ジュンキの怪我が治ると、6人は出来る限り急いでドンドルマの街へと戻ることにした。
ココット村の集会場内にあるハンターズギルドの出張所を経由して、ドンドルマのユーリに通知を出しておいたから問題は無いと思っているが、早く帰ることに越したことはない。
しかしそのドンドルマへ入ってみると、ひと月前とは打って変わって物々しい雰囲気になっていた。
「一体、何があったんだ…?」
「分からない。とりあえず、今はユーリのところへ行こう」
ショウヘイの提案に従って、ジュンキ達6人はひとまず大衆酒場へと向かった。
酒場の中は相変わらず騒がしかったが、今ひとつ活気が無いように見受けられる。
カウンターに向かうと、そこにはいつものユーリの姿があり、ジュンキ達はひとまず安堵することができた。
「ただいま、ユーリ」
「遅かったわね、ジュンキ。どうして特産キノコの納品依頼で、一ヶ月近くもかかるのかな~?」
「うっ…」
ジュンキは言葉に詰まる。
だがユーリは事情を知っているはずだ。
「ま、どうしてなのかは、ちゃんと手紙を受け取っているので知ってますけどね。無茶はいけませんよ?」
「…はい」
ユーリの忠告に、ジュンキは素直に頷くしかなかった。
その様子にユウキやカズキ、チヅルにクレハは笑っていたが、ショウヘイだけは真剣な表情を変えなかった。
「ユーリ。一体何があったんだ?」
ショウヘイの質問に、ユーリの顔が曇る。
「実はね、あなた達がこの街を離れている間に―――」
「―――古龍が、ここに向かってきているのよ」
ユーリの背後から聞き慣れた声が響いて、ジュンキ達は驚いた。
ユーリの背後から出てきた人物―――それは、ミナガルデの酒場で仕事をしているはずのベッキーだったのだ。
「ベッキー!」
チヅルとクレハが声を合わせて驚きの声を上げる。
「久しぶりね。みんな元気そうで安心したわ」
「どうしてここに…?」
「緊急事態でね。ミナガルデの代表として、ギルド本部に召喚されたのよ」
ベッキーは少しだけ俯いて、ジュンキの問い掛けに答えた。
「…古龍って言ったな。説明してもらえるか?」
ショウヘイの真剣な声に、ベッキーは頷いた。
「今、このドンドルマに向かって、古龍ラオシャンロンが向かってきているの」
「ラオ…シャン…ロン…?」
カズキが首を傾げたが、それは他の5人も同じだった。
ラオシャンロン―――聞いたことの無い名前だった。
「歩く山とも言われる、巨大な古龍です」
ユーリが付け加える。
「だったら早く避難しないと。酒場を経営してる場合じゃないんじゃないか?」
ユウキがそう言うと、ベッキーは微笑んだ。
「大丈夫よ。この街は、対古龍設備が整っているから。ラオシャンロンは、この街の南方にある砦で、防ぐことになっているわ」
街の雰囲気が暗いのは、どうやら古龍がこの街に迫ってきているからのようだ。確かに落ち着けたものではないだろう。
「そこで、あなた達にお願いなんだけど…」
「古龍撃退に協力して欲しい。でしょ?」
チヅルが笑顔で答えると、ベッキーとユーリが「そうなのよ」と頷いた。
「みんな、いいよな?」
「もちろん」
「あったりまえさ!」
「頑張らなくちゃね!」
「俺に任せとけ!」
「わくわくする~!」
ジュンキは全員の肯定を確認すると、古龍撃退依頼に参加することを決めた。
「だけど、ひとつのパーティは最大4人までよ。どうするの?」
「…少し時間をくれないか?みんなと話し合いたい」
「砦への出発は2日後だから、それまでに決めておいてね」
「今すぐ決めるよ」
そう言って、ジュンキ達は丁度空いていた長テーブルに座った。
「さて、どうする?」
「やはりここはバランスだな」
ジュンキが発言を促すと、真っ先にショウヘイが意見を出した。
「バランス…。俺は大剣だけど」
とジュンキ。
「俺は太刀だ」
とショウヘイ。
「ライトボウガン」
とユウキ。
「双剣」
とチヅル。
「ランス」
とカズキ。
「双剣で~す」
とクレハ。
「…大剣、双剣、ライトボウガン?」
「…太刀、双剣、ランス?」
「大剣と太刀は似てるから、被るのは良くないだろ」
「それに太刀、双剣、ライトボウガンだと、防御が可能な武器が無い」
「…じゃあこれでいこう」
ジュンキが意見をまとめていくが、ここでひとつの問題が出てきた。
それは、双剣使いのチヅルとクレハが、どちらに入るかである。
「どうする?2人で話し合って決めてくれるかな?」
ジュンキにそう言われて、チヅルとクレハは向かい合った。
チヅルの目が懇願するように輝いているのを見て、クレハは笑顔で頷く。
「じゃあ私は、ショウヘイとカズキの方に行くね」
「チヅルは俺とユウキの方になるけど…いい?」
「うん!頑張るよ!」
チヅルがとても嬉しそうに言った。
こうして、古龍撃退戦はジュンキ、チヅル、ユウキのパーティとショウヘイ、クレハ、カズキのパーティの二つに別れて参加する事になった。
ユーリにこのことを伝えると、長旅の疲れもある上に古龍撃退戦の準備もしなければならないので、ジュンキ達の6人パーティは解散となった。