それ往け白野君!   作:アゴン

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今回は色々飛ばしちゃってます。次回以降今回までの話を大雑把に纏めますので、ご容赦下さい。


戦姫絶唱シンフォギア編
プロローグ 生への足掻き


 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

 

 少女は走る。その手に自分よりも幼い少女の手を握り、背後から押し寄せてくる死の大群から必死に、そして決死の思いで逃げ続ける。

 

「大丈夫だよ。大丈夫だから!」

 

女の子を励まそうと、自身も不安や恐怖と戦いながら掠れた声で叫ぶ。

 

気丈に振る舞いながら走り続ける少女達、けれどそんな彼女達を嘲笑うかの様に“死”は二人の前に躍り出る。

 

「っ!」

 

「こんな所にまでっ!」

 

死に回り込まれ、一瞬絶望に飲み込まれそうになる。叫びたくなる衝動を必死に堪え、それでも少女は生きる為に抗う。

 

「こっち!」

 

子供を抱え、少女が選択したのは生きる事に対する執着。どんなに濃い死が迫りこようとも、それでも少女は生きる事を手放したりはしない───否、したくはなかった。

 

 幼子の足がもつれる。もう長いこと走り続けていた為、幼子の体力は既に限界を超え、立っていることさえままならなかった。

 

そして、少女もまた限界だった。死という重すぎる圧力に苛まされ、それでも尚抗った彼女だが既に肉体は限界を迎え、心は折れなくとも肉体が無理だと叫んでいる。

 

それでも、少女は諦めなかった。今この手に握った命を守るため、自身にまだ立ち上がれると言い聞かせ、足に力を込める。

 

「お願い。諦めないで! 大丈夫だから、きっと絶対……だから!」

 

だから。既に体力も尽き果て、泣く事しか出来ない幼子に少女は懇願する。

 

まだ自分は死ねない。こんな理不尽に命を奪われる事なんて……絶対にあってはいけない。

 

故に……。

 

「生きる事を───諦めないで!」

 

 二年前、嘗て自身に言われた“願い”を口にする。

 

生きて欲しい。生きて生きて生き抜いて欲しい。そんな願望を叫んだ少女の前には、自分達を囲む死が、殺意もなく、敵意もなく押し寄せてきた。

 

諦めない。そんな彼女の願いを否定するかのように、死の軍勢は容赦なく彼女達に襲いかかる。

 

迫り来る死。それが避けようのない事実だと知りつつも、最後まで少女は諦めなかった。

 

子供を抱え、せめて盾になるよう死に背を向ける。それが無駄だと分かりつつも、少女は絶対に諦めたくなかった。

 

“死”が……来る。圧倒的数の死を前に一歩も怯まなかった少女、そんな彼女に死の鎌が振り下ろされた時。

 

───それは、突飛も無く現れた。

 

頭上から降り注げられる無数の刀剣と槍の雨、それらに貫かれた“死”達は音もなく崩れ落ち、炭化となって空中に消えていく。

 

唖然となる少女。そんな彼女の驚きが消える間もなく、状況は一気に激変していく。

 

「童女の命を狙うなど、天が許してもこの余が許さん! 消えるがよい!」

 

「はいはーい。そこで堂々とロリコン宣言するセイバーさんは置いといて、ちゃっちゃっと片付けてくれませんか? アーチャーさん?」

 

「何故そこで私に振る? まぁ、やることは変わらないから別に構わんが……なっ!」

 

押し寄せてくる死の軍勢を前に、白と赤と黒がまるで吹き消すように蹂躙していく様を見て、少女は固まる。

 

白い女性はその身と同じ大きな大剣を振るって奴等を凪ぎ払い、赤い男性は二刀の短剣で切り刻む一方、黒い女性は火や風を起こし、氷漬けにして粉砕していく。

 

 目の前の奴等は“災害”と認定され、人類ではどう足掻いても太刀打ちできない存在だ。人を殺す為に現れる奴らに此方の常識は一切通用しない。

 

なのに、だ。それなのに目の前の人たちはそんな奴等を相手に立ち向かい、蹂躙し、圧倒している。

 

「……凄い」

 

そんな言葉しか少女には浮かばなかった。だけど、これで安心だ。目の前で起こる映画のような場面に驚きながらも、少女は内心安堵した。

 

だが、その時。少女の肉体に変化が起きた。

 

「うっ、ぐ!? あ、あぁぁぁっ!!?」

 

 体の内側から溢れ出る奔流。押し寄せる力の波に呑まれ、その一瞬、少女は少女でなくなる。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「む?」

 

「これは……!」

 

 少女の体を突き破り、溢れ出るナニか。それらが溢れる瞬間を誰もが驚愕して見ていた瞬間、そのナニかは少女の体に巻き戻り、少女の体を蝕んでいく。

 

そして……気が付いた時は。

 

「あ、あれ? 私……何をして?」

 

少女の姿は先程とはまるで別の姿へと変異していた。

 

混乱する少女、だがそれ以上に困惑していたのは自身の内側から溢れて止まらない力の衝動だった。

 

少女はどこにでもいる普通の女の子、それは少女自身が自負している事だった。……その筈だった。

 

「い、一体何がどうなって……」

 

「お姉ちゃん格好いい!」

 

混乱する少女だが、幼子の場違いな感想に意識が現実を認識する。

 

そして、そんな時だ。

 

「響ちゃん、大丈夫かい?」

 

「へ?」

 

自身の耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。まさかと思い振り返れば……。

 

「岸波……さん?」

 

そこには、行きつけのお好み焼き店で新たにバイト店員として働いている。岸波白野がその手に一振りの刀を握りしめて佇んでいた。

 

「マスター、雑魚はあらかた片付いたが……気を付けろよ。奴等の特性を考えれば純粋な物理攻撃は通用しない」

 

「分かっている。今回のはあくまで実験。この礼装が通用するかどうかを確認するだけだ。……だから」

 

「うむ、奏者の身は余が必ず守る。安心してその力を奮うがよい」

 

「セイバーさんがポカしてもその後ろには私が控えております。万事このキャス狐にお任せを……まぁぶっちゃけ、もしご主人様に万が一があっても私の宝具でどうとでもしちゃいますのでその辺はご安心を♪」

 

「それはありとあらゆる意味で不味いから止めとけ。……まぁ、君を守るのが我々の役目だ。君は君の決断を、そして我々を信じてくれればいい」

 

「あぁ……頼んだ」

 

そういって少年は掛ける。その足に力を込め、死と同意義の災害に単身突っ込んでいく。そしてそんな彼を追従するかのように三人は彼の後を追い、彼に群がろうとする奴等を蹴散らしていく。

 

その様を、少女は半分見取れながら……。

 

「コードキャスト発動、礼装“破邪刀”!」

 

 少年の一振りと共に、死は切り裂かれた。

 

 

 

 

 




と、言うわけで白野君らが訪れる次の世界は戦姫絶唱シンフォギア。三期が決定した作品ですが、実際は二期止まり、下手したら一期で終わるかもです。

設定も知識もアニメしかなく、曖昧な点や矛盾した所がありますか、その事も踏まえた上でご理解頂ければと思います。

また、白野君は基本地の文で会話しますが、三人称や他の人からの視点からは「」を付けて喋らせようと思います。

その位しか思い付かなかったので……。

それでは、次回も宜しくお願いします。ノシ

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