらく、最初に外に出る1人目は危ないだろうからな。

 俺の推理が当たってなければ、いや、確証はあるからこそ最初に出なきゃいけない。

 下で俺の言った事に気付いたアリアが、顔を赤くしてスカートを掴んでいる。

 その間に俺は上へ――

 

 ゴウゥウッ!

 

 既に時速200キロ以上に到達した風が顔を殴る。

 すぐに全身を列車の上に出し、足を着ける。

 服やネクタイの風で波打ち、暴れるが――

(立てない程じゃない)

 靴に取り付けた鈎爪が上手く作用している。

 闘える。

 ココは――いた。

 新幹線のパンタグラフ――電車などが電線から電気を取り入れる装置――その根本で何か発光信号のような物を動かしている。

 こっちには気付いていない。

 近付くために空気の抵抗を少なくしようと(かが)んだ瞬間、バタン! さっき出てきたハッチが閉まる音がした。

 同時に聞こえる音はアリアが転げ落ちる音だろう。

 やっぱりな――!

 俺は振り向き様にベレッタを数発、撃った。

 暗闇しかないように見える中で弾ける金属音と火花。

 そこにいたのは、さっき俺達と戦ったであろう青龍刀を持った"もう1人のココ"。

「きひっ」

 ギャリ、と俺と同じようにスパイクの音が聞こえる。

 笑みを浮かべながら獣の様に四つん()いになったココが叫ぶ。

炮娘(パオニャン)! 金次来了(キンジが出てきた)!」

「――猛妹(メイメイ)! 抓住(つかまえろ)!」

 叫んだ反対側からも中国語が聞こえて、見れば俺が近付こうとしたココがUZIを構えている。

 当たり前だがさっきの発砲音で気付かれるよな。

 そして――

(俺の推理通りだった訳だ)

 ココとそっくりなココ。

 つまるところ、見た目がそっくりな時点で双子の姉妹か何かだった訳だ。

 この事に関して気付けた鍵は2つ。

 1つ、俺とレキが民宿で襲われた時だ。

 シェースチの援護をするように狙撃され、レキが致命的な一撃を貰ってからココが現れた時――俺は狙撃手だと思っていたが、違う。

 仮にバイクを使ったとしても到着するのが早いように思えた。

 狙撃銃を持っていなかったのも気になる。

 2つ、さっきのアリアとココの会話だ。

 水投げの日、ココはアリアと近接拳銃戦(アル=カタ)で会っている筈だ。

 だが、ココは”写真を見て”と言った。

 おまけにアリアがその時に『その髪型をやめろ』と言ったらしいが、本人は聞いてないフリではなく本当に知らないとばかりに返した。

 つまり、アリアが以前に会ったココとは似た別人という仮説が成り立つ訳だ。

 大体、拳銃、狙撃、格闘。

 どれも一流の腕前なんて言うチートキャラみたいな存在、そうそうにいるものじゃない。

 結局のところ『万能の武人』を演出した(まが)い物だったという訳だ。

 それが目の前の光景。

 前にもココ、後ろにもココがいるこの状況だ。

「ココ、ココ――お仕置きの時間だ」

 俺は左右のココを見ながら左手で胸元のデザートイーグルを抜いて、それぞれに向ける。

 右手にベレッタ、左手にデザートイーグル。

 2丁拳銃(ダブラ)で相手をしてやる。

 いや、刀剣もナイフとスクラマ・サクスの2つがあるから――双剣双銃(カドラ)だな。

 アリアと理子の十八番(おはこ)、見よう見まねだが使わせて貰う!

 

 ◆       ◆       ◆  

 

 上で聞こえる発砲音からして始まったみたいだね。

 まあ、私はこの感圧スイッチが解除されるまでは動けない訳だけど。

 もし、解除出来るなら早めに。

 中途半端なら最後までこのままでも全然構わないんだけどね。

「どう、理子?」

「うーん、狭い。っていうか、線を切る道具がナイフしかないから割りとマゾゲー」

 言いながらも私の座席の前へ後ろへと、色々と視点を変えて試行錯誤中の妹。

 都合よく爆弾を解除するための道具がある訳はない。

 銃の整備のために常備してる予備工具的な物だけじゃ、流石に心許(こころもと)ないだろうね。

 この調子だと間に合うかどうかってところ。

 その間にも私の頭の中には犯罪計画(シナリオ)が思い浮かぶ。

 こうした方が面白いんじゃないか? 

 どうすれば誰にも気付かれず成立させられるか。

 想像するだけで、とても楽しくなる。

 ここ最近は切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)として動いてないから、久々に探偵に事件と謎を提供してあげようかな?

 これ以上の我慢は精神的に良くないし。

 いやー、切り裂きジャック――まあ、自分から名乗った覚えは一度もないんだけど――の事件を生で体験出来るなんて素晴らしい幸運だと思うよ。

 キンジ達、どんな顔するかな?

「こんな時に楽しそうだね……」

 おっと、妹がジト目してる。

 人が真面目に解除してるのにって感じだね。

「まあね」

 私がそう答えると、理子は静かに聞いてくる。

「キーくんのこと考えてた?」

「む、いつも通りの笑顔なのによく分かったね」

「んー、何となくだよ」

 言いながら理子は作業に戻る。

 かと、思いきや――

「キーちゃんは、さ……」

「……?」

「キンジのこと…………いや、何でもない」

「そう言う話の引き方されたら普通に気になると思うんだけど……」

「デスヨネー。いや、別に大した事じゃないんだけど今聞くことじゃないかなーって、思ってね。だったら話してよって言われるかもしれないけど、勢いで聞いたらマズイかなーとか考えちゃったり、いや、本当に大した事じゃないんだけどね。別に理子が気になったから聞こうと思った訳じゃないんだけど――」

 途中から目がグルグル回ってるような感じになってきた。

 支離滅裂って訳じゃないんだけど、予防線張りすぎ。

 理子にしては珍しい反応とぼろの出し方だ。

 そして、分からないかな妹よ。

 そう言うのを見ると私は口を割らせたくなる性格って事をね。

 今回はブラドの時みたいに触れられたくないって言う感じじゃないし。

「怪しいけど、聞かないでおくよ」

 そう言って私は静かに軽く目を(つむ)って聞かないアピールをする。 

 チラリと見れば理子は少し安堵(あんど)した感じだった。

 それから引き続き感圧スイッチの解除をするために私の正面へ来てしゃがもうとしたところで、軽く両足で股下を開くように内から外に払い、そのまま尻餅。

「……!?」

 今頃、お尻から落ちた事に気付いた表情を浮かべたところで軽くお腹を右足で踏む。

 これで立ち上がれないでしょう。

「"体に"直接聞けばいいだけだしね♪」

 顔を近付けて、その言葉を聞いた瞬間の理子の顔は「あれ? 似たようなパターン前にもあったような気がする」って言う感じだね。

 まさしく顔に書いてあるよ。

 実際、金一と会う前に理子の部屋で同じような事はあったけど。

「別に今回はブラドの時みたいに触れて欲しくない事じゃないんでしょ? それに以前に言ったよね? 触れられたくない部分じゃなければ、遠慮する気はないって」

「いや、聞いた気がするけど……遠慮して貰いたいかなー」

「やだ」

「あ、ハイ」

 最早、既に半分諦めてる妹。

「で、さっきの話。言うの、言わないの?」

「今は緊急事態だから、あとでじゃ……ダメ? 」

 ここで上目遣い。

 並の男なら反射的に「いいよ」って言ってしまいそうな愛嬌だけど――

「ダメ♪」

 笑顔で告げるお姉ちゃんは無慈悲です。

「何ならあの時の部屋の続きをしてもいいんだよ?」

 その一言で、一瞬で顔を赤くする理子。

 結構反応速かったね。

 そのまま軽くお腹を踏んでた足に力を入れて、スイッチが反応しないように顔を近付ける。

 抵抗はなくて、段々と理子の表情が(とろ)けているのが分かる。

 戦闘狂な一面があるから性質的に嗜虐(しぎゃく)的な方かと思いきや、案外被虐(ひぎゃく)的な感じがするんだよね。

 本人は無意識かもしれないけど、期待してる感じが視線に混じってる。

 そんな顔されたら……期待に応えない訳にはいかないよねぇ?

 そう思って手を伸ばそうとしたところで、

『霧、緊急事態だ』

 インカムにキンジから通信が入る。

 前もいいところで水を差されたよね。

 すぐに私は返答する。

「どうしたの?」

『レキが来た』

 そして、人形姫のお出ましか。

「私が応急処置をした時、内臓系に少なくないダメージがあった。それは本格的な治療を受けたところですぐに回復する訳じゃない。死ぬつもりなの?」

 死んでも構わないけど。

『……レキは既にこの新幹線の上にいる』

 最初からこの新幹線にいた訳はない。

 だとしたら、空路を使ってここまで来たとしか考えられない。

「それで、何で私に通信してきたの? 状況報告ってだけじゃないでしょ?」

『まあな。感圧スイッチは解除出来たか?』

「全然だね……理子が尽力してくれてるけど」

 私がそう言うと、理子はハッとなって首をブンブンと振る。

 顔は赤いままだけど。

 それをキンジが聞いてきたところで、予想出来た。

 これからやろうとしている事が。

「切り離すつもりだね。この16号車から後ろを」

『流石だよ、霧』

「民間人とレキさんを巻き込まない最善の方法はそれぐらいだからね」

『出来れば霧、君にも退避してほしいところだったけど』

「ここまでくれば、一蓮托生(いちれんたくしょう)ってやつだよ」

 大体、仮に出来たとしてもこんなところで退出なんてお断りだね。

 それに、何となくだけどこれから面白くなりそうだしね。

 

 ◆       ◆       ◆  

 

『ここまでくれば、一蓮托生ってやつだよ』

 元パートナーのいつも通りの調子の声に少しだけ安心する。

 問題は、レキだ。

 トンネルに入る前に星伽のヘリから飛び移って来たレキは止まることなく、もう新幹線の半分――9号車あたりまで来ている。

 戦わせちゃいけない。霧の言う通り死んじまうぞ。

 すぐに俺は、インカムを挿した耳を押えて白雪に通信をいれる。

「白雪ッ。今の話、聞いてたか」

『う、うん……でも――』

「お前にしか、頼めないことなんだ」

 そう言ったところでレキの後方から、何かバカン! とぶち抜くような音が聞こえた。

 何だ――?

 どこかの連結部から、この列車上に誰かが出てくる。

 遠目だが、見える。

 ……シェースチ。

 あの時、俺とレキを山で襲った少女が、いる!

 しかし、左腕はないままだ。

 よくよく見れば格好はどこかの武偵高の制服っぽいぞ、あれは。

 まさか……乗客に(まぎ)れてやがったのかッ。

「アリア、悪い知らせだ。シェースチがいる。今、列車の上だ」

『何ですってッ?!』『――ッ』

 アリアが叫ぶと同時に理子の息を呑む声が聞こえた気がする。

 今はそれどころかじゃない。

 向こうは左腕がないが、それだけだ。

 対してレキは重傷者だ。安静にしないといけない。

 戦わせちゃいけないんだ!

 表情を変えてはいないが、レキも分が悪いと思ったのか足を止めずにこちらへと向かってくる。

「レキ! 後ろだ!」

 届いたかどうかは分からないが、俺が叫んだ時には、シェースチは明確な敵意を持ってレキにナイフを向け、突撃する。

 レキは、格闘戦の技術がない。

 銃剣が装着されたドラグノフを槍みたいにして戦う事は出来るみたいだが……それでも、それほど白兵戦に強い訳じゃないんだ。

 接近に気付いたレキは、シェースチのナイフをドラグノフでさばきながら戦っているが、明らかに押されてる。

 相手も腕1本だけだっていうのに、動きが普通じゃない。

 確実に喉を、腕を、レキに致命的な一撃を与えようとしている。

 そして、こちらへと向かってる。

 だが、あのままじゃレキがもたない。

 確実に殺される。

 俺はすぐに駆け出し、後ろにいるココ――炮娘(パオニャン)に向かってデザートイーグルで威嚇(いかく)射撃をしながら16号車の反対、1号車がある方へ向かう。

 レキが無力化して倒れているもう1人のココ――猛妹(メイメイ)を越えてさらに先へ。

 既にレキは、14号車を越えて15号車の上へと来ていた。

 だが次の瞬間、シェースチが自分に向かってくるドラグノフを脇で挟み、レキを蹴り飛ばした。

 武器を奪われたッ。

 シェースチは奪ったドラグノフをバトンのように回し、銃剣の先を立ち上がるレキに向かって投げた。

 レキは、寸で頭を動かして避ける。

 そのままドラグノフが俺の方へと向かってくる。

 流石(さすが)にレキの相棒とも言うべきこいつを落とす訳にはいかない。

 俺は右側面へと抜けようとするそれを、体を左回りに回転させながらキャッチし、そのまま見よう見まねで膝撃ちの姿勢を取る。

 狙撃銃なんて、強襲科(アサルト)で体験でしか使った事はないが……銃の基本である狙って撃つということは変わらない!

「レキ、こっちに来い!」

 俺がそう言うとレキは、すぐに俺の方へと傷付いた体で駆け出す。

 しかし、やはり傷が完全に()えていないのか、その走りはぎこちない。

 その背後では、シェースチはレキをすぐさま追いかけてくる。

 まるで、負傷した草食獣を狙う肉食獣だ。

 山の中でレキが言った自然の摂理――弱肉強食。

 それを体現してるかのようだ。

 だけどな……草食獣が肉食獣に反抗する時がある。

 

 ――それは仲間を守る時だ!

 

 ダァン、と俺はドラグノフの引き金を引く。

 回転する弾丸がレキへと向かっていくのが見える。

 だが、その弾丸はレキの顔の横を通り過ぎ――ギィンと背後で振り上げられたシェースチのナイフを弾いた。

 それに対してシェースチは少しだけ驚き、足を止める。

 紅鳴館ではほぼ無表情だったが、あいつもあんな顔するんだな。

 と、場違いな感想を心の中で述べているとレキが俺の近くへと来た。

 あっち行けの命令は受け付けなかったが、こっちに来いは、以前考えてた通り普通に来たな……

「キンジさん……今ので分かりましたが」

 と、俺が立ち上がる同時にレキがいきなりそう切り出してくる。

 何が分かったって言うんだ?

「あなたに狙撃は向いていません」

 相変わらず物事をストレートに言ってくれる。

 自分で分かってても、口に出して言われれば結構傷付くな……

 少しだけ、いつものレキらしい事に苦笑してると。

「ですが……助けて頂いてありがとうございます」

 無表情ながらも、そう言ってくれた。

 レキらしくない。

 けど、俺はそれが嬉しい。

「何を笑っているのですか? 私は感謝をしただけなのですが……」

「だからだよ。レキがそう言ってくれて嬉しいんだ。だけど、感心しないな。そんなボロボロの体でこんなところまで来るのは……」

「――キンジさんも、あの夜、ボロボロになりながらも守ってくれました」

 淡々と告げるレキ。

 だけど、俺は少しだけ恥ずかしくて息をつまらせる。

 あの時――シェースチに襲われて意識がないと思ってたが……そうではなかったらしいな。

「それに私は誓いました。『主人に仇為(あだな)す者には一発の銃弾となり、必ずや滅びを与えん事を誓います』――と」

 レキは俺からドラグノフを受け取り、シェースチの方へと構える。

 そこには機械のような冷たい視線をこちらへと向けるシェースチが、武器を持たずに立っていた。

「あなたは何のために戦うのですか?」

 そんなシェースチにレキは、問い掛けた。

 何も答えない。

 そう思っていたら、

「……家族のため」

 短くそう答えた。

「……私は、機械。ただの兵器。でも、そうじゃないと教えてくれた」

 何だ……?

 シェースチの様子が……俺達を襲った時とは、何かが違う。

「……最初は、恐怖。その後は、温かい気持ち。家族」

 彼女は思い出すように静かに目を閉じた。

「……私は、人」

 無機質じゃない。

「だけど、家族の望みを叶えるために破壊する兵器に戻る」

 確かな意思を、声、瞳、に乗せて(あらわ)にする。

 あの時の戦闘用ドローンが彼女に呼応(こおう)するかのようにどこからともなく現れ、空中に浮かんでいる。

 数は4機。

 あの時より手強く感じるぞ、こいつは。

 第2ラウンドの開始、だな。

 




ちょっと短いかな。

相変わらず思い浮かぶ妄想
緋弾×fate

頼光「初めまして、セイバー……あら? これはどういう……。あの……源頼光と申します。よろしくお願いしますね、マスター?」

金時「おおい!? 大将の兄貴、何を召喚しちまってんだよ!? 頼光の大将はマズイって」

キンジ「ライコウ?」

金時「こっちじゃ、あんまりメジャーな通り名じゃねえか……源頼光(よりみつ)って言いやあ通じるか?」

キンジ「より……みつ……? 頼光?」

玉藻「あらまあ、さすがにこれは完全に目が泳いでますね~。まあ、伝承と全く違えばそりゃ目が点。狐につままれた心境になるというもの。タマモだけに☆」

金時「んなこと言ってる場合か、フォックス! しかし、大将の回りにはジャパニーズサーヴァントがよく集まりやがるな。その内、鬼が出ねえか心配になるぜ」

鬼ノ國にて

酒呑「くしゅん。なんや、誰かがウワサしとんのかな?」

茨木「鬼のウワサなぞ、人間くらいしかせぬだろうに。くはは、怯えて広めてる様子が目に浮かぶは――もぐもぐ」

酒呑「笑うか食べるかどっちかにしいや。でも、なんでやろな~。何となくやけど、懐かしい感じがするんや。あの小僧、案外こっちにおるんかもしれんで?」

やべえ、光景と会話が思い浮かぶ。

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