モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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2章 ミナガルデ防衛戦 09

ドンドルマの街に着くと、ベッキーを先頭に、竜車の乗降場から街の広場へと出た。

リヴァルにとっては、ポッケ村に活動拠点を移した―――ティガレックスによる負傷とその後のいざこざで活動拠点を移さざるをえなかった―――ので、それ以来のドンドルマであり、ジュンキ、クレハ、ショウヘイ、ユウキ、カズキにとっては街から逃げた、約半年ぶりのドンドルマである。リサにとってはこれが初めてのドンドルマの街だ。

「大きな街ですね…」

「ハンターズギルドの本部があるからな」

リサが物珍しそうに視線を泳がしているので、リヴァルは一応ハンターズギルドの本部がこの街にあることを伝えておいた。

「久しぶりだな、この街…」

「そうだね。街を出るキッカケが、逃亡だったから…」

リサがドンドルマの街に思いを馳せる一方で、ジュンキ達は半年前の事を思い出していた。ジュンキ達が街を出た時、それはシュレイド王国軍に追われて逃亡した時だった。

「初めて見る街に思いを馳せるのも、昔を思い出すのもいいけど…そろそろ大衆酒場に着くわよ?」

ベッキーはそう言って、大衆酒場へと入ってしまう。リヴァル達も遅れず続いた。

今は昼間なので人混みに苦労せずカウンターに辿り着くと、リヴァルやジュンキ達には聞き慣れた声がカウンターの奥から聞こえてきた。

「ベッキー先輩!みなさん!来てくれたんですね!」

声の主はユーリだった。ドンドルマの街で受付嬢を仕事としている快活な少女は、ジュンキ達がドンドルマの街から逃亡する際に手助けしてくれたのを最後に会っていなかったが、こうして元気そうな姿を見ることができ、ジュンキ達は心から安心した。

「あっ、リヴァル君?」

「ん?そうだが…」

「よかった…。ポッケ村の村長さんから通知を受けていました。怪我をして動けない、と。でも無事みたいでよかったです」

「ああ、どうも…」

ユーリの明るい振る舞いは、リヴァルが苦手とする人柄のひとつだ。どう対応したらいいのか分からず、いつも押され負けしてしまう。

「みんなと元気な姿で再会できたのは嬉しいけど、今はそう喜んでいられる状況じゃないみたいなんだよね…」

「大陸各地のモンスター、だな」

ショウヘイの言葉に、ユーリは真剣な表情で頷いた。

「どの場所に、どんなモンスターが現れているのかは、ハンターズギルドで既に把握しているのだけど、正式な発表は明日なの。だから今日はゆっくり休息を取って下さい、としか…」

「…分かったよ。そうする」

ジュンキがユーリに返事をすると、ベッキーがリヴァル達から離れ、カウンターの中へと入った。

「私はミナガルデの街の報告があるから、先に休んで頂戴」

ベッキーはそう言うと、カウンターの奥へと消えてしまった。

「俺達は明日まで自由行動か?」

「そうだな。そうしようか」

「よし、じゃあまた明日―――」

「ちょっと待った!」

カズキの問い掛けにジュンキが全員を見渡してから答えるが、カズキが走りだす直前に、ユーリが声を上げた。そのユーリの手には6本の鍵。

「みんなの部屋、まだ残ってるわよ。もちろん、チヅルちゃんの部屋も…。あと、リヴァルくんと、そちらの…」

「初めまして。リサ、といいます」

「リサちゃんね。2人の鍵はこれ」

ユーリはそう言って、リヴァル達7人全員に部屋の鍵を渡した。チヅルの部屋の鍵は、ジュンキが代表して受け取る。

「悪いな、部屋を残しておいて貰って」

「いいのいいの。部屋代はちゃんとこれからの依頼達成時の報酬金から減額されるから」

「うげっ…」

わざとらしく声を上げたのはカズキだろうか。リヴァル達はユーリに礼を言ってから、まずはチヅルの部屋へ向かうことにした。

 

リヴァル達は各自の部屋を確認した後、チヅルの部屋の前に集まった。パーティメンバー7人全員が揃ったことを確認すると、ジュンキはチヅルの部屋の鍵を開けた。

部屋の中は想像以上に綺麗で、ユーリがしっかり管理してくれていたことを伺わせた。リヴァル達は誰も口を開かず、静かに部屋の中へ足を踏み入れる。その中でクレハはアイテムボックスに近づくと蓋を開き、リヴァル達を振り返った。

「ねえ、チヅルちゃんの道具や素材、どうする?」

「ユーリにお願いして、ハンター専用の火葬場で燃やして貰おうと考えてるけど…」

「うん…そうだね…」

クレハはそう言うと、静かにアイテムボックスの蓋を閉じた。

「…明日からまた忙しくなる。そろそろ出よう」

ショウヘイの言葉に促されて、リヴァル達はチヅルの部屋を出た。最後に部屋を出たジュンキが鍵を掛けると、ひとり、またひとりと、ドンドルマの街へと歩き出した。

「ジュンキ…」

「…鍵は、俺がユーリに返しておくよ」

クレハが心配そうな声を上げたので、ジュンキは出来るだけ笑顔でそう答えたのだった。


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