リボーンの世界に呼ばれてしまいました ~小話~   作:ちびっこ

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第78話

涙がポロポロと流すけど吸血鬼さんは吸おうともしない

もう私のことをエサとも思ってないんだ……

……なんだろう

行動がマーキングとわかった時も残念と思ったけど

今はその時よりもっとショックだった

 

「……1度しか言わない」

 

涙を服の袖でゴシゴシと拭いて吸血鬼さんを見る

吸血鬼さんの目は真剣だった

血を吸われた時のような感じでもなく

初めて見る目でどこか遠くに感じた

 

「君と初めて会った場所で僕は居る

 ずっと君を待ってる」

 

「私を……?」

 

どうして私を待ってるのか教えてほしかったけど

吸血鬼さんは何も答えてくれなかった

本当に1度しか言わないみたい

 

そして私の目元をマーキングしようとするらしく

いつもと同じように目を閉じれば

目元には何もなく口に何かやわらかい感触があった

 

「へ?」

 

目を開けたけど何が起きたかわからない

吸血鬼さんはさっきと変わらない場所に居るし……

でもどこか機嫌が良さそうだった

……まぁいいか

特に変な感じはしないしね

 

「……今のはただのマーキングじゃないからね」

 

「はい? わかりました?」

 

よくわからないまま返事をしたのがばれたらしく

吸血鬼さんが盛大に溜息を吐いていた

 

ちゃんと説明してもらおうとすれば

急に凄い風が吹いてきて窓ガラスが割れるし

風に流されそうになった

まぁ吸血鬼さんが掴んでくれたから大丈夫だったけどね

しばらくすると風が落ち着いたから

お礼を言おうとすれば、急にドアが開いた

 

「ごめーん! 大丈夫だった?」

 

お母さんだった

ってか、なんでお母さんが謝ってるんだろう?

 

「思ったより力が強くて制御しきれなかったのよー

 でも、一体何をしたのかしらね~」

 

お母さんの言ってることはよくわからなかった

吸血鬼さんは何か思うところがあったらしく

急に目が見開いたと思えば、私をジロジロみてきた

え?……私、何かしました?

ってか、お母さんも私の顔を嬉しそうに見てるし!

やっぱり私が何かしちゃったの!?

 

「もしかして無自覚でこれなの……?」

 

「……そうみたいだね」

 

2人だけで何か話が通じてるっぽい

その前にこの2人が普通に会話してるのは珍しいね

 

「でも、さっき喜んでいた時は私でも大丈夫だったわよ?

 感情の度合いだけじゃなく、身体も関係してるの……?

 制御を完璧にしないと何も出来ないんじゃ……」

 

「…………」

 

あれ?やっぱり仲が良くない?

お母さんは吸血鬼さんに向かって話してたのに

吸血鬼さんは返事しないし機嫌が悪くなったしね

ここは私が2人の会話中継をしないとね

 

「あの、吸血鬼さん」

 

「……僕の方でも対策を考えておくよ」

 

いや、私に向かって言わないでよ

会話中継を必要とせず吸血鬼さん返事をするなら

直接お母さんに言ってほしい

 

「だ、そうです」

 

面倒だから適当に中継すればお母さんが笑っていた

でも私にじゃなくて吸血鬼さんを見て笑ってるね

よくわかんないけど、笑うのはやめてほしい

吸血鬼さんの機嫌がドンドン悪くなってる気がするもん

えーと、どうすれば機嫌がよくなるんだろう

やっぱり褒めるとか?

対策を考えると言ってるんだし、応援する感じがいいかもー

 

「えっと、期待してますね」

 

吸血鬼さんの目が見開いた気がする

これは機嫌はよくなったのかな……?

うーん、私の顔をみて溜息をついたから違うっぽい

お母さんも「うわぁ……」って感じで引いてるし

機嫌をよくするために言ったとバレバレだったんだろうね

 

「……無自覚って恐ろしいのね……」

 

「え? 自覚して言ったよ?」

 

機嫌をよくするために言ったのは

自分でも自覚してるしー

……なんでお母さんが爆笑してるんだろう

まぁいいか

だって、なんか楽しいしね

吸血鬼さんの機嫌は悪くなってそうだけど

さっきまで泣いてたのがウソみたいに私は楽しいだもん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが私が覚えてる吸血鬼さんとの思い出だった

あれから何年もたって思うんだ

多分、吸血鬼さんが私の初恋の人なんだろうなーって。

 

お母さんが死んじゃってどうでも良くなった時

吸血鬼さんの「ずっと待ってる」がなかったら

私はお母さんを追いかけていった気がする

……まぁ私の心が整理できるまで

里のみんなが総出で私の暴走を止めてくれたのが大きいけどね

 

あのまま暴走していたら、やばかった気がする……

そういう意味では里のみんなには悪いと思った

里のみんなは私に残ってほしいそうだったからね

本当にいっぱいお世話になったのにねー

それでも、私は外の世界で生きるって決めれば

笑って送り出してくれたんだ

……制御についてはもの凄く厳しかったけどね

耳にたこが出来るぐらい言われたもん

 

私はお母さんと一緒に居たから

天狗が珍しい存在なんて知らなかったからね……

お母さんが滅多に妖怪の姿にならなかったのは

そういう理由もあったんだって

教えてくれても良かったのにと思うところがあるけど

私にビクビクと生活してほしくなかったらしい

 

お母さんの気遣いがあったからこそ

私は外の世界で生きたいと思えたんだろうねー

やっぱりお母さんは凄い

私は力が強いらしいけど、お母さんには敵わないって思うんだ

 

ただ……ちょっとお母さんって抜けてるよね

まぁ私もだけどさ……

 

多分、お母さんは忘れてるわけがないと思ったんだろうね

私はよく吸血鬼さんは元気かな?とか言ってたしね

でもね、私は小さかったんだよ

お母さんの旅に着いて行ってた感じだったんだ

はぁ……本当に……

 

「吸血鬼さんと出会った場所はどこだろ……」

 

……まぁ小さいころの話だし

吸血鬼さんは覚えてない可能性の方が高いよね

初恋だから私が美化してるだけだよねー

 

旅をしてる間に出会えればラッキーと思っておこう




多分、次から原作です。

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