それ往け白野君!   作:アゴン

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ウチのキャスターが修羅場すぎてヤバい

 

 

 凛とランサーとの色んな意味で衝撃的な再会から翌日、自分はとある目的地に向かって外を歩いていた。

 

凛とランサー、二人が厄介になっている家は八神はやてという幼い少女が家主で、彼女が一家の中心人物であると同時に自分を二度も襲ってきた守護騎士達の……ひいては闇の書の主でもあった。

 

最初は斬り合う間柄だった自分達だが、はやての夕食に誘ってくれた気遣いや、その後の話をしたりして、ヴォルケンリッターの将であるシグナムを始めとした騎士達とは和解。

 

もう自分には手を出さないと誓い、凛とランサーに途中で送って貰ったのだが、凛の話を聞いて事はこれだけでは終わっていない事に気付かされた。

 

 闇の書にリンカーコアを侵食されたはやては肉体にも障害が現れ、彼女の足が動かないのもそれが原因だと聞かされている。

 

 更に闇の書の侵食は緩やかでも確実にはやてよ命を蝕み、このまま手を拱いてしまえば彼女の命は間違い無く闇の書に食われる事になる。

 

けれど、だからと言って闇の書が完成されてしまえば、解放された闇の書が主諸共破壊し、暴走してしまう可能性が出てくる。

 

 どちらにしても被害は出てしまう。ならば最悪の事態に陥る前にはやてを殺す事で全てを終わらせるつもりだったというのが、自分と出会う前の遠坂凛の見解だった。

 

けれど、自分の勝手な言い出しに乗ってくれた彼女は、それを最後の最後の手段として保留し、この岸波白野に賭けてくれた。

 

そんな彼女に報いる為に、自分も出来る事をしようと思い、今日も今日とてアーチャーの鬼のようなシゴキに耐えていたが。

 

『全く、お前のお人好しさは今になって始まった事じゃないが……少々、甘過ぎるのではないかな?』

 

 などと、鍛錬を終えた後も彼の愚痴にいつまでも付き合う事になったのは予想外だったが……まぁ、これも自分の我が儘に付き合う事に対しての対価だと思えば安いものか。

 

 凛と話し終えた後、自分は皆を集めて今回の出来事の裏、そして襲い掛かってきたシグナム達とはやてと闇の書の関連等を全て話し、その上で皆にも協力して欲しいと頭を下げた。

 

最初は勿論非難囂々、セイバーやキャスターは勿論、桜までが反対したのは少々キツいものがあったが、持ち前の悪足掻きで説得をつづけた。(無論、土下座の姿勢のまま)

 

最初は難色を示していたが自分のしつこさに呆れ、渋々と協力を了承してくれたのがアーチャー。

 

その後、条件付きでセイバーとキャスターも協力に賛成する事になり、桜とは今度料理を一緒にしようという形で納得してくれた。

 

嬉しさ半分、申し訳なさ半分でセイバー達が協力してくれる事に喜んでいると。

 

『いいだろう。その話し、我も乗ったぞ。雑種』

 

 絶対に賛成してくれそうにないと思っていた人物からの了承に、自分は思わずどうしてと聞き返してしまった。

 

確かにギルガメッシュの参戦は心強いを通り越して恐ろしさすら感じる。しかし、こういった皆で何か行動を起こそうとするのは、彼は好みではなかったと思っていた。

 

それに、彼は闇の書の仕組みを初見で看破し、その上で爆笑し、自分には余計な事を言うなと釘を差してきたのだ。

 

そう言った経緯があった為に、最初に提案を出して彼を前にした時、正直斬られる覚悟をした。

 

所が────

 

『何を言う。幼き少女が命の危険に晒し、その少女に仕える騎士達が知らずに戦っておるのだ。そんな喜げ……いや、悲劇を回避する為に我も助力をしようと言うのだ。泣いて喜ぶがいい』

 

 それを聞いた瞬間、自分を含めた全員が思ったに違いない。『コイツ、絶対なにか企んでいる』と。

 

若しくは事の顕しを近くで眺め、事の行く末を観客気分で傍観者になるつもりか。

 

色々憶測が脳裏で駆け巡るが、止めておく。自分ではどう足掻いても英雄王の企みを先読みする事なんて出来ないからだ。

 

 だが、手を貸してくれると言ってくれた以上、アテにはさせて貰う。

 

そうして、地下のBB除く全員の一応の賛同を得て、その場はそれで解散となったのだが……。

 

「きゃーん。ご主人様、寒いですー。タマモ、手が冷たいですー♪」

 

 お願いですからキャスターさん。少し自重してくれませんか? 恥ずかしいから。

 

「えー? ご主人様言ったじゃないですか。自分に協力してくれれば出来る範囲でなんでもするって」

 

そうだったなと返し、再び昨日の出来事について思い出す。

 

 そう。あの時自分は迂闊にもそう口走ってしまい彼女達にそんな事を言ってしまった。

その為に今日はキャスターと一日デートをする事になり、真冬の空の下でカップル同然に街中を散策している。

 

セイバーは来ていない。何でもキャスターには看病された借りがある為、今回は余計な手は出さず、静かに家で待っているとの事。

 

……今頃、悔しくて布団とか枕をギッタンバッタン叩いたりして憂さ晴らしをしているんだろうなぁ。

 

見送りに来てくれた際、頬をこれでもかと膨らませてプルプル震えていたものなぁ。

 

と、此方の考え事を読み取ったのか、キャスターは抱き付いてきた腕に力を込め、上目遣いで睨んでいた。

 

「もう! ご主人様、デートの最中に他の女を思い浮かぶなんてマナー違反ですよ?」

 

 プクッと頬を膨らませるキャスターにゴメンナサイと真摯に謝る。けれど、彼女の膨れっ面が可愛く、そして面白かった為、半笑いになってしまった為、ちょっと態度が悪かったかなと反省。

 

「えへへ~、ご主人様は暖かいですね。タマモ溶けてしまいそうです」

 

しかし、そんな自分の態度に対して怒らず、タマモは更に密着し、満面の笑顔を浮かんでいる。

 

確かに、ここ最近彼女の態度には冷遇な場面が多かった気がする。キャスターも自分の為に戦ってくれている以上、彼女の我が儘に多少なり応えるのも偶には良いだろう。

 

……それに、こんな綺麗で可愛い女性と同伴出来るのはやはり嬉しいのだから。

 

それはそうとキャスター、一つ聞いてもいいかな?

 

「はい? 何です?」

 

以前から疑問に思ってたんだけど……耳と尻尾、隠さなくていいの?

 

「呪術で普通の人には見えない不可視の術を施してありますから大丈夫です」

 

呪術ってスゲー。

 

今更の疑問に笑顔で一蹴され、思わず苦笑いが浮かぶ。

 

そう言や、ランサーの角と尻尾も出っぱなしになっていたけど、凛辺りが何とかしているのかな?

 

などと、ちょっと考え事している内にドンッと肩に何かがぶつかった。

 

 恐らくすれ違い様に誰かにぶつかってしまったのだろう。これでは拙いと思いながら振り返り様にすみませんと謝罪するが……。

 

「イッテェな、どこ見て歩いてんだ?」

 

如何にも柄の悪いドレッド頭のお兄さんがこめかみに血管を浮かばせて凄んできた。

 

すると彼の取り巻きである数人のチンピラが、ニヤニヤ笑いながら自分達を囲み始める。

 

「おーイテェ、こりゃ肩の関節が外れたかな?」

 

「そりゃ大変だ。おいコラ兄ちゃん、ミッチーになんて事しやがるんだよ。これから折角仲間誘ってボーリングに行くってのに、これじゃあ女の胸も揉めやしねぇじゃねぇか」

 

 大袈裟に肩をさするミッチーに、チンピラAが顔を強ばらせて凄んでくる。

 

どれもこれも強面である為、周囲の人間は見て見ぬ振りをし、その場は一種の空白地帯になっていた。

 

彼等の彼女であろう女性達もチンピラの言葉にイヤーとか「ケンジってばヤラシー!」などとピンク色の声を上げている。

 

……全員ガングロだけど。

 

「ツー訳でよぉ。慰謝料として10万程金を貰おうかな? ほら、俺ってば善良な市民だから100万とかバカな事言わねえし」

 

いや、ただぶつかっただけで10万とか善良な市民なら請求しないと思う。

 

………まぁ、ウチにはぶつかっただけで即首を斬ろうとする英雄王がいるけどね。あ、市民じゃなくて王様か。

 

取り敢えず、ここで荒波を立てたくはないので頭をペコペコと下げ、下手に相手を刺激させないように気を配りながら彼等の包囲網の脱出を試みるが。

 

「おいおい兄ちゃん、どこへ逃げようってんだ?」

 

「そらねぇだろ? ぶつかって来たのはそっちだぜ?」

 

 前を遮る様に、他のチンピラ達か立ちふさがる。

 

どうしたものか。アーチャーに一般人への無益な攻撃は控えるようにキツく言い渡されているし、かと言って無抵抗で殴られては折角のキャスターとのデートが台無しになる。

 

やはりここは逃げの一手か。普段から走り込みをやらされている為にそこそこ体力には自信がある。

 

 そうと決まれば行動あるのみ、小声でキャスターに上手く自分に合わせるように言うが………。

 

「…………」

 

───キャスター?

 

俯いて顔を見せないキャスターに訝しげに思っていると。

 

「あれぇ? 今まで俯いてて気付かなかったけど、君結構可愛いじゃん!」

 

「こんな根暗な野郎とは縁切ってさ、俺達と楽しもうぜ? 天国に連れてってやっからよ」

 

 ミッチーとケンジがキャスターの顔を覗き込むとその顔をやらしく歪め、彼女の肩に触れようと手を伸ばす。

 

肩外れたんじゃなかったのかよ。流石に看過出来なくなった俺は、チンピラ共の手を掴もうとする─────

 

「触んな雑菌が」

 

───が。

 

「う、うわ! な、なんじゃぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

「み、ミッチー!?」

 

「何だこれ、ミッチーの身体がいきなり燃えてぎゃぁぁぁっ!!」

 

チンピラ達の身体を次々と点火する炎。その熱と痛みにチンピラ達は悶え苦しみ、冷たい海に向かってダイブする。

 

突然の阿鼻叫喚の地獄絵図にギャル達も怯え、周囲の人達も戦慄し、この通りはパニック状態に陥っていた。

 

 ただ、この惨状の原因となる人物に心当たる俺は、その張本人であろうキャスターに視線を向ける。

 

すると彼女は先程までと同じ笑みを浮かべて。

 

「私、今日は本当の本当に嬉しかったのです。ここ最近セイバーさんやら凛さん、あのドラゴン娘に良いようにご主人様を弄ばれて少々フラストレーションが溜まっておりましたの」

 

 満面の笑顔。女神と見間違う程の微笑みを浮かべながらキャスターは囁き続ける。

 

「だから、此度の二人っきりの綾瀬は本当に嬉しく、感激したのです。ですから───」

 

 するとキャスターは笑みで瞑っていた目を僅かに開き。

 

「もしまた誰かに邪魔されたりすれば私、自分を抑えそうにありません」

 

 その囁きに背中が総毛立ち、ゴクリと生唾を飲み込んでしまう。

 

彼女の冷たい殺気。自分に向けたモノではなく、滲み、溢れ出た殺意に頬から冷や汗が流れ落ちた。

 

けど、決して引かない。ここで殺気に当てられて彼女の腕から逃げてしまっては、その瞬間自分はあのチンピラ以下の存在になってしまう。

 

だから、抱き付いてくる彼女の腕を強く握り、行こうとだけ呟く。

 

「はい。ご主人様」

 

 そんな自分の態度に心を許してくれたのか、キャスターは無邪気な笑みを浮かべて寄り添ってくる。

 

パニック状態となっているその場を後にし、俺達は僅かな一時を過ごす続きをするのだった。

 

………所でキャスターさん。流石に公共の場でご主人様はちょっとご遠慮したいのですが。

 

「では旦那様で? 寧ろタマモ的にはそれで構わないのですが?」

 

………やっぱご主人様で。流石に妻帯者にはまだ早いですから。

 

「あぁん! ご主人様のいけずぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大したトラブルもなく俺達のデートは順調に進んでいった。商店街ではウィンドウショッピングやちょっとした小物の買い物、映画等々一通り基本的なデートを堪能した後、本日の締め括りとしてとある喫茶店へと赴いていた。

 

それで、どうだったかな? 岸波白野初のデートの感想は?

 

「そうですね。正直申し上げればもう少し手順良くいかないものかとヤキモキしてました。最初のウィンドウショッピングは兎も角、小物は100均の手鏡、映画は時間が合わず適当な本屋で時間潰し、トドメにはバイト先になる予定だった店に行くとかムードもへったくれもありませんでしたわ」

 

キャスターのダメ出しっぷりにテーブルに突っ伏くす。

 

 ………確かに、彼女の言うことも尤もだ。デートと変に意識した所為で緊張し、ウィンドウショッピングではキョドってばかりだった。

 

映画の上映時間も確認せず、行き当たりバッタリな行動の所為で無駄な時間を使い、最後の締め括りとして指定した喫茶店もバイト先になる筈だった店とか、空気を読まないにも程がある。

 

けれど、自分の財布事情を考えれば、これでも頑張った方なのですが………。

 

「それは、ご主人様の常日頃の行いの所為です。そんなんだから金ピカにハサンなんて呼ばれるんですよ」

 

 グサリッとキャスターのトドメの一言が心の奥深くに突き刺さる。……折角のデートが完全に失敗に終わり、彼女の期待に応えられなかった事実にうなだれていると。

 

「ふふ、申し訳ありませんご主人様。少々イタズラが過ぎましたね」

 

 イタズラが成功した子供の様に、無邪気に微笑むキャスターにへこたれた自分の心にスッと癒された気がした。

 

「確かにご主人様のデートは残念な形で成ってしまいましたが……最初に言ったように私はそれでも嬉しかったのです。ウィンドウショッピングで落ち着かない貴方。映画の上映時間に間に合わず、慌てながらも必死に挽回しようとする貴方。残り少ないお金で小物を買ってくれた貴方。その全てが私にとって宝物で、頑張る貴方様がこの上なく愛おしく思えました」

 

慈母の微笑みとは、こういう事を言うのだろうか? 彼女の慈愛に満ちた微笑みにこれまでのささくれた気持ちが嘘のようになくなり、あるのはこんな優柔不断な自分を好いてくれている彼女に対する幸福感だけだった。

 

それでもただ一つ、彼女に言いたい事があるとすれば───。

 

「また今度、来よう。その時はきっとキャスターが満足出来るデートにしてみせるからさ」

 

その言葉に、キャスターは一瞬呆けた顔になるが。

 

「はい。その時は是非。この良妻狐、いつでもいつまでもお待ちしております」

 

やはり、彼女の笑顔は美しかった。

 

………所で、いつまでこっち見てるつもりですか? 士郎さん

 

「あ、いや、その。注文されていた珈琲を持ってきたんだけど……お邪魔だったかな?」

 

 恐る恐るテーブル脇に立つこの人は高町士郎さん。

 

この喫茶翠屋の店長さんで、ここは以前話した自分が働く筈だったお店。

 

 どのメニューの値段も手頃で、ハサンいや破産間近な自分の財布事情にも比較的優しいお店となっている。

 

と、そんな事よりも今日は本当にすみません。バイトの面接をキャンセルしたばかりでなく、こうしてお店に来てしまって。

 

「あぁ、それは気にしなくていいよ。お客様としても大歓迎だけど、こうして君の無事な姿を見ることも出来た。……怪我の方はもう良いのかい?」

 

 心配そうに訊ねてくる士郎さんに大丈夫ですと返答する。実際自分の受けた被害は打ち身と打撲程度で大した怪我はなく、酷い大怪我を負ったセイバーも今はもう全快している。

 

あるとすればバイトの面接を勝手にも断ってしまった事に対してだけだ。

 

「だから、それはもう良いって。君の事情は理解したし、その事に関しては桃子も息子の恭也だって怒っていないさ。それに、まだバイトの申込期限は切れてないし、なんならもう一度受けてもいいんだよ?」

 

 こ、この人は聖人君子か何かか? 他人でしかない自分にここまで親身にしてくれて、しかも一方的に面接を断った自分をもう一度受けてみないかと誘ってくれている。

 

「うわー。ここまで来ると何か裏があるんじゃないか疑ってしまいますね」

 

こらキャスター、滅多な事は言うもんじゃありません。

 

「いやぁ、実はね。ウチはこの時期になるとケーキの予約が殺到してね。手頃で元気のある若者を捜していたんだよ」

 

て、いきなり裏話!?

 

で、でも、それが本当だとすると素人な自分がケーキ作りなんかしても大丈夫なのだろうか?

 

「あぁ、その辺なら桃子が丁寧に教えてくれるし、そんなに難しくないから大丈夫さ」

 

 なんと、プロからの指導があるなら心強い。これを機に料理下手を卒業するのも一興か。

 

プレゼントの作成も最初は失敗したけど今は順調に進んでいるからクリスマスには間に合いそうだし、料理下手も直せてバイト両を貰えてハサン脱出なら一石二鳥!

 

 士郎さん、不躾なお願いですが……。

 

「うん。その言葉、待っていたよ白野君」

 

こうして、自分はその場で喫茶翠屋のバイト要員として契約する事になった。

 

「あらあらまぁまぁ、キャスターさんてば旦那様にメロメロなんですのね。お若いのに羨ましいわぁ」

 

「何を言ってるんですか桃子さん。旦那様と仲良くお店のをしているとか、接種した糖分が逆流しちゃいますー。その仲良しの秘訣、是非このキャスターに先輩としてご伝授して下さいな」

 

なんか意気投合してるー!?

 

とまぁ、色々紆余曲折があるものの、いつの間にか仲良くなった桃子さんとキャスターを引き離し、俺達は帰路に着くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に太陽は傾き、もうじき海に沈もうとする頃、自分とキャスターは夕暮れの海沿いの道を並んで歩いていた。

 

「ご主人様、今日は本当にありがとうございます。タマモ、本当に本当に嬉しかったです」

 

 これで何度目だろうか。幾度となく礼を言う彼女に言いから気にするなと告げて返す。

 

そのやり取りが心地いいのか、キャスターはデレデレな顔で自分の腕に擦りよってくる。

 

今更引き離すのもどうかと思うので、取り敢えずはこのままでいさせて上げようとした時、ふとある事を思い出す。

 

そういや、あれから凛の連絡はまだ来ていない。そう簡単に成果はでていないだろうがそれでもなんの音沙汰なしなのは……。

 

此方の事情か少し変わった事だし、バイトの事を含めて一度此方から連絡した方がいいか?

 

 いや、でもデートしている最中に電話をするのもなんか間違っているかもしれないし。

 

「えへへ~、うにゃうにゃにゃ」

 

こんな幸せそうな彼女の顔を崩すのは、些か無粋に過ぎるだろう。

 

もう家までそんなに距離はないのだし、ひとまずは家に帰ってからで────

 

「ご主人様!」

 

言われる前に我に返る。この世界と隔絶するような空気………間違い無い、これは結界だ。

 

だが何故? シグナム達はもう自分達を襲うことはないとあの時誓った筈だ。

 

約束を無闇に破るような人達ではないのに……だが、これは自分達を二度も囲った結界によく似ている。

 

と、頭が疑問に浮かんだその時だった。

 

「時空管理局執務官クロノ=ハラオウンだ。君達に少し聞きたい事がある」

 

 それは、黒衣の魔導師だった。

 

黒に統一された衣服と杖、宙に佇む少年はシグナム達とは違う威圧感を放っていた。

 

そして、そんな彼から聞かされた時空管理局という名前、それはシグナム達から聞かされた時空の法を司る次元世界の番人達の総称だった。

 

そんな組織の一員が、こんな小さな少年だなんて。

 

「君達は闇の書と呼ばれる魔導書と、それにまつわる騎士達と何度か交戦したという情報があり、僕達の艦に対して電脳攻撃を仕掛けて一時的に制圧したという疑いが掛けられている。……大人しく、此方に従って欲しい」

 

驚いていた自分の頭に新たに聞き慣れない言葉が聞かされた為に、少しばかり脳内がシェイクされる。

 

………え? 電脳攻撃? 艦を制圧? 何を言ってるんですかこの子。

 

混乱する自分が呆けていると。

 

「─────この、クソガキがぁ」

 

ゾクリ。

 

殺意に満ちた声に我に返り、隣にいるキャスターに振り向くと。

 

「ご主人様との愛の一時を邪魔するだけでは厭きたらず、そのご主人様を犯人扱いするとな………覚悟は出来てるだろうなヒューマン」

 

黒い呪術の衣服を身に纏い、尋常ならざる殺気を撒き散らすキャスターが、黒い少年を睨み付けていた。

 

………あれ? なにこのデジャヴ。

 

 

 

 

 

 




えー、先ずは読んで下さった皆様に対して一つ言わせて頂きます。

私は別に管理局アンチとか、ヘイトとか、そんなつもりは一切ありません!マジで!!
ただこう、展開上必要な位置になってしまったというか……書いている内にこんな展開になってしまって………。

言うなればそう、間が悪かったのだ! どこかのスーパー求道僧も言ってた!


……本当、前の時といいマジで申し訳ありませんでした。

こんな駄作者ですが、どうか見放さないで下さい。

それでは次回。ノシ

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