モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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外章 少女と竜人 02

翌日、リサは装備を整えてから自宅を出た。武器はハンマーの「アイアンストライク改」で、防具は偶然にもユウキと同じ、フルフルだ。

集会場の中に入ったが、まだジュンキ達は来ていなかった。受ける依頼はドドブランゴの狩猟と決まっているので、リサは仲の良い受付嬢と世間話をしながら、ドドブブランゴの狩猟依頼を受ける。

リサが依頼書を受け取るとほぼ時を同じくして、ジュンキ、ユウキ、カズキが集会場に入ってきた。ジュンキは太刀、ユウキはライトボウガン、カズキはランスのようだ。

「くじ引きをして、決まったよ」

「はい。今日はよろしくお願いします」

リサはそう言うと、ジュンキ、ユウキ、カズキに頭を下げた。

 

「ジュンキさんは、竜人なんですよね?」

今回の狩り場である雪山へ向かう途中で、リサが口を開いた。

「そうだけど?」

「具体的に、どんな事象が発生するのでしょうか?」

「事象って…」

「むちゃくちゃ強くなるな」

ジュンキが右手を顎に当てて考え出すと、カズキが横から入ってきた。

「むちゃくちゃ強い、ですか…」

「カズキ、ここは具体的に。一言で言えば、攻撃威力の増加かな」

「攻撃威力の増加、ですか…」

カズキの抽象的な表現を補うユウキの言葉もまた、抽象的だった。

ここでジュンキが「やれやれ…」と首を振りながら口を開く。

「具体的に言うと、筋力が増加することかな。場合によるけど、モンスターはもちろん、太い樹の幹を両断することもできたりするよ」

「そんなことが…!」

ジュンキの言葉を聞いて、リサは明るい赤色の瞳を見開いて驚いた。樹の幹を一刀両断…。恐ろしい筋力である。

「まあ、機会があったら見せてあげるよ」

ジュンキはそう言って、視線を前に戻した。

ここで、リサにひとつの疑問が浮かぶ。

「あの、普段の狩りから竜人として動かないんですか?その方が、効率が良いと思うのですが…」

リサの質問は、至極全くなものだった。確かに、初めから竜人として狩りに出れば、あっという間に終わるだろう。

だが、ジュンキやショウヘイ、クレハがそうしないのには、ある共通の意識があった。

「確かにね。でも、俺達は竜人である以上にハンターなんだ。そして、モンスターとの戦いは命の奪い合いだ。そこで竜人として戦うのは、何て言えばいいのか…。公平、じゃないよね?」

リサはジュンキの答えを聞いて、ある種の衝撃を受けた。それと同時に、自分の考えがどれ程愚かなものだったかも知った。

「…そうですよね。私が浅はかでした」

「いや、いいよ。それに、まだ竜人としての力…俺達は竜の力って呼んでるけど、制御しきれないことがあるから、おいそれとは使えないというのも理由なんだ。前回ポッケ村に来たのは、俺の中の竜の力を、制御するためだったんだよ」

「そうだったんですか…」

リサが頷くのを見ると、ジュンキは顔を前に戻した。

リサはジュンキに気付かれないよう歩行速度を落とすと、カズキとユウキの横に並んだ。

「あの、カズキさん、ユウキさん」

「カズキでいいよ」

「俺もユウキでいいから」

「…はい。カズキさん、ユウキさん」

リサは笑顔で答え、ユウキとカズキは何を言っても無駄だと苦笑いした。

「で、なんだい?」

「その…」

カズキが尋ねると、急にリサは言葉を濁した。これは聞くべきなのだろうか、と。だがここまで来て、聞かない訳にもいかない。

「あの、カズキさんとユウキさんは、ジュンキさんやショウヘイさん、クレハさんを、どう思ってますか?」

「どう…?」

ユウキとカズキは顔を見合わせて首を傾げたが、やがて2人は同じ答えを出した。

「仲間、かな」

「仲間、だな」

「そうではなくて、その…」

ここでユウキは、リサが何について聞きたいのかを悟った。

「…なるほど、あの3人は竜人だから、か?」

「…はい」

「そうだな…。一時は驚きもしたが、今は何とも思っていないよ。竜人としての能力は、ちょっと羨ましいのもあるけどな…」

「あるけど、竜人としての使命を背負う責任感、俺達には無いからなぁ~」

「ああ、確かに」

ユウキとカズキは、お互いに頷き合った。

「使命…?」

「ああ、昨日話してなかったな。竜人は、世界の均衡が崩れそうな時に、目覚める存在らしいんだ」

「その世界の均衡を崩そうとしている存在は、何か分からないけどな」

「そうですか…」

やはり自分は浅はかだと、リサは思った。それと同時に、ジュンキ達5人の結束は強固な物であると、理解したリサだった。

 

ベースキャンプに着くと支給品を分配し、早速狩り場へと出発した。

「失礼ですが、ドドブランゴとの戦闘経験は?」

「大丈夫。全員あるよ」

ジュンキが代表して答えると、リサは分かりましたと頷いた。山中の洞窟を抜け、雪山の中腹に出る。

するとそこで、ユウキがあるものを見つけた。

「見ろ。モンスターの足跡だ」

そこには中型モンスターの足跡がひとつと、その周りに小型モンスターの足跡が複数あった。

「ドドブランゴだな。今日は晴れてて良かった」

カズキは空を仰ぎながら言った。

今日の雪山の天候は晴れ。絶好の狩り日和である。

「足跡はまだ新しいし、この方向からすると、隣のエリアだな」

ユウキはそう言うと、立ち上がった。

「ユウキはモンスターの痕跡を辿るのが得意だからな」

「ガンナーだから、索敵能力が高いのさ」

ジュンキに褒められても、ユウキは照れることなく微笑んで答えた。

「よーし、ドドブランゴを見失う前に、さっさと行こうぜ」

カズキはそう言うと、率先して隣のエリアへと向かって歩みを進めた。

 

「ドドブランゴを肉眼で確認」

先頭を進むカズキの声を聞いて、リサ、ジュンキ、ユウキは歩みを止めた。

「ユウキ」

「任せろ」

ユウキはジュンキに言われる前に既に準備を終えていて、すぐにペイント弾を発射した。

それはドドブランゴの背中で弾け、白い体毛が桃色に染まる。

「おし!行くぞー!」

カズキは雄叫びをあげると、ランス「ブロスホーン」を構え、ドドブランゴ目掛けて突進して行った。

「リサは右側を」

「はい!」

続いてジュンキとリサが飛び出す。ユウキはガンナーなので、遠巻きからドドブランゴを狙うことになっている。

(落ち着いて、大丈夫…)

リサは自分に言い聞かせると、先行したカズキに気を取られているドドブランゴの横腹を、ハンマー「アイアンストライク改」に自身の体重を乗せて、思い切り叩きつけた。


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