レンヤ、レイナ、フェンス、ショウヘイ、ユウキ、カズキ、リヴァル、リサが座ると、それだけで集会場のテーブルをほとんど占拠してしまった。
「…それで、あいつらの子供さんが、俺達に何の用だ?」
リヴァルの少し強い言葉に緊張しつつも、レンヤはしっかりと前を向いて言った。
「父さんと母さんの行方を教えて下さい」
「お願いします」
レンヤが頭を下げ、続けてレイナも頭を下げる。
リヴァルとリサは互いに顔を見合わせると、リサがゆっくりと口を開いた。
「あなた達のご両親である、ジュンキさんとクレハさんですが…」
ここで言葉に詰まるリサ。するとリヴァルがテーブルを一度叩き、言葉を繋いだ。
「死んだ…と聞いている」
リヴァルの言葉に表情が曇るレンヤとレイナ。
「誰から…聞いた話ですか…?」
レンヤの震える声に、リヴァルとリサは再び顔を見合わせた。そしてレンヤとレイナの背後で見守るフェンス達を見て、苦しそうに答える。
「だ…ダーク、だ…」
リヴァルが出した名前に、フェンスとショウヘイ、ユウキにカズキが同時に「あ~…」と思い出したような声を出す。
「それと、レイスさんですね…」
続けてリサが出した名前に、再び「お~…」と声が上がる。
一方、レンヤとレイナは真剣な表情で話し合っていた。
「リヴァルさんとリサさん、俺達の質問に困った表情をしていたな…」
「2人とも知らないのかな…」
「そして、再び別の名前が出た」
「お兄ちゃん、これってタライ回しっていうのかな…」
2人の会話が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが、リヴァルは咳をひとつ入れた。
「とにかくだ。ここにあいつらの情報は無い。無駄足だったな」
「…これからどうするの?」
リヴァルの強い口調とは反対に、リサは優しい言葉を掛けてくれた。
「お父さんとお母さんの情報を探し続けます。リサさん、ダークさんとレイスさんが居る場所を教えて下さい」
レイナの言葉に、リサは困った表情を浮かべた。横目でリヴァルを見たが、リヴァルは首を横に振る。
「…ごめんなさい。私達も居場所までは…」
リサの言葉にレンヤとレイナが肩を落とそうとしたその時、背後からショウヘイとユウキの声が聞こえた。
「ああ、それなら知っているぜ」
「ふた月くらい前、合同で狩りを行ったからな」
ショウヘイとユウキの情報によれば、ダークとレイスという人物はドンドルマという巨大な街に居るらしいことが分かった。
レンヤとレイナはジャンボ村からポッケ村まで移動した疲れが残っているものの、すぐにでも出発したいとの意思を伝え、集会場を出た。
「お前達は付き添いなのか?」
リヴァルの問い掛けに、カズキが「おうよ!」と答える。
「どうしてこの2人に付き合うんだ?」
「そりゃあ、ジュンキとクレハの子供だからな。生まれた時から仲間みたいなものさ」
ユウキの言葉に、リヴァルは黙ってしまった。すると今度はリサが「今日は泊まっていったらどう?」と誘ってくれたが、レンヤとレイナは丁寧に断った。
「次こそ、父さんと母さんの情報が得られるかもしれません」
「私達は、一日も早く会いたいんです…」
レンヤとレイナの決心は固く、リヴァルとリサはそれ以上引き留めることをしなかった。そんな2人を、ショウヘイが誘う。
「リヴァルとリサも一緒に来ないか?情報交換もあるが、もしかしたらジュンキとクレハに会えるかもしれんぞ」
「…今はこの村を離れられないの」
リヴァルとリサは顔を見合わせ、リサが申し訳無さそうに言った。
「ドドブランゴがこの村と下界を繋ぐ山道に現れたの。先日追い払ったけど、またいつ出てくるか分からない…」
「そうか…。ん?」
ショウヘイは隣に人の気配を感じ、言葉を切ってそちらを向くと、そこには村長が先程と打って変わって深刻そうな表情で立っていた。
「村長、どうした?」
リヴァルが尋ねると、村長は「出たよ」とだけ言った。それだけでリヴァルとリサは理解したようで、一気に緊張の糸が張る。
「ドドブランゴか…」
ショウヘイの言葉に村長は頷いた。
「懲りもせず、また山道に出た。村人が見つけて戻ってきたよ。急いで街へ行きたいだろうが、危険が無くなるまで待っていておくれ…」
村長の言葉を無視することは出来ず、レンヤとレイナは「分かりました…」と頷いた。
村長は再びリヴァルとリサの方を向く。
「さて、2人に村から正式に依頼するよ。ドドブランゴの狩猟をお願いね」
「分かった」
「分かりました」
リヴァルとリサは同時に頷くと、レンヤとレイナ達の方を向いた。
「聞いた通りだ。これから俺とリサでドドブランゴの狩りに行ってくる。それまで村の中で待っていてくれ」
「半日は戻ってこないと思います。温泉に入って待っていて下さい」
温泉という言葉にフェンス、ユウキ、カズキは「いやっほぅ!」と嬉しそうに飛び上がったが、ショウヘイは真剣な姿勢を崩さなかった。
「俺達に手伝えることは無いか?」
「いや、大丈夫だ。この周辺に現れるドドブランゴなら難しくない」
「そうか…。なら、この2人を連れて行ってみないか?」
ショウヘイはそう言い、レンヤと左肩とレイナの右肩を同時に叩いた。レンヤとレイナは同時に「えっ!?」と驚きの表情でショウヘイを見上げたが、リヴァルも「なっ…!」と驚いていた。
「どうして連れて行かなきゃならんのだ」
「レンヤとレイナはハンターとしての経験が浅い。出来る限り、様々な狩りを見せてやりたい」
ショウヘイはここまで言うと、リヴァルとリサの返事を待った。リヴァルは不機嫌そうに顔を歪めているが何も言わず、リサは微笑んでいる。ショウヘイは肯定的に受け止め、リヴァルが納得するであろう理由を言った。
「それに、ジュンキとクレハの子供だ。実力を見てみたいと思わないか?」
ショウヘイの予想通り、リヴァルの目の色が変わった。