太陽の子、ゼウスの使い魔   作:ブライ

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四話 光臨せよゼウスの使い魔

「お邪魔しまーす……うへぇ結構汚れてんなぁ」

 

 

光太郎が小屋に入ると、そこは何年も手入れがされていないのが分かるくらいに荒れていた。埃やクモの巣などが大量にありちょっと動くだけで咳こみそうになるほどであった。

 

 

 

「んーこのままだと眠れねぇよなぁ……よし、掃除すっか!!」

 

 

 

光太郎は寝床の確保のために小屋の掃除を開始した、本気で大掃除をするわけでは無いが、寝るところを確保し寝てて喉が痛くならない程度には綺麗にしようと思ったのだ。

 

クモの巣を取り外し、くもを殺さないようにし埃をどけて行く。

 

 

「朝のクモは殺すな、仇でも逃がせってね~」

 

 

鼻歌交じりに掃除を続けていく、朝のクモは殺すな夜のクモは殺せ、と言われているのは迷信の一つだが彼が正しい意味で覚えているのかは疑問である。

 

以前に【虎穴に入らずんば虎子を得ず】と言った時に意味を聞かれ、虎の穴に入らなければタイガーマスクにはなれないって事だろ、とこの男は返答したのだ。

 

まぁタイガーマスクの話的には間違いとも言い切れないあたり、微妙なところだが諺としては大いに間違えているのでもう少し勉強が必要なところである。

 

上機嫌で掃除をしていると何か箱の様な物が奥の方に置いてあった、その箱には埃や汚れが付いておらず最近置かれた物らしい、しかもかなり厳かな箱であった。

 

光太郎は誰かの忘れものだと判断し手を触れずに置いた、こういう時にこの手の物に勝手に触れると余計なダメージを負ったり落とし穴に落ちたりするのが定番なのだ、触らぬ神に祟り無しと言うことである。

 

 

それから数時間かけて掃除を終わらせる、取りあえずの休憩所としては十分だろう、光太郎は少し疲れたのかベッドの上に横になり眠りにつくのだった。

 

 

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

光太郎が掃除を終えて眠りについていると小屋に近付く集団があった。

 

 

「馬車でそろそろ四時間……あそこかしら」

 

「あそこですね、私は周りを偵察をしてきます」

 

 

その内の一人が馬車から離れていく、全員で五人であり残りの四人はどうやって小屋に突入するかを相談していた。

 

 

「小屋の中に誰かいるのか確認が必要」

 

 

一人がそう発言する、彼女らの任務は学院から盗まれた破壊の杖の奪還であり、相手は最近騒がれている土くれのフーケと呼ばれる盗賊なのだ、有る程度慎重になるのは当然だろう。

 

 

「ならば、僕が適任だね」

 

 

とバラを掲げた少年が名乗りを上げた。

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

「ぐぅ~むにゃむにゃ……ん?」

 

 

光太郎がいびきをかき寝ていると、突如としてドアが蹴破られたのだ、何事だろうと思いドアの方に目をやるとそこには金属で出来た人形の様な物が武器を持ちこちらに向かってきた。

 

 

「なんだお前は……おわっ!!」

 

 

人形は聞く耳持たずと言ったように光太郎に襲いかかってくる、いきなりの攻撃に光太郎は驚くが不意打ちでそのままやられるほど弱くは無い。

 

光太郎はひらりと攻撃を避けカウンター気味に腹に蹴りを入れる、人形には蹴り後が刻まれ盛大に後ろに吹っ飛ぶ、人形は小屋の外に弾き飛ばされ転がるがまだ動ける様だ、しかも外を見るとまだ数体いる。

 

光太郎は狭い小屋に入られる前に勝負を仕掛けるべく小屋から外に出る、向こうの人形も光太郎に攻撃をしようと思ったのか走って向かってくる。

 

人形は光太郎に蹴られた一体も含めて合計で七体いるようだ、人形達は槍を持ち光太郎に襲いかかる、しかし金属で体が構成されて武器を持っているだけでは光太郎を倒すのには少々戦力が足りない。

 

槍を捌き足を引っ掛け転がし時には腕をつかみ投げる、複数の敵を相手に囲まれ無いように動き回り確実に一体づつ潰して行く、普通の戦闘員ですら人間の数倍を超える身体能力を有していて、それを変身せずに素手で戦うこと等日常茶飯事、しかも数十人単位で毎度毎度相手をしていれば、これくらいの芸当は彼らなら誰だって出来る。

 

 

順調に相手をしていると後ろから光太郎めがけ氷の矢と火の球が飛んでくる、何事かと思ったが焦らずに光太郎は人形の一体を蹴り飛ばし盾にしてそこから離れる、戦闘員の後に怪人が現れるのも、これまた定番なので元から油断はしていない、追撃が有るかと思い攻撃が飛んできた方をみると。

 

 

「コータロー?」

 

 

 

と数日前に出会った少女が声をかけてきたのだった。

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

話は昨日に遡る

 

学院で土くれのフーケによる窃盗騒ぎが起こったのだ、フーケは大胆にも30メイルはあろうかというゴーレムを作り出し宝物庫を殴りつけ破壊するという手段をとったのだ。(実際にはもう一つ原因があるのだが)

 

その状況を見ていたのは、ルイズと他数名であり彼女達は事情の説明のため職員室に呼ばれる事となる、そしてミス・ロングビルがフーケの潜伏場所と思わしき所を発見したと報告をし捜索隊が組まれる事となった、しかし教員のほとんどが尻込みしたために業を煮やしたルイズが捜索隊に立候補したのだった。

 

最終的にルイズだけには任せておけないと言うことでもう一人の目撃者であるキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーとその友人であるタバサが捜索隊に出ることになった。

 

ミス・ロングビルが馬車を引きルイズ達が乗る、その時にもう一人捜索隊に名乗り出た男がいた。

 

それが彼、ギーシュ・ド・グラモンである、彼は数日前に二股していたのがばれてから汚名返上の機会を探していた、そんな中で盗賊が学院を襲うという事件が起こったのでチャンスだと思ったのだ。

 

ギーシュのランクはドットの上の方という戦力としてはどうなのかという話だが、同時に七体まで出せるワルキューレというゴーレムを操る魔法を有している、白兵戦になればそれなりに使える魔法であり掴む投げる等の動作も出来るため役には立ちそうなので同行を許可したのだった。

 

まぁキュルケは火のトライアングル、タバサは風のトライアングルなので居ないよりはまし程度に思われているのだろうが。

 

馬車で約四時間程度のところにフーケは居るとの情報だった、移動の最中に暇だったので軽い話しを持ちかけるキュルケ、彼女は女子寮でルイズの隣に住んでいるのだがお隣さんのルイズとはよく言い争いをしている。理由としては彼女はトリステイン王国の人間で無くゲルマニアという国の出身で実家であるツェルプストー家がヴァリエール家の恋敵だったり先祖から色々と揉め事を多くしている間柄なのだ、ルイズからしてみればいつも小馬鹿にしてくる嫌な奴認定だが、キュルケからしてみればからかい甲斐のあるクラスメートであり影で努力しているのは知っているので他の人格を否定するようなヤジを飛ばす連中とはちょっと違ったりする。

 

 

「ねぇミス、なんで貴方が馬車なんか引いているのかしら?誰かにさせればいいのに」

 

「ちょっと、失礼でしょツェルプストー!!」

 

「いや、良いんですよ、私は魔法は使えますけど貴族じゃありませんので」

 

 

そこのところ詳しく聞きたいと続けようとするのだが、周りに止められ渋々引き下がるキュルケであった、ギーシュがあまり深い事を聞きすぎるのはレディといえども良く無いんじゃないかな?とか言うセリフはともかく親友のタバサにまで止められては下がるしかあるまい。

 

このタバサという少女は小柄で青い髪が特徴の生徒で普段から無口かつ大人しい性格のためにあまり人つき合いは良いとは言えない、だがキュルケとは何故か中が良い、社交的で複数の恋人を持つキュルケと大人しく無口な少女がなぜ中が良いのかは周りには良く分からないが二人はよく一緒にいる。

 

タバサは友人を止めた後に読書にいそしんでいた、彼女は暇さえあれば本を読むという文字通り本の虫と言えるほどの読書好きであり、こんな任務の最中でも読むほどである。

 

話の話題は移りルイズが使い魔に逃げられた事を持ち出しちょっとからかう、どうせなら私が呼んだフレイムみたいなのが良いわよね、などちょっと突いただけで火のように怒りだすルイズがたまらなく面白い。

 

そんなことをやっている内に目的地に着いたのだ。

 

 

「あそこですね、私は周りを偵察をしてきます」

 

 

とミス・ロングビルが周りの偵察に行き。

 

 

「小屋の中に誰かいるのか確認が必要」

 

 

とタバサが発言する。

 

 

「ならば、僕が適任だね」

 

 

とバラを掲げたギーシュが魔法を唱える、すると合計で七体のワルキューレを生み出し小屋の前に配置する、そして近付きながら様子をうかがうと中に誰かいるようだ。

 

 

「どうする?」

 

「まず突撃、その後目標が出てきたらワルキューレで捕える、私達は後ろから魔法で援護」

 

 

と簡潔な作戦を伝える、メイジは魔法を唱えるから強力なのであって不意打ちと速攻で白兵戦に持っていけば理はこちらにあると考えたのだ、それに情報だと相手は土のメイジ、ゴーレムなどの強力な攻撃手段は有れど風や火のように素早い近接攻撃手段は余り得意では無いとの判断でもあった。

 

 

「分かった、それじゃあ合図で突撃するよ、3・2・1・0!!」

 

 

0の掛け声と共にワルキューレの一体がドアを蹴破り中に突入する、するといきなりワルキューレがすっ飛ばされて戻ってきたのだ、さらに続けて中から人が出てくる、一同はあれがフーケかと思い攻撃を続行するが結果は予想とは大きく違った物だった。

 

相手は見事な動きでワルキューレを屠っていき魔法を使う素振りは一切ない、しかしこのまま見ているだけという訳にも行かずタバサとキュルケは援護をすべく詠唱を開始する。

 

タバサは氷の矢の魔法、ウインディ・アイシクルを、キュルケは火の球である、フレイム・ボールを同時に発射する、相手は後ろを向いていたしタイミング的にも当たる、と思っていたのだが相手はそれほど甘い相手では無かった。

 

ちらりとこちらの魔法を確認すると、相手視点で正面にいたワルキューレの後ろに回り込み蹴り飛ばして、二つの魔法の盾にして横に転がって距離をとったのだった、その一連の素早い動きと判断力に驚き冷や汗が出てくる。

 

三人がどうやって倒せばいいのかを考えていたらルイズが一人相手に向かって歩き出したのだ、慌てて止めようとしたその時ルイズは一言。

 

 

「コータロー?」

 

 

と話しかけるのだった。

 

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

「……え~っと、ドラヤキアリエールさんだっけ?」

 

「何で唯一合ってた所を覚えて無いのよあんたは!!」

 

 

ルイズはもの凄い剣幕で光太郎に話す、色々たまっていたのだから仕方が無いと言えば仕方が無い。

 

 

「何?知り合いなの?」

 

 

「……私の使い魔よ」

 

 

ルイズはバツが悪そうにキュルケ達に話す、それを聞いて三人はぎょっとした顔をした後に問いかける。

 

 

「え?何?逃げ出した使い魔ってこれなの?」

 

「……美人に声を掛けられて悪い気はしないけどさ何のことなんだ?」

 

 

そう光太郎に言われてルイズは説明する、思えば使い魔になったという説明をしていなかったのでそこから話し始める、ついでに使い魔にその役割を自覚させるためにも色々と話す。

 

 

「で、俺はルイズの使い魔になるために呼ばれたと?」

 

「そう言うこと、で今度はこっちの質問なんだけどなんであんたはあの小屋にいたのよ」

 

「なんでも何も寝てただけなんだけどな」

 

 

こっちの世界に来てから何かと揉め事に巻き込まれるようだが、ゼウスの一番忙しかった時期に比べればどうという事は無い。

ルイズ達は今度は光太郎に目的を話す、土くれフーケという盗賊に学院が襲われて秘宝が盗まれたこと、そして潜伏先と思われし場所があの小屋であったということを伝える。

 

 

「破壊の杖?ああ、そういやなんか厳かな箱が中にあったぜ」

 

 

そう光太郎が言うとギーシュが調べに行く、すると光太郎の言った通りの箱が有った。

 

 

「これで間違い無いのかい?」

 

「ええ、間違いなくこれよ、私見たこと有るもの」

 

「じゃあこれで目的は達成ね、なんだかあっけないわね」

 

そうキュルケが行った瞬間にバキバキと木々をへし折る様な音が響き渡った、一同が何事だと思いそちらの方に向くと昨夜学院を襲ったゴーレムが居たのだった。

 

 

「やっぱり近くにフーケはいたのね!!!」

 

 

ギーシュ、タバサ、キュルケの三人は目的を達成したので撤退する方向に意識を向けているが、ルイズは違いゴーレムに向かい立つ。

 

 

「ちょ!!何やってるのよ!!!」

 

 

キュルケの制止も聞かずにルイズは魔法をゴーレムに放つ、しかし余りにも巨大なゴーレムにたいして小さな爆発では大した効果は現れずむしろ標的に選ばれるだけの結果になってしまう。

それでもルイズは詠唱を止めずに立ち向かう、しかし結果は一緒だった、するとルイズの前に光太郎が出てきたのだ。

 

 

「止めとけ、あのデカブツにはそれじゃあ効きめが薄そうだ」

 

「何よ!!邪魔しないでよ!!!」

 

 

若干ヒステリー気味にルイズが叫ぶ、彼女はようやく訪れた汚名返上のチャンスに必死だった、それに昔から家族に言われ続けた貴族らしく生きるという自信にある強い思いを捻じ曲げる事も出来なかったのだ。

 

光太郎にその一言でどれだけ伝わったのかは分からない、使い魔として主と繋がっているからなのか、今まで多くの人達を見続けてきた経験からなのか、光太郎にはルイズの真剣さと思いの強さが良く分かったのだった。

 

 

「安心しろよ、俺が代わりに相手してやるさ、主を守るのも使い魔の仕事なんだろ?」

 

 

光太郎は軽く笑みを浮かべルイズに言い放つ、しかしルイズは引き下がらなかった。

 

 

「無理よ!そりゃああんたが少しは強いのはさっき見て分かったけど……いくらなんでも」

 

 

ルイズが言いきる前に光太郎は気合を込めて何十回とやってきたポーズをとる。

 

 

「普段はハンサムな好青年だけどな、あんな奴が現れた時には正義の味方になるんだぜ」

 

 

光太郎は腕を振り力強く叫ぶ

 

 

「へん……しん!!」

 

 

その瞬間に眩い光が光太郎を包み込み姿を変える、黒い体に真っ赤な目、どことなく昆虫を思わせるフォルムをした姿、しかし不気味さは全く無く見る者に安心を与えるような強さも感じる。

 

 

「俺は太陽の子!!仮面ライダーブラックRX!!!」

 

 

幾度となく脅威から人を守ってきたゼウスの一人が今ここに現れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かっこいい」

 

ついでに眼鏡をかけた少女がボソッと言ったのだった。

 


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