モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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1章 重なる想い ずれる思い 16

翌日、リヴァル達4人は昨夜に何もなかったかのように、ベースキャンプを後にした。いつも通り、リヴァル、リサ組とジュンキ、クレハ組に分かれ、リヴァル、リサ組が先行する形でエリアを移動していく。

リヴァルがリサと会話している隙に、ジュンキはクレハに今回の狩りで心配していることを伝えた。

「クレハ、薄々気づいていると思うけど…」

「分かってるよ。今回の狩る対象…ザラムレッドとセイフレムでしょ?」

「ああ…。もちろん狩らない。な?」

「当たり前でしょ?ま、リヴァル君相手じゃ、ザラムレッドやセイフレムには勝てないだろうけどね」

「ははは…」

確かにクレハの言う通りで、ジュンキは苦笑いを浮かべるしかなかった。

「でも、ザラムレッドやセイフレムが怪我をするのは嫌だから…」

クレハはそこまで言うと、アイテムポーチの中から「あるもの」を取り出した。

「リヴァル君には、黙って貰おうかな?」

クレハが笑顔でそんな事を言うので、ジュンキは本当に苦笑いしか浮かべられなかった。

 

幸いにして小型モンスターは現れず、一行はエリアを1,2,3と移動し、巣の手前に当たるエリア4へと足を踏み入れた。

「…いやがった」

高台に位置するエリア4。この中央に、リオレウスとリオレイアが佇んでいた。2匹は周囲を警戒しておらず、並んで青空を見つめている。

リヴァルは自分の中に、強烈な殺人衝動が沸き上がってくるのを感じていた。

「リヴァル君、ちょっといい?」

「…何だよ?」

突然背後からクレハに呼ばれたので、リヴァルは舌打ちしつつも振り向いた。見ると、クレハが手招きしている。面倒な事をするつもりなら切り捨てようと心に決めて、リヴァルはクレハの前に立った。

―――次の瞬間、クレハは正確にリヴァルのリオソウルヘルムの隙間に右手を突っ込み、リヴァルの首筋を斬りつけた。

「ぐあっ!手前ぇ何するっ…!?」

リヴァルがクレハに殴りかかるが、その拳がクレハに届く前にリヴァルは地面に倒れ込んだ。

「リヴァルさん!?クレハさん、リヴァルさんに何を…!?」

「ちょっと動けなくしただけだよ」

クレハはそう言って、リサにリヴァルを斬りつけたナイフを差し出した。

「これって、麻痺投げナイフじゃないですか!?こんな強烈な麻痺毒を使うなんて…!」

「大丈夫。ちゃんと調整して薄味になっているから。ごめんね」

クレハはここまで言うと、苦笑いを浮かべているジュンキと合流してリオレウスの方へと歩き出した。

「まさか…」

リサはこの時になって、クレハの取った行動の意味を理解した。ジュンキとクレハは、あのリオレウスと会話をする気なのだということを。

リサもジュンキ達から、ザラムレッドとセイフレムというリオレウスとリオレイアの知り合い(?)がいることを聞いていた。そして今回の狩りでは、ジュンキとクレハがベースキャンプを出た辺りから動きが怪しいことから、今回の狩猟目標がそのザラムレッドとセイフレムなのではないか―――そしてリサの予感は的中したのだった。

「ぐ…あぁ…っ!」

リヴァルの苦しそうな声が聞こえる。リサはせめて、リヴァルの側にいようと決めた。

 

「…久しいな」

「お久しぶり。元気だった?」

ジュンキとクレハが近づくと、ザラムレッドとセイフレムはそう言ってゆっくりと振り向いた。

「私達はみんな元気だよ。ザラムレッドとセイフレムはどう?」

「ああ。儂もセイフレムも息災だ」

「ジュンキ君とクレハちゃんも、元気そうね」

「ああ。子供たちは?」

「みんなすくすく育っているわよ。今はお昼寝してるわ」

「…さて、ジュンキよ。今日は儂に何の用かな?」

「用事があったというより、あいつに連れてこられたんだよ…」

ジュンキは苦笑いしながらそう言うと、後ろで倒れているリヴァルを指差した。

「…何か訳ありだな。聞こう」

ジュンキとクレハはザラムレッドとセイフレムに、この場所へ来た経緯を説明した。全て話し終えると、ザラムレッドとセイフレムは難しい顔をした。

「状況は分かった。しかし、我々に討伐依頼が出ているとは…」

「人々には迷惑を掛けないように生活してきたのだけど…」

「まあ、その件については、こちらが考えるべきだろう。それより、あのリヴァルという男…本当に竜人なのか?」

「ああ」

リヴァルの問い掛けに、ジュンキは即答した。

「まだ完全に目覚めてはいないけど、兆候が見られた。ミラボレアスの血液があれば、完全に目覚められると思う」

「ミラボレアスか…。奴は今、姿を隠している」

ザラムレッドの答えに、ジュンキとクレハは驚いてお互いの顔を見合わせた。クレハが口を開く。

「姿を隠している?どうして?」

「それはね、これから龍たちの進撃が始まるからよ」

「龍たちの進撃?どういうことだ?」

「それは―――」

ザラムレッドがジュンキとクレハに説明しようとしたその時、大地が、揺れた。

「な、何だ!?」

「地震!?」

ジュンキとクレハがその場に屈む。

突然、空が光った。

ジュンキとクレハ、ザラムレッドとセイフレム、そしてリヴァルとリサも、光った空を見上げる。そこには何処から放たれたと思われる巨大な炎のブレスが、天高く放たれていた。

そして、再び地震。

「始まったか…」

ザラムレッドはそう言うと、ジュンキを振り向いた。

「ジュンキよ、とうとう始まったのだ…。古龍たちの、人間駆逐計画が…!」


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