モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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2章 手掛かり探し 06

「ジャンボ村…?」

その名前に、レンヤとレイナは首を傾げた。これまで生きてきて、一度も聞いたことの無い地名である。

「ああ、そうだ。この街からだと結構な時間がかかるな」

ユウキは軽い口調で言い、昼だというのにビールを口へ運ぶ。無事にドスガレオスの狩猟を終えた4人はフェンスと待ち合わせ、酒場のユーリと共に今後の話を進めていた。

「そこに、父さんと母さんの手がかりがある…」

レンヤは記憶へ刻むように呟くと立ち上がり、頭を下げた。レイナも慌てて追従する。

「ありがとうございました!必ず父さんと母さんの居場所を探し出します!」

「お世話になりました」

2人はそのまま酒場の出口へと歩き出したが、すぐにユウキが呼び止めた。

「ちょっと待て待て!2人だけで行くつもりか?」

「はい。場所が分かれば、そこへ行くだけですから…」

「それに、これ以上は迷惑を掛けられません…」

レンヤとレイナの言葉に、黙っていたショウヘイがゆっくりと口を開いた。

「…誰も迷惑だなんて思っていない」

「え…?」

ショウヘイの言葉に、レイナは皆の顔を見渡した。ユウキは笑顔であり、フェンスも嬉しそうだ。ユーリも微笑んでいる。

「俺達の仲間の子供が訪ねてきたんだ。迷惑な訳ないだろう?」

「そうそう。嬉しい限りだよ」

「私達も、ジュンキやクレハがどうなったのかを知りたいの。お手伝いさせて?」

「いいんですか…?」

レンヤの確認に、ユーリは「ええ!」と頷いてくれた。

「…となると、ジャンボ村への行き方が問題になるな。フェンス、どうするのが一番良いと思う?」

「そうですね…。やはり、定期便を使うのが一番確実だと思いますよ」

「だよなぁ」

「だけど、定期便は稀にモンスターに襲われる。大抵は同乗しているハンターが追い払うから、そこまで問題にならないと思うけど」

「だが、万が一といこともある」

ショウヘイの一言で、フェンスは口を閉じてしまった。すると、ユーリがパンッと手をひとつ打つ。

「そうだ。あなた達が2人の護衛をすればいいんじゃない?」

その言葉に、レンヤ、レイナ、フェンス、ショウヘイ、ユウキは互いの顔を見合わせた。

「ショウヘイやユウキも当面は暇でしょう?」

ユーリは顔をショウヘイとユウキへ向ける。

「まあ、そうだな」

「別に忙しくは無い」

「フェンス君も、村へ戻るのは久しぶりじゃないの?」

「そうだな…」

フェンスは一度頷くと、様子を見守っているレンヤとレイナの方を向いた。

「俺がジャンボ村まで案内するよ」

「ほ、本当ですか!?」

「ありがとうございます!」

レンヤとレイナは同時に頭を下げた。そこへショウヘイとユウキも声を上げる。

「俺達も行くぜ」

「久々に、カズキとも会いたいからな」

ショウヘイとユウキが立ち上がる。遅れてフェンスもその場に立つ。

「行こう!ジャンボ村へ!」

ユウキが拳を突き出し、他の4人も拳を当てた。

その様子を見たユーリは全員の無事を祈ったのだった。

 

ユウキがミナガルデの街で言った通り、ジャンボ村は街から数日もかかる場所にあった。

ミナガルデと大きく違うのは気候だった。一日を通して気温と湿度が高く、ムシムシしていた。動植物も見たことのないようなものばかりで、長い旅路の間もレンヤとレイナは飽きることが無かった。リアも大人しいもので、レイナ達以外の人間が近くにいる時は微動だにしなかった。

そして到着したジャンボ村は、ココット村と比較しても大差無い規模だった。しかし、村の中の道は整えられた石で敷き詰められて舗装されており、とても歩きやすい。

「ココット村もこうならないのかなぁ」

「ここは雨が多いから、足が汚れない工夫だね」

「そっか。ココット村はそこまで雨が多くないから、別にいらないのかぁ」

レンヤとレイナの会話を聞き、フェンスが笑顔で振り向いた。

「雨でも足元が汚れないのは、村の外から来る商人からも評判なんだ」

フェンスの補足に、レンヤとレイナは「おおー」と驚く。

その様子を見て、ショウヘイとユウキも自然と笑顔になってしまう。

「いいな、子供って…」

「お前も早く相手を見つけろ」

「余計なお世話だっ。それを言うならショウヘイだって―――」

「…カズキだな、あれは」

「話を聞けよっ!」

ユウキの言葉を無視してショウヘイは立ち止まり、レンヤとレイナ、フェンスも歩みを止める。

ショウヘイの目線の先には、小さな酒場があった。天井は無く、カウンターと椅子に見立てた酒樽が4っ5っ。酒場を切り盛りするひとりの女性がカウンターの内側で座り、ハンターと思われる人物と村の男性、3人で話をしているようだった。

ショウヘイは再び歩き出す。距離が縮まるにつれて、ハンターと思われる人物の様子が詳細に見えてくる。

そのハンターは全身を漆黒の防具で包み、横には同じく漆黒の槍と大きな盾。槍の長さはそのハンターの背丈よりも長い代物である。

「…カズキ」

ショウヘイが呼び掛けると、そのハンターもこちらを振り向いた。

「…!」

眉間に皺を寄せた厳めしい顔が向けられ、レンヤとレイナは背筋がぞっとした。モンスターと鉢合わせたような感覚に、2人は危うく背中の武器へと手を伸ばすところだった。

次の瞬間、カズキの顔が一気に笑顔へと変わり、レンヤとレイナは拍子抜けしてしまう。

「ショウヘイ!ユウキ!うおーっ!久しぶりだなぁ!」

カズキは飛び上がり、ショウヘイとユウキに握手を求める。2人がこれに応じると、勢い良く上下に振り回した。

「カズキさん、只今戻りました」

「フェンス!お前も突然戻ってきたなぁ!」

カズキはフェンスに向かって突撃するが、フェンスはこれを軽く横へ動いて避けてしまった。どうやらカズキの元気なところが苦手のようだ。

「で、この2人は?新人ハンターか?」

「まあ、そうなんだが…。カズキ、酒場を使わせて貰うが、いいか?」

「ああ、話なら丁度良い。村長もいるし」

どうやらカズキと一緒に話をしていた村人は村長のようだ。

レンヤとレイナはこの元気な男に連れられ、小さな酒場へと向かったのだった。


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