転生した彼は考えることをやめた   作:オリオリ

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今日は健康診断だという事を忘れてた……だが、投稿すると言ったので書き上げたよ……眠い……




第十一話 恋次の修行日和

「……俺の斬魄刀かぁ……」

 昨日寝る前に兄貴に呼ばれた時は、何かしたかと思ったけど……とんだ贈り物をしてくれたもんだぜ。

 

 兄貴の授業を受けてるから、斬魄刀がどういったものかは知っている。

 実際兄貴が解放する所も見たからな。

 

 兄貴の斬魄刀の名は『雷公』

 能力は知らねぇけど、畑に雷が落ちてっから、多分雷を操る能力だと思ってる。

 

 俺の斬魄刀はどんな風になんだろう。

「確か斬魄刀を解放するためには、対話と……同調……すんだよな?」

 けど、対話ってどうすりゃいいんだ?

 兄貴と同じように『刃禅』ってやつをやりゃいいのか?

「物は試し……やってみるか!」

 

 早速兄貴がやっているように、胡坐をかいて、斬魄刀を鞘に納めたまま膝に乗せる。

 んで、確か目をつぶってたよな。

 

 同じように目を閉じる。

 特に何かを感じることもねぇ……けど、少しこうしていれば何かわかるだろ。

 

 

 

「……はっ!?」

 ふと意識が覚醒する。

 周りを見ると、太陽が真上にあった。

「……俺に刃禅とかいうのは向いてねぇな」

 完全に昼寝してたわ。

 

 やっぱりこう大人しくしているのは性に合わねぇ。

 だったら斬魄刀を振りつつ、声をかければいいじゃねぇか?

「よし、しばらくそれでやってみるか」

 斬魄刀を鞘から抜いて、正眼に構える。

 剣道ってやつの基本の型らしい。

 素振りにはこれが一番向いてる。

 

「行くぜ……俺の斬魄刀おおおおお!!」

 上段から一気に振り下ろして、しっかりと止める。

 木刀でやってきた動作が、斬魄刀になっただけで重心が乱れて、しっかりと止めることができない。

「ぐぅ……まだまだあああ!! ハッ! ハッ! ハッ!!」

 何度も振り上げて、振り下ろして、重心を維持したまま、しっかりと止めることを意識する。

 

「俺の! 斬! 魄! 刀! めざ! めろおおおおおおおおおおお!!」

「うるさいわ!! 莫迦者!! 刃禅ができぬではないか!!」

 斬魄刀に声をかけつつ、素振りをしていたらルキアに鞘を投げつけられた。

「ぐっは!? 何すんだてめぇ!?」

 ガツンと頭部に衝撃を受け、落ちてきた鞘を受け取りつつルキアに叫んだ。

「先程から大声で叫びおって、私の居た所まで声が響いて来たわ! その所為でまったく集中できん!!」

「あぁ? あんだけ体動かすのが好きなお前が刃禅とかできるわけねぇだろ? どうせ寝てたんだろ?」

「……うるさい」

「図星かよ」

 ふてくされたようにそっぽを向くルキアに、内心で自分だけじゃなかったと安堵する。

 

「てかよ、どうすりゃ斬魄刀って目覚めんだろうな?」

 ふと疑問に思って聞いてみた。

 それに対してルキアからは冷たい目線……なんでだよ。

「響兄様の話を聞いてなかったのか? 対話と同調することで解放できるようになるのだろう」

「いや、そりゃ俺だってわかってる。そうじゃなくてよ、いつ話せるんだろうなってことだよ」

 俺がそういうと、ルキアは考えるように指を口に当てた。

 

「そういえば……斬魄刀を渡された時に『常に持ち歩き、自分の斬魄刀を目覚めさせろ』と言っていたな……ということは、共に過ごすことで話しかけて来る様になるのではないか?」

「……ってことは、今日明日で解放できるようになるもんじゃないのか」

 俺の言葉に、ルキアは頷いた。

「そういえば、響兄様は『魂の現身』とも言っていた。そうなると、私達の魂を馴染ませる必要があるのではないか?」

「……それってどうやんだ?」

「それこそ響兄様が言っていた『常に持ち歩く』しかなかろう。自身の発する霊圧が『浅打』に影響を与えるのだろう」

 

「それって刀に霊圧あてればいいんじゃねぇか?」

「さてな……そもそも霊圧を当てようにも、霊圧の発し方を私は知らん」

「……そういや、俺も知らねぇな」

「というか、そもそも霊力とはどう練るのだ?」

「いやお前……それを俺に聞くか? っていうか、お前あの歩法で霊力ってやつ使ってんじゃねーのか?」

「縮地の事か? あれは足に力を入れて一気に加速しているだけだ……恐らく」

「自信なさそうだなオイ」

 思わず二人して頭を抱える。

 

「けどよ、あんな速い動きを霊力なしでできんのか?」

 姿が見えないくらい速いんだが、鍛えたらそんなに速くなるのか?

「ふむ……言われてみれば……よし、恋次、やってみよ」

「は? あの歩法教えてくれんのか?」

 思わず尋ねてみれば、ルキアは頷いた。

「私は感覚で使っているからな。上手く教えられるとは思えんから……絵を描いて教えよう」

 そういってルキアは木の棒を持って、地面に絵を描き始めた。

 

「ここをこうして……こう、そして、こうだな……その後は、ここに力を入れて……」

「なぁ、ルキア……」

「なんだ?」

 地面に書かれた絵? を見て、俺は尋ねた。

「この部分はどこだ?」

「? 見ればわかるだろう? 足の筋肉だ。 ここの事だな」

「…………」

 ルキアが自分の脹脛を撫でてそういった。

 足の筋肉? このうさぎっぽい顔の着いた丸の中にたくさんあるうさぎ? の顔が?

 

「んじゃ、これは?」

 その足先にうさぎ? の頭の中をクマ? みたいな顔が三つほど並んで描かれている……いや、まじでこれ何のことを表してるんだ?

「これは力の入れ方だ。こうして流れているだろう?」

「……おう! そうだな!」

 この絵はダメだ!

 俺は早々に絵を理解することを諦めて、なんとなくでその構図を理解することにした。

 とにかくうさぎは筋肉で、クマは力の流れだ!

 

「そこでこうするのだ」

「今度は何だ!?」

 追加されたのはメガネらしきものを付けたクマ? の顔!?

「……さっきからどうしたのだ……? 力を止める場所だ」

 止める場所!? もう絵は良いから言葉で説明してくれと言いたいが、楽しそうに絵を描いているルキアにそういえば、間違いなく蹴りが飛んでくる。

「わ、わりい……次に絵を追加することがあったら何を言ってんのか教えてくれ」

 グッと抑えて、ルキアに続きを促す。

「それだと絵で描いている意味が「大丈夫だ! 俺は頭がわりぃから、どっちもないとわかんねぇ!」そ、そうか」

 

 ルキアが可哀想な者を見る目で見てくる。

 可哀想なのはお前の絵の才能だ!! って言いたくなるが、堪える。

「ここで力を止めたら、こうやって力を放つのだ」

 うさぎの恐らく足の先の位置から飛び出るようにして描かれるクマ? の顔。

 こういうのは何っていうんだっけか……あぁ、そうだ、確か混沌と書いてカオスって読むんだっけか。

 地面がうさぎやらクマ? やらでいっぱいだぜ……。

 

「それでそうしたら止まる為に、ここに力を入れる」

 ごちゃごちゃしていたうさぎの絵の少し隣に、もう一体の体を持ったうさぎが描かれる。

 まだ増えるのか……。

 そして、その前足の部分に眼鏡をかけたクマ? の絵が……。

「これに失敗すると、止まれずに思いっきり吹っ飛んでしまうから気を付けるように」

「あぁ、なんとなくわかったぜ」

 こりゃ、絵がない方がわかりやすかったな。

 

「わりぃルキア、一遍やって見せてくれ」

「いいぞ、では……」

 ルキアが俺にもわかるようにゆっくりと力を入れて、移動する。

「……そうか」

 多分だが、この力の流れってやつに霊力を使ってんだろ。

 んで、ルキアの様子を見るにこの霊力ってやつは深く考えないでも、多分使える。

 要はイメージだ。

「何かわかったか?」

「あぁ、なんとなくだが……いける気がするぜ」

「そうか、ならば一度やってみると良い」

「おう!」

 

 ルキアから少し離れて、イメージする。

 自分の動こうとする力の他にある霊力ってやつを、足先に貯めて……放つ!!

「よっしゃ! でき!? おわあああああ!?」

 シュンと一瞬で移動できたが、地面に足を着いた途端、俺の体は投げ出された。

 やべぇ!? 木にぶつかる!?

「戯け、だから忠告しただろう。まぁ、初めてだから仕方ないな」

 木にぶつかりそうだった俺は、気が付くとルキアに抱えられていた。

 ……姫抱きってやつで……ちょ、お前!? 顔がちけえ!!

「お、おろせ!!」

「む、暴れるな。すぐ降ろしてやる」

 

 抱えられていた状態から地面に降ろされて、顔の熱を逃がすように息を吐く。

 まつ毛長くて綺麗だったな……いやいや、何考えてんだ俺は!?

「しかし、入りはすぐにできるようになったな。私は少し時間が掛かったのだが……」

「ルキアが教えてくれたからな。一応、わかりやすかった」

 先程の事を頭から追い遣って、ルキアの言葉に返す。

 絵はともかく、説明自体はなんとなくでもわかった。

 そのお蔭だな。

 

「そうか! いや、私の絵は響兄様に苦笑されてな。白哉兄様と姉様は筋が良いと褒めてくれたのだが、響兄様の反応からもしや私は絵のセンスが悪いのではないかと不安だったのだ」

「……え」

「恋次も褒めてくれるのなら、心配はないな! しかし響兄様にも欠点はあるのだな……」

 あ、やべぇ……俺、対応ミスったかもしれない。

「ふふふ、今度響兄様に私の絵を見てもらって、センスを磨いて貰うのも恩返しになるかもしれんな」

「……!!」

 やべぇ!? 俺死んだかもしれない!?

 こ、ここでそのままにしたらマズい!!

 

「な、なあルキア……」

「恋次のお蔭で自信が持てたぞ!! ありがとう!」

「お、おう」

 今まで見たことないくらいきらきらとした笑顔を浮かべるルキアに、俺はただそう返すことしかできなかった。

 あ、これもうダメだ。

 後の対応は未来の俺に任せて、ルキアの珍しい一面を脳内に納めよう。

 こうも無邪気にはしゃいでいるルキアは初めて見たからな。

 

 

 そうして、俺は現実逃避した。

 

 

 

「で、結局この縮地で斬魄刀に影響あるのかね?」

「さてな、私にもわからん。が、どちらにせよ、長く共に居るのだ。大切に扱おう」

「……そうだな……」

 俺は斬魄刀を手に持った。

「「これからよろしく頼む、相棒」」

「ん?」「む?」

 重なった声に、思わず目を見合わせた。

「くっ、ハハハハハハ!」

「ハハハハハ! 考えることは同じか!」

 

 俺もルキアも、斬魄刀が目覚める日が待ち遠しいらしい。

 だから早く目覚めてくれよ。

 斬魄刀を見てそう念じた時、それに答えるかのように一瞬震えた気がした。

 

 

 

 そして、その日の夜。

 

 

「さて、恋次。何か言い訳はあるか?」

「……すみませんっした!」

 寝る前に兄貴に呼ばれた俺は、無表情で俺を見る兄貴にすぐさま頭を下げた。

 

 ルキアの野郎……帰ってくるなり、俺が絵を褒めた(勘違い)ことを報告に行った。

 それだけならまだ良かったんだが、その後の「響兄様にも欠点があるのだな!! だが心配するな! 私の絵でその欠点を直してやるぞ!」といった時は肝が冷えた。

「…………」

 ジロリと無言で一瞥された。

 

 流石の兄貴でも、自分の絵のセンスがアレだと思われるのは許容できないらしい。

 だが、兄貴はそれを上手く流した。

 食事の準備に戻ると言った時は、助かったと思ったが、すれ違いざまに寝る前に部屋に来るように言われた時は死んだと思った。

 

 いや、現在進行形で死ぬと思っている。

 しばらく無言が続いたかと思ったら、小さくため息が聞こえた。

「反省しているのなら良い。だが、ルキアが恥をかく前に認識を改めさせるように」

「は、はい!」

 ルキアの落胆した顔は見たくねぇが、命には代えられない。

 

 いつか、ルキアの絵を注意しなくては……。

 

 

 だが、俺はこの日の事をあまりにも緊張していた所為で、記憶を封印してしまい、はるか未来で『自分の絵は普通ではなかったのだな』と意気消沈したルキアを見て、静かに怒った兄貴と卍解戦闘訓練をさせられるとは、今の俺は思ってもみなかった。

 

 

 

「ふぅ……生きた心地がしなかったぜ」

 部屋に戻って、思わず息を吐いた。

 兄貴は普段から怒る姿を全く見たことないから、今回はマジで肝が冷えた。

 いつも頼りになる笑みを浮かべているのに、ほんの少しの間無表情になったからな。

 マジで死んだと思った。

 これから、思ったことは正直に言おう。

 

 それが、自分の為でもあり、相手の為だ。

 そう思い込んで、俺は斬魄刀を鞘から抜いた。

 シュランと心地良い音を出して、鈍く輝く刀身を見てると、鍛錬したい気持ちが沸いてくる。

 

 だが、今は就寝時間。

 やるのは簡単な刀の整備だ。

 斬魄刀は頑丈だから刃こぼれはしないらしいが、それでも確認するべきだろうな。

 

 そうして30分ほどで整備を終えて、枕元に備え付けた兄貴特製の刀置き台に置く。

 こうしてみると、本当に斬魄刀を手に入れたんだなと思う。

「明日からもよろしくな」

 斬魄刀に声をかけて、俺も床に就く。

 

 今日も疲れたな。

 明日も頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで、恋次視点の1日でした。
出したかったルキア達の絵も出せて、私的には満足ですw
さて、後は朽木家の話が終わると一気に時間が飛びます。
ようやく他の原作キャラとのやり取りを書くことができます!

飛んだ時間軸の中に、平子隊長達の虚化事件、浦原さんと夜一の逃亡事件もありますが、そこはあえて書きません。
状況から主人公が入り込む展開に持っていけない作者の力不足です……申し訳ない……

こんな作者ですが、これからも頑張りますのでどうか宜しくお願いします。

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