転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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……うん、すいません。
今回で入れると言った主人公の酔っ払いシーンですが……なしになりました。
ちょっとはっちゃけ過ぎて、色々おかしくなったので丸々カットしました。
楽しみにしていた方々、本当に申し訳ありません。


第八話 朽木家の嫁入り騒動

「そうか! ついに許可を貰えたか! 早速婚儀の準備をせねば!」

「めでたい報告だね、おめでとう、白哉」

 白哉から緋真の兄から婚姻の許可を取り付けたと報告を受けて、私は明日にも緋真を義娘として迎える準備を行おうとしたが、白哉に止められてしまった。

「ありがとうございます、父上、それとお祖父様、お待ちください、響殿から最低でも一月は嫁入りさせぬとの言伝もあります」

 

 白哉の言葉に、私は思わず固まった。

「一月後?」

「はい」

「半月、いや1週間の聞き間違えではないか?」

「いえ、一月後とはっきり仰られました」

「……もし破ったら」

「緋真は渡さんと」

「……待つしかないのか……」

「はい」

「そうか……一月後か……」

 

 仲の良い二人の話を聞く至福の時間が……この爺の楽しみが……。

「お父さん、緋真ちゃんにも色々と準備する時間が必要ですよ」

「それは、そうかもしれんが……長いなぁ」

「それに一番残念に思ってるのは白哉だと思いますよ?」

「ハッハッハ! それもそうだな!」

「なっ!? 父上! お祖父様! そんなことは……」

「最後まで否定しないあたり素直になったよね、これも成長かな?」

「ッ」

 顔を赤くして視線を逸らす白哉を見ていると、本当に変わったなと実感するな。

 

 緋真との出会いは白哉だけでなく、朽木家にも良い影響を与えている。

 白哉の変化が一番大きいだろう。

 緋真を嫁に迎えれば白哉も多少は落ち着くだろう。

 精神的にも大きく成長する機会でもある。

 いい加減すぐに熱くなって冷静さを失う所も直していかねばならぬ。

 

 …………まぁ、緋真が早く嫁に来てほしいのは私も同感だがな!

 緋真の兄にも早く会いたいものだ。

 緋真にルキア、どちらもとても良い子だ。

 そんな子達を育てた兄にも興味がある。

 潜在能力も高ければよい死神になれるのではないか?

 うぅむ……そういえば、白哉はかの兄と話をしていたな。

 どういう人物か聞いてみるか。

 

「ところで白哉よ、緋真の兄はどのような御仁だった?」

 

「外見は偉丈夫という言葉が似合うお方でした。 接してみれば、家族をとても大事にしており、緋真達の雰囲気は兄から影響を受けたと思われます。 ……そういえば、建築や狩りなどもすると伺いました」

「え?」

「そうか……ん?」

聞き間違いか?

今建築と言ったような……?

「け、建築? 狩りはまだしも建築もするのかい?」

「平屋を下級貴族の屋敷の様に建て直したそうです」

 平屋を増築? 下級貴族の屋敷と同等規模? なんだそれは?

 

「……かの兄は職人か?」

「いえ、ですが緋真とルキアによれば兄にできないことは見たことがないと」

「それはすごいね。他にも何かやってなかったかい?」

「……そういえば、屋敷の外に畑がありました……もしかすると農業も行っているのかもしれません」

「そ、それはすごいね」

「確かに白哉が把握していることだけでも多才さがよくわかるな……して、白哉よ」

「はい」

「その者は死神としてやっていけそうか?」

「はい、初めて出会った時に感じた霊圧は既に副隊長に相当するかと」

 なんと! それは朗報だ!

「ならば私が後見人となり、霊術院へ推薦してもいいな」

 死神になれば瀞霊廷で暮らすことができ、緋真にも会いやすくなるだろう。

 ルキアもこちらで養子として受け入れてもよいな!

 いや、むしろ来い!! 是非とも来てくれ!!

 私に孫に囲まれた幸せな生活をくれ!!

 

「お祖父様?」

「む? どうした白哉よ」

「いえ、報告は以上ですが……何かございますか?」

 む、どうやら幸せな想像をしている内に話が終わったようだ。

「いや、何もない、下がってよいぞ」

「はい、では失礼します」

「白哉もゆっくり休みなさい」

「はい、父上」

 白哉は立ち上がり、一礼すると部屋から出て行った。

 

「まったく……お父さん、妄想にふけってないでちゃんと話を聞いてください」

「妄想ではない、想像だ」

「どうせルキアちゃんの事、考えていたんでしょう?」

「うぐっ、なぜわかる」

「ルキアちゃんと遊んでいる時の顔をしていたからですよ」

「……ルキアを養子に……」

「無理だと思いますよ? ルキアちゃんはお兄さんの事が大好きみたいですし」

「ぬぅぅ……」

 緋真とルキアがおれば、私はあと1000年は隊長を務めることができるというのに……!!

 

「さて、私たちも緋真ちゃんを迎え入れる準備をしましょうか」

「そうだな! 緋真の部屋は「白哉と同じで、それか隣でいいでしょう」……私はまだ何も言っていないのだが……」

「お父さんの部屋の近くはダメですよ」

「なぜわかる!?」

「分からない訳がない」

「……真面目に考えるか」

「そうしてください」

 

 

 蒼純と緋真の嫁入り準備をしつつ、私は幸せな老後生活に思いをはせた。

 

 

 

 

「ほぅ! ようやくあの白哉坊も緋真と結婚するのか! それは目出度いのう!」

「夜一殿にも白哉のことで世話になった、式に来てくれぬか?」

 白哉をいつものように揶揄(からか)いに来た夜一殿を捕まえて、招待状を渡した。

「ん? なんじゃ、もしや式は身内のみで行うのか?」

 招待状を受け取った夜一殿は、首を傾げていた。

 

「うむ、緋真は流魂街の出だからな、他の貴族が来れば陰口を言われよう」

「目出度い日に莫迦者どもの相手をする必要はない……か、ずいぶんと過保護になったのう、銀嶺殿」

 おかしそうにニヤニヤと笑う夜一殿に、私は胸を張る。

「娘を甘やかして何が悪い」

「……今、絶対に『義』の文字を抜かしたじゃろ……まったく」

「そういう夜一殿も、緋真には甘いではないか」

 ジト目で見てくる夜一殿にそう返せばカラカラと笑われた。

 

「可愛い友を甘やかして何が悪い、砕蜂とはまた別の可愛さがあってつい甘やかしてしまう」

 砕蜂……蜂家の末っ子だったか……気の毒に、さぞかし遊ばれていることだろう。

 今この場には居ない蜂家の娘の苦労を思うと、非常に哀れに思う。

 緋真とは普通に接しているというのに、この差はなんなのか。

「緋真の性格の所為かのぅ……悪戯しても仕方なさそうに笑われると、こっちが子供みたいに感じてしまう…………まぁ、やりすぎたら叱られてしまうが…………」

「最後に何と言いましたかな?」

「なんでもないわい」

 

 そういうと、夜一殿は門へ向かって歩き出した。

「白哉を揶揄わなくていいのか?」

 私がそういうと顔だけこっちへ向けて。

「それよりも緋真の結婚祝いの準備が先じゃ」

 と言って帰って行った。

「ふむ、私ももう少し準備しておくか……」

 

 

 緋真が嫁に来るまで、後2週間か……長いな……。

 

 

 

 

 そうして、ようやく長い一か月が過ぎた。

 準備は完了している。

 緋真の部屋は基本的に白哉と同じ部屋だが、隣に自室を用意。

 緋真の家族であるルキアと響殿の服を用意し、白哉を通して渡し済みだ。

 ルキアと響殿の服は高級呉服屋で最高級の仕上がりだ。

 特に響殿には銀白風花紗も一緒に届けてある。

 

 私は気が付いたのだ。

 ルキアを娘にしたければ、響殿ごと迎えてしまえばいいではないかと。

 銀白風花紗は私からのメッセージだ。

 本人にではなく、後から彼に目をつけるであろう夜一殿に対してだがな。

 なんとなくだが、夜一殿と響殿は意気投合しそうな気がしている。

 響殿にはあったことはなく、緋真や白哉からの話でしか聞いたことがないのだが、そんな予感がするのだ。

 

 そうして準備を整えた私の耳に、嵐山響様ご一行が到着されました。との報告が入った。

「わかった、すぐに向かう」

「お父さん、あまり変なことは言わないでくださいね」

「はっはっは、言うわけないだろう」

 もしかしたら私の息子になるかもしれない男だぞ。

 どのような男か期待が高まるな。

 では、さっそく噂の人物に会いに行くとしよう。

 

 

 

 まず最初に抱いた印象は『偉丈夫』の一言。

 遠目にもわかる、その体の大きさと筋肉だ。

 隣にいるルキアの頭が腰くらいまでしかない所為か、その大きさが際立つな。

 袖から見えている腕も非常に太く、よく鍛えられていることがわかる。

 

 

 次いで印象に残ったのは、その佇まい。

 武の心得があるのか、重心はしっかりと中心からブレず、自然体でありながらも隙があまりない。

 動きから察するに、得物は恐らく長物と思われるが、剣も使っている動きだ。

 

 感じられる霊圧は並みの副隊長を凌駕している。

 こんな若者が野に埋もれていたというのか。

 

 そんなことを考えていると、響殿がルキアを伴ってこちらへ歩いてきた。

「初めまして、私は嵐山響と申します」

 おぉ! 流魂街の出だというにしっかりとした礼節を持っているではないか!!

 いや、緋真もそうだったのだから、予測できたことか!

 それでもこれは良い!!

「あぁ、貴殿の事はルキアや緋真からよく聞いているぞ! 私は朽木銀嶺! 気軽にお爺ちゃんと呼んでくれてもいいぞ!!」

「…………お父さん」

 私の言葉に蒼純があきれた声を出しているが、それよりも目の前の人物と話がしたかった。

 

 響殿は瞠目した後に軽く笑みを浮かべた。

「私のことは響でいい、宜しく頼む、爺さん」

「おぉ!! 早速呼んでくれるのか!! 柔軟な対応!! 実に良いぞ!!」

 うむうむ、やはり緋真を育てた御仁! 実に良い対応だ!!

「わたしもぎんれいさんじゃなくて、おじいちゃんとよんだほうがよいのか?」

「是非とも!」

「ぜひ?」

「呼んでくれってことだ」

「なるほど! おじいちゃん! こんにちは!」

 響がルキアに説明すると、ルキアはすぐに私のことを『おじいちゃん』と呼んでくれた。

 ルキアがおじいちゃんと呼んでくれた……これで私はあと100年は戦える。

 

「すまないね、私の父はちょっと感情が振り切れてるんだ」

「今日は目出度い日だ、偶には良いだろう」

「たまにだったらいいんだけどね、これから毎日こうなりそうだよ」

「今度滋養に良い山菜でも送ろう」

「ありがとう、自己紹介が遅れたね、私は朽木蒼純だ。よろしくね」

「こちらこそ、嵐山響だ。父上と呼んだ方がいいか?」

「それもいいけど、君とは何だか対等でいたいと感じているよ」

「では蒼純と呼ぼう。これからよろしく頼む」

「あぁ、君とは仲良くできそうだ」

「そうだな……そろそろ爺さんを呼び戻したらどうだ?」

「そうだね……ほら、お父さん! いつまでも意識を飛ばしてないで戻ってきてください!」

 

 感動に浸っていたら、蒼純の声で現実に帰ってこられた。

 危なかった、今のままだったら私は丸1日感動に浸っていたかもしれない。

「おぉ、すまん、それで響よ」

「どうした、爺さん」

 うむうむ、これぞ私の求めていた対応だ。

 これから家族になる(親戚です)者に敬語を使われても嬉しくないからな。

 白哉は……うむ、ここまで崩せとは言わぬからもう少し柔らかくならないだろうか。

 それに響なら時と場所をわきまえるだろう。

 さて、本題に入るとしよう。

 

「うむ、実はな……お主、死神になるつもりはないか? 私が後見人となり、霊術院へ推薦するぞ」

「すまない、爺さん……俺は緋真が帰ってくるあの家を出るつもりはないんだ」

 私の提案はすぐさま拒否されてしまった。

 む、そうか、響とルキアを養子にすると、緋真の実家に誰も居なくなるのか。

「……そうか……お主は霊圧も高く、佇まいも隙が無い故に良い死神になれると思ったのだが……」

「すまないな、爺さん。俺は緋真の帰ってくる場所を護ってやりたいんだ」

「…………人を派遣するぞ?」

「妹の居場所は自分で守ってこそだろう?」

 ムムム、その心意気は素晴らしいのだが……はぁ、これは無理そうだな。

「気が変わったらいつでも言いなさい、その時は推薦状を書いておこう」

「あぁ、その時は頼むよ、爺さん」

 

 

 はぁ~、残念だな……まぁ、良い。

 その時が来たら、あれこれ言って養子に迎えてしまおう。

 響はいつの日か死神になるだろう。

 その時は覚悟しておれ、響よ。

 

 

 その後、響とルキアは女中に呼ばれて去っていった。

「全く……本当に勧誘するとは思いませんでしたよ」

 蒼純がため息をついとる。

「何を言っとるのだ、お主も実は乗り気だっただろう」

「……まぁ、否定はしませんけど……気が合いそうでしたし」

「……緋真とルキアが良い子に育ったのは、響のお蔭か」

「……そうですね、戌吊でよく二人の子を養えたものです」

「それだけ二人を愛しておるのだろう」

 響のルキアを見る目は優しかった。

 目に見えてわかる愛情を注がれているのだ。

 あれなら真っ直ぐに育つだろう。

 

「さて、私達も移動するとしようか」

「そうですね、白哉の顔を見ておきましょう」

「現実味がなくて、棒立ちしている姿が目に浮かぶわ」

「私もです」

 蒼純と白哉の様子を話しながら、幸せな未来に思いをはせた。

 

 

 白哉と緋真よ、幸せになれ!

 




銀嶺さんと蒼純さんのキャラは完全に捏造です。
あと、斬魄刀について指摘があり、名前を変更する事になりました。
まさかアニオリで出ていたとは知りませんでした。
今後、斬魄刀の名は「雷花」から「雷公」となります。

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