モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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3章 雪山と砂漠 沼地と火山 02

クシャルダオラの巨体が雪を踏みしめる音と共に突っ込んできたので、ジュンキとクレハはクシャルダオラの右翼側、カズキは左翼側に避ける。クシャルダオラは余裕のある動作で突進する身体を止めると、カズキの方を振り向いた。

カズキはクシャルダオラがこちらを向くと予想してランス「ブラックテンペスト」を構えていたため、クシャルダオラが振り向くと同時に頭部を一撃。

頭部がカズキなら、反対の尻尾はジュンキとクレハのいる方を向く。つかさずジュンキとクレハが尻尾を斬りつけた。しかし、クシャルダオラはそのくらいの攻撃ではびくともせず、カズキに殴りかかる。カズキはランスの槍と対になっている大きな盾でこれを防ぎ、隙を見てもう一撃与えた。

ジュンキとクレハも、攻撃の手を休めない。クシャルダオラは形勢不利と見たのか、一度大きく羽ばたくと地面から少しだけ浮くホバリング状態になった。このままでは攻撃できる箇所が尻尾と後脚だけとなり、効率が悪くなってしまう。おまけにクシャルダオラは別名で風翔龍とも呼ばれるくらいの風使いで、宙に浮いているこの状態は、ジュンキ達にとってかなり不利であった。

「ジュンキ!カズキ!私に任せて!」

クレハは背中に双剣「インセクトスライサー」を戻すと、アイテムポーチから円筒形の物を取り出した。ジュンキとカズキはそれが閃光玉であることを瞬時に理解し、クシャルダオラの攻撃がクレハに当たらないように立ち回る。

「吹き飛ばしてくれる!」

クシャルダオラがジュンキとクレハにしか聞こえない声を上げると、風のブレスの塊をジュンキ目掛けて吹きつけた。それをジュンキは余裕をもって回避し、クシャルダオラの真下に入った。ここでジュンキは太刀「エクディシス」を振るい、無用心に垂れ下がる尻尾と後脚を斬りつける。しかし、流石はクシャルダオラ。なかなか刃が通らない。

この時、視界の端にカズキの姿が入ったので、ジュンキは大きく太刀「エクディシス」を振りかぶった後にカズキとタイミングを合わせ、クシャルダオラの脚の下から出た。

「小賢しい奴め!」

クシャルダオラが悪態を吐き、脚の下のカズキ目掛けて噛み付こうと首を動かす。カズキにクシャルダオラの凶悪な牙が迫るが、カズキはこの攻撃もランスの盾で防いでみせる。それと同時に、クシャルダオラの胴体を一撃。しかし、槍の穂先は通らない。

「ジュンキ!」

背後からクレハに呼ばれて、ジュンキはクレハが何をして欲しいのかをすぐ理解した。ジュンキは太刀「エクディシス」を背中に戻すと、アイテムポーチからペイントボールを取り出し、クシャルダオラに当てた。ペイントの実独特の臭気が辺りに充満し、クシャルダオラの気を一瞬だがこちらに引く。クシャルダオラの顔がジュンキの方を向いたのと、ジュンキの頭上で閃光玉が弾けたのはほぼ同時だった。クシャルダオラは一瞬にして視界を奪われ、その場に落下する。ジュンキとクレハは互いに頷き合うと、クシャルダオラ目掛けて駆け出した。

「カズキ!潰れてないか!?」

「潰れてねぇよ!」

カズキがクシャルダオラの下敷きになってしまっていないか少し心配になったジュンキは声を上げたが杞憂だったようで、カズキの元気な声が視界を奪われて暴れているクシャルダオラの向こうから聞こえた。

「私は尻尾を斬り落とすっ!」

クレハは叫ぶように言うと背中の双剣「インセクトスライサー」を抜き放ち、クシャルダオラの尻尾を斬りつける。ジュンキは腹部を、カズキは頭部を狙って攻撃を加える。

「許さん…!いくら竜人といえども、もう手加減はせぬ…!」

クシャルダオラは一気に身体を起こすと、その場で前脚を天高く掲げて咆哮した。あの巨体がこうも早く立ち上がれるとは思っていなかったジュンキ、クレハ、カズキはクシャルダオラの咆哮にその場で動けなくなってしまい、次の瞬間にクシャルダオラを中心として発生した突風のせいで吹き飛ばされてしまう。

「まずは貴様だ…!」

クシャルダオラは口を開くと、クレハ目掛けて噛み付いた。クレハは思わず目を閉じてしまうが、襲ってきたのは肉を引き裂かれる痛みではなく、何かが当たった衝撃と雪の上を転がる感覚だった。

「大丈夫か!?」

目を開けると、そこには自分に覆い被さるようにジュンキがいた。どうやら噛み付かれる直前に、ジュンキが助けてくれたらしい。

「あ…!」

何か言わなければと思ったが、クシャルダオラの悲鳴に似た声にそちらを向いてしまう。クシャルダオラはカズキの攻撃を受けて上空へ飛び上がり、遠ざかって行ってしまった。

「カズキ!どうした!?」

「翼を貫いてやったら、驚いて逃げやがった!」

カズキは遠ざかるクシャルダオラを睨み続けながら答えた。

「ジュンキっ…」

下から声が聞こえたのでそちらを向くと、クレハが仰向けに倒されたままだった。ジュンキは慌てて立ち上がり、クレハに手を差し出す。

「ごめん、クレハ。怪我はないか?―――うわっ!」

クレハがジュンキの手を掴み、立ち上がると思いきや、いきなりクレハがジュンキに抱き付き、そのまま押し倒されてしまった。

「ク、クレハ…っ!?」

「…助けてくれて、ありがと」

クレハはジュンキの胸元でそう言うと立ち上がり、ジュンキに手を差し出す。先程とは立場が逆になってしまい、ジュンキは苦笑いしながらクレハに起こされた。

「お~お~。やっぱり結婚しちまえよ」

いつの間にか近くまで来ていたカズキがそう言ったので、ジュンキとクレハは飛び上がって驚いた。

「い、今はクシャルダオラが先だろっ!」

「そ、そうそう!」

ジュンキとクレハは互いに無理矢理納得し、カズキを置いて歩き出す。そのカズキがグヒヒと笑う度に、ジュンキとクレハは顔を赤くするのだった。


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