太陽の子、ゼウスの使い魔   作:ブライ

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二話 太陽の子異世界一日目

「オールド・オスマン大変ですぞ!!」

 

「なんじゃね?コッパゲール君、あんまりカリカリしてると頭にも胃にも悪いぞい」

 

「コルベールです!!いや、そんな事はどうでもいいですが、これを御覧ください!!」

 

ルイズの使い魔となった光太郎に刻まれたルーンを、調べ上げたコルベールは学院長に報告する。

その内容は6000年前にこの地に光臨し今の魔法文明を作り上げたという、始祖ブリミルが使役していたと言われる使い魔の一つ【ガンダールヴ】のルーンと酷似していたのだ。

 

伝わっている伝説によれば一騎で千を超える敵と戦い、始祖を守りぬいたと言われる強さを誇り神の左手と呼ばれていたという。

 

もしこれが本当にガンダールヴのルーンであったのならば色々と面倒なことが起こる、事態の重要性を理解したオールド・オスマンは、まずは情報収集をするために使い魔とその主を呼ぶべくコルベールを使いに出したのだが。

 

 

「い、居なくなったとは?」

 

 

まさか使い魔本人が居なくなってしまっているとは、想定すらしていなかったコルベールは頭が真っ白になってしまった。

 

 

事の顛末は、親切にもルイズを学院に送り届けた光太郎は、良い事をしたと思いながらアクロバッターで走り去っただけの事である。

 

その時にルイズも止めようとしたのだが、ルイズを降ろしたアクロバッターはスピードを上げて走り去ってしまったのだ。最高時速750キロを誇るアクロバッターが、ちょこっと本気を出せば声も届かない場所まで直ぐ離れることなど造作も無い事だった、そのあまりの速度にルイズは呆然とするしかなかったのだ。

 

 

「何処へ行くのか声をかけたのですけど……その、聞こえなかった様でして……」

 

 

ルイズは消え入りそうな声でコルベールに話す、コントラクト・サーヴァントをした使い魔が居なくなるなど人間を呼び出したのと同時に前代未聞だ。しかも春の使い魔の召喚は出来なければ進級する事が出来ないかもしれないほど重要な儀式なので、どうしようかと悩んでいる内に夜になってしまったのだ。

 

 

「あの……その……どうすればいいのでしょうか……」

 

 

「……そう……ですね……」

 

 

ルイズは使い魔が居なくては進級に差し支えるのではないかと心配しコルベールに話す、せっかく成功したと思っていたのに自分の元から消えてしまったので酷く落ち込んでいる。

 

コルベールも返事に困る、ガンダールヴかどうなのか調べに来たのにその本人が居ない上に別の問題まで浮上しては当然だろう。

 

 

「取りあえず、明日の朝にでも学院長と話すとしましょう」

 

 

私はこれから行かねばならないが……と思いながらルイズに話すのだった。

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

「おい、機嫌治ったか?何をイライラしてたんだよ」

 

 

光太郎はアクロバッターに話しかける、先ほどルイズを降ろしたとたん急発進し爆走したのだ。他の人から見れば光太郎が急いで居なくなったように見えるが、実はアクロバッターがあそこから離れたかったのだ。

 

ただ光太郎にいきなりキスしただけならばいくら何でもここまで怒らない、怒った理由は光太郎に激痛を与えたことと得体の知れない【何か】を仕掛けたからだ、大抵の事ならキングストーンと太陽の力でどうにか出来るが油断は禁物なのだ。

なのでルイズを送った後は真っ先に離れたかったと言うわけだ。

 

それに光太郎がゼウスに入ってからは、自分が使われる機会も少なくなり、一緒に行動する事が久しぶりだった、しかも普通のバイクに偽装する能力も使わず本来の姿で主を乗せるなどさらに機会が減っていた。そんな貴重で至福の時間を邪魔されて不機嫌になっているところにこれだ、ご主人は能天気に構えているが心配でしょうがないアクロバッターであった。

 

 

「しっかしここは何処なんだ、せめて何処かの市にたどり着ければなんとかなりそうなんだけどな」

 

 

光太郎はアクロバッターの気持ちを理解しきっていないで話を続ける。かれこれ数時間走っているというのに市はおろか人工物に全くお目にかかっていない、空も日が傾きかけて夜になろうとしているのにこれでは困る。元々ツーリングも兼ねていたので1日くらいなら野宿もいいかもしれないと思っていたが、ここまで何も無く道も無いとなると流石に少々不安にもなる。

 

 

どうしたものかと悩んでいたら今まで走ってきたところから一面に綺麗な草原が広がる、光太郎の出身地のライダー大陸にも沢山の自然は有るが、ここまで美しい草原は滅多にない、光太郎は思わず見惚れてしまいった瞬間に

 

 

「きゃああああああああ!!!!!」

 

 

と言う悲鳴が聞こえてきた、職業と言うか今までの経験からしてこの悲鳴は痴漢にあったとか、そんなレベルの悲鳴じゃなく命の危機が迫ってるという感じの悲鳴だった。

 

 

「ッ!!今行くぜ!!!」

 

 

光太郎は悲鳴のした方へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

彼女は命掛けで走っていた、普段こんなことろには居ないはずのオーク鬼を見てしまったからだ、本来であれば物音を立てずにゆっくり離れるべきなのだが思わず悲鳴を上げてしまったのが運の尽きだった。

 

オーク鬼は2メートル以上の体格を持ち人間の数倍の体重とそれに比例した力を持ちさらに人間を食らう事で有名だった、そんな奴を見て武器も魔法も使えないタダの平民である彼女が平常心でいられるわけ無かったのだ。

 

力の限り走る、だが体力も体格も何もかも違うオーク鬼が相手では追いつかれるのも時間の問題だった、

そして彼女は足を滑らせてしまいオーク鬼に追いつかれる。

 

 

「あっ!!……やだ……こないで!!!!」

 

 

必死に最後の抵抗を見せようと手を前に出し涙目になりながらオーク鬼に向かって叫ぶ、そんな光景を見ていたオーク鬼はニタァと邪悪な笑みを浮かべゆっくりと歩み寄ってくる。

 

その恐怖に彼女はガタガタ体は震えだす、もう駄目、食べられちゃう、そう諦めかけた時

 

 

「させるかぁあああああ!!!」

 

 

と爆音と共に何か彼女の後ろから飛び上がってきてオーク鬼にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

光太郎は悲鳴のした方へアクロバッターを走らせると女の子が怪人に襲われそうになっているのを発見した。なぜ怪人と断定出来たかと言うとブタの顔に肥満体形という、これでもかと言うくらいに怪人してたからだ。しかも腰を抜かした様に地面に座り必死そうに手を前に出している女の子に向かって、ニタァと笑いながら近づく奴など怪人では無くてもやばい奴確定だ。

 

 

「させるかぁあああああ!!!」

 

 

光太郎はアクロバッターをそこから限界まで加速させて女の子の上を飛び越し怪人に体当たりをする、その体当たりは見事に顔面に命中しオーク鬼は吹っ飛ぶ。

 

光太郎はそのまま地面に着地しオーク鬼と女の子の間に入り盾になるようにし戦闘態勢に入る。

 

 

「そこまでだ!!これ以上やるってんなら俺が相手してや……へ?」

 

 

そこには見事に即死したオーク鬼がいた。

光太郎はあまりのあっけなさに呆然としているが、時速数百キロで突っ込んで来たバイクをカウンター気味で顔面に受ければひとたまりも無い、むしろ化物スペックのマシンに引かれて痛いで済む怪人の方が異常なのだ。

 

 

「あーえっと大丈夫かなお譲さん?」

 

 

光太郎は気を取り直し後ろの女の子に近づき声をかける、女の子はまだ自分の置かれていた状況が完全に理解できておらず目をパチクリさせながら光太郎の方を見る。

 

「あ……助かったの……?」

 

「ああ、もう大丈夫さ」

 

光太郎は返事を返してきた女の子に親指を上げて爽やかに答えると、女の子は安心したのかボロボロと涙を流しながら光太郎に抱きつく、いつもならこういう場合はダンとかアムロとかに取られてしまうのだが今回は自分一人だったので素直に向かってきてくれて嬉しく思う。出来ることなら後数分はこうしていたいところだが仮にも正義の味方がいつまでも役特に浸っている訳にはいかない。普段お調子者の彼でもそういう空気は読める、それにもう日が暮れて夜だ、家に送るくらいはしなきゃなと思い空を見上げると。

 

 

「……月が二つ?」

 

 

彼は今ようやく自分がとんでもない場所にきてしまったのだと理解したのだった。

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

話は変わりここは惑星エルピスのロズウェル市と呼ばれる都市、ライダー大陸にある光太郎が最後に発見された場所だ。

 

 

「はい、この人ですね、確かに何日か前にルートの事を聞きにきてましたよ」

 

「そうですか……他に何か……」

 

ルートを管理している役員に話を聞いているのはハヤタ・シン彼はウルトラマンに変身する事が出来るゼウスのメンバーの一人だ。元々は科学特捜隊と呼ばれるチームに所属していて主に怪獣退治を使命にしていた。しかし数ヶ月前の事件により世界中で多発する戦火を鎮めるためにゼウスに参加し活躍をした経緯を持つ。

 

 

「ハヤタ……何か進展はあったか?」

 

「本郷……駄目だなロズウェルを出てティエス方面に行ったとしか分からなかったよ」

 

 

彼の名前は本郷猛、仮面ライダー1号である、ゼウスはメンバーをなし崩し的にスカウトして人数を増やしたのが殆どなのだが彼は急遽選ばれたとはいえ元々正式にメンバーとしてスカウトされている。

彼は全ての仮面ライダーの先輩であり光太郎も彼と一緒におやっさんの特訓を受けたことも何度かあるのだ。

 

 

「ふむ、そうなるとティエス方面から調べているチームの連絡待ちになってしまうな……」

 

「ああ、カミーユが来たらもう一度そうだんしてみるか」

 

 

彼らは光太郎の捜索を開始していたが進展はつかめずにいたのだった。

それは無理もないだろう、なぜなら今彼は異世界にいるのだから……

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

 

話は戻り光太郎は草原の近くにあった村に女の子を送り届ける、そしてもう日が完全に落ちていたので村人に泊っていったらいいと言われ好意に甘えることにしたのだった。

 

ここは一体どういう世界なのか、自分はこれからどうするべきなのか、異邦の存在である自分に対して深く考え……るのは大体ダンとかの役目なので彼は特に気にもせず眠りにつくのだった。

 

異次元に行ったりいきなり変な場所に転移させられる事は、たまにあるので何とかなるだろう、そう結論をだしてしまえる辺り彼の神経の図太さは並みでは無かった。

 

 

 

そして翌日

 

 

「お世話になりました!」

 

 

「いやいや大した持て成しも出来ませんで、道中気を付けてくださいね」

 

 

光太郎は村人たちに別れを告げ旅立とうとしていた、一応今朝になり話を聞いてみたがここはトリステイン王国のラ・ロシェール地方と言われるところにある村だとか名産はブドウだとか、色々話してくれたものの惑星エルピスじゃない、という事しか光太郎には分からなかった。

 

 

「あっ、そうだせっかくなので名物があるんですけど見ていきませんか?」

 

 

「名物?」

 

 

「ええちょっと珍しいものなんですけどね」

 

 

何だろうと思いながら光太郎は村人に案内される、そこで光太郎は思わぬ物と出会うのだった。


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