モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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2章 チヅルの戦い 01

チヅルがベースキャンプに戻ると、ユウキは簡易ベッドに寝かされ、ショウヘイに手当てを受けていた。

「無事だったか!」

テントの前で座っていたカズキがいち早くチヅルの帰還に気づき、大きな声でチヅルを迎えた。

そんなカズキに対し、チヅルは小さく笑ってから口を開いた。

「ただいま。…ユウキがどうかしたの?」

「ああ…。足を思いっ切り捻っちまったみたいなんだ」

カズキの説明を受けながらチヅルがテントの中に入ると、ショウヘイは安心したような、穏やかな表情を見せた。

しかし、ユウキはフルフルレギンスの上から包帯と木の板で、応急処置を施されている。

「ありがとう、チヅル」

ショウヘイが礼を述べたが、チヅルはユウキのことで頭がいっぱいになっていた。

「ううん。それよりユウキは…?」

「俺なら大丈夫だ。足を捻って、歩けないだけだし…」

ユウキはそう言いい、身体を起こす。

「痛てて…っ!」

「ココット村で診てもらった方がいいんじゃない?」

「いや、大丈夫…。街まで我慢するさ…」

チヅルはショウヘイに提案したが、ユウキがそれを拒否した。

「それより俺としては、村長から受けたランポス駆除依頼失敗の方が痛いよ…」

「あ、それなら大丈夫だよ」

チヅルはそう言うと、アイテムポーチからドスランポスの爪3組6本を取り出した。

「リオレイアが食べた1匹の分と、私が狩ってきた2匹の分だよ」

「いつの間に…」

ショウヘイとユウキとカズキが驚く中、チヅルは微笑んだ。

「ボスがいなくなれば、ランポスたちも散り散りになるはずだよね?さ、まずはココット村に戻ろう?クレハちゃんを待たせているし」

「…そうだな。ユウキ、肩を貸そう」

「ああ、俺も」

ショウヘイとカズキがそれぞれユウキの肩を持つと、掛け声を掛けて立ち上がった。

「私はユウキのボウガンを持つよ」

チヅルはそう言うと、ユウキが寝かされていた簡易ベッドに立て掛けられているクロオビボウガンを持った。

「すまない、みんな…」

チヅル、ショウヘイ、カズキはユウキのペースに合わせて、ゆっくりとココット村への帰路についた。

 

ココット村へ戻ると、いつもの場所に村長は居なかった。

「いつもここで、村人の往来を見てるんだけどな…」

ショウヘイとカズキに支えられたユウキが不思議そうに言うと、近くを通りかかった村人が、村長は集会場に入ったきり出てこないことを教えてくれた。

「珍しいな」

ショウヘイも少し首を傾げる。

「集会場の中に居るんでしょ?だったら入ろうよ」

「だな」

チヅルの言葉にカズキが頷いて、4人は集会場の中へと足を踏み入れた。昼食には早過ぎる時間帯なので客はほとんどいなかったが、村長は隅のテーブルで、クレハと一緒に座っていた。

「あ、クレハちゃんもいる」

チヅルはショウヘイたちを差し置いて、先にテーブルへと向かった。こちらを向くように座っている村長が先に気付き、続いてクレハも振り向いた。

そのクレハの顔を見て、チヅルは内心呆れてしまった。

クレハの顔はほんのりと赤くなっており、右手にはグラスに入ったビールを持っていたのだ。

「あ~お帰り。どうだった?」

「クレハちゃん、昼間からお酒飲んでるの?」

チヅルが呆れていると、クレハはちょっと申し訳なさそうな顔をして口を開いた。

「村長に勧められちゃって…」

「儂が勧めたんじゃ。すまぬの」

「村長、程々にお願いしますよ」

チヅルを追って集会場の奥へと入ってきたショウヘイがそう言ったが、村長は少しも悪びれる様子もなく「ほっほっほっ」と笑った。

「…しかしユウキ。何があった?」

「ユウキ!怪我したの?」

「ああ。けど大丈夫。足を捻っただけだから」

村長とクレハがユウキの心配をするが、ユウキは笑顔を作って無事を表現した。

ここで、ショウヘイとカズキが、ユウキをクレハの横に座らせる。

「…村長さん、報告です」

チヅルはそう言うとアイテムポーチからドスランポスの爪3本を村長に見せた。

「そうか、ドスランポスが3匹もおったのか…。今回は助かったわい。しかし、ドスランポス3匹分にしては、割りに合わない報酬じゃの…」

村長はそう言いながら、テーブルの下から報酬金の入った革袋をチヅルに渡した。

「いえ、そんな…。気にしないで下さい」

チヅルはそう言いながら、村長から報酬金を受け取る。

「それじゃあ、そろそろ失礼します」

クレハはそう言って、その場に立ち上がった。

「では、またお会いする時まで、お元気で」

「村長、また」

「また世話になる時があったら、よろしく頼むぜ!」

「クレハちゃんをありがとうございました」

「村長さん、ご馳走さまでした」

5人は各自で礼を述べると、集会場の出口へと歩みを進めた。

「ほっほっほ。元気での」

村長の言葉を背に5人は集会場から出ると、ミナガルデの街経由ドンドルマ行の竜車の到着を、村の外の乗り場で待った。


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