モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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外章 少女と竜人 01

「こんにちは」

よく晴れたポッケ村の昼下がり、リサは夕食の食材を、村唯一の雑貨屋へ買いに来ていた。

「今夜は何を作ろうかな…?」

リサは様々な食材を手に取り、見比べて考える。

悩んだ末に、野菜鍋にでもしようと山菜をいくつか購入して、リサは店を後にした。

「よお、リサちゃん!ハンマーのメンテナンスが終わったよ!後で取りに来てくれ!」

「はーい!」

帰り道で鍛冶屋に呼びかけられ、リサは大きくは無いものの、よく通る声で返事を返した。

リサはハンターだ。武器のメンテナンスは大切である。

「荷物を置いてから、取りに行きます!」

「あいよー!」

リサは鍛冶屋にそう伝えると、急ぎ足で自宅へ戻った。玄関の扉を背中で押して家の中へ入り、買ってきた山菜を机の上に乱雑に置くと、すぐに鍛冶屋へと向かう。

「あれ…?」

家の前の通りに出たところで、リサは右手側から近づいてくる、見覚えのある人影を見て立ち止まった。向こうも気づいたようで、リサに向かって右手を上げる。

忘れる訳がない。つい最近まで、この村に滞在していたハンター。

「ジュンキさん…?」

こちらに近づいてくるハンターは5人。それぞれが装備している防具はリオレウスに、リオレイア…これは女性だ。そして見た目はリオレウスのそれと同じだが真っ黒な防具、ディアブロス、フルフル。…かなりの手練だ。

「やあ、久しぶり」

リオレウス装備のハンターはそう言うと、リサの前で立ち止まった。「やっぱりジュンキさんだ…」とリサは微笑みを浮かべる。

「お久しぶりです、ジュンキさん。早かったですね」

「いろいろと事情があってね…。今回は、仲間を連れて来たよ」

ジュンキはそう言うとリサの前から半歩下がり、リサの知らない4人のハンターを紹介した。

「初めまして、クレハです」

「ショウヘイだ。よろしく頼む」

「ユウキだ。よろしくな」

「俺はカズキだ。よろしく」

「私はリサです。よろしくお願いします」

リサは自己紹介を終えると、ひとりひとり握手を交わした。

「リサ、村長はいるかい?」

「はい。いつもの、焚き火の前にいらっしゃるかと。案内しますか?」

「お願いするよ」

リサを先頭に、ジュンキ達6人は歩き出した。

「この村には小さいですが、温泉が湧き出しているんですよ」

「へえ~!」

リサの紹介に、クレハは青色の瞳を輝かせた。

「ジュンキさんは、前に入られましたよね?」

「ああ、何度も入ったよ」

他愛のない会話を続けながら、6人は村長のもとへと歩みを進めた。そしてこのポッケ村の村長は、笑顔でジュンキ達を迎えてくれた。

「おやおや、ジュンキ殿。元気そうで何より」

「村長も、相変わらずで」

「ふぉっふぉっふぉっ…。今日はお仲間さんを連れて、観光ですかな?」

「…村長、これを」

何の前触れも無く、ジュンキ達5人の空気が重くなったのを、リサは感じ取ることができた。この短い間に、何があったのだろうかと、リサは心配してしまう。

ジュンキは一通の封筒を取り出すと、村長に差し出した。村長はそれを受け取ると丁寧に封を切り、黙ったままで中の羊皮紙を読む。

そして一言だけ「大変だったねぇ…」と言うと封筒に羊皮紙を戻し、ジュンキに返した。

「私は構わないよ。住むところは以前使っていた空き家を使っておくれ。ひとりでは広いが、5人では狭いかもしれんの」

村長の言葉を聞いて、リサは驚いた。

「えっ…。ジュンキさん、またこの村に留まるんですか?」

「ああ。またよろしく頼む」

「それは、私も嬉しいですけど…。一体何があったんですか?」

「…リサにも説明したい。集会場で話そう?」

「ええ…」

リサは、寂しそうなジュンキの横顔に、ただ頷くことしかできなかった。

 

集会場に入ると、リサやジュンキ達5人はテーブルを囲むように座った。

長い沈黙の後に、ジュンキは口を開いた。

ジュンキの口から話されたことは、リサをとても驚かせた。シュレイド王国軍に追われていること。仲間の一人が亡くなったこと。そして何よりも、リサを驚かせたのは―――。

「竜人…ですか?」

「聞いたことは?」

「無いです。竜人族ならあるのですが…」

竜人族―――それは人間と共存している種族の名前だが、竜人は根本的に違うと、ジュンキやショウヘイ、クレハはリサに説明した。

「ジュンキさん、ショウヘイさん、クレハさんは竜人で、竜と会話ができたり、人間では有り得ない力が出る、ということですか?」

「そうなるかな」

「…」

突然そんな事を言われて混乱してしまい、リサは黙り込んでしまった。

「信じてくれっていうのは無理だと俺も思う。こんな突拍子も無い話を―――」

「―――いえ」

リサは明るい赤色の瞳を開くと、ジュンキを正面から見据えた。

そして口を開く。

「確かに信じがたい話です。けど…ジュンキさんは嘘を言っていないと思います。ショウヘイさんや、クレハさん。ユウキさんに、カズキさんも」

「…ありがとう」

「これから、どうするんですか?」

リサからの質問に、ジュンキはショウヘイ達に「これからどうする?」とリサからの質問を横流しした。

「今日は移動に移動を続けて疲れているから、具体的に動くのは明日からだな」

「だなぁ。あー疲れた!俺は温泉に入りたいぞー!」

ユウキとカズキの言っていることはもっともで、ジュンキ達5人は疲労困憊だった。

「では、明日になったら早速ですが、狩りに出ませんか?」

「リサは積極的だな」

ジュンキは褒めたつもりで言ったのだが、リサは苦笑いした。

「実は先日、雪山にドドブランゴが現れたのです。私ひとりでは、どうにもならなくて…」

「なるほどな…」

ジュンキは一度頷いてから、ショウヘイ達の方を振り向いた。

「いいか?」

「ああ」

「うん!」

「任せろ!」

「腕が鳴るぜ!」

全員の了解を得て、ジュンキは視線をリサの方へ戻した。

「明日までに、メンバーを決めておくよ」

「はい。ありがとうございます」

リサは笑顔で頷いた。

 

この後、リサの案内でポッケ村を周り、夜にはリサが作った野菜鍋をご馳走になったジュンキ達だった。


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