転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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……お、お久しぶりです、皆さま……

全開に更新したのは九月……かなり前ですね……
いや、本当に申し訳ないです。
今回の話は大分短いですが、これ以上悩んでいるとさらに遅れそうなので投稿することにしました。

今回も楽しんでいただけると幸いです。



第二十話 獣の咆哮

 剣八は考えていた。

 昔、勘に従って自分の隊に取り込もうとした嵐山響と戦うにはどうしたらいいか。

 あれから結構な日々がたったが、嵐山響と出会うことが全くない。

 たまに十番隊の近くをうろついて、見つけ次第襲い掛かってやろうと思っていたが、全くと言っていいほど出会うことがなかった。

 

 剣八がそこまで嵐山響に拘る理由は、ただ一つ、勘だ。

 嵐山響を一目見た時から感じていた。

 こいつは強い、最初から全力で戦ってもこいつは簡単に殺せないと。

 剣八はかなり楽しい勝負(殺し合い)ができると感じていた。

 恐るべき獣の嗅覚である。

 

 そして剣八は、良い事がある気がして十番隊へと向かっていた。

「剣ちゃん、また十番隊の近くに行くの?」

「あぁ、良い事がある気がするんでな」

 剣八の背中からピョコンと顔を出して問いかけるやちるに、剣八は凶悪な笑顔で答えた。

「そーなんだ? じゃあもしかしたら大ちゃんと戦えるかもしれないね!」

「あぁ、そうだな」

 やちるの言葉に、剣八は響との戦いを思い浮かべ、少し霊圧が上がった。

 

「と、霊圧は抑えてねぇと気づかれちまうな」

 勘に従っていつもつけている鈴まで外してきたのだ。

 御馳走を目の前にして逃げられてはたまらないと、高揚した気分を抑えて、周りを見渡しながら先へと進んでいく。

 十番隊の隊舎近くまで来た時、声が聞こえてきた。

 

「響さんの鍛錬は、何度経験しても驚くな」

「そうだな。響さんの斬魄刀は色んな効果があるみたいだし」

 どうやら十番隊の隊士が嵐山響の事について話をしているようだ。

 剣八はニヤリと笑いながら、上から聞こえてくる声が聞こえやすいように真下へと移動した。

 

「何よりあれだよな。あの世界の中に行けば周りを一切気にすることなく力を試せるっていうのがいい」

「響さん曰く、内包世界っていうらしいけどな。よくわからんが」

「まぁわからないものは置いといて、あれのおかげで俺達の実力も上がったからな!」

「その分他の奴らも実力が上がってるから気が抜けねぇけどな……」

「ん? どうしたんだよ」

 目を見開いて言葉が切れた同僚に首を傾げた。

 だが、その疑問はすぐさま解消された。

 

「面白れぇ話してるじゃねぇか」

 背後に感じる凄まじい霊圧。

 ギギギと言う音が聞こえてきそうな動きで、彼は背後を見た。

「…………ざ、更木隊長!?」

 そこには極悪人の様な笑みを浮かべた修羅がいた。

 少し間が開いたのは、いつもつけている鈴がなかった所為だろう。

 隊士たちは一瞬だけ大罪人が脱走でもしたのかと思ったことは、自分の安全の為に墓まで持っていくことにした。

 

 そんな大罪人顔の剣八がさらに凶悪に笑う顔を見て、隊士たちは顔を青ざめさせた。

「聞かせてもらおうか、その世界ってやつをなァ」

 完全に標的にされているであろう響と、巻き込まれるであろう冬獅郎に、彼らは心の中で謝った。

『響さん!日番谷三席!ごめんなさい!』

 誰だって命は惜しいのである。

 

 

 

 剣八は彼らから情報を聞き出すと、そのまま響がいる修練場へと案内してもらった。

 修練場へ入って目に入ったのは、霊力を込めて書かれた法陣だった。

 剣八には何と書かれているのか全く読めなかったが、そんなことは関係ない。

 法陣の真ん中で刃禅をしている響と冬獅郎に目がいっていた。

「やちる、お前は待ってろ」

「うん、いってらっしゃい!」

 やちるは剣八の背中から軽やかに降り立つと、修練場の壁にもたれて座り込んだ。

 

 内包世界に行く方法は、十番隊の隊士から聞き出していた。

 法陣に描かれた人一人が座れる円の中で胡坐をかき、斬魄刀に霊圧を込める。

 そうすることで、意識を内包世界へと入れることができると。

 

 そんなことができる響に、こいつは一体何なんだと思いもしたが、そんな些細な疑問は戦闘欲にあっという間にかき消された。

 

 そうして、剣八は内包世界へと意識を飛ばした。

 

 そして目に入ったのは、黒雲から襲い掛かる氷の巨龍とそれを迎撃せんと朱槍に凄まじい霊圧を込めている響の姿。

 その瞬間、剣八の理性は吹っ飛んだ。

 待ちに待った瞬間だった。

 すぐさま霊圧を食う眼帯を放り投げ、霊圧を全開にする。

 

「俺もまぜろやああああああああああああああ!!!」

 瞬間、剣八は死の気配を感じて、斬魄刀を切り上げた。

 ギィンと重い音と衝撃、あまりにも早い何かが首の横を通り抜けていった。

 響に目をやれば、その手に朱槍はない。

 全く視認できない速度で槍が投げられたのだと、剣八は理解した。

 そして、笑った。

 

 咄嗟だったとはいえ、自分が見ることができないほどの速度で飛来した槍。

 手に残る衝撃と、首から流れる血。

 確かに当たらなかった。

 だが、通り過ぎた時に発生した真空の刃が、霊圧で硬度を高めた剣八の体に傷をつけたのだ。

 それだけでかなりの実力者であることがはっきりとした。

 

『なんだ貴様は! 邪魔をするな!!』

 威圧的な言葉と共に襲い掛かってくるのは、氷の巨龍。

「ハッハア!! 良いぜ!! そうこなくちゃなぁ!!」

 氷の巨龍は凄まじく大きい。

 剣八に襲い掛かっていると言うのに、未だその体は黒雲から全てが露出しない。

 

 開かれた顎の大きさも剣八を簡単に丸のみできるだろう。

 剣八はその大きさから、本気で刀を振るうことにした。

 剣道の構えなんざ気に入らないが、流石にこの大きさの物体を片手で切るのは辛いだろう。

 だから両手で正眼に構えて、そのまま振り下ろした。

「オラアアアアアア!!」

『オォォォオオオ!?』

 氷の巨龍の顔を真っ二つに切り裂いた。

 

「マジかよ……あの大きさの氷輪丸を斬りやがった……」

『やりおる!! だが、氷を断ち切ったところで意味などない!! 行くぞ、冬獅郎!』

「あれに手を出すのはどうかと思うけどなッ!」

 乱入してきた剣八の行動に驚きの声を上げた冬獅郎は、氷輪丸へ込める霊圧を上げた。

 すると二つに裂かれた氷の巨龍は、刻まれた半身を変化させ二体の氷の龍へと変化した。

「おもしれえぇ!!ハァーーーハッハッハッハッハ!!」

 

 二体に増えた氷の龍を更に切り刻む。

『無駄だと言っているだろう!!』

 切り裂かれた龍は、刻まれた分だけその数を増やす。

 その数は既に100を超えていた。

 氷雪系最強の氷輪丸。

 そして、隊長格から天才と言われる日番谷冬獅郎が協力すれば、その力は響に並ぶ自然災害級だ。

 

「チッ、流石に飽きて来るぜ」

 襲ってくる氷の龍を砕きながら、氷の鎧を纏う冬獅郎を見る。

 そして気が付いた。

 嵐山響の姿がない。

 

 そう思った瞬間、剣八は後ろへと飛びのいた。

 そして剣八がいた場所に朱い槍が地面を砕いた。

「響ィィィイl!!」

 剣八は凶悪な笑みを浮かべて、いつの間にか地を砕いた槍を構えている響へと斬り掛かった。

 

『我を無視するとは良い度胸だ!』

「もうテメェに用はねぇんだよ!!」

 剣八は響に刀を振り下ろしながら、霊圧を全開にする。

『ぐぅぅ!! 刻まれすぎたか……ッ!』

 何度となくその身を刻まれた氷の龍はその身を小さくされた分だけ、込められる霊圧が減少していた。

 もはや剣八にダメージを与えれるほどの霊圧を込められなくなっていた。

 それゆえに、剣八の全力全開の霊圧に耐え切れず、氷の龍達はその身を押しつぶされた。

 

「まるで響さんみたいだな」

「冬獅郎、後で話がある」

「…………しまった」

「ハッハッハッハ!!」

 剣八の人外染みた霊圧に思わず言葉を漏らしてしまった冬獅郎の言葉を聞いた響は、剣八と斬り合いながら静かに告げた。

 眉間に手を当てつつ嘆いた冬獅郎だったが、そこで異変に気が付いた。

 

「斬り合いをしている?」

 響の身体能力は凄まじい。

 まともな斬り合いなんて、響が望まない限りほとんどないと言ってもいい。

 

 なら響は剣八との斬り合いを望んでいるのだろうか?

 それはない。と冬獅郎は断言する。

 むしろ早々に叩きのめすだろうと。

 だと言うのに、二人は斬り合いをしている。

 

 二人の斬り合いをよく見れば、剣八の太刀筋は振り下ろされたかと思えば、途中で降り払いに変化している。

 かと思えばさらに太刀筋が変化してそれを響が槍で受け流している。

 

「マジかよ……!? 途中で太刀筋を変える……!? しかも響さんの速度についていけてんのかよ!?」

 剣八から言わせるなら全て勘である。

 

 そして響からしたら、避けた所に追いかけてくる太刀筋と戦うため非常に面倒くさい。

 響は内心で『この戦闘チートめが!! どういう勘してんだよ公式チート!!』と生き残る事に必死である。

「いいぜええ!! いいじゃねぇか響! もっと楽しもうぜえええ!!」

 対して剣八はご満悦である。

 

 

 流石にもう付き合っていられないとばかりに、剣八を槍の神速の薙ぎ払いで吹き飛ばす。

 その手に雷の槍を握り、空へと放った。

 

 そして起こったのは天変地異である。

 天に広がる雷雲から、数十、数百と落ちる雷がこの世界の終わりを彷彿とさせた。

 

『「…………なんだこれは」』

 ほんの数秒の間に凄まじい回数の雷が地を穿つ。

 

 響が天に手を掲げると、その手に降り注ぐ雷が巨大な雷槍を作り出す。

 その威力は計り知れない。

 

 込められている霊圧が、冬獅郎の作り出した氷の巨龍とは比較にもならない……いや、比較することも烏滸がましい。

 吹き飛ばされた剣八も凄まじい霊圧に、自身の限界を超えた。

 先程まで感じていた霊圧が桁違いに跳ね上がった。

 

 それでも、響の雷槍には及ばない。

 今もなお充填される雷槍は既に、魂魄どころか世界を消し去りそうなレベルにまでなっていた。

 

 響は雷槍を強く握りしめた。

 それをみた冬獅郎は雷鳴に負けない様に叫んだ。

「響さん!! 流石にそれはまずいんじゃ」

 

 しかし冬獅郎の静止も空しく、世界を破滅させるような雷槍が放たれ、世界から音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、剣八VS冬獅郎、響でした。
……うん、もう何も言うまい。
私に戦闘描写は無理ですね(白目)

次の更新は……また未定ですが、読んでくださっている皆様に感謝を。
待っていてくださる方も本当にありがとうございます。
まだ、エタっている訳ではないので気長にお待ちください。

後、雷の所は『マラカイボの篝火』と呼ばれるものを参考にしました。
凄いですね、あんなに雷が落ちるなんて……実際に見たら怖くで外を出歩けなくなりそうです。

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