リボーンの世界に呼ばれてしまいました ~小話~ 作:ちびっこ
『R15』です。……多分。
雲雀さん視点の三人称で作風がいつもと違います。
深夜のことである。
いつものように同じようにベッドで優と雲雀は眠っていたが、その日は少しだけ違うことがおきた。優が雲雀にくっ付いてきた来たのだ。
その日は少し寒く、優は無意識に熱を求めたのだろう。しかし、そんなことは雲雀にとってはどうでもいいことだった。
雲雀は気配に敏感だが、優が動いても気にならない。が、急にくっ付かれると話は別だ。流石に目が覚めてしまう。
「……優?」
声をかけたが、優が起きる気配はない。このまま眠ることが出来ればよかったのだが、雲雀は完全に目が覚めてしまった。
それもそのはず、優が記憶を失ってから雲雀は優に触れようとしなかった。1度触れてしまえば、我慢できなくなる自信があったからだ。そのため触れたとしても膝枕程度にしていた。それが今、無意識だとしても優の方から近づいてきたのだ。目が覚めるなという方が無理な話である。
「はぁ……」
思わず雲雀は溜息を吐いた。はっきり言ってこの状況は拷問である。
雲雀は我慢するのが嫌いなのだ。手を出さず優のペースにあわせているのは、雲雀が欲してるのは優の身体ではなく心だからだ。
しかし、雲雀だって男だ。手を出したい。
なまじ雲雀には記憶があるから厄介だ。抱きしめた感触などを心と身体が欲している。
元々、我慢することが嫌いな雲雀が今まで手を出さなかったことすら奇跡なのだ。優は無自覚に煽る。言葉ならまだしも、潤んだ瞳を向けられた時には理性を総動員しなければならないからだ。
現在、雲雀の頭では警報が鳴り響いている。
このままでは優を傷つけてしまう。が、そう簡単に突っぱねることが出来るかといわれると、答えは否だ。雲雀の全神経は優と触れている箇所に注がれている。
何度も言うが、雲雀は男なのだ。意識するなというのは酷な話である。
チラリと優の様子を観察する。やはり起きる気配はない。寝起きが悪い優が、多少の揺れでは起きることはないのだ。もっとも雲雀と一緒に眠っていなければ警戒し起きる可能性も高いだろうが。
今更、一緒に眠ったことを後悔しても遅い。これ以上距離が離れるのは嫌で眠ると決めたのは雲雀なのだ。はっきり言って自業自得である。
「優……」
再び声をかける。が、それは悪手だった。鼻から抜けるような声がかえってきたのだ。もちろん優が起きた気配はない。偶然なのか、呼ばれたことに対して無意識に返事をしたのかはわからない。問題は妙にその声が色っぽかったのだ。普段、色気というものがない優が、である。
もう我慢の限界だった。
まずは抱きしめる。その後はもう感情に任せて行動する。優が泣きそうならば、止めればいいだろう。……止めれるかはわからないが。
ガルル。
雲雀が手を伸ばそうとした時、主を守るためにそれは動いた。それはパタパタと羽を動かし飛びながら、雲雀を睨みつけた。
その正体は、優の匣兵器の恐竜のミントである。
「……邪魔しないで」
よく雲雀のいうことを聞くミントだが、この日は違った。主の気持ちを優先し、雲雀に牙を向けたのだ。
『…………』
無言のにらみ合い。
折れたのは雲雀だった。ミントを倒そうとすれば、優は起きるだろう。そうなれば、いくら雲雀の力を持ってしても簡単に優を押し倒すことは不可能である。
「……頭、冷やしてくるよ」
ミントにそう告げると、そっと優から身体を離し、雲雀はベッドから降りる。そしてすぐさま暖房のスイッチを入れる。雲雀が離れたことで風邪を引いてしまわぬように……。
雲雀は部屋から出る直前、もう1度ベッドに目を向ける。残念だという気持ちもあるが、幸せそうに眠ってる寝顔を見ると手を出さなくて良かったと思えた。
今度はミントに目を向け優を頼むと伝えれば、ミントは大人しくカゴの中で丸くなりながら「ガル」と返事をした。もうミントは雲雀に対して警戒を解いたのだろう。
しかし、なぜかミントの後ろで優の師匠が高笑いしているように思えるのは気のせいだろうか。顔も覚えていない相手だが、妙にイラついた。
なんとか全ての気持ちを押し殺し、雲雀は外に出た。春が近いと言っても、まだ深夜は冷える。頭を冷やすにはちょうど良かった。
「ちょうどいい獲物はいないかな?」
トンファーを取り出し、雲雀は歩き出す。恐らく1番の災難はこの後すぐに会う酔っ払いだろう。朝まで時間がたっぷりあるのだから……。
ちなみに……これは花見をする1週間前に起きたことだった。
とっても楽しく2時間ほどで書き上げましたww